アルバイト・パートタイマーにも有給休暇は付与される?付与条件と日数の計算方法を横浜の弁護士が解説
2026/05/04
アルバイト・パートタイマーにも有給休暇は付与される?付与条件と日数の計算方法を横浜の弁護士が解説
「パートやアルバイトには有給休暇なんてないだろう」——そう思い込んでいる経営者の方は、まだ少なくありません。しかし、これは法律上の誤りです。アルバイト・パートタイマーであっても、一定の要件を満たせば年次有給休暇(以下「有給休暇」)が発生し、会社はその付与を拒否することができません。
有給休暇に関するルールを知らずに運用していると、労働基準監督署の調査や従業員からのトラブルに発展するリスクがあります。本記事では、横浜を拠点とするタングラム法律事務所の弁護士が、アルバイト・パートタイマーへの有給休暇付与の要件、日数の計算方法、2019年改正で追加された年5日取得義務まで、中小企業の経営者・労務担当者向けにわかりやすく解説します。
1. アルバイト・パートタイマーへの有給休暇付与は法的義務
有給休暇の根拠となるのは労働基準法第39条です。同条第1項は「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています。
注目すべき点は、この条文が「正社員」「パートタイマー」「アルバイト」などの雇用形態を一切区別していないことです。「労働者」であれば等しく適用されます。したがって、週3日勤務のパートタイマーや、長期にわたって継続しているアルバイトスタッフにも、要件を満たせば有給休暇が発生します。
また、同条第3項は「週の所定労働日数が少ない短時間労働者」に対する比例付与の規定を設けており、正社員より少ない日数ではあっても有給休暇が付与されます。「短時間だから有給は不要」という理解は、法律上認められていません。
2. 有給休暇が発生するための2つの条件
有給休暇が発生するには、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
条件①:6ヶ月間継続して勤務していること
雇い入れの日(実際に労働を開始した日)から6ヶ月間、継続的に勤務していることが必要です。「継続勤務」か否かは、在籍期間の形式ではなく実質的な雇用関係の継続によって判断されます。たとえば、3ヶ月の有期契約を繰り返し更新しているケースでも、実態として継続的に働いている場合は「継続勤務」と認められる可能性があります。
また、アルバイト・パートタイムから正社員に転換した場合も、以前の雇用期間を通算して勤続年数が計算されると解されています。「正社員になった時点からリセット」とはなりませんので、転換時の有給休暇残日数の引き継ぎについても確認が必要です。
条件②:全労働日の8割以上出勤していること
「全労働日」とは、所定労働日数から会社都合による休業日などを除いた日数を指します。この8割以上の出勤率を満たすことが条件となります。なお、業務上の傷病による休業期間、育児・介護休業期間、産前産後休業期間、および有給休暇を取得した日は、労働基準法第39条第10項により「出勤したもの」とみなされます。これらの期間が長かったために出勤率が低下しているケースでも、適切に計算すると8割を超える場合があります。
3. 週の労働日数に応じた「比例付与」の日数一覧
週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満のパートタイマー・アルバイトには、「比例付与」のルールが適用されます。以下が法定の付与日数です(労働基準法第39条第3項、同施行規則第24条の3)。
| 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
4. 有給休暇を付与しない・取得させない場合の法的リスク
要件を満たした労働者に有給休暇を付与しなかった場合、または労働者が申請した有給休暇を正当な理由なく拒否した場合は、労働基準法第119条により「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があると解されています。
また、労働基準監督署への申告を受けると、行政による立入調査・是正勧告の対象となります。調査が入った場合、有給休暇管理簿の提出を求められ、付与・取得の実態が確認されます。パートやアルバイトに関して付与漏れが発覚した場合、過去2年分(消滅時効前の分)にさかのぼって対応を求められることもあり得ます。
なお、使用者には「時季変更権」(労働基準法第39条第5項)があります。労働者が指定した時季に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は他の時季に変更を求めることができます。しかしこれはあくまで取得時期の変更であり、有給休暇の取得そのものを拒絶することは認められていません。繁忙を理由に申請を繰り返し却下し続けることは、違法となる可能性があります。
5. 2019年改正で追加された「年5日の時季指定義務」への対応
2019年4月施行の働き方改革関連法により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、使用者が年間5日以上の有給休暇を確実に取得させる「時季指定義務」が課されました(労働基準法第39条第7項)。
この義務は正社員だけに限られるわけではありません。比例付与を含めて年間10日以上の有給休暇が付与されるパートタイマーも対象となります。たとえば、週4日勤務で勤続3年6ヶ月以上の従業員は10日以上付与されるため、年5日の時季指定義務の対象です。
また、使用者は有給休暇の取得状況を記録した「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存することが義務付けられています(労働基準法施行規則第24条の7)。年5日以上取得させることができなかった場合は、労働基準法第120条により1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります。
6. 中小企業が陥りやすいトラブルと実務的な対応策
法務担当者が社内にいない中小企業では、有給休暇の管理が属人的になりがちです。よく見られる誤解と実務上の対応策を整理します。
誤解①「短期・短時間のバイトには有給休暇は発生しない」
勤続6ヶ月・出勤率8割を満たせば、週1日勤務の短時間アルバイトにも有給休暇(1日)が発生します。「どうせ短期で辞めるだろう」と思っていても、気づけば長期化しているケースは少なくありません。入社時から管理簿を整備し、6ヶ月経過時点で自動的に付与処理できる仕組みを整えることが重要です。
誤解②「有給休暇は本人が申請しない限り与えなくてよい」
従業員が自発的に申請しない場合でも、年5日の時季指定義務がある対象者については、使用者が積極的に時季を指定して取得させる義務があります。「申請がないから問題ない」という対応は、労働基準法違反となる可能性があります。
誤解③「退職時に有給残日数を買い取ればよい」
有給休暇の在職中の買い取りは原則として認められていませんが、退職により取得できなくなった未消化の有給休暇を退職時に買い取ることは、厚生労働省の解釈上も容認される慣行とされています。ただし、買い取りを前提として日常的に取得させないことは違法です。また、退職間際に未消化分が一度に申請されると、引き継ぎや業務の支障が生じるため、日頃から計画的な取得を促すことが現実的な対策となります。
実務対応チェックリスト
- 雇い入れから6ヶ月後に有給休暇が発生することをシステム・台帳でアラート管理する
- パートタイマー・アルバイトを含む全労働者の年次有給休暇管理簿を整備し、3年間保存する
- 年10日以上付与の対象者を漏れなく把握し、年5日の取得を計画的に促す
- 就業規則または年次有給休暇規程に付与ルール・申請手続き・時季変更権の基準を明記する
- 定期的に弁護士や社会保険労務士に労務管理の状況をチェックしてもらう体制を整える
7. まとめ——「知らなかった」では済まされない有給休暇の付与義務
アルバイト・パートタイマーへの年次有給休暇付与は、雇用形態に関わらず労働基準法上の義務です。違反すれば罰則や行政指導の対象となり、従業員との間でトラブルや訴訟に発展する可能性もあります。
特に法務担当者が不在の中小企業・個人事業主にとって、労務管理の整備は後回しになりがちですが、有給休暇の付与漏れや年5日取得義務の未達は気づかないうちにリスクとして積み重なります。横浜のタングラム法律事務所では、就業規則の整備や有給休暇管理の仕組みづくり、労務トラブルへの対応まで、企業法務に精通した弁護士が幅広くサポートしております。「うちの会社の運用が正しいか不安」という段階でも、お気軽にご相談ください。
アルバイト・パートタイマーの有給休暇管理、就業規則の整備についてお悩みの経営者様へ。
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