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配偶者居住権とは?制度の仕組み・要件・メリット・デメリットを横浜の弁護士が解説

配偶者居住権とは?制度の仕組み・要件・メリット・デメリットを横浜の弁護士が解説

配偶者居住権とは?制度の仕組み・要件・メリット・デメリットを横浜の弁護士が解説

配偶者居住権とは?制度の仕組み・要件・メリット・デメリットを横浜の弁護士が解説

配偶者居住権とは?制度の仕組み・要件・メリット・デメリットを横浜の弁護士が解説

「夫(妻)が亡くなっても、今の家に住み続けられるか不安だ」「子どもたちとの遺産分割で、自宅を失ってしまうかもしれない」――そのような不安を抱える配偶者の方は少なくありません。こうした問題に対応するため、2020年4月1日に「配偶者居住権」制度が施行されました。この制度をうまく活用すれば、住居と生活資金を両立できる可能性が広がります。本記事では、配偶者居住権の仕組み・要件・メリット・デメリットを整理したうえで、遺産分割での活用方法についても解説します。

配偶者居住権とはどのような権利か(民法第1028条)

配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物に残された配偶者が終身にわたって無償で居住し続けられる権利です。2018年の民法改正(平成30年法律第72号)によって新設され、2020年4月1日以降に開始した相続から適用されています(民法第1028条)。

従来は配偶者が自宅に住み続けるためには建物の所有権を取得する必要があり、不動産価値が高い場合には預貯金などをほとんど受け取れないという問題が生じていました。配偶者居住権は「住む権利(居住権)」と「所有権」を分離することで、この問題を解消しようとするものです。

たとえば、4,000万円の自宅と2,000万円の預貯金がある場合、子と2分の1ずつ相続すると従来は配偶者が自宅を取得すると生活資金をほぼ受け取れませんでした。配偶者居住権(評価額2,000万円)を設定し所有権(1,000万円)を子に渡すことで、配偶者は居住権と預貯金の両方を確保できる場合があります。

配偶者居住権が成立するための要件

配偶者居住権は、以下の要件をすべて満たした場合に成立します。

① 法律上の配偶者であること

配偶者居住権を取得できるのは、戸籍上の配偶者(婚姻届を提出した夫または妻)に限られます。内縁関係のパートナーは対象外です。

② 相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと

死亡時点で被相続人が所有していた建物に実際に居住していることが必要です。別居していた場合や、建物を被相続人以外の者と共有していた場合は適用されません(民法第1028条第1項ただし書き)。

③ 遺産分割・遺贈・死因贈与などによって取得すること

遺産分割協議・審判(民法第1028条第1項第1号)、遺贈(同条第2号)、死因贈与(民法第554条)のいずれかによって取得します。自動的に発生する権利ではなく、「配偶者居住権を設定する」という明示的な意思表示が必要です。

配偶者短期居住権との違い(民法第1037条)

配偶者の居住を保護する制度としては、配偶者居住権のほかに「配偶者短期居住権」があります(民法第1037条)。両者は異なる制度ですので、整理しておきましょう。

比較項目 配偶者居住権 配偶者短期居住権
根拠条文 民法第1028条〜第1036条 民法第1037条〜第1041条
取得方法 遺産分割・遺贈・死因贈与(意思表示が必要) 要件を満たせば当然に発生(意思表示不要)
存続期間 原則として終身(配偶者の死亡まで) 遺産分割確定日または相続開始から6か月のうち遅い日まで
登記 登記可能(対抗要件) 登記不可
目的 長期的な居住の確保 遺産分割が完了するまでの暫定的な居住保護

配偶者短期居住権は、遺産分割が終わるまでの「つなぎ」として当然に発生する権利です。一方、配偶者居住権は長期にわたる居住を確保するものであり、積極的に設定する手続きが必要です。遺産分割で配偶者居住権を活用するかどうかは、相続財産の内容や家族の状況を踏まえた慎重な検討が求められます。

配偶者居住権の設定方法と登記

配偶者居住権を設定するには、主に次の2つの方法があります。

方法①:遺産分割協議または審判

相続人全員の協議によって設定できます。協議が整わない場合は家庭裁判所の遺産分割審判によって設定される場合があります(民法第1029条)。審判での設定は、建物所有者となる相続人の不利益が大きくないと認められる場合に限られます。

方法②:遺言による遺贈

被相続人が遺言で配偶者居住権を遺贈することもできます(民法第1028条第1項第2号)。事前に遺言書を作成しておけば、相続人間の協議なしに配偶者居住権を設定できます。

登記の重要性

配偶者居住権を第三者に対抗するためには登記が必要です(民法第1031条)。所有権を取得した相続人は配偶者に対して登記への協力義務を負います。登記は建物のみ可能で、土地は対象外です。登録免許税は建物の固定資産税評価額の0.2%です。

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権を活用することで、主に次のようなメリットが期待できます。

メリット①:住居と生活資金を両立できる

所有権と居住権を分離することで、配偶者は自宅に住み続けながら預貯金などの生活資金も取得できる可能性があります。高齢の配偶者にって住居の安定と老後の生活費確保を同時に実現できる点が最大のメリットです。

メリット②:配偶者の生活基盤を遺言で確保できる

被相続人が生前に遺言で配偶者居住権を設定しておけば、相続人間の協議なしに配偶者の居住を保護できます。相続人間で不仲が予想される場合や、配偶者と子が前妻・後妻との間に生まれた関係にある場合に特に有効です。また、居住権と所有権に財産価値を分散させることで、相続税計算上の評価額を抑えられる場合もあります(評価方法は複雑なため税理士への確認が必要です)。

配偶者居住権のデメリット・注意点

一方で、配偶者居住権にはいくつかの重要な注意点があります。

注意点①:譲渡・担保設定ができない

配偶者居住権は第三者への譲渡や担保設定ができません(民法第1032条第2項)。急に資金が必要になっても売却・現金化はできない点に注意が必要です。

注意点②:修繕費等は配偶者が負担

配偶者は建物の通常の必要費(修繕費等)を負担する義務を負います(民法第1034条第1項)。老朽化した建物の修繕費は配偶者が負担することになる点を考慮する必要があります。

注意点③:第三者への転貸には所有者の承諾が必要

居住建物の一部を第三者に使用させる(転貸等)には、所有者の承諾が必要です(民法第1032条第3項)。将来的に他者と同居したり、一部を貸し出したりする計画がある場合は事前に確認が必要です。

注意点④:存続期間中は建物を売却しにくい

配偶者居住権が登記されている建物は、所有権者であっても自由な処分が制約されるた、市場での売却が難しくなる傾向があります。所有権を取得した子などの相続人にとって、将来の建物活用に支障が生じる可能性がある点を事前に話し合っておくことが重要です。

注意点⑤:遺留分との関係に注意が必要

配偶者居住権も遺留分計算上の財産的価値を持ちます。遺言で配偶者に居住権を遺贈する場合、他の相続人の遺留分を侵害してうないか、遺産構成全体を確認することが重要です。遺留分侵害額請求の対象となり、想定外の紛争に発展する場合があります。

遺産分割における配偶者居住権の活用場面

配偶者居住権が特に役立つのは、次のような場面です。

第一に、自宅の価値が高く不動産が遺産の大部分を占める場合です。配偶者が所有権を取得すると生活資金が不足しがちなケースで、居住権と生活資金の両立が図れます。第二に、配偶者と子(特に前妻・後妻との間の子)の関係が良くない場合や、将来的に自宅を売却したい子と住み続けたい配偶者との利害が対立しやすい場合です。遺言で事前に設定しておくことで、相続後の紛争リスクを低減できる場合があります。

第三に、高齢の配偶者が施設入居を将来的に検討している場合です。入居後に当事者間の合意で配偶者居住権を消滅させれば、所有者が建物を活用・売却できる場合があります。いずれの場面でも、制度の選択は相続財産の内容や家族関係、税務上の影響などを踏まえ、横浜の弁護士に相談しながら慎重に進めることをお勧めします。

【ポイント整理】配偶者居住権の主な特徴
・2020年4月1日以降の相続に適用(民法第1028条)/戸籍上の配偶者のみ対象
・遺産分割協議・遺言・審判で設定(自動成立ではない)
・原則として終身存続、登記で第三者対抗可能
・譲渡・担保設定は不可、修繕費は配偶者負担
・遺留分計算に影響するため遺言設定時は要注意

まとめ:配偶者居住権の活用は弁護士への相談が重要

配偶者居住権は、高齢の配偶者の生活基盤を守るために有用な制度です。しかし効果を最大化するには、相続財産全体のバランス・税務評価・他の相続人との関係・遺留分への影響を総合的に検討する必要があります。

特に、遺産分割協議の中で配偶者居住権をめぐって対立が生じる場合や、遺言の内容が遺留分を侵害していると主張される場合には、法的なサポートが不可欠です。配偶者居住権の評価額の算定や遺産分割協議書への適切な記載方法、遺留分侵害額請求への対応まで、弁護士が関与することで紛争の予防や早期解決につながります。相続問題は感情が絡む分、早めに専門家へ相談することが、ご自身と家族を守る近道です。

配偶者居住権・相続でお困りの方はご相談ください

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。配偶者居住権の設定方法や遺産分割協議の進め方、遺留分との関係など、具体的な事情に沿ったアドバイスを提供いたします。横浜を中心に、相続問題でお悩みの方からのご相談をお待ちしております。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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