生成AIによる誹謗中傷は訴えられる?法的責任と被害者がとるべき対応を弁護士が解説
2026/03/22
生成AIによる誹謗中傷は訴えられる?法的責任と被害者がとるべき対応を弁護士が解説
近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の急速な普及に伴い、AIが生成した文章によって名誉を毀損されたり、プライバシーを侵害されたりするケースが新たな法的問題として注目を集めています。
「AIが書いた文章で自分の悪評が広まっている」「生成AIの回答に自分に関する虚偽の情報が含まれている」——このような相談が増えてきています。本記事では、生成AIによる誹謗中傷の法的な問題点と、被害を受けた場合にとるべき対応について解説します。
生成AIによる誹謗中傷とは?具体的なケース
生成AIに関連する誹謗中傷の問題は、大きく分けて以下のようなパターンがあります。
AIを利用して誹謗中傷の文章を作成・投稿するケース
これは、人間が生成AIをツールとして使い、SNSや掲示板に誹謗中傷の投稿を行うケースです。たとえば、AIを使ってもっともらしい文章を大量に生成し、特定の個人や企業に対する悪評を拡散するような行為が該当します。
このケースでは、投稿した人間が法的責任を負うという点は、従来の誹謗中傷と基本的に変わりません。AIを使って文章を生成したとしても、それを投稿する判断をしたのは人間であり、名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)、不法行為に基づく損害賠償責任(民法第709条)が成立し得ます。
生成AI自体が虚偽の情報を出力するケース(ハルシネーション)
生成AIには「ハルシネーション」と呼ばれる、事実に基づかない情報をあたかも真実であるかのように生成してしまう特性があります。たとえば、ある人物について質問した際に、AIがその人物に関する虚偽の犯罪歴や不祥事を回答してしまうことがあります。
このケースでは、誰が法的責任を負うのかが大きな論点となります。現時点では、AI自体は法的な主体ではないため、AIそのものを訴えることはできません。責任の所在としては、AIサービスの提供者(開発企業)に対する責任追及が考えられますが、現行法上の整理は必ずしも確立していません。
AIが生成したコンテンツが第三者によって拡散されるケース
AIが出力した虚偽情報を、第三者がSNSやブログなどで引用・拡散するケースも問題になります。この場合、拡散した個人は、AI出力であることを理由に免責されるわけではなく、内容の真実性を確認せずに拡散した責任を問われる可能性があります。
生成AIによる誹謗中傷の法的責任はどうなる?
投稿者の責任
AIを道具として使い誹謗中傷を行った場合、投稿者は従来どおり法的責任を負います。名誉毀損やプライバシー侵害に該当する投稿であれば、発信者情報開示請求によって投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行うことが可能です。
「AIが書いたので自分には責任がない」という主張は認められません。投稿の意思決定を行ったのが人間である以上、その責任は投稿者本人に帰属します。
AIサービス提供者の責任
AIサービスの提供者については、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)の適用が議論されています。
生成AIの出力が「特定電気通信による情報の流通」に該当するかどうかは、サービスの形態によって判断が分かれます。AIチャットボットの回答が利用者にのみ表示される場合と、Web上で公開される場合とでは、法的な評価が異なる可能性があります。
また、2024年以降、海外ではAI企業に対する名誉毀損訴訟が複数提起されており、日本でも今後同様の訴訟が増える可能性があります。
プラットフォーム運営者の責任
AIが生成したコンテンツがSNSやWebサイトに投稿された場合、プラットフォーム運営者には従来どおり、権利侵害情報の削除義務(条理上の義務)が生じ得ます。2024年に改正された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)では、大規模プラットフォーム事業者に対して、権利侵害情報への対応の迅速化が求められています。
被害を受けた場合の具体的な対応方法
生成AIに関連する誹謗中傷の被害を受けた場合、以下のステップで対応することが考えられます。
1 証拠の保全
まず、被害の証拠をしっかりと保全することが重要です。AIの出力画面やSNSの投稿をスクリーンショットで記録し、URL、日時、投稿者のアカウント情報なども併せて保存してください。AIの出力は更新や修正によって変わる可能性があるため、早期の証拠保全が特に重要です。
2 削除請求
権利侵害にあたるコンテンツについては、プラットフォームやAIサービス提供者に対して削除を求めることができます。多くのSNSやWebサービスには権利侵害の報告窓口が設けられています。任意の削除請求で対応されない場合は、裁判所に対する仮処分の申立てを検討します。
AIサービス提供者に対しては、出力内容の修正や、特定のプロンプトに対する回答の制限を求めることも考えられます。
3 発信者情報開示請求
AIを利用して誹謗中傷の投稿を行った者を特定するためには、発信者情報開示請求を行います。改正プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示命令の申立て(非訟手続)を利用することで、従来よりも迅速に投稿者の特定が可能になっています。
4 損害賠償請求・刑事告訴
投稿者が特定できた場合、民事上の損害賠償請求や、刑事告訴を行うことが可能です。誹謗中傷の慰謝料は、個人の場合で数十万円〜100万円程度、事業者の場合はそれ以上となることもあります。具体的な金額はケースによって大きく異なりますので、弁護士にご相談ください。
今後の法整備の動向
生成AIに関する法規制は、現在も議論が進んでいる段階です。政府のAI戦略会議やAI事業者ガイドラインにおいて、AIによる権利侵害への対応が重要課題として取り上げられています。
EUでは2024年にAI規制法(AI Act)が施行されており、日本でも今後、AIに特化した法規制が導入される可能性があります。現行法の枠組みだけでは対応が困難なケースが増えることが予想されるため、法改正の動向を注視していく必要があります。
まとめ
生成AIによる誹謗中傷は、従来のインターネット上の誹謗中傷とは異なる新しい法的課題を含んでいます。しかし、AIを使った投稿であっても投稿者の法的責任は変わらず、被害者は発信者情報開示請求や削除請求といった従来の法的手段を活用して対応することが可能です。
重要なのは、被害に気づいたら早期に証拠を保全し、速やかに専門家に相談することです。AIに関連する誹謗中傷は技術的・法的に複雑な問題を含むことが多いため、インターネット上の権利侵害に精通した弁護士への相談をお勧めします。
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