X(旧Twitter)での誹謗中傷への法的対処法|削除申請・開示請求・損害賠償を弁護士が解説
2026/03/24
X(旧Twitter)での誹謗中傷への法的対処法|削除申請・開示請求・損害賠償を弁護士が解説
ある日突然、X(旧Twitter)上で身に覚えのない悪口を書かれた、事実と異なる情報を拡散された、あるいは特定のアカウントから繰り返し攻撃的な投稿をされた――そのような経験をされた方は少なくありません。Xは国内外で数千万人が利用する巨大プラットフォームであり、一度投稿が拡散されると、心理的なダメージはもとより、仕事や日常生活にまで影響が及ぶこともあります。
「相手が匿名だから泣き寝入りするしかない」「プラットフォームが海外企業なので削除してもらえない」といった不安の声をよく耳にします。しかし、法律と適切な手続きを活用すれば、投稿の削除や発信者の特定、さらには損害賠償請求まで実現できるケースは少なくありません。
本記事では、X(旧Twitter)での誹謗中傷被害に遭った際に取るべき対応を、2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)の最新情報も踏まえながら、ステップごとにわかりやすく解説します。
1. X(旧Twitter)における誹謗中傷とは何か——法的に問題となる投稿の種類
まず、どのような投稿が法的に「誹謗中傷」として問題となり得るのかを整理しましょう。すべての批判的・否定的な書き込みが違法というわけではなく、法的責任を問えるかどうかは投稿の内容や状況によって判断されます。
名誉毀損(刑法230条・民法709条)
特定の人物について「公然と事実を摘示し、その人の社会的評価を低下させる」投稿が該当します。「〇〇さんは横領をした」「△△は不倫をしている」といった具体的な事実を不特定多数が見られる形で投稿する行為がこれにあたります。摘示された「事実」が真実であっても、公共性・公益性の要件を満たさない限り、名誉毀損が成立する場合があります。
侮辱罪(刑法231条)
事実の摘示なしに「バカ」「死ね」といった言葉で他人を公然と侮辱する行為です。2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられ、以前に比べて刑事的な対応がより現実的になっています。
プライバシー侵害・業務妨害
本人の同意なく住所・職場などの個人情報をさらす行為や、性的な画像・動画を無断で投稿する行為はプライバシー権の侵害や「リベンジポルノ防止法」違反になり得ます。また、事業者に関する虚偽情報の流布は偽計業務妨害罪(刑法233条)に該当する可能性もあります。
2. 被害を受けたらまず証拠を保全する
Xでの誹謗中傷に気づいたとき、最初に行うべき最も重要な行動は「証拠の保全」です。投稿者が自ら削除してしまう可能性がありますし、後述するアクセスログの保存期間も限られているため、早期に証拠を確保することが後の法的手続きの成否を左右します。
スクリーンショットを撮る際は、投稿本文だけでなく、投稿日時・アカウント名・URLが確認できるよう画面全体を撮影してください。ブラウザのアドレスバーに表示されているURLも記録しておくと、後の手続きで有用です。スマートフォンからの撮影よりも、PCのブラウザで撮影した方が情報を漏れなく保存できる場合があります。
具体的に保存しておくべき情報は次のとおりです。
- 問題の投稿(ポスト)のスクリーンショット(投稿日時・アカウント名が映っているもの)
- 当該投稿のURL(パーマリンク)
- 投稿者アカウントのプロフィールページのスクリーンショット(ユーザー名・フォロワー数等)
- 返信・引用リポスト等の関連投稿がある場合はそのスクリーンショットも
3. X(旧Twitter)への削除申請の方法
証拠を確保したら、次にXのプラットフォームに対して投稿の削除を求める方法があります。主に「通報機能」と「ヘルプセンターからの問い合わせ」の2つのルートがあります。
(1)Xの通報機能(報告機能)を使う
最も手軽な方法は、問題のポスト右上に表示される「…」メニューから「ポストを報告する」を選択する方法です。画面の指示に従い、ハラスメント・差別的言動・プライバシーの侵害などの該当カテゴリを選んで送信します。ただし、この方法はXのコミュニティガイドライン違反を申告するものであり、必ずしも削除に結びつくわけではありません。
(2)ヘルプセンターの問い合わせフォームを利用する
Xのヘルプセンター(help.x.com)には、名誉毀損・プライバシー侵害・なりすまし等に関する専用の問い合わせフォームが用意されています。通報機能に比べてより詳細な情報を伝えられるため、権利侵害の内容を具体的に説明した上で申請することが重要です。
(3)情プラ法施行後の変化——7日以内の対応義務
2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)により、X Corp. は「大規模特定電気通信役務提供者」として指定されました(Google、Meta、LINEヤフー、TikTokとともに)。
この指定を受けたことで、X Corp. は権利侵害の申し出を受けた場合に7日以内に対応を判断し、その結果を申請者に通知することが義務付けられています。また、削除基準を明示し、年1回以上の運用状況の公表も求められます。これにより、これまで対応が不透明とされていたXへの削除申請が、以前より迅速・透明なものになることが期待されています。
4. 発信者情報開示請求——匿名の投稿者を特定する方法
「誰が書いたのかわからない」という状況でも、法的な手続きを踏むことで投稿者の身元を特定できる場合があります。これを「発信者情報開示請求」といいます。
2段階の手続きの流れ
Xでの発信者情報開示請求は、基本的に次の2段階で進みます。
| 段階 | 相手方 | 開示される情報 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | X Corp.(Xの運営会社) | 投稿時・ログイン時のIPアドレス、タイムスタンプ、登録電話番号・メールアドレス | 投稿者が接続したネットワークの特定 |
| 第2段階 | インターネットサービスプロバイダ(ISP)または携帯電話会社 | 契約者の氏名・住所 | 実際の発信者の身元確認 |
第1段階でX Corp. からIPアドレス等を取得し、第2段階でそのIPアドレスを割り当てたプロバイダに対して契約者情報の開示を求めることで、最終的に投稿者の氏名・住所が判明します。
改正後の手続き——1つの手続きで完結
2022年10月施行のプロバイダ責任制限法改正(現・情報流通プラットフォーム対処法)により、「発信者情報開示命令」制度が創設されました。従来は、コンテンツプロバイダ(X Corp.)への仮処分申立て、アクセスプロバイダへの仮処分申立て、損害賠償請求訴訟と、最大3回の裁判手続きが必要でした。しかし現在では、1つの手続きの中で複数の事業者への開示命令を申し立てることが可能となり、被害者の手続き的・経済的負担が大幅に軽減されています。
開示請求の要件
発信者情報の開示が認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
- 権利侵害の明白性:当該投稿が名誉毀損・プライバシー侵害等に当たることが明らかであること
- 開示を必要とする正当な理由:損害賠償請求の準備など、開示を必要とする正当な目的があること
これらの要件は発信者のプライバシーを保護するために厳格に審査されるため、すべての申立てが認められるわけではありません。投稿内容の悪質性・権利侵害の程度・証拠の充実度などが判断に影響します。
⚠️ アクセスログの保存期間に要注意
5. 発信者特定後の法的対応——損害賠償請求・刑事告訴
開示請求によって投稿者の身元が判明した後は、民事・刑事の両面から法的責任を追及できます。民法709条(不法行為)に基づく損害賠償請求では、慰謝料のほか弁護士費用の一部も含めた賠償を求めることが可能です。示談交渉で早期に解決するケースも多くあります。
悪質な投稿については、名誉毀損罪(刑法230条)・侮辱罪(刑法231条)等で刑事告訴することも選択肢です。告訴状を警察・検察に提出し、捜査機関に立件・起訴を求めます。刑事手続きを通じた社会的制裁は、再発防止の抑止力としても機能します。
6. 対応の流れと選択肢のまとめ
X(旧Twitter)での誹謗中傷被害への対応は、①証拠保全 → ②削除申請(任意削除または仮処分)→ ③発信者情報開示請求 → ④損害賠償請求または刑事告訴、という流れが基本です。状況に応じていくつかの手段を並行して進めることもあります。削除申請と発信者情報開示請求は目的が異なるため、「誰が書いたかを特定したい」場合は削除前に開示請求を進めるタイミングを逃さないことが大切です。
7. 弁護士に相談すべき理由——早期対応が鍵
X(旧Twitter)での誹謗中傷対応は、手続きの複雑さとアクセスログの消失リスクから、時間との戦いでもあります。弁護士に依頼することで、申立書類の作成・裁判所への提出・示談交渉といった煩雑な手続きをすべて代行してもらえます。また、証拠が開示請求の要件を満たすかどうかの評価や、削除と開示のどちらを優先すべきかという戦略的判断も、専門家のサポートがあれば迷わずに進められます。
「まだ大げさかもしれない」という段階であっても、ログが消える前に動くことが被害回復の可能性を大きく左右します。早めに専門家へご相談ください。
X(旧Twitter)の誹謗中傷でお困りの方へ
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。X(旧Twitter)を含むSNSでの誹謗中傷被害でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。初回相談から、ご状況に応じた最適な対応策をご提案いたします。
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