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遺留分侵害額請求をされて払えない|期限の許与・分割払いを弁護士が解説

遺留分侵害額請求をされて払えない|期限の許与・分割払いを弁護士が解説

遺留分侵害額請求をされて払えない|期限の許与・分割払いを弁護士が解説

遺留分侵害額請求をされて払えない|期限の許与・分割払いを弁護士が解説

遺留分侵害額請求をされて払えない場合の対処法|期限の許与・分割払いを弁護士が解説

ある日突然、亡くなった親の遺産を多く受け取ったことについて、他の相続人から「遺留分侵害額を支払ってほしい」という内容証明郵便が届く——。相続で財産を受け取った側にとって、まとまった金額の支払いを求められるのは大きな負担です。とりわけ、受け取った遺産が不動産や自社株ばかりで手元に現金がない場合、「支払う気はあっても、すぐに用意できるお金がない」という状況に陥りがちです。

この記事では、遺留分侵害額請求をされたものの支払うお金がないという方に向けて、放置した場合のリスク、請求額を受け入れる前に確認すべきこと、そして裁判所が支払期限を猶予する「期限の許与」(民法1047条5項)や、分割払い・不動産での代物弁済といった選択肢を、横浜の弁護士が整理して解説します。

遺留分侵害額請求は「金銭」で支払う債務

まず前提として、遺留分侵害額請求によって生じる義務がどのようなものかを確認します。2018年(平成30年)の相続法改正により、2019年(令和元年)7月1日以降に開始した相続について、遺留分の制度が大きく変わりました。改正前は、請求すると贈与・遺贈そのものの効力が一部失われ、目的物(不動産など)が共有状態になる「遺留分減殺請求」という仕組みでした。

改正後は、遺留分を侵害された人(遺留分権利者)が請求できるのは「遺留分侵害額に相当する金銭の支払」だけとなりました(民法1046条1項)。つまり、請求された側(受遺者・受贈者)が負うのは、原則として金銭を支払う債務です。不動産の持分を渡す義務ではなくお金で清算する仕組みになったため、「現金が用意できない」という支払い側の悩みが生じやすくなったともいえます。

※本記事は、原則として2019年7月1日以降に開始した相続を前提としています。それより前に開始した相続には改正前の「遺留分減殺請求」のルールが適用され、扱いが異なります。いつ相続が開始したか(被相続人が亡くなった日)を確認することが出発点になります。

払えないからと放置するとどうなるか

「お金がないのだから、支払わなくても仕方がない」と考えて請求を放置することは、おすすめできません。金銭債務である以上、放置すればするほど不利な状況になっていくためです。主なリスクは次のとおりです。

遅延損害金が加算される

遺留分侵害額の金銭債務も、支払うべき時期を過ぎれば遅延損害金(遅れたことに対する損害賠償)が発生します。遅延損害金は法定利率(現在は年3%。3年ごとに見直される変動制です)で計算されるのが原則で、支払いが遅れれば遅れるほど負担が積み重なっていきます。放置しても金額が減ることはなく、むしろ増えていく点に注意が必要です。

訴訟・強制執行に発展するおそれ

話し合いや調停で解決しない場合、相手方は遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます。判決で支払いを命じられたにもかかわらず応じないと、相手方は強制執行の手続をとることができ、預貯金・給与・不動産などが差し押さえられる可能性があります。財産を差し押さえられれば、かえって生活や事業に大きな支障が生じます。放置は事態を悪化させるだけであることが多いといえます。強制執行に至る流れについては、遺留分侵害額請求が認められても払ってもらえない場合の強制執行・財産開示手続きの記事もあわせてご覧ください。

請求額をそのまま受け入れる前に確認すべきこと

支払いの方法を考える前に、そもそも相手方が請求している金額が正しいかを確認することが重要です。遺留分侵害額は、遺産や生前贈与の評価額、相続債務の額などをもとに計算されるため、前提となる数字が変われば結論も変わります。相手方の計算に過大な評価や見落としがあれば、支払うべき金額が下がる可能性があります。

確認すべきポイント内容
不動産の評価額遺産に不動産がある場合、時価・路線価・固定資産税評価額のいずれで計算されているかで金額が大きく変わります。相手方が高い評価を主張していないかを検討します。
特別受益(生前贈与)請求してきた相手方自身が、生前に多額の贈与(特別受益)を受けていないか。受けている場合、その分は遺留分の計算に影響し得ます(民法1044条・1046条)。
相続債務被相続人に借金などの債務があった場合、その扱いによって遺留分侵害額が変わることがあります。
請求の時期・時効遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始および侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、相続開始から10年で時効消滅します(民法1048条)。すでに時効が完成している場合もあります。

これらを検討した結果、相手方の請求額が過大であると判断できれば、減額を主張して交渉することが考えられます。逆に、安易に相手方の言い値を認めてしまうと、本来払わなくてよい金額まで支払うことになりかねません。金額の妥当性を検討することは、支払いの負担を軽くする第一歩です。

裁判所に支払期限を猶予してもらう「期限の許与」

請求額が妥当であっても、一括で即座に支払うことが難しい場合があります。こうした支払い側の事情に配慮して、相続法改正で新たに設けられたのが「期限の許与」の制度です。

民法1047条5項は、「裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、(中略)負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる」と定めています。つまり、遺留分侵害額を負担する側が裁判所に求めれば、裁判所はその債務の支払いについて相当の期限(支払いを待ってもらえる期間)を与えることができるのです。これは、受け取った財産が不動産中心で現金化に時間がかかるケースなどで、支払いのための資金を準備する猶予を確保するためのものです。

期限の許与が認められると、その期限までは支払いを遅らせても遅延(履行遅滞)にはならないと解されており、その間の遅延損害金の発生を避けられる点にも意味があります。ただし、注意すべき点もあります。

  • 期限の許与は、あくまで「支払時期を遅らせる」制度であり、支払う金額そのものを減らすものではありません。
  • 裁判所が「相当」と認める期限が付されるものであり、支払い側が希望する期間がそのまま認められるとは限りません。
  • 期限の許与は訴訟(裁判)の中で求めるのが基本であり、当事者間の交渉段階では、後述する合意による分割払いなどを検討することになります。

分割払い・代物弁済という選択肢

合意による分割払い

裁判所の期限の許与とは別に、当事者どうしの話し合いによって分割払いを取り決めることも可能です。相手方としても、一括では回収が難しく訴訟に時間と費用がかかるより、確実に分割で受け取れる方が望ましいと考える場合があります。分割払いに合意する際は、支払総額・回数・各回の金額・支払期日・遅れた場合の取り扱いなどを明確にし、合意書として書面に残しておくことが後日のトラブル防止につながります。

不動産などによる代物弁済

受け取った遺産が不動産ばかりで現金がない場合、金銭に代えてその不動産(の一部)を相手方に引き渡すことで清算する方法も考えられます。これを「代物弁済」といい、当事者双方が合意すれば行うことができます。ただし、代物弁済によって不動産を譲渡すると、譲渡した側に譲渡所得税が課される可能性があるなど、税務上の問題が生じ得ます。実行する前に、税理士や所轄の税務署に税負担を確認することが大切です。不動産を売却して現金を用意し、その代金から支払うという方法も含め、どの手段が有利かは事案によって異なります。

※税金(譲渡所得税・相続税等)に関する具体的な取り扱いは個別事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士または税務署にご確認ください。

早めに弁護士へ相談するメリット

遺留分侵害額請求をされて支払いに困っている場合、弁護士に相談するメリットとして、まず相手方の請求額が妥当かを客観的に検討し、過大であれば減額の余地を探れる点が挙げられます。また、一括で支払えない事情がある場合に、分割払いの交渉や訴訟における期限の許与の主張など負担を和らげる手段を検討でき、相手方との直接のやり取りを弁護士が代わりに行うことで、対立が激しくなりがちな親族間の交渉の負担も軽減できます。

遺留分の問題は、遺産の評価や特別受益の有無など専門的な判断を要する論点が多く、書面が届いてから対応が遅れるほど選択肢が狭まりやすいため、早い段階で相談することが望ましいといえます。なお、弁護士に依頼する場合の費用の考え方については、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する費用・メリットの記事で解説しています。また、遺言によって特定の相続人が不動産などを取得した結果として遺留分の問題が生じる典型例については、特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)と遺留分の関係もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

遺留分侵害額請求をされましたが、支払うお金がありません。放置してもよいですか?

放置は避けるべきです。遺留分侵害額請求により生じるのは金銭債務であり、支払わないまま放置すると遅延損害金が加算され、最終的に訴訟・強制執行によって預貯金や不動産が差し押さえられる場合があります。支払いが難しい事情がある場合でも、相手方と話し合って支払期限や分割払いを協議したり、裁判所に期限の許与を求めたりする方法があります。まずは早めに弁護士に相談することが考えられます。

「期限の許与」とは何ですか。分割払いにできますか。

期限の許与とは、遺留分侵害額を負担する受遺者・受贈者の請求により、裁判所がその債務の全部または一部の支払について相当の期限を与えることができる制度です(民法1047条5項)。これは一括での即時支払いが難しい場合に、支払時期を先延ばしにして資金を準備する時間を確保するためのものです。分割払いそのものを裁判所が命じる制度ではありませんが、当事者間の合意によって分割払いとすることは可能です。

現金がなく不動産しかない場合、その不動産で支払うことはできますか。

遺留分侵害額請求の債務は原則として金銭で支払う必要があります。もっとも、当事者双方が合意すれば、金銭に代えて不動産などの財産を引き渡す「代物弁済」によって清算することも可能です。ただし代物弁済には譲渡所得税など税務上の問題が生じ得るため、実行前に税理士や税務署に確認することが大切です。

請求された金額が高すぎると感じます。減額できる可能性はありますか。

請求額が正しいとは限りません。遺留分侵害額は、遺産や生前贈与の評価額、相続債務の額などをもとに計算されるため、不動産の評価方法や、相手方が受けた特別受益の有無・金額によって結論が変わります。相手方の計算に誤りや過大評価が含まれていないかを確認することで、支払うべき金額が下がる場合があります。

遺留分侵害額請求をされたら、まず何をすればよいですか。

まずは請求の内容(誰が、いくらを、どのような根拠で請求しているか)と、相手方が遺留分侵害額請求の意思表示をした時期を確認します。安易に金額を認めたり、逆に無視したりせず、請求額の妥当性を検討することが重要です。時効や消滅時効の主張が可能な場合もあるため、書面が届いたら早めに弁護士へ相談することが考えられます。

まとめ

遺留分侵害額請求は、2019年7月以降に開始した相続では金銭で支払う債務です。「お金がないから払えない」と放置すると、遅延損害金が積み上がり、訴訟や強制執行に発展するおそれがあるため、放置は得策ではありません。まずは相手方の請求額が妥当かを検討し、過大であれば減額を主張することが、支払い負担を軽くする出発点になります。そのうえで、一括での支払いが難しい場合には、当事者間の合意による分割払いや不動産での代物弁済、裁判所への期限の許与の申立て(民法1047条5項)といった手段を組み合わせて対応することが考えられます。

遺留分の計算や交渉には専門的な判断が必要な場面が多く、早めに弁護士へ相談することで取り得る選択肢が広がります。支払いに不安を抱えたまま一人で悩まず、まずは状況を整理することから始めてみてください。

遺留分侵害額請求をされてお困りの方へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。請求額の妥当性の検討から、分割払いの交渉、期限の許与を含む裁判対応まで、支払い側の立場に立った解決策をご提案します。横浜・新横浜で相続のご相談をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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