業務委託契約書と雇用契約書の違い|「偽装請負」と指摘されないためのチェックポイント | コラム | 神奈川県横浜市(新横浜)の弁護士ならタングラム法律事務所
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業務委託契約書と雇用契約書の違い|「偽装請負」と指摘されないためのチェックポイント

業務委託契約書と雇用契約書の違い|「偽装請負」と指摘されないためのチェックポイント

業務委託契約書と雇用契約書の違い|「偽装請負」と指摘されないためのチェックポイント

2026/04/14

業務委託契約書と雇用契約書の違い|「偽装請負」と指摘されないためのチェックポイント

フリーランスや個人事業主への業務委託が広がる一方、「形式上は業務委託なのに、実態は雇用と変わらない」として行政指導や訴訟に発展するケースが増えています。「偽装請負」と指摘されると、未払い残業代の支払いや社会保険の遡及加入を求められる可能性があります。本記事では、業務委託契約と雇用契約の法的な違いを整理したうえで、偽装請負と認定されないための実務上の注意点を横浜の弁護士が解説します。

業務委託契約と雇用契約、何が根本的に違うのか

業務委託契約とは、民法上の「請負契約」(民法第632条)または「準委任契約」(民法第656条・第643条)に基づく契約です。仕事の完成や業務の処理を委託するものであり、受託者(委託先)は独立した事業者として業務を行います。委託者(発注側)は業務の進め方や時間の使い方に対して指揮命令を行う立場にはなく、受託者は自らの裁量で仕事を進めます。

これに対して雇用契約は、労働者が使用者の指揮命令のもとで労働を提供し、その対償として賃金を受け取る契約です(労働契約法第6条)。雇用契約が成立すると、使用者には労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法等の各種労働法が適用されます。残業代の支払い義務、有給休暇の付与義務、社会保険・雇用保険への加入義務なども発生します。

下表に、主要な違いをまとめます。

比較項目 業務委託契約 雇用契約
根拠法 民法(請負・準委任) 労働契約法・労働基準法
指揮命令 なし(受託者が自律的に遂行) 使用者の指揮命令に従う
報酬 成果・業務量に応じた委託料 労働時間に応じた賃金
残業代 原則不要 法定労働時間超は割増賃金が必要
社会保険 受託者が個人で加入 事業主が半額を負担して加入

「偽装請負」とはどういう状態か

偽装請負とは、契約の形式上は業務委託(請負や準委任)としているにもかかわらず、実態としては発注者が受託者に対して指揮命令を行い、雇用関係と同様の支配・従属関係が生じている状態を指します。

このような状態は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)や労働基準法に違反するおそれがあります。厚生労働省は、実態が労働者性を帯びるかどうかを判断する基準として「労働者性の判断基準」(昭和60年・労働基準法研究会報告)を公表しており、契約の名称にかかわらず実質で判断されます。

また、2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、いわゆるフリーランス保護新法)の施行により、業務委託の発注者側には書面による取引条件の明示義務や、一定期間以上の継続的業務委託に関して不当な行為を禁止する規制が新たに課されています。法令環境は近年急速に整備されており、業務委託の運用に対する行政の監視も強化されています。

「偽装請負」と認定されやすい具体的な状況

以下のような状況が重なるほど、労働者性が認められやすくなる傾向があります。

  • 始業・終業時刻を発注者が指定し、受託者がそれに従っている
  • 業務の内容・順序・方法について発注者が細かく指示している
  • 作業場所(オフィスや工場)への出勤を事実上強制されている
  • 使用するパソコン・機材・制服など業務用具を発注者が提供している
  • 他社の仕事を受けることが契約や慣行で禁止されている(専属性)
  • 長期間にわたり同一の発注者との取引が継続し、収入のほぼ全部を依存している
  • 報酬が作業時間に連動しており、成果ではなく稼働で支払われている

これらの要素が複数当てはまる場合、契約書に「業務委託」と記載されていても、行政や裁判所は実態を重視して労働者性を認める可能性があります。横浜の企業でも同様の事案が増えており、注意が必要です。

偽装請負・労働者性認定のリスク——何が起きるか

① 未払い残業代・賃金の請求
労働者と認定された期間分の割増賃金(残業代)が遡及して請求されるおそれがあります。時効は原則3年(労働基準法第115条)のため、長期間の委託関係では金額が大きくなるケースがあります。

② 社会保険・雇用保険の遡及加入・追徴
健康保険・厚生年金・雇用保険の加入義務が生じ、過去分の保険料を遡って納付するよう求められる可能性があります。事業者負担分が一括請求される場合、経営に深刻な影響を与えることがあります。

③ 行政機関からの是正勧告・指導
労働基準監督署や都道府県労働局から調査・是正勧告を受けるおそれがあります。悪質と判断されれば、労働基準法違反として刑事罰(罰金・懲役)の対象となることもあります。

④ 民事訴訟・損害賠償
受託者(個人)側から「実態は雇用だった」として地位確認訴訟や損害賠償請求を起こされるリスクもあります。

偽装請負にならないための実務チェックリスト

契約書の整備と日々の業務実態の両方を見直すことが重要です。

  • 契約書に「受託者は独立した事業者であり、委託者の指揮命令下にない」旨を明記する
  • 業務の進め方・スケジュールは受託者の裁量に委ねる(具体的な作業手順を細かく指示しない)
  • 始業・終業時刻、休憩時間を発注者が指定しない
  • 作業場所を強制する場合は、その必要性(機密情報保護・設備利用等)を書面で合理的に記録する
  • 業務完了の確認は「成果物・報告書の検収」で行い、時間管理で行わない
  • 委託料は作業時間ではなく、成果物・業務量に基づいて決定する
  • 受託者が複数の取引先と契約できる環境を維持する(独占的・専属的な関係を強制しない)
  • 業務用の機材・設備は原則として受託者が自ら用意する

なお、チェックリストを満たすだけで安心するのではなく、実態が伴っているかどうかが肝心です。書面上だけ整えても、日常の業務指示が雇用と変わらない状態であれば、偽装請負と認定されるリスクは残ります。

業務委託契約書に盛り込むべき主要条項

偽装請負リスクを低減するためには、契約書の内容も重要です。業務委託契約書に盛り込むべき主要な条項として、以下が挙げられます。

まず、「業務の独立遂行」に関する条項です。「受託者は、本業務を独立した事業者として自らの裁量で遂行するものとし、委託者の指揮命令を受けない」旨を明記することが有効です。次に、「再委託・兼業の自由」に関する条項です。受託者が他の発注者から業務を受けることや、自らの業務に第三者を使うことを禁止・制限していないことを確認します。また、「報酬の算定基準」については、時間ではなく成果物・業務量ベースであることを明確に規定します。さらに、「業務委託料の消費税取扱い」として、受託者が適格請求書発行事業者である場合の消費税の取扱いを整理しておくことも、昨今のインボイス制度対応の観点から重要です。

これらの条項があっても、実際の業務運用がそれに沿っていなければ意味がありません。書面の整備と同時に、日常的な業務指示の出し方・連絡方法・勤怠管理の有無なども点検することが必要です。

契約書の見直しと弁護士への相談のすすめ

現在、業務委託契約を多数締結している中小企業・個人経営の事業者の方は、一度、既存の契約書と実際の業務運用の両面を見直されることをお勧めします。特に、長期間・専属的に取引してきた個人事業主との契約は、偽装請負リスクが高まりやすい類型です。

「今まで問題にならなかったから大丈夫」というケースでも、受託者側の認識が変わったり、退職・契約終了のタイミングで請求を受けたりすることは珍しくありません。また、労働基準監督署は企業の調査の際に外注先の実態にも目を向けることがあり、意図せず問題が発覚するケースもあります。

弁護士に契約書のレビューを依頼することで、問題のある条項や実務慣行を早期に発見し、是正することができます。横浜を拠点とするタングラム法律事務所では、中小企業・個人事業者からの労務・契約に関する法律相談を承っております。偽装請負のリスクが心配な場合や、契約書を一から整備したい場合は、お気軽にご相談ください。

業務委託契約の偽装請負リスクが心配な方へ
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【免責事項】本記事は、一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の案件に対する法律相談ではありません。個別の事情によって結論が異なる場合がありますので、具体的な問題については必ず弁護士にご相談ください。また、本記事の情報は執筆時点(2026年4月)の法令・通達に基づいており、その後の法改正等により内容が変わる場合があります。

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