相続放棄の期限は3か月|手続きの流れと期限を過ぎてしまった場合の対処法を弁護士が解説
2026/04/10
相続放棄の期限は3か月|手続きの流れと期限を過ぎてしまった場合の対処法を弁護士が解説
親や配偶者が亡くなった後、故人に多額の借金があることが判明し、「相続放棄をしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。あるいは、疎遠だった親族から突然「相続人になっている」と連絡を受け、どう対応すべきか困惑されているケースもあるかと思います。相続放棄は「マイナスの遺産(借金・債務)を引き継ぎたくない」という場合の有効な手段ですが、期限(熟慮期間)が原則3か月と定められており、この期限を意識せずにいると選択肢が大幅に狭まってしまいます。
本記事では、相続放棄の期限(熟慮期間)の考え方、起算点、家庭裁判所への申述手続きの流れ、期間を延長する方法、そして期限を過ぎてしまった場合にとり得る対処法まで、相続問題を多く取り扱う横浜の弁護士がわかりやすく解説します。
相続放棄とは?プラスの財産も放棄することになる点に注意
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産に関する権利・義務の一切を引き継がないことを選択する手続きです。民法第938条は「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」と定めており、相続放棄は家庭裁判所への申述によってのみ行うことができます。口頭で「相続放棄します」と述べるだけでは法的効力はありません。
重要な点として、相続放棄は「借金だけを放棄し、プラスの財産は受け取る」という選択はできません。相続放棄をした場合は、預貯金・不動産・有価証券などのプラスの財産も含め、被相続人の財産に関する権利・義務のすべてを放棄することになります。また、相続放棄をすると、その相続人ははじめから相続人でなかったものとみなされ(民法第939条)、次の順位の相続人に相続権が移る点にも注意が必要です。たとえば子どもが全員相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹などに相続権が移る場合があります。
相続放棄の期限(熟慮期間)は原則3か月|民法第915条
相続放棄ができる期間は、民法第915条第1項に「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と定められています。この3か月の期間を「熟慮期間」といいます。この期間内に相続放棄・限定承認・単純承認のいずれを選ぶかを検討し、必要であれば家庭裁判所に申述します。何も手続きをしないまま3か月が経過すると、原則として単純承認(プラス・マイナスの財産をすべて引き継ぐこと)をしたとみなされます(民法第921条)。
民法の計算方法(民法第140条)に従い、熟慮期間は「相続の開始を知った日」の翌日から起算します。たとえば被相続人が4月10日に亡くなりその日に知った場合、翌4月11日から3か月後の7月10日が期限となります。
起算点が被相続人の死亡日ではないケース
被相続人が死亡した日と、自己のために相続の開始があったことを知った日は必ずしも一致しません。被相続人と疎遠で死亡の事実を後から知った場合はその日が起算点になります。また、先順位の相続人全員が相続放棄をしたために自分が相続人になった場合は、その事実を知った日が起算点となります(民法第916条の趣旨を踏まえた判例の考え方)。未成年者の場合は、法定代理人が相続開始を知った時から起算されます(民法第917条)。
熟慮期間を延長する方法|家庭裁判所への伸長申請
遺産の調査が難航している、被相続人の財産状況が複雑でまだ把握しきれていない、といった事情がある場合には、家庭裁判所に申立てを行うことで熟慮期間を延長(伸長)してもらえる場合があります(民法第915条第1項ただし書)。
伸長の申立ては、熟慮期間内(3か月が経過する前)に行う必要があります。期限を過ぎてからの申立ては認められませんので、「もう少し調査に時間がかかりそう」と感じた段階で速やかに申立てることが重要です。申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、申立書のほか被相続人・申立人の関係を示す戸籍謄本などを添付します。伸長期間は裁判所の判断によりますが、1か月から3か月程度が認められる傾向にあります。
相続放棄の手続きの流れ|家庭裁判所への申述
相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することで行います。主な流れは以下のとおりです。
①必要書類を準備する
申述人の立場によって必要書類は異なりますが、共通して必要な書類は以下のとおりです。
- 相続放棄申述書(裁判所のウェブサイトから書式入手可能)
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
- 申述人(相続放棄をする人)の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
子や孫(代襲相続人)が申述する場合は、被相続人との続柄を示す戸籍謄本が追加で必要になります。また、先順位の相続人が既に相続放棄をしている場合は、その旨を示す相続放棄申述受理通知書の写しなどが求められることもあります。
②申述書と費用を裁判所に提出する
必要書類をそろえたら、管轄の家庭裁判所に申述書を提出します。費用として、申述人1人につき800円分の収入印紙と、裁判所から指定された額の郵便切手が必要です。書類の不備がなければ、裁判所から照会書(回答書)が送付されてきます。
③照会書に回答して申述受理を待つ
照会書には「相続放棄の意思があるか」「強制・脅迫などがないか」「借金を知った経緯」などが質問形式で記載されており、回答を記入して返送します。裁判所が申述を受理すると「相続放棄申述受理通知書」が送付されて手続きは完了となります。その後、「相続放棄申述受理証明書」を申請することで、債権者への証明書として活用できます。
期限内に「申述書が受理された」必要はなく、期限内に「申述書を裁判所に提出した(申述した)」ことが必要です。審査・照会のやりとりが3か月を超えても、申述自体が期限内であれば問題ありません。ただし、書類不備による再提出で期限を過ぎないよう注意が必要です。
期限を過ぎてしまった場合の対処法
「気づいたら3か月が過ぎていた」という場合、原則として相続放棄はできません。しかし、一定の事情がある場合には、例外的に期限経過後であっても相続放棄が認められることがあります。
例外①:被相続人に借金があることを知らなかった場合
最高裁判所は、相続開始を知ってから3か月が経過した後であっても、相続財産が全くないと信じており、かつそのように信じたことに相当の理由がある場合には、「重大な過失なく相続財産の存在を知らなかった」として、借金の存在を知った時から3か月以内に申述すれば相続放棄が認められると判示しています(最高裁昭和59年4月27日判決)。たとえば、被相続人と長年疎遠であり、死亡後しばらくして突然債権者から督促状が届いてはじめて借金の存在を知ったようなケースがこれにあたる可能性があります。ただし、この例外が適用されるかどうかは個別の事情によって判断が異なりますので、弁護士に相談のうえで申述することをお勧めします。
例外②:未成年者・成年後見人の場合
未成年者や成年被後見人については、法定代理人が相続開始を知った時から熟慮期間が進行します(民法第917条)。法定代理人が期限内に手続きをしなかった場合の対応については、専門家に相談することが重要です。
例外③:詐欺・強迫による場合
詐欺や強迫によって単純承認をさせられた場合は、取消しができる場合があります(民法第919条第2項)。相続放棄の取消権は詐欺を発見したまたは強迫を免れた時から6か月以内かつ相続の承認・放棄から10年以内とされています。
相続放棄と借金の連絡が来た場合に注意すべきこと
債権者から督促状や請求書が届いても、借金を弁済(返済)してしまう前に専門家に相談することが重要です。相続財産の一部を処分したり、借金を返済したりすると「法定単純承認」とみなされ(民法第921条)、相続放棄ができなくなる場合があります。また、相続放棄後に被相続人の遺産を消費・隠匿した場合にも、放棄の効力が失われることがあります(民法第921条第3号)。督促が届いたら、まず専門家に相談し、相続財産には一切手をつけないことが原則です。
まとめ|相続放棄は期限管理が命綱、早めの弁護士相談を
相続放棄の熟慮期間(原則3か月)は思いのほか短く、気づかないうちに経過してしまうことも少なくありません。特に被相続人と疎遠だったケースや、遺産の全容把握に時間を要するケースでは、期限が迫っているのに調査が追いつかない状況になりがちです。そのような場合は、熟慮期間の伸長申請を活用することで時間的な猶予を得られる可能性があります。
期限経過後であっても、事情によっては例外的に相続放棄が認められるケースがあります。いずれの場合も相続放棄の可否・戦略・申述の書き方は個別の事情に大きく左右されるため、横浜など各地の弁護士に早期にご相談されることをお勧めします。タングラム法律事務所では、相続放棄の申述から債権者対応まで、依頼者の状況に応じたサポートを提供しています。
相続放棄の期限・手続きについてお急ぎの方はご相談ください
タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。相続放棄の期限が迫っている場合や、すでに期限を過ぎてしまった可能性がある場合でも、まずはお早めにご相談ください。状況を丁寧に確認したうえで、とり得る対応策をご説明いたします。
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