遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する費用・メリット・タイミングを解説
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する費用・メリット・タイミングを解説
「遺言で自分の取り分がほとんど残されていなかった」「特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けていた」——こうした状況で遺留分侵害額請求を考えたとき、多くの方が最初に不安に感じるのが「弁護士に頼むといくらかかるのか」「そもそも自分で請求できないのか」という点ではないでしょうか。費用が心配で相談をためらっているうちに、気づけば時効が迫っていた、というケースも少なくありません。
この記事では、遺留分侵害額請求を弁護士に依頼した場合の費用の内訳と相場、段階ごとの費用の違い、依頼するメリット、そして依頼を検討すべきタイミングを、横浜の弁護士がわかりやすく整理します。費用対効果を見極め、後悔のない判断をするための参考にしてください。
遺留分侵害額請求とは?弁護士への相談が増えている理由
遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された、最低限の取り分のことです。遺言や生前贈与によってこの取り分を侵害された相続人は、侵害している相続人や受遺者に対し、侵害された額に相当する金銭の支払いを請求できます(民法第1046条第1項)。これを遺留分侵害額請求といいます。
2019年7月1日に施行された改正相続法により、それまでの「遺留分減殺請求」は金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」へと改められました。かつては不動産などの現物を共有で取り戻す形が原則でしたが、現在は金銭債権として請求する仕組みに一本化されています。これにより金額をめぐる交渉の要素が大きくなり、遺産の評価や特別受益の有無をめぐって争いが激しくなりやすいことから、弁護士に相談・依頼するケースが増えています。
遺留分侵害額請求の弁護士費用の内訳と相場
弁護士費用は事務所ごとに設定が異なりますが、一般的には「相談料」「着手金」「報酬金(成功報酬)」「実費」で構成されます。それぞれの内容と一般的な目安は次のとおりです。
| 費用項目 | 内容 | 一般的な目安 |
|---|---|---|
| 相談料 | 正式依頼前の法律相談にかかる費用 | 30分5,000円程度(事務所により異なる) |
| 着手金 | 依頼時に支払う費用。結果にかかわらず原則返還されない | 請求額・回収見込額に応じて設定されることが多い |
| 報酬金 | 回収に成功した場合に、得られた金額に応じて支払う費用 | 回収額の一定割合+定額とする例が多い |
| 実費 | 収入印紙代・郵便切手代・戸籍等の取得費用・交通費など | 実際にかかった額 |
金額の設定方法は事務所によってさまざまです。着手金を定額とする事務所もあれば、経済的利益(回収できる見込みの金額)に一定割合を乗じて算定する事務所もあります。近年は着手金を抑え、その分を成功報酬に反映させる料金体系を採用する事務所も増えています。相場を確認したうえで、依頼前に必ず見積もりを取り、総額の見通しを把握しておくことが重要です。
手続きの段階で費用はどう変わる?(交渉・調停・訴訟)
遺留分侵害額請求は、まず相手方との交渉から始め、まとまらなければ調停、それでも解決しなければ訴訟へと段階的に進みます。手続きが進むほど弁護士の関与する作業も増えるため、費用も変動します。段階ごとのイメージは次のとおりです。
| 段階 | 主な手続き | 費用・期間の傾向 |
|---|---|---|
| 交渉 | 内容証明の送付、相手方との話し合い | 比較的費用が抑えられ、短期間で解決する可能性がある |
| 調停 | 家庭裁判所での話し合い(調停委員が関与) | 交渉より手続きが増え、追加費用が発生する場合がある |
| 訴訟 | 地方裁判所・簡易裁判所での審理・判決 | 期間が長期化しやすく、費用が高額になる傾向がある |
交渉のみで合意できれば費用も期間も抑えられますが、遺産の評価や特別受益をめぐって激しく対立し、訴訟まで進んだ場合には、総額が高額になることも珍しくありません。多くの事務所では、調停・訴訟へ移行する際に追加着手金が必要となる設定を採っています。依頼時には、どの段階でどの程度の費用がかかるのかを段階ごとに確認しておくと安心です。なお、判決が出ても相手方が任意に支払わない場合には、別途、強制執行の手続きが必要になることもあります(詳しくは遺留分侵害額請求が認められても払ってもらえない場合の強制執行の解説記事をご覧ください)。
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する5つのメリット
費用がかかっても弁護士に依頼する価値がある、と考えられる主な理由は次のとおりです。
1. 相続財産を正確に調査できる
遺留分の額を計算するには、遺産の全体像を把握する必要があります。弁護士は、弁護士会を通じて金融機関などに照会する制度(弁護士法第23条の2に基づく照会)を活用するなどして、預貯金や不動産、生前贈与の有無を調査できます。相手方が財産を明らかにしないケースでも、調査の糸口を得やすくなります。
2. 侵害額を適切に計算できる
遺留分侵害額の計算では、生前贈与(特別受益)の持戻しや債務の扱いなど、専門的な検討が必要です。計算を誤ると、本来請求できる額を取りこぼしたり、逆に過大な請求をして交渉が難航したりします。弁護士は根拠を示して適正額を主張できます。
3. 相手方との交渉を任せられる
相続の紛争は、感情的な対立が絡みやすいものです。弁護士が代理人として窓口になることで、直接顔を合わせずに冷静な交渉が可能になり、精神的な負担が大きく軽減されます。
4. 時効の管理を任せられる
後述のとおり、遺留分侵害額請求には短い期間制限があります。弁護士に依頼すれば、期間内に漏れなく請求の意思表示を行い、証拠を残す形で手続きを進めやすくなります。
5. 調停・訴訟までワンストップで対応できる
交渉で解決しない場合でも、そのまま調停・訴訟へ移行して対応を続けられます。ご自身で対応する場合の負担や、途中で対応方針が変わるリスクを避けられます。ご自身で手続きを進める場合との違いは、遺留分侵害額請求訴訟を自分で起こす方法の記事もあわせてご参照ください。
弁護士に依頼すべきタイミング——時効に注意
遺留分侵害額請求で最も注意すべきなのが、権利を行使できる期間の制限です。民法第1048条は、遺留分権利者が「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年間、これを行使しないと時効によって消滅すると定めています。また、相続開始の時から10年を経過したときも、同様に権利は消滅します(同条後段)。
この1年という期間は非常に短いため、「遺言の内容を知って自分の取り分が侵害されていると気づいた」時点で、早めに動き始めることが大切です。まずは期限内に相手方へ請求の意思表示(内容証明郵便を用いるのが一般的)を行い、その後にじっくり金額を交渉するという流れになります。相続開始や遺言・生前贈与の存在を知って請求を検討し始めたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談するのが望ましいといえます。
自分で請求する場合との違いと限界
遺留分侵害額請求は、内容証明郵便を送るだけであれば、ご自身で行うことも可能です。相手方が請求に素直に応じ、遺産の範囲や評価に争いがない場合には、必ずしも弁護士に依頼しなくても解決できることもあります。
もっとも、不動産や非上場株式など評価の難しい財産が含まれる場合、生前贈与の有無や金額に争いがある場合、相手方が財産の開示に応じない場合などには、ご自身だけで適正額を算定し交渉を有利に進めるのは容易ではありません。判断を誤ったまま合意すると、本来受け取れたはずの金額を取りこぼすおそれもあります。高額な財産が関わるケースや時効が迫っているケース、対立が深いケースでは、弁護士に依頼するメリットが大きくなる傾向があります。
よくある質問(FAQ)
遺留分侵害額請求の弁護士費用は誰が払うのですか?
弁護士費用は、原則として依頼した本人(遺留分を請求する側)が負担します。相手方に費用まで負担させることは通常できません。ただし、訴訟で判決に至った場合、訴訟費用(印紙代など)の一部は敗訴した側の負担とされることがあります。着手金・報酬などの弁護士費用は判決でも相手方に全額転嫁できるわけではないため、費用対効果を見極めて依頼することが大切です。
着手金を用意できない場合はどうすればよいですか?
着手金が用意できない場合、資力が一定基準以下であれば法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用し、費用を立替えてもらって分割で返済できる場合があります。また、着手金を抑えて成功報酬の割合を高く設定するなど、支払い方法を相談できる事務所もあります。まずは弁護士に費用の見積もりと支払い方法を確認することをおすすめします。
遺留分侵害額請求は弁護士に依頼せず自分でもできますか?
内容証明郵便を送るだけであれば自分で行うことも可能です。ただし、遺産の範囲や評価をめぐって相手方と争いがある場合、相続財産の調査や侵害額の計算、交渉・調停・訴訟には専門的な知識が必要になります。時効(原則1年)が迫っている場合や高額な財産が関わる場合は、弁護士に依頼することで見落としや手続きの誤りを防ぎやすくなります。
受け取った遺留分侵害額には税金がかかりますか?
遺留分侵害額請求によって金銭を受け取った場合、請求した側・支払った側の双方に相続税の申告のやり直し(更正の請求・修正申告)が必要になることがあり、支払いのために不動産を譲渡した場合には譲渡所得税が問題となる場合もあります。税務上の取扱いは事案によって異なるため、具体的な税額や申告の要否は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
弁護士に依頼するとどのくらいの期間で解決しますか?
解決までの期間は事案によって大きく異なります。交渉のみで合意できれば数か月程度で解決することもありますが、遺産の評価や特別受益をめぐって争いがあり、調停・訴訟に進んだ場合は1年以上かかることも珍しくありません。まずは弁護士が見通しを立て、交渉での解決を目指しつつ、必要に応じて調停・訴訟へ移行するのが一般的な流れです。なお、遺言や遺贈で財産を受け取る側の立場については、遺贈と遺留分の関係を解説した記事も参考になります。
まとめ
遺留分侵害額請求を弁護士に依頼する費用は、相談料・着手金・報酬金・実費で構成され、交渉・調停・訴訟のどの段階まで進むかによって総額が変動します。費用は原則として依頼した本人が負担するため、得られる見込み額とのバランス(費用対効果)を確認し、依頼前に必ず見積もりを取ることが大切です。
一方で、弁護士に依頼することには、相続財産の調査、適正な侵害額の計算、交渉代行、時効の管理、調停・訴訟までの一貫対応といった多くのメリットがあります。とりわけ、遺留分侵害額請求には「知った時から1年」という短い期間制限があるため、侵害に気づいたら早めに専門家へ相談することが、結果的にご自身の利益を守ることにつながります。費用の心配から一歩を踏み出せずにいる方こそ、まずは見通しと費用の見積もりを弁護士に確認してみてはいかがでしょうか。
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タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。費用の見積もりから交渉・調停・訴訟までの見通しをご説明し、横浜(新横浜)を拠点にご依頼者様の利益を守るための解決策をご提案します。時効が迫っている場合は特にお早めにご相談ください。
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