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不動産しか遺産がない場合の遺留分請求|評価方法と支払い問題を弁護士が解説

不動産しか遺産がない場合の遺留分請求|評価方法と支払い問題を弁護士が解説

不動産しか遺産がない場合の遺留分請求|評価方法と支払い問題を弁護士が解説

2026/04/09

不動産しか遺産がない場合の遺留分請求|評価方法と支払い問題を弁護士が解説

「遺言書には『実家の土地建物は長男に相続させる』と書いてあるが、それ以外に目立った財産はない。自分の遺留分を請求したいのだが、相手が現金を持っていない場合はどうなるのだろう……」。そのような疑問や不安を抱えている方は少なくありません。現金や預貯金が乏しく、不動産が遺産の大部分を占めるケースは実際に多く、遺留分をめぐる話し合いが難航しやすい場面の一つです。

本記事では、遺産が不動産しかない場合に遺留分侵害額請求が可能かどうか、不動産をどのように評価するのか、そして相手に現金がない場合の支払い方法はどう処理されるのかについて、横浜の弁護士の視点からわかりやすく解説します。

遺産が不動産のみでも遺留分侵害額請求はできる

結論から申し上げると、遺産がすべて不動産であっても、遺留分侵害額請求は可能です。2019年(令和元年)7月1日以降に開始した相続には改正民法が適用され、遺留分を侵害されている場合は「金銭の支払い」を請求する権利が認められています(民法第1046条第1項)。

旧制度では「遺留分減殺請求」として不動産そのものの共有持分を取り戻すという方法がとられており、請求した遺留分権利者と受遺者・受贈者が不動産を共有する状態が生じやすい問題がありました。2019年の改正によって「遺留分侵害額請求」となり、請求の結果は金銭債権として発生するため、不動産の共有という複雑な法律関係が生まれにくくなりました。

つまり、受遺者(遺言によって不動産を取得した人)は、遺留分権利者から遺留分侵害額の支払いを求められた場合、原則として現金でその金額を支払わなければなりません。不動産がある以上は請求できない、などということはありません。

遺留分侵害額の計算における不動産の評価方法

遺留分侵害額を計算するには、まず遺留分の基礎となる財産(遺留分算定基礎財産)の額を確定する必要があります。不動産がその大部分を占める場合、その不動産の評価額が計算の中心となります。

遺留分侵害額請求において、不動産は原則として相続開始時点(被相続人が亡くなった日)の時価(実勢価格)で評価します(民法第1044条第3項)。時価とは、実際に市場で売買される場合の価格、すなわち客観的な取引価格を指します。

代表的な評価方法とその違い

不動産の評価には複数の指標が存在し、どの指標を使うかによって金額が大きく変わる場合があります。以下に代表的な評価方法を整理します。

評価方法 概要 特徴
時価(実勢価格) 実際の市場取引で成立し得る価格 遺留分算定の原則的な基準。不動産鑑定士による鑑定や複数の不動産業者による査定で算出する。
路線価(相続税評価額) 国税庁が毎年公表する道路(路線)に面した土地1㎡あたりの評価額 一般的に時価の80%程度とされるが、地域によって乖離が異なる。相続税申告に用いられる。
固定資産税評価額 市区町村が固定資産税の課税のために算定する評価額 一般的に時価の70~80%程度とされる。ただし、地方では時価より高くなる場合もある。
公示価格 国土交通省が毎年1月1日時点で発表する標準地の価格 時価に近い水準とされ、鑑定の補助的な根拠になることがある。

実務での取り扱い

当事者双方が合意できれば、固定資産税評価額や路線価を基にした金額を時価として採用することもあります。たとえば調停の現場では、双方が依頼した不動産業者の査定額の平均を用いたり、固定資産税評価額を一定割合で割り戻した額を時価とみなして合意するケースもあります。

一方、当事者間で評価額に大きな開きがあり話し合いがまとまらない場合は、不動産鑑定士に正式な鑑定評価を依頼することになります。鑑定費用は物件によって異なりますが、数十万円から発生することが多く、費用負担についても事前に確認しておく必要があります。

ポイント:遺留分を請求する側は評価額が高くなる指標を、請求された側は評価額が低くなる指標をそれぞれ主張しやすい傾向があります。双方の主張が食い違う場合は、弁護士を通じた交渉や調停手続きで折り合いをつけていくことが多いと言えます。

相手に現金がない場合の支払い方法はどうなるか

遺留分侵害額請求の結果として発生するのは金銭債権(現金の支払いを求める権利)です。ところが、相手方(受遺者)が不動産を相続したものの手元に現金がなく、すぐには支払えないというケースは実際によくあります。

①不動産を売却して支払う

最もシンプルな解決策は、受遺者が相続した不動産を売却し、その代金から遺留分侵害額を支払う方法です。ただし、受遺者が亡くなった親と同居していた場合など、居住用不動産の売却には生活への影響が大きく、感情的な抵抗が生じやすい面もあります。

②分割払いによる合意

当事者間の合意があれば、遺留分侵害額を一括ではなく分割払いにすることができます。分割払いの条件(回数、利息の有無など)は双方で自由に決めることができますが、支払いが滞った場合に備えて合意内容を書面化しておくことが重要です。

③裁判所への期限の許与申立て(民法第1047条第5項)

受遺者は、現金をすぐに準備することが難しい特段の事情がある場合、裁判所に対して支払期限の猶予(期限の許与)を申し立てることができます(民法第1047条第5項)。居住用不動産しか相続しておらず、他に換価できる資産がないような場合がその典型例です。

裁判所が期限の許与を認めた場合、その期限内は遅延損害金が発生せず、遺留分権利者による強制執行も制限されます。これは受遺者にとって生活の場を即座に失うような事態を防ぐためのセーフティネットとして機能します。ただし、期限の許与はあくまで猶予であり、支払義務そのものがなくなるわけではありません。

④不動産の持分提供による現物給付(当事者合意による)

法律上は遺留分侵害額は金銭での支払いが原則ですが、当事者双方が合意すれば、不動産の一部(共有持分)を遺留分権利者に移転する形で解決することも可能です。ただしこの場合、不動産が再び共有状態になるため、将来的な管理・処分に関する取り決めも合わせて検討しておく必要があります。

評価時点と利息(遅延損害金)に注意

遺留分侵害額請求においては、不動産の評価時点は相続開始時(被相続人の死亡日)とされています。これは遺産分割の場合(遺産分割協議成立時の時価が基準)とは異なる点ですので注意が必要です。

また、遺留分侵害額を請求してから実際に支払われるまでの間には、遅延損害金(利息)が発生する場合があります。民法の規定では、遺留分侵害額の請求があった時点(意思表示の到達時)から遅延損害金が生じると解されています(民法第1046条第2項)。支払いが長引くほど受遺者側の負担が増えることになるため、双方にとって早期解決を目指すことが合理的です。

特別受益・生前贈与が絡む場合の複雑さ

不動産しか遺産がないように見える場合でも、遺留分の基礎となる財産の計算に影響する要素が潜んでいることがあります。典型的なのは、被相続人が生前に他の相続人や第三者に対して行った不動産の贈与(特別受益)です。

民法第1044条は、相続開始前の一定期間内(相続人への贈与は原則10年以内、相続人以外への贈与は原則1年以内)になされた贈与を遺留分算定の基礎財産に算入することを定めています。したがって、現在の相続財産として残っているのが不動産のみであっても、過去の贈与が考慮に入ることで遺留分額が変動する場合があります。どの贈与が算入されるかの判断は複雑なため、弁護士に確認することをお勧めします。

まとめ:不動産相続の遺留分は早めの弁護士相談が解決のカギ

遺産が不動産のみの場合の遺留分問題は、評価方法をめぐる主張の対立、現金がない場合の支払い方法、特別受益の算入など、さまざまな論点が複雑に絡み合います。評価額の違いによって請求額に大きな差が生じることも少なくないため、交渉の入口の段階から法律の専門家に関与してもらうことが重要です。

また、遺留分侵害額請求権には「侵害を知った日から1年」という消滅時効があります(民法第1048条)。相続開始からすでに時間が経過している場合は、まず時効の問題がないかを確認した上で、早急に行動を起こすことが必要です。横浜をはじめとした各地域の弁護士が相続問題に対応していますので、一人で抱え込まずにご相談ください。

不動産が絡む遺留分問題、一人で悩まず弁護士に相談を

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。不動産の評価方法や支払い交渉など、遺産が不動産のみの場合特有の問題についても丁寧にご対応いたします。横浜近郊の方はもちろん、オンライン相談にも対応しておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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