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職場でパワハラ・セクハラが発生したら会社はどう責任を問われる?法的リスクと対応手順を横浜の弁護士が解説

職場でパワハラ・セクハラが発生したら会社はどう責任を問われる?法的リスクと対応手順を横浜の弁護士が解説

職場でパワハラ・セクハラが発生したら会社はどう責任を問われる?法的リスクと対応手順を横浜の弁護士が解説

職場でパワハラ・セクハラが発生したら会社はどう責任を問われる?パワハラ防止法の義務と法的リスク・対応手順を横浜の弁護士が解説

「うちの会社には関係ない」「多少の叱責は指導の範囲内だ」——こうした認識を持ったまま対応を後回しにしている中小企業・個人経営の事業者様は少なくありません。しかし実際には、職場内でパワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)が発生した場合、会社側が数百万円規模の損害賠償を請求されるケースが後を絶ちません。しかも2022年4月以降は中小企業にもパワハラ防止措置が義務付けられており、対策が不十分であること自体がリスクを高める要因となっています。

本記事では、ハラスメントが発生した際に会社が問われる法的責任の仕組みと、中小企業が日ごろから備えておくべき具体的な対応手順を、横浜の弁護士の視点からわかりやすく解説します。

パワハラ・セクハラとは?——法律上の定義を確認する

まずは法律上の定義を整理しておきましょう。

パワーハラスメント(パワハラ)は、改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)において、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」として被害者の就業環境が害されるものと定義されています。厚生労働省の指針では、①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害の6類型が例示されています。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、男女雇用機会均等法第11条に基づき、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義されています。性的要求を断ったことで不利益を与える「対価型」と、性的言動によって職場環境が不快になる「環境型」の2類型があります。

注意: ハラスメントは上司から部下への一方的なものに限りません。同僚間、部下から上司、さらには取引先・顧客からの言動も対象となり得ます。

ハラスメントが発生した場合に会社が問われる法的責任

ハラスメントは加害者個人の問題だと思われがちですが、法的には会社(使用者)も責任を問われる可能性があります。主要な法的根拠は以下の2つです。

① 使用者責任(民法第715条)

民法第715条は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています。つまり、従業員が職務上または職務に関連する形でハラスメント行為を行った場合、会社は加害者本人と連帯して被害者への損害賠償義務を負う可能性があります。「うちの会社は直接の加害者ではない」という言い訳は法律上通らないのです。

② 安全配慮義務違反(労働契約法第5条)

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。ハラスメントの事実を把握しながら適切な対処をしなかった場合や、相談窓口の整備など予防措置を怠っていた場合には、安全配慮義務違反として会社が損害賠償を請求されるリスクがあります。

これらの責任が認められた場合の賠償額は事案によって大きく異なりますが、慰謝料・休業損害・治療費等を合わせて数十万円から数百万円に及ぶ判決も少なくありません。パワハラが原因で従業員がうつ病を発症し、療養中の給与損害や慰謝料を合わせて600万円超の支払いを命じられた事案や、悪質なケースでは遺族が数千万円の損害賠償を請求した事案も報告されています。横浜の弁護士として労務案件を扱うなかでも、初期対応を誤ったことで紛争が長期化した例を多く見てきました。

2022年4月義務化:中小企業が実施しなければならないパワハラ防止措置

パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)は2020年6月に大企業に適用され、2022年4月からは中小企業にも義務化されました。現在、以下の措置を事業主が講じることが法律上の義務となっています。

義務の内容 具体的な対応例
①方針の明確化と周知・啓発 就業規則や社内規程でパワハラを禁止する旨を明記し、全従業員に周知する。研修・朝礼などで定期的に啓発する。
②相談体制の整備 相談窓口(担当者・外部窓口など)を設置し、従業員が相談しやすい環境を整える。
③事後の迅速・適切な対応 相談が寄せられた場合は速やかに事実確認を行い、行為者への措置・被害者のフォローを実施する。
④プライバシーの保護・不利益取扱いの禁止 相談者の情報を漏洩しない。相談したことを理由とした不利益取扱いを行わない。

これらの措置が不十分な場合、都道府県労働局から指導・勧告を受けるおそれがあります。また、措置義務の不履行は安全配慮義務違反の証拠としても使われやすくなるため、実質的な法的リスクにも直結します。

ハラスメントが発生・相談された場合の初動対応

相談や報告を受けたとき、最初の対応が後の紛争の帰趨を左右します。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 相談者の話を否定せずに丁寧に聴く:「それくらい我慢しなさい」「あなたにも問題があるのでは」といった対応は厳禁です。まず相談者の気持ちに寄り添い、事実関係を整理します。
  • 相談内容を記録・保管する:日時・場所・発言内容・関係者を文書で記録します。後の調査・証拠として不可欠です。
  • 秘密保持を徹底する:相談者の同意なく関係者に情報を漏らすと、二次被害のリスクが生じます。相談対応者は守秘義務を守ることが求められます。
  • 被害者の安全を確保する:必要に応じて加害者との業務上の接触を減らすなど、被害者が安心して業務を継続できる環境を整えることを優先します。

事実確認・調査と処分のポイント

初動対応の後、事実関係の調査を行います。この調査は公平・中立に行うことが重要です。

被害者・加害者それぞれから個別にヒアリングを行い、事実経緯や言動の詳細を確認します。目撃者がいる場合はその証言も取得します。ヒアリングはできる限り中立的な立場の者が行いますが、規模の小さい会社では当事者と関係が近すぎることも多く、外部の弁護士や社会保険労務士に第三者調査を委託することが有効な場合もあります。

調査の結果、ハラスメントが認定された場合は、加害者に対し懲戒処分(口頭・書面での注意指導、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇等)を行うとともに、被害者への謝罪・配置転換・メンタルヘルスケアの提供などを検討します。懲戒処分の内容は、就業規則に定められた手続きに従って行うことが必要です。

注意: 調査もなく加害者を即時解雇すると、解雇の有効性を争われるリスクがあります。反対に、ハラスメントが明白であるにもかかわらず何も措置を取らなければ、会社側の安全配慮義務違反が問われます。証拠の収集と手続きの適正さが非常に重要です。

2026年10月施行予定:カスハラ・求職者へのセクハラ防止措置も義務化へ

最新の法改正動向として、令和8年(2026年)10月1日より、カスタマーハラスメント(カスハラ)および求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置についても、事業主の義務となる予定です(令和8年2月26日付で指針が公布済み)。

カスハラとは、顧客・取引先等から従業員に対して行われる著しい迷惑行為(暴言、長時間拘束、理不尽なクレームなど)のことで、中小企業・個人経営の店舗でも深刻な問題となっています。これまでは事業主の配慮義務にとどまっていましたが、2026年10月からは防止体制の整備が法律上の義務となる予定です。今から対策を講じておくことが求められます。

また、採用活動中の求職者に対するセクハラも義務の対象となる予定です。面接担当者による不適切な言動が求職者への性的嫌がらせにあたるとして問題になるケースもあり、採用担当者への研修と窓口整備を早めに検討しておくとよいでしょう。

まとめ:ハラスメント対応は「事前の備え」が最大の防御

ハラスメントは会社の規模にかかわらず発生し得ます。そして実際に発生した際に対応が遅れたり、不適切な処理をしたりすると、使用者責任・安全配慮義務違反として会社が被害者から多額の損害賠償を請求されるリスクがあります。

中小企業・個人経営の事業者が取るべき最大の防御策は、①就業規則でのハラスメント禁止の明文化、②相談窓口の設置と運用、③研修による意識啓発——これら3点の「予防体制」を整えることです。問題が起きてから弁護士に相談するより、体制づくりの段階から横浜の弁護士にご相談いただくことで、費用も紛争リスクも大幅に低減できます。

ハラスメント対応・就業規則整備について弁護士に相談する

タングラム法律事務所では、パワハラ・セクハラをはじめとするハラスメント問題について、就業規則の整備から相談窓口の設計、万一の紛争対応まで、中小企業・個人経営の事業者向けにトータルでサポートしております。横浜を中心に多くの事業者様からご相談をいただいています。

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※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。

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