Google検索結果に表示される誹謗中傷を削除する方法|「忘れられる権利」と仮処分申立てを弁護士が解説
Google検索結果に表示される誹謗中傷を削除する方法|「忘れられる権利」と仮処分申立てを弁護士が解説
名誉を傷つける投稿を削除してもらったはずなのに、Google検索には何年も前の書き込みが表示され続けている——そのような状況に頭を抱えている方は決して少なくありません。誹謗中傷の書き込みは、掲示板やSNSから削除された後も、Googleなどの検索エンジンがキャッシュやスニペットとして保持し続けることがあります。また、過去の逮捕歴・訴訟記録・個人情報が検索上位に何年も表示され続け、就職や人間関係に深刻な影響を与えているケースも後を絶ちません。
欧州では「忘れられる権利(Right to be Forgotten)」として検索事業者への削除請求が法的に整備されています。では、日本ではどのような法的手段が認められているのでしょうか。本記事では、最高裁判例に基づく削除基準から、Googleへの自己申請の手順、弁護士を通じた仮処分申立てまで、実務的な手順をわかりやすく解説します。
「忘れられる権利」は日本で認められるか?
「忘れられる権利」とは、インターネット上に残る過去の情報の削除を請求できる権利です。欧州では2018年施行のGDPR(一般データ保護規則)第17条に明文化されており、EU域内であれば検索事業者に対して削除を請求する権利が保障されています。
日本には、2026年5月現在、「忘れられる権利」を直接明文化した法律は存在しません。しかし最高裁は、検索結果の削除請求について、プライバシー権(「公表されない法的利益」)に基づく請求として認める余地があることを示しています。日本における主な法的根拠は次の3つです。
- 民法709条(不法行為):検索結果の表示がプライバシー権・名誉権を侵害する場合、不法行為に基づく損害賠償・差止請求の対象となりえます。
- 人格権(差止請求):プライバシー権・名誉権は人格権の一部として保護され、侵害が継続する場合には差止請求ができます。
- 情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法):2025年4月1日に施行された同法により、大規模なプラットフォーム事業者には削除申出への原則7日以内の対応が義務づけられました。
情プラ法の施行によって、大規模事業者への削除対応は加速しています。ただし、Googleの検索結果への情プラ法の適用範囲については実務上の解釈が積み重ねられている段階であり、自己申請だけで解決できないケースも多く存在します。
最高裁が示したGoogle検索結果削除の判断基準
日本における検索結果削除の先例として重要なのが、最高裁平成29年(2017年)1月31日決定です。この事案は、逮捕歴のある人物が自身の逮捕に関する検索結果の削除を求めたもので、最高裁として初めて検索結果削除に関する判断を示しました。
最高裁は「忘れられる権利」という概念を正面から採用することなく、「当該事実を公表されない法的利益」というプライバシー権の枠組みで判断し、次のような比較衡量の基準を示しました。
削除が認められるためには、「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」でなければならないとし、以下の要素を総合的に考慮するとされています。
- 掲載されている情報のプライバシー性(公開によって生じる被害の深刻さ)
- 情報の公共性・公益性の程度
- 情報が掲載された経緯や現在の状況
- 検索結果として提供されることの必要性・有益性
つまり、単に「不快だ」「恥ずかしい」という理由だけでは削除は認められず、プライバシー侵害が顕著で、かつ公共性が乏しいと認められる場合に初めて削除請求が認められる余地があるという判断です。
実務的には、根拠のない誹謗中傷(名誉毀損・侮辱に当たる内容)、過去の軽微な犯罪歴、性犯罪被害者の氏名・写真などは削除が認められやすい傾向があります。一方、公人の公的活動に関する批判的記事や、社会的関心が高い事件の当事者情報は削除されにくいといえます。
Googleへの自己申請の手順と限界
まずはGoogleへの直接申請を試みることが最初のステップです。Googleは複数の削除申請フォームを公開しており、以下のようなケースで申請が可能です。
- 住所・電話番号・クレジットカード番号などの個人情報が含まれる場合
- リベンジポルノ・性的画像が無断で掲載されている場合
- 著作権侵害コンテンツが表示されている場合
- 名誉毀損に当たるコンテンツが掲載されている場合(審査ハードルは高め)
申請はGoogleの「法律に基づく削除申請フォーム(Google Legal Help)」から行い、削除を求めるURLと理由、必要に応じて本人確認書類を提出します。審査は数日〜数週間かかり、結果はメールで通知されます。
弁護士による仮処分申立て──より確実なGoogle検索結果の削除方法
自己申請で対応できない場合、弁護士を通じて裁判所に仮処分(民事保全法に基づく「仮の地位を定める仮処分」)を申し立てる方法があります。
仮処分は本訴訟に先立って行う暫定的な措置で、「今すぐ検索結果を削除しなければ回復困難な損害が生じる」という緊急性がある場合に活用されます。本訴訟の確定には年単位の時間を要することがあるため、その間も検索結果が表示され続けることを防ぐための制度です。
申立書では、次の3点を主張・疎明する必要があります。
- 被保全権利の存在:検索結果の表示がプライバシー権・名誉権を侵害していること
- 違法性阻却事由がないこと:表現の自由・公益性・事実の真実性によって正当化されないこと
- 保全の必要性:検索結果が表示され続けることで、本案判決の確定を待てないほど回復困難な損害が生じること
申立先は申立人の住所地等を管轄する地方裁判所となり、裁判官との審尋(面談)が実施されます。相手方(Google LLC)の代理人が審問に出席するケースもあります。仮処分命令が発令されると、Googleは検索結果から対象URLを削除する義務を負います。
なお、情プラ法施行後は、弁護士が同法上の削除申出手続きと仮処分申立てを組み合わせて対応するケースが増えています。プラットフォームへの削除申出→不応の場合に仮処分申立て、という流れが実務上定着しつつあります。
仮処分の流れ・費用・期間の目安
手続きの流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①相談・証拠収集 | 弁護士に相談し、スクリーンショット等の証拠を収集・保全する |
| ②申立書作成 | 弁護士が申立書・証拠説明書・疎明資料を作成し、裁判所に提出 |
| ③審尋 | 裁判官がGoogleの代理人(または申立人のみ)と面談し事実関係を確認 |
| ④仮処分命令 | 裁判所が命令を発令。担保金(保証金)の提供が求められる場合あり |
| ⑤削除実施 | GoogleがGoogleの検索結果から対象URLを削除 |
費用の目安
弁護士費用は事務所によって異なりますが、着手金20〜40万円程度、成功報酬10〜30万円程度が一般的な目安です。これとは別に、裁判所から命じられる担保金(数十万円程度)が必要になる場合があります。
期間の目安
申立から仮処分命令の発令まで、1〜3か月程度を要するケースが多いです。ただし、事案の緊急性や裁判所の判断によってはより早期に対応されることもあります。
削除が認められにくいケース
以下のようなケースでは、仮処分・自己申請ともに認められにくい傾向があります。あらかじめ把握しておくことで、現実的な対応策を検討できます。
- 政治家・経営者・著名人など公人の公的活動に関する批判的記事
- 現在も社会的関心が高い事件・事故の当事者情報
- 新聞社・通信社・公的機関による事実に基づいた報道記事
- 顧客による経営者・事業者への正当な批判(口コミ・レビュー等)
- 刑事事件の公判記録や確定した裁判情報
一方、削除が認められやすいのは、①明らかに根拠のない誹謗中傷(侮辱・名誉毀損に当たる内容)、②高いプライバシー性を有し公益性のない個人情報、③性犯罪被害者の氏名・写真・映像——といったケースです。自身の状況がどちらに当たるかは、弁護士に相談して見極めることが重要です。
まとめ——Google検索結果の誹謗中傷は早期対応が重要
Google検索結果に誹謗中傷や不本意な情報が表示され続けることは、名誉・プライバシー・日常生活に深刻な影響を与えます。日本には「忘れられる権利」を明文化した法律はありませんが、最高裁の比較衡量基準やプライバシー権・名誉権に基づく仮処分申立てという法的手段が確立されています。
対処の手順としては、まずGoogleへの直接申請を試み、認められない場合は弁護士に相談して仮処分の検討を進めることが現実的です。その際、証拠保全(スクリーンショット等)は早期に行い、検索結果が変化する前に記録しておくことが不可欠です。
ネット上の情報は一度拡散してしまうと回収が極めて困難になります。検索結果に誹謗中傷が表示されていることに気づいた時点で、できるだけ早く専門家に相談されることをお勧めします。
Google検索結果の誹謗中傷・プライバシー情報の削除でお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。Google検索結果への仮処分申立てや情プラ法に基づく削除申出についても、お気軽にご相談ください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案については、弁護士にご相談ください。