不貞慰謝料の相手が無職・支払い能力がない場合の対処法|横浜の弁護士が解説
不貞慰謝料の相手が無職・支払い能力がない場合の対処法|横浜の弁護士が解説
配偶者の不貞行為が発覚し、慰謝料請求を検討したものの、相手が「仕事をしていない」「お金がない」と言っている——そのような状況に置かれ、「慰謝料を請求しても意味がないのではないか」と不安を感じている方は少なくありません。
本記事では、不貞慰謝料を請求したい相手が無職であったり、支払い能力が乏しいと思われる場合に取りうる対処法を、法的な観点から段階的に解説します。結論から申し上げると、相手が無職であっても慰謝料の支払い義務は消えません。財産の調査方法、交渉戦術、強制執行の手続きまで、知っておくべき知識を順を追って整理します。
無職・低収入でも不貞慰謝料の支払い義務はなくならない
まず大前提として確認しておきたいのは、相手が無職であったり収入が低かったりしても、不貞行為に基づく慰謝料の支払い義務そのものはなくならないという点です。
不貞慰謝料は、民法709条(不法行為に基づく損害賠償請求権)に根拠を持ちます。不貞行為という違法行為によって生じた精神的損害を賠償する義務は、行為者の経済状況に左右されません。「今はお金がない」という事情は、支払い義務の有無には影響せず、あくまでも「どのように支払うか」という履行方法の問題にとどまります。
実務上よく見られるのは、相手方が「自分には財産も収入もない」と主張して支払いを拒もうとするケースです。しかし、相手の言葉を鵜呑みにする必要はありません。本当に支払い能力がないのか、実は資産や収入源があるのかを、法的な手段を用いて調査・確認することができます。
まず行うべき「支払い能力の確認」
相手から「お金がない」と言われた場合、最初に取り組むべきは支払い能力の実態を見極めることです。相手が本当に無資力なのか、それとも支払いを免れるために財産を隠しているのかによって、その後の対応が大きく変わります。
確認できる主な財産の種類
一般的に、差し押さえの対象になりうる財産としては、以下のものが挙げられます。
- 預貯金口座(銀行・ゆうちょ等)
- 給与・賞与(就労している場合)
- 不動産(土地・建物)
- 自動車・貴金属等の動産
- 有価証券・投資信託・暗号資産
- 生命保険の解約返戻金
相手が「無職」であっても、過去に蓄積した預貯金や不動産を保有している場合があります。また、アルバイトや業務委託など、雇用形態を問わず何らかの収入を得ている可能性も否定できません。
弁護士を通じた財産調査の活用
弁護士には、弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)を利用して、金融機関や公的機関に対して相手の財産に関する情報の開示を求める手段があります。ただし、この制度は相手の氏名・生年月日等が判明しており、かつ金融機関側が照会に応じることが前提となるため、万能ではありません。
また、弁護士に依頼して内容証明郵便で請求書を送付した段階では、相手の財産状況を把握することは難しい場合があります。訴訟等の法的手続きを通じて判決や和解調書を得た後であれば、次に説明する「財産開示手続」や「第三者情報取得手続」といった、より強力な調査手段を利用できるようになります。
示談交渉での対処法:分割払い・減額の検討
相手の支払い能力が乏しいことが確認された場合や、当面の生活費すら捻出が難しい状況が客観的に明らかな場合には、示談交渉において柔軟な合意内容を検討することも一つの選択肢です。
長期分割払いの設定
一括払いが困難な相手に対しては、月々の返済額を設定した分割払いの合意を取り付けることが有効な場合があります。この場合、示談書に以下の条項を明記しておくことが重要です。
- 分割払いの総額・各回の支払額・支払期日
- 1回でも支払いを怠った場合に残額全額が直ちに支払い義務となる「期限の利益喪失条項」
- 遅延損害金の利率(法定利率は年3%)
- 公正証書化による強制執行認諾文言(後述)
示談書を公正証書にしておけば、相手が支払いを怠った際に裁判を経ることなく強制執行(差し押さえ)に移行できるため、回収可能性を高める効果があります。
請求額の減額交渉
相手が本当に支払い能力を欠いている場合、長期にわたって分割払いを続けさせるよりも、現実的に回収できる金額で早期に解決することを優先する方針もあり得ます。たとえば、本来なら200万円を請求できる事案であっても、相手の資力状況を踏まえて80~100万円程度での解決を選択するケースも実務上見られます。いずれの方針が適切かは、ケースの事情や今後の回収見込みを総合的に考慮して判断することになります。
判決・調停調書を取得した後の強制執行
示談交渉が決裂した場合や、一度成立した示談に基づく支払いが滞った場合には、裁判所を通じた強制執行という手段が残されています。強制執行を行うためには、判決や調停調書、公正証書(強制執行認諾文言付き)などの「債務名義」が必要です。
給与の差し押さえ(給与債権の差押え)
相手が就労している場合、勤務先に対して給与の一部を差し押さえることができます。給与の差押えは、民事執行法に基づき、給与の4分の1(手取り額が33万円を超える場合は33万円を超える部分)が差押え可能な範囲とされています。継続的に支払いを回収できる点が、給与差押えの大きなメリットです。
ただし、相手が「無職」を主張している場合、勤務先の特定が問題となります。この点については、後述の第三者情報取得手続が有効です。
預貯金の差し押さえ
相手の口座が把握できている場合、その預貯金を差し押さえることができます。差押えを受けた金融機関は、当該口座への入金を差押え債権者に優先的に充当するよう指示を受けることになります。
問題は、相手がどの金融機関にどのような口座を持っているかが不明な場合です。こうした場合に活用できる制度として、「第三者からの情報取得手続」があります。
財産開示手続と第三者情報取得手続の活用
令和2年(2020年)4月施行の改正民事執行法により、判決等の債務名義を持つ債権者が相手方の財産を特定するための手続きが大幅に強化されました。不貞慰謝料の回収においても、相手の財産隠しに対抗する有力な手段として機能します。
財産開示手続
財産開示手続(民事執行法196条以下)とは、債務者本人を裁判所に呼び出し、宣誓のうえ自身の財産を開示させる手続きです。改正前は罰則が弱く実効性に乏しいとされていましたが、改正後は正当な理由なく出頭しない場合や虚偽の陳述をした場合に刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されるようになり、実効性が高まっています。
第三者からの情報取得手続
第三者からの情報取得手続(民事執行法204条以下)は、金融機関や市区町村、日本年金機構等の第三者に対して、債務者の財産情報(預貯金口座・勤務先等)の提供を命じる手続きです。具体的には以下の情報を取得できる可能性があります。
| 情報の種類 | 照会先 | 取得できる情報の例 |
|---|---|---|
| 預貯金に関する情報 | 銀行・ゆうちょ銀行等 | 口座番号、残高、取扱支店等 |
| 給与(勤務先)に関する情報 | 市区町村、日本年金機構 | 雇用主の名称・住所等 |
| 不動産に関する情報 | 登記所(法務局) | 所有不動産の所在・登記情報等 |
この手続きにより、相手が「無職」と主張していても実際には就労している事実や、隠されていた口座の存在が明らかになる場合があります。取得した情報をもとに、速やかに差押えの申立てを行うことが重要です(情報提供から1か月以内が目安とされています)。
本当に財産がない場合のリスクと現実的な判断
財産調査を尽くした結果、相手に差し押さえるべき財産が一切ない場合、残念ながら現時点での強制回収は難しいという現実があります。これを「無資力」または「回収不能」の状態といいます。
ただし、現在無資力であっても将来的に収入や財産を取得する可能性は否定できません。不貞慰謝料の請求権は、不法行為を知った時から3年(または不法行為の時から20年)で消滅時効にかかりますが(民法724条)、すでに判決等を取得していれば確定判決の場合は時効期間が10年に延長されます(民法169条1項)。将来、相手が就職・転職・相続等によって財産を取得した際に改めて差押えを行う選択肢は残されています。
また、不倫の相手方が配偶者と共同不法行為者として連帯責任を負う場合、配偶者側に資力があれば配偶者に対して慰謝料全額を請求するという方針も検討に値します。配偶者と不倫相手の双方に対して請求し、資力のある方から優先的に回収するという戦略的アプローチは、横浜をはじめ実務上広く活用されています。
いずれにせよ、「無職だから請求をあきらめる」という判断は早計である場合が多く、法律の専門家に相談して財産の調査可能性や回収の見込みを慎重に見極めることが重要です。
不貞慰謝料の相手が無職の場合に弁護士に依頼するメリット
不貞慰謝料の相手が無職・低収入の場合、弁護士に依頼することで以下のようなメリットが期待できます。
財産調査の実効性が高まる
弁護士は弁護士会照会制度を活用することができるほか、訴訟・強制執行手続きの段階では財産開示手続・第三者情報取得手続を申し立てる権限を代理人として行使できます。個人が一人でこれらの手続きを進めることは書式や手続きの煩雑さから難易度が高く、弁護士に一任することで手続きの漏れや遅れを防ぐことができます。
交渉力の差が合意内容に影響する
相手が「支払えない」と主張している局面では、感情的になりがちです。弁護士を代理人として立てることで、証拠を踏まえた客観的・法的な交渉が可能となり、相手が実態以上に支払い能力を低く見せようとする場合にも適切に対応できます。
強制執行まで一貫したサポート
示談交渉から訴訟、判決取得、強制執行申立てまでを一貫して対応できるため、途中で方針変更が必要になった場合も迅速に対応できます。また、公正証書の作成や示談書の条項設計など、後の紛争を防ぐための書面整備も弁護士の重要な役割です。
まとめ:相手が無職でも慰謝料請求はあきらめないために
不貞慰謝料を請求したい相手が無職・支払い能力がないと主張している場合でも、法的な対抗手段は複数存在します。まず相手の財産状況を正確に把握し、分割払い交渉・裁判・強制執行・財産調査手続きというステップを適切に踏んでいくことが重要です。
特に、令和2年施行の改正民事執行法によって財産開示手続の実効性が高まり、第三者情報取得手続によって隠れた口座や勤務先を特定しやすくなっています。「相手にお金がない」という状況を理由に早々に請求をあきらめてしまうのは、本来獲得できたはずの賠償を手放すことになりかねません。
一方で、相手が本当に無資力の場合に長期にわたって訴訟・執行手続きを継続することは、精神的・経済的な負担も伴います。どこまで追求するかの判断は、回収見込み・弁護士費用・ご自身の状況を総合的に見て、弁護士と相談しながら決めることをお勧めします。
不貞慰謝料の相手が「お金がない」と言っている…まずはご相談を
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。相手方の支払い能力が不明な場合でも、財産調査の可能性や回収戦略について、横浜の弁護士が丁寧にご説明いたします。
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