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発信者情報開示請求の流れと費用——手続きの全体像を弁護士がわかりやすく解説

発信者情報開示請求の流れと費用——手続きの全体像を弁護士がわかりやすく解説

発信者情報開示請求の流れと費用——手続きの全体像を弁護士がわかりやすく解説

2026/03/24

発信者情報開示請求の流れと費用——手続きの全体像を弁護士がわかりやすく解説

SNSや掲示板で身に覚えのない誹謗中傷を受け、「投稿した相手が誰なのか知りたい」「法的措置をとりたいが、どこから手をつければいいかわからない」とお悩みではありませんか。匿名の投稿者を特定し、損害賠償や削除請求などの法的措置をとるためには、「発信者情報開示請求」と呼ばれる手続きを利用する必要があります。

本記事では、発信者情報開示請求の仕組み、具体的な手続きの流れ、費用の目安、そして2022年の法改正で創設された「発信者情報開示命令」(非訟手続)のメリットまで、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

発信者情報開示請求とは?——投稿者を特定するための法的手続き

発信者情報開示請求とは、インターネット上で権利を侵害する情報を発信した者(投稿者)の氏名や住所などの情報を、サイト管理者やプロバイダに対して開示するよう求める手続きです。この手続きは、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づいて行われます。

匿名での投稿であっても、裁判手続きを通じてIPアドレスや契約者情報をたどることで、投稿者個人を特定できる場合があります。特定後は、損害賠償請求や刑事告訴といった法的措置をとることが可能になります。

法律名の変更について:2025年4月1日の法改正により、従来の「プロバイダ責任制限法」は「情報流通プラットフォーム対処法」(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)に名称が変更されました。発信者情報開示請求の基本的な仕組み自体に大きな変更はありませんが、大規模プラットフォーム事業者には削除対応の迅速化などの新たな義務が課されています。

発信者情報開示請求が認められる要件

発信者情報開示請求が認められるためには、主に次の要件を満たす必要があります。

  • 権利侵害の明白性:投稿によって名誉権、プライバシー権、肖像権などの権利が侵害されたことが明らかであること
  • 正当な理由の存在:損害賠償請求や削除要請など、開示を受ける正当な理由があること
  • 特定電気通信による情報の流通:対象の投稿がインターネット上の不特定の者が閲覧できる通信であること

単に不快な投稿や批判的な意見というだけでは、権利侵害が「明白」とはいえない場合もあります。法的に開示が認められるかどうかの判断には専門的な知識が求められるため、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

発信者情報開示請求の流れ——2つの手続き方法

現在の法律では、投稿者を特定するための手続きとして、大きく分けて2つの方法があります。

方法①:発信者情報開示命令(非訟手続)——改正法で創設された新しい手続き

2022年10月の改正法施行により新たに創設されたのが、「発信者情報開示命令」を利用する非訟手続です。この手続きでは、コンテンツプロバイダ(サイト管理者)とアクセスプロバイダ(通信事業者)への請求を一つの手続きの中で進めることができるため、従来の方法に比べて迅速かつ効率的に投稿者を特定することが期待できます。

非訟手続の主な流れは以下のとおりです。

  • ステップ1 証拠の保全:まず、誹謗中傷の投稿内容、URL、投稿日時、アカウント名などがわかるスクリーンショットを撮影し、証拠を保全します。
  • ステップ2 コンテンツプロバイダへの開示命令申立て:裁判所に対し、サイト管理者が保有するIPアドレスやアカウント登録情報等の開示を求める申立てを行います。あわせて、提供命令・消去禁止命令の申立ても行います。
  • ステップ3 アクセスプロバイダへの開示命令申立て:提供命令により特定されたアクセスプロバイダに対し、契約者の氏名・住所等の開示を求める申立てを行います。
  • ステップ4 発信者の特定:裁判所が開示命令を発令し、アクセスプロバイダから投稿者の氏名・住所等が開示されます。

方法②:従来型の手続き(仮処分+訴訟の二段階方式)

改正法施行前から利用されてきた方法で、まずコンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示を求める仮処分を申し立て、得られたIPアドレスをもとにアクセスプロバイダを特定した上で、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示訴訟を提起するという二段階の手続きです。

現在でも利用は可能ですが、手続きが二段階に分かれることから、時間と費用が多くかかる傾向があります。

手続きにかかる期間の目安

手続きの種類 期間の目安
発信者情報開示命令(非訟手続) 約3か月〜6か月
従来型の手続き(仮処分+訴訟) 約8か月〜12か月

非訟手続の導入により、手続き全体の所要期間は大幅に短縮されました。ただし、相手方の対応やプロバイダのログ保存期間などにより変動する場合があります。特にアクセスログの保存期間は一般的に3か月〜6か月程度とされているため、投稿を発見したらできるだけ早く手続きに着手することが重要です。

発信者情報開示請求にかかる費用

費用は大きく「裁判所に納める費用」と「弁護士費用」に分けられます。

裁判所に納める費用

費用項目 非訟手続(開示命令) 従来型(仮処分+訴訟)
申立て手数料(収入印紙) 1,000円 仮処分:2,000円 / 訴訟:別途
予納郵券(切手代) 数千円程度 数千円〜1万円程度
担保金(供託金) 不要 仮処分:10万〜30万円程度

非訟手続では仮処分が不要であるため、担保金を納める必要がなく、裁判所への費用は合計でも数千円程度に抑えられる点が大きなメリットです。

弁護士費用の目安

手続き内容 費用の目安
発信者情報開示命令(非訟手続)全体 約30万〜50万円
従来型の手続き(仮処分+訴訟)全体 約40万〜70万円
損害賠償請求(投稿者特定後) 約20万〜40万円(別途成功報酬あり)

弁護士費用は、対象となるサイトの種類、投稿の内容、手続きの複雑さなどによって異なります。多くの法律事務所では、初回の法律相談で見積もりを提示していますので、まずは相談されることをおすすめします。

弁護士費用は投稿者に請求できる?
発信者情報開示請求にかかった弁護士費用の一部は、投稿者に対する損害賠償請求において「調査費用」として請求できる場合があります。ただし、裁判所が認める金額は実際に支払った費用の全額とは限らないため、事前に弁護士とご相談の上、費用対効果を検討されることが重要です。

2025年施行「情報流通プラットフォーム対処法」の実務への影響

2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)では、主に大規模プラットフォーム事業者に対する新たな義務が整備されました。発信者情報開示請求の手続き自体には大きな変更はありませんが、以下の点が実務に影響を与える可能性があります。

  • 削除対応の迅速化:大規模プラットフォーム事業者は、権利侵害の申出を受けてから原則14日以内に対応結果を通知することが義務づけられました。
  • 対応窓口・手続きの透明化:削除申請の受付体制の整備や、対応状況の公表が義務づけられたことで、被害者からの申請が行いやすくなることが期待されます。
  • 国内代理人の設置:海外の大規模プラットフォーム事業者にも国内における代理人の設置が求められるため、海外事業者への開示請求が円滑になる可能性があります。

発信者情報開示請求を成功させるためのポイント

1. 証拠は早期に・確実に保全する

投稿が削除されてしまうと証拠が失われるおそれがあります。誹謗中傷を発見したら、投稿内容、URL、投稿日時、アカウント名を含むスクリーンショットをすみやかに保存してください。ウェブ魚拓やアーカイブサービスの活用も有効です。

2. ログ保存期間に注意する

アクセスプロバイダが通信ログを保存している期間は、一般的に3か月〜6か月程度です。この期間を過ぎるとログが消去され、投稿者の特定が困難になる場合があります。投稿を発見したら、できるだけ早く弁護士に相談し、手続きに着手することが大切です。

3. 権利侵害の内容を整理する

どの投稿が、どのような権利を侵害しているのかを明確に整理することが、請求の認容率を高めるために重要です。名誉毀損にあたるのか、プライバシー侵害にあたるのか、事実の摘示があるのかなど、法的な評価を弁護士とともに検討することをおすすめします。

4. 専門家に早めに相談する

発信者情報開示請求は、裁判手続きを伴う専門性の高い分野です。権利侵害の該当性の判断、手続きの選択、証拠の整理など、弁護士のサポートを受けることで、スムーズかつ効果的に手続きを進められます。

まとめ

発信者情報開示請求は、ネット上の匿名の誹謗中傷に対して法的に対処するための重要な手段です。2022年の法改正により非訟手続(発信者情報開示命令)が創設されたことで、手続きの迅速化と費用の軽減が実現しています。また、2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法により、大規模プラットフォーム事業者の削除対応も迅速化が図られています。

ただし、ログの保存期間の問題や権利侵害の立証の難しさなど、手続きには専門的な判断を要する場面が多くあります。誹謗中傷の被害に遭われた場合は、できるだけ早い段階で、インターネット上の権利侵害に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

発信者情報開示請求のご相談はタングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。お客様の状況に応じた最適な手続きの選択から、費用の見通しまで丁寧にご説明いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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