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カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守る!中小企業の法的対応と社内体制づくり|横浜の弁護士が解説

カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守る!中小企業の法的対応と社内体制づくり|横浜の弁護士が解説

カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守る!中小企業の法的対応と社内体制づくり|横浜の弁護士が解説

2026/04/22

カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守る!中小企業の法的対応と社内体制づくり|横浜の弁護士が解説

近年、飲食店・小売業・介護・医療・不動産など、あらゆる業種でカスタマーハラスメント(カスハラ)が深刻な問題となっています。「お客様は神様」という意識が根強い日本では、従業員が理不尽なクレームや暴言にさらされても、会社として毅然とした対応が取りにくいという実態がありました。しかし、近年の法整備と社会的な意識変化により、企業には従業員をカスハラから守る法的義務が課されるようになっています。本記事では、企業法務に注力する横浜の弁護士が、カスハラの定義・企業の法的義務・社内体制づくりのポイントを解説します。

1. カスタマーハラスメント(カスハラ)とは——定義と典型的な事例

「カスタマーハラスメント」とは、顧客・取引先・クライアントなど、事業者の外部関係者から従業員に対して行われる、著しく迷惑な行為や不当な要求のことをいいます。厚生労働省が2022年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。

正当なクレームと区別するためにも、カスハラの典型的な事例を把握しておくことが大切です。

類型 具体的な行為例
暴言・罵倒 「馬鹿野郎」「死ね」など、従業員の人格を否定する言葉を浴びせる
長時間の拘束 閉店後も帰らせない、電話を何時間も切らせないなどの行為
過剰・不当な要求 根拠のない全額返金要求、土下座の強要、無償でのサービス提供の強制
脅迫・威圧行為 「SNSに晒す」「会社に乗り込む」「訴えるぞ」と繰り返す行為
身体的接触・器物損壊 胸ぐらをつかむ、物を投げつけるなどの行為
差別的言動 性別・国籍・容姿などに関する侮辱的な発言
ポイント:クレーム内容そのものが妥当であっても、その伝え方が社会通念上不相当であればカスハラに該当する可能性があります。要求内容と手段・態様の両面から判断することが重要です。

2. 企業が負う法的義務——安全配慮義務とカスハラ対策の関係

企業がカスハラ対策を講じなければならない根本的な根拠は、労働契約法第5条の「安全配慮義務」にあります。同条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めており、ここでいう「安全」には精神的な安全も含まれると解されています。カスハラによって従業員が精神的ダメージを受けることは、まさにこの安全配慮義務が問われる場面です。

また、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法)は、2022年4月から中小企業にもハラスメント防止措置の義務を拡大しました。カスハラは同法が直接規制するパワハラとは異なりますが、厚生労働省の指針においても、事業主がカスハラ対策に取り組むことが「望ましい取組み」として明示されています。

さらに注目すべき動きとして、2024年10月に東京都カスタマーハラスメント防止条例が施行され、都内で事業を行う事業者にカスハラ防止のための取り組みが求められるようになりました。条例制定の動きは全国的に広がりつつあり、神奈川県・横浜市エリアの事業者においても、今後同様の規制が設けられる可能性があります。法整備の動向を踏まえた早めの対策が求められます。

3. カスハラ対策を怠った場合の法的リスク

会社がカスハラ対策を十分に講じなかった場合、次のような法的リスクが生じる可能性があります。

(1)従業員からの損害賠償請求

カスハラによって従業員がうつ病などの精神疾患を発症した場合、会社が安全配慮義務を尽くさなかったとして、民法第415条(債務不履行による損害賠償)または民法第709条(不法行為による損害賠償)に基づいて損害賠償責任を問われる可能性があります。裁判例の中には、会社のカスハラ対応の不備を理由として数百万円規模の賠償を認めたものもあると報告されており、中小企業にとっては経営上の重大リスクとなり得ます。

(2)労働基準監督署・行政機関からの指導

労働安全衛生法に基づく健康障害防止義務(労働安全衛生法第3条・第71条の2等)の観点から、職場環境の整備が不十分と判断された場合、行政指導の対象となる可能性もあります。

(3)人材の離職・採用難

カスハラが横行する職場では従業員の離職率が上がり、採用難にも直結します。特に飲食・小売・介護などの業種では深刻な問題であり、人材確保の観点からもカスハラ対策は経営上の重要課題といえます。

4. カスハラ行為者(顧客)に対してとれる法的措置

万一カスハラが発生した場合、顧客(加害者)に対して法的手段を講じることも選択肢の一つです。行為の態様に応じて、刑事・民事の両面から対応を検討できます。

刑事上の対応(警察への被害届・告訴)

  • 脅迫罪(刑法第222条)——「殺すぞ」「家を燃やす」など、生命・身体・財産に対する害悪の告知
  • 強要罪(刑法第223条)——土下座の強要、義務のないことを強制する行為
  • 名誉毀損罪(刑法第230条)・侮辱罪(刑法第231条)——人前での侮辱的な発言、SNSへの投稿
  • 不退去罪(刑法第130条後段)——退去を求めても店舗・施設から退去しない行為
  • 傷害罪(刑法第204条)・暴行罪(刑法第208条)——身体的接触を伴うカスハラ

民事上の対応

  • 不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)——慰謝料・治療費・逸失利益等の請求
  • 接触禁止・来店禁止の仮処分申請——継続的な嫌がらせに対する緊急の法的措置
  • 内容証明郵便による警告書の送付——行為の中止を求め、証拠を残す手段として有効
証拠保全の重要性:応対記録・録音・防犯カメラ映像・メール・SNS投稿のスクリーンショットなどは、法的対応の根拠となる重要な証拠です。日頃から記録を残す習慣をつけることが、いざというときの備えになります。弁護士に相談することで、証拠収集の方法や警告書の送付など、具体的な対応策を検討することができます。

5. 社内体制づくりの実践ポイント——マニュアルと研修

カスハラに組織として対応するためには、場当たり的な対応ではなく、仕組みとして体制を整えることが不可欠です。

Step 1|カスハラ対応方針の策定と従業員への周知

会社として「カスハラは受け入れない」という方針を明文化し、全従業員に周知します。「どのような言動がカスハラに該当するか」「誰がどのような権限で対応を打ち切れるか」を文書として整理しておくことが第一歩です。

Step 2|対応マニュアルの作成

「現場での初期対応→上長への引き継ぎ→法的対応の判断」という対応フローをマニュアル化します。「クレームはすべて受け入れなければならない」という誤った意識を是正し、従業員が一人で抱え込まないようにする仕組みを作ることが重要です。

Step 3|定期的な研修の実施

カスハラの定義・具体的事例・対応手順を周知するための研修を定期的に行います。ロールプレイング形式で断り方や上席への引き継ぎ方を練習することで、現場での実践力が高まります。

Step 4|被害報告・相談窓口の設置

従業員が被害を申告しやすい環境を整えることも会社の重要な役割です。内部相談窓口のほか、外部(弁護士事務所など)の相談窓口を設け、相談した従業員が不利益な扱いを受けないことを明確に保障します。

6. 就業規則・社内規程への反映

カスハラ対策は、就業規則や社内規程にも反映させることが推奨されます。法的に実効性のある体制を整えるには、口頭の方針だけでなく書面による規定が不可欠です。検討すべき主な規定事項は次のとおりです。

  • カスハラへの対応方針の明示(「会社は従業員をカスタマーハラスメントから守ることを宣言する」旨の条項)
  • 被害報告義務と会社の対応義務(速やかな状況確認・支援措置、二次被害防止など)
  • 顧客への対応権限(担当者の判断で応対を打ち切れる旨・入店拒否・取引拒絶の基準)
  • 警察・弁護士への連絡基準(悪質案件のエスカレーション判断基準)

就業規則を変更する際は、労働契約法第10条の要件(合理性・周知)を満たす必要があります。規程の整備に際しては、横浜の弁護士など企業法務の専門家に内容を確認してもらうことで、法的に有効かつ現場で機能する体制を構築することが可能です。

7. まとめ——カスハラ対策は「経営リスク管理」の一環として

カスタマーハラスメントへの対応は、従業員を守るという人権上の問題であると同時に、会社自身の法的リスク管理としても不可欠な取り組みです。安全配慮義務(労働契約法第5条)を果たすこと、適切な記録・証拠を残すこと、そして悪質な行為に対しては法的措置をためらわないことが、健全な職場環境と持続的な事業運営につながります。

「どこからがカスハラに該当するかわからない」「毅然と対応したいが法的に問題ないか不安」「従業員が精神的に追い詰められていて早急に対応が必要」——こうしたお悩みをお持ちの中小企業・個人経営の事業者の方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。タングラム法律事務所では、横浜を中心に企業法務・労務問題のご相談をお受けしており、カスハラ対応マニュアルの作成支援、就業規則の整備、顧客への法的措置に至るまで、一括してサポートいたします。

カスタマーハラスメント対応・社内体制整備について、お気軽にご相談ください。
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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。また、法令・判例等は執筆時点の情報に基づいており、その後の改正等により内容が変わる場合があります。

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