不貞慰謝料の内容証明が届いたときの対応|請求された側がすべきこと・NG行動を横浜の弁護士が解説
不貞慰謝料の内容証明が届いたときの対応|請求された側がすべきこと・やってはいけないことを横浜の弁護士が解説
ある日突然、自宅に「不貞行為の慰謝料を支払え」という内容証明郵便が届く——。「すぐに払わなければいけないのか」「無視したらどうなるのか」「そもそもこの金額は正しいのか」。物々しい書面を前に不安ばかりが先に立ち、冷静な判断が難しくなるのは自然なことです。
しかし、内容証明が届いた段階でとる対応が、その後の解決の方向性を大きく左右します。この記事では、不貞慰謝料の内容証明を受け取った「請求された側」が知っておくべき、内容証明の法的な性質、無視した場合のリスク、支払義務がない・減額できる可能性のあるケース、やってはいけないNG行動、そして正しい対応の手順を、横浜の弁護士がわかりやすく整理して解説します。
不貞慰謝料の内容証明とは?届いたときにまず理解すべきこと
内容証明郵便とは、「いつ・どのような内容の文書を・誰から誰に差し出したか」を郵便局(日本郵便)が証明してくれる特殊な郵便です。不貞慰謝料の請求では、請求する側が「たしかに請求の意思表示をした」という証拠を残すために利用されます。つまり内容証明そのものは請求の事実と日付を証明する手段であって、裁判所の命令や差押えのような強制力を持つ書面ではありません。
不貞行為に対する慰謝料請求の法的根拠は、民法709条(不法行為による損害賠償)および民法710条(財産以外の損害の賠償)にあります。婚姻共同生活の平和という保護される利益を侵害されたことへの精神的損害の賠償が問題となります。書面には通常、請求者の氏名、不貞行為とされる時期や相手方、請求額、支払期限、応じない場合は法的手続をとる旨などが記載されています。
内容証明が届いても、すぐに支払義務が確定するわけではない
「内容証明が届いた=支払わなければならない」と考える方は少なくありませんが、これは正確ではありません。実際に支払義務があるか、あるといくらかは、不貞行為の有無や証拠、婚姻関係の状況などを総合的に検討して初めて判断できます。記載された金額も請求側が主張する希望額にすぎず、高めに提示されることも珍しくありません。裁判例をふまえた相場の目安は、次のとおりとされています。
| ケース | 慰謝料額の目安(傾向) |
|---|---|
| 不貞が原因で夫婦が離婚に至った場合 | 約150万〜300万円 |
| 離婚には至らず婚姻関係が継続する場合 | 約50万〜150万円 |
| 別居に至った場合 | 100万円台前半で落ち着く傾向 |
これは幅のある目安であり、婚姻期間、不貞の期間や回数、子どもの有無、悪質性、反省の有無などによって増減します。書かれた金額が相場より高いと感じても、そのまま鵜呑みにする必要はありません。
内容証明を無視・放置するとどうなるか
「怖いから」「相手にしたくないから」と内容証明を放置してしまう方もいますが、これはおすすめできません。強制力がないとはいえ、無視を続けると相手方が次の段階に進む口実を与えることになります。
訴訟や支払督促に発展するおそれ
請求する側が任意の話し合いをあきらめると、訴訟の提起や支払督促の申立てに移行することがあります。訴訟に発展すれば答弁書の作成や期日への対応が必要になり、対応を誤ると相手の主張がそのまま認められてしまう危険もあります。判決で支払いが命じられれば、遅延損害金や訴訟費用の一部を負担することにもなりかねません。訴状が届いた場合の対応は、不貞慰謝料の訴状が届いたときの対応手順の記事もご確認ください。
受け取りを拒否しても解決にはならない
受け取り自体を拒否すればよいと考える方もいますが、有効な対処とはいえません。民法97条2項は、相手方が正当な理由なく意思表示の到達を妨げたときは通常到達すべきであった時に到達したものとみなす旨を定めており、受取拒否をしても到達したと扱われる可能性があります。かえって話し合いの機会を手放すことにもなります。無視・放置のリスクは、不貞慰謝料の請求を無視・放置した場合のリスクと対処法の記事で詳しく解説しています。
時効を当てにするのは現実的でないことが多い
不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅します(民法724条1号)。不法行為の時から20年を経過したときも同様です(同条2号)。もっとも、内容証明による催告があると民法150条により催告の時から6か月間は時効の完成が猶予され、その間に相手方が訴訟提起などをすれば時効は完成しません。内容証明が届いた時点で相手はすでに時効を意識して動いていることが多く、時効を当てにした放置は現実的でない場合が多いといえます。
支払義務がない・減額できる可能性があるケース
請求されたからといって、必ず満額を支払わなければならないわけではありません。次のような事情があれば、支払義務が否定されたり、慰謝料が減額されたりする可能性があります。
- 不貞行為の当時、すでに婚姻関係が破綻していた場合:保護されるべき婚姻共同生活の平和がすでに失われていたとして、慰謝料が否定または減額される場合があります。
- 相手が既婚者と知らず、知ることもできなかった場合(善意無過失):不貞慰謝料は故意または過失が要件です。独身と偽られていたなどの事情があれば、支払義務が否定される場合があります。
- 不貞行為を裏付ける証拠が不十分な場合:肉体関係を推認させる客観的な証拠が乏しければ、請求が認められないこともあります。
- 不貞の期間が短い、関係が浅いなど態様が軽微な場合:相場より低い金額にとどまることがあります。
- すでに配偶者から相応の慰謝料が支払われている場合:不貞は共同不法行為であり、二重に全額を支払う関係にはなりません。
これらに該当するかは、証拠や事実関係を丁寧に検討して初めて判断できます。相手方に代理人がついた場合の交渉のポイントは、不貞慰謝料の相手方に弁護士がついたときの対処法の記事もご参照ください。
内容証明が届いたときにやってはいけないNG行動
初動の対応を誤ると、後の交渉や裁判で不利になることがあります。次のような行動は避けましょう。
- 感情的に反論・返信する:動揺のまま返信すると、不用意に事実を認める発言をして後で証拠に使われるおそれがあります。
- 安易に「支払います」と約束する:金額の妥当性を検討しないまま確約すると、相場より高い金額に縛られる可能性があります。
- 相手(請求者本人や配偶者)に直接連絡する:トラブルの拡大や、脅迫・名誉毀損などの新たな紛争を招くリスクがあります。
- 証拠となりうるものを削除・隠滅する:かえって不利に評価され、状況を悪化させかねません。
- 完全に無視・放置する:前述のとおり、訴訟等への移行を招く可能性があります。
請求された側がとるべき正しい対応の手順
① 書面の内容を正確に把握する
請求者は誰か、どの不貞行為を根拠にしているか、請求額と返信期限はどうなっているかを確認します。書面は捨てずに保管してください。
② 事実関係と証拠を整理する
不貞行為の有無、時期、相手の婚姻状況を知っていたか、婚姻関係の破綻の有無など、争点になりそうな事情を落ち着いて整理します。この段階では相手に返信せず、状況を客観的に把握することが大切です。
③ 期限内に「対応する意思」を示す
満額を支払う必要はなくても、無視は避けるべきです。返信期限が短い場合は、「弁護士に相談のうえ回答する」旨を簡潔に伝え、時間的余裕を確保する方法もあります。
④ 弁護士に相談し、方針を決める
支払義務の有無、適正な金額、示談か争うかの方針は事案ごとに異なります。横浜をはじめ各地の弁護士に早めに相談すれば、不利な言質をとられる前に適切な方針を立てられます。弁護士が代理人として交渉に入れば、相手方との直接のやり取りを避けられます。
よくある質問(FAQ)
不貞慰謝料の内容証明を無視したらどうなりますか?
内容証明郵便そのものに、直ちに支払いを強制する法的拘束力はありません。しかし無視を続けると、相手方が訴訟や支払督促といった法的手続に移行する可能性があります。判決で支払いが命じられた場合には遅延損害金や訴訟費用の負担が生じることもあり、放置は避けるのが無難です。
内容証明の受け取りを拒否すれば請求を免れますか?
受け取りを拒否しても請求そのものを免れることはできません。民法97条2項では、正当な理由なく到達を妨げた場合に通常到達すべきであった時に到達したものとみなす旨が定められており、受取拒否をしても意思表示が到達したと扱われる可能性があります。
記載された慰謝料額はそのまま支払わなければなりませんか?
内容証明に書かれた金額は、あくまで相手方が主張する希望額であり、法的に確定した金額ではありません。裁判例をふまえた相場や、婚姻関係の状況・不貞の態様といった個別事情により、減額が認められる場合があります。適正額を見極めるには弁護士への相談をおすすめします。
既婚者だと知らなかった場合でも慰謝料を支払う必要がありますか?
不貞行為に基づく慰謝料は故意または過失があることが要件です。相手が独身だと偽っていたなど、既婚者であることを知らず、かつ知ることができなかった(善意無過失)と評価される事情があれば、支払義務が否定される場合があります。ただし過失の有無は総合的に判断されます。
内容証明が届いてから時効を待てば支払わずに済みますか?
不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年で時効消滅します(民法724条1号)。もっとも、内容証明による催告があると民法150条により時効の完成が6か月間猶予され、その間に訴訟提起等がされれば時効は完成しません。時効を当てにした放置は現実的でない場合が多いといえます。
まとめ
不貞慰謝料の内容証明が届いても、それ自体に支払いを強制する力はなく、書かれた金額がそのまま確定するわけでもありません。一方で、無視や受取拒否は訴訟等への移行を招くおそれがあり、感情的な返信や安易な支払約束もまた不利益につながりかねません。大切なのは、書面の内容を正確に把握し、事実と証拠を整理したうえで、期限内に「対応する意思」を示しつつ、適切な方針を立てることです。
支払義務の有無や適正な金額、示談か争うかの見極めは、専門的な検討を要する場面が多くあります。弁護士に相談すれば、相手方との直接のやり取りを避けながら裁判例の傾向をふまえた交渉が可能になり、不利な言質をとられるリスクを抑えられます。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが、納得のいく解決への近道です。
不貞慰謝料の内容証明が届いてお困りの方へ
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