内縁関係(事実婚)に相続権はない?パートナーへ財産を残す5つの方法を弁護士が解説
内縁関係(事実婚)に相続権はない?パートナーへ財産を残す5つの方法を弁護士が解説
「長年連れ添ったパートナーがいるけれど、婚姻届を出していない。自分が先に亡くなったとき、パートナーは遺産を受け取れるのだろうか……」そのような不安を抱えている方は少なくありません。内縁関係(事実婚)は社会的に広く認められた生活形態ですが、相続の場面では法律婚とは大きく異なる扱いを受けます。
本記事では、内縁関係のパートナーに相続権が認められない理由を整理したうえで、遺言書(遺贈)・死因贈与・生命保険活用など財産を残すための具体的な方法と、税務上の注意点を横浜の弁護士がわかりやすく解説します。愛するパートナーの生活を守るために、ぜひ参考にしてください。
内縁関係(事実婚)とは?法律婚との違い
内縁関係(事実婚)とは、当事者間に夫婦同様の共同生活を送る意思があり、社会的にも夫婦と認められている実態がありながら、婚姻届を提出していない関係を指します。同居の有無だけが判断基準ではなく、生活費の共同、周囲への夫婦としての紹介、お互いの親族との交流なども総合的に考慮されます。
法律婚(婚姻届を提出した婚姻)との最大の違いは、「法律上の配偶者」として扱われるかどうかという点です。内縁関係は、不当破棄に対する損害賠償請求(最高裁昭和33年4月11日判決)や、住居継続使用権など一定の場面では法的保護が認められています。しかし、相続においては法律婚に準じた保護は及ばないとされており、これが内縁関係の方とって大きなリスクとなります。
内縁の配偶者に相続権がない理由
民法が定める法定相続人の範囲は、「配偶者」「子(代襲相続人を含む)」「直系尊属」「兄弟姉妹」です(民法第887条・第889条・第890条)。ここでいう「配偶者」は、戸籍上の婚姻関係にある者を指し、内縁のパートナーは含まれません。
最高裁平成12年3月10日決定でも、内縁の配偶者には相続権を認めないことが確認されています。したがって、何十年連れ混っていようとも、婚姻届を提出していない限り、パートナーが法定相続人として遺産を受け取ることはできません。内縁のパートナーが何も対策をしないまま亡くなった場合、遺産はすべて法定相続人(子・親・兄弟姉妹等)に分配されることになります。
パートナーへ財産を残す方法①:遺言書による遺贈
最も確実かつ広く利用されている方法が、遺言書による遺贈です。被相続人(亡くなった方)が「内縁のパートナーに○○を遺贈する」旨を遺言書に記載することで、遺産の全部または一部をパートナーに渡すことができます(民法第964条)。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がありますが、内縁のパートナーへの遺贈については、公証人が関与する公正証書遺言の作成を強くお勧めします。自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるほか、法務局の保管制度を利用しない場合は紛失・偽造のおそれもあります。公正証書遺言であれば、形式上の有効性が担保されており、相続手続きもスムーズに進めやすいという利点があります。
ただし、被相続人に法定相続人がいる場合は、遺留分に注意が必要です。子や前婚の配偶者など遺留分権利者が存在する場合、全財産をパートナーに遺贈する内容の遺言書を作成しても、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分と遺贈の関係については、弁護士に相談しながら内容を検討することが重要です。
パートナーへ財産を残す方法②:死因贈与契約
死因贈与とは、贈与者の死亡を条件として財産を渡すことを約束する契約です(民法第554条)。遺贈との大きな違いは、「契約」であるため受贈者(パートナー)の同意が必要である点です。当事者双方が合意すれば成立し、遺言書のような厳格な方式要件はありません。
もっとも、口頭での死因贈与契約は後日の紛争リスクが高いため、実務上は公正証書で作成することが推奨されます。また、死因贈与は原則として贈与者が一方的に撤回できますが、受贈者が贈与者の生前に一定の負担(介護や生活支援など)を履行している場合は、撤回が制限される場合があります(最高裁昭和57年4月30日判決)。
遺贈と死因贈与は似た制度ですが、相続手続きにおける使い勝手が異なることがあるため、どちらを選択するかはケースバイケースです。横浜の弁護士にご相談のうえ、最適な方法を選ぶことをお勧めします。
パートナーへ財産を残す方法③:生命保険の受取人指定
生命保険契約では、受取人を自由に指定することができます。法律上の婚姻関係がない内縁のパートナーであっても、受取人として指定することが可能です。保険会社によって条件は異なりますが、内縁関係を証明する書類(住民票・交際期間を示す書類等)を提出することで手続きが進められる場合があります。
生命保険金は、受取人固有の財産として扱われるため、原則として遺産分割の対象になりません。法定相続人が遺産分割協議をする権利があるとしても、保険金はパートナーが直接受け取ることができます。ただし、内縁のパートナーが受け取る保険金は、法定相続人のように「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されない点に注意が必要です。
パートナーへ財産を残す方法④:生前贈与
生前贈与とは、生存中に財産を内縁のパートナーへ無償で渡すことをいいます(民法第549条)。贈与者と受贈者の合意があれば、相続人かどうかに関係なく成立します。たとえば、自宅不動産の持分を生前に移転したり、まとまった金銭を贈与することで、亡くなった後にパートナーが受け取る財産を生前に確保することができます。
ただし、年間110万円を超える贈与については贈与税が課税されます(暦年贈与の基礎控除)。多額の財産を一度に贈与すると高率の贈与税が発生する可能性があるため、計画的に分散して行うことが重要です。また、不動産の贈与については、登録免許税・不動産取得税・譲渡所得税など複数の税負担が生じる場合があります。生前贈与を検討する際は、弁護士だけでなく税理士にも相談することをお勧めします。
パートナーへ財産を残す方法⑤:特別縁故者制度(限定的な手段)
相続人がまったく存在しない場合(法定相続人がいない場合)に限り、内縁のパートナーが「特別縁故者」として家庭裁判所に相続財産の分与を申し立てることができます(民法第958条の2)。特別縁故者として認められるためには、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他特別の縁故がある者に該当することが必要です。
ただし、この制度を利用するには、まずe��庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、相続人捜索の公告期間(通常6か月以上)が満了した後、さらに3か月以内に分与申立てを行うという複雑な手続きが必要です。しかも、法定相続人が1人でも存在すれば利用できず、財産の全部が得られる保証もありません。あくまでも「最後の手段」として位置づけ、生前の対策を優先することが重要です。
内縁のパートナーへ遺贈・贈与する際の税務上の注意点
内縁のパートナーが遺言による遺贈や死因贈与で財産を取得する場合、税務上は法律婚の配偶者と大きく異なる扱いになります。主な注意点を以下の表で整理します。
| 項目 | 法律婚の配偶者 | 内縁のパートナー |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減(相続税) | 最低1億6,000万円または法定相続分まで非課税 | 適用なし |
| 相続税の2割加算 | 対象外 | 対象(税額が通常より20%増) |
| 生命保険の非課税枠 | 適用あり(500万円×法定相続人数) | 適用なし |
| 贈与税の配偶者控除 | 最大2,000万円まで非課税(婚姻20年以上が条件) | 適用なし |
このように、内縁のパートナーへの財産移転は、法律婚と比べて税負担が重くなる傾向があります。特に、相続税の2割加算は見落としがちな点です。相続財産が多い場合は、税務面での影響を踏まえた対策が不可欠となります。
まとめ:内縁関係の相続対策は弁護士への早期相談が重要です
内縁関係(事実婚)のパートナーには、法定相続権が一切認められていません。しかし、遺言書(遺贈)・死因贈与・生命保険の受取人指定・生前贈与といった対策を組み合わせることで、パートナーの生活を守ることは十分に可能です。これらの方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、遺留分や税務上の問題も絡むため、一つひとつの選択が長期的に大きな影響を与えます。
特に、遺言書の作成においては、内容が不適切だと遺留分侵害額請求を受けるリスクや、パートナーへの財産移転が思うように実現できないリスクがあります。相続対策は「早すぎる」ということはありません。現状の確認と将来に向けた計画を早期に立てることが、パートナーと自分自身を守ることにつながります。横浜をはじめ神奈川県内でこうした問題にお悩みの方は、ぜひ弁護士への相談をお勧めします。
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