遺留分とは?遺留分侵害額請求ができる人・割合・計算方法を弁護士が解説
2026/05/05
遺留分とは?遺留分侵害額請求ができる人・割合・計算方法を弁護士が解説
「遺言書に自分の相続分がほとんど記載されていなかった」「生前に特定の相続人だけが多額の贈与を受けていた」――そのような状況で、残された相続人の方が「これは不公平ではないか」と感じるのは自然なことです。しかし、遺言書がある以上、その内容に従うしかないのかと諦めてしまっている方も少なくありません。
実は、一定の相続人には「遺留分(いりゅうぶん)」という権利が法律上保障されており、遺言の内容がどれだけ偏っていても、最低限の取り分を請求できる場合があります。本記事では、遺留分の基本的な意味から、請求できる人の範囲、割合の計算方法、そして実際の請求手続きの流れまで、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。
遺留分とは?令和元年改正で「侵害額請求」に変わった背景
遺留分とは、一定の相続人に対して民法が保障する「最低限の相続財産の取り分」のことです。被相続人(亡くなった方)は遺言によって自由に財産の分配を決めることができますが、遺留分はその遺言の効力を一部制限し、特定の相続人の生活保障を目的として設けられた制度です(民法第1042条以下)。
かつては「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」と呼ばれ、遺留分を侵害された財産そのものを取り戻すことができる制度でした。しかし、不動産などの財産が共有状態になるなどの問題が生じることから、令和元年(2019年)7月1日施行の改正民法により、「遺留分侵害額請求」へと変更されました。現在の制度では、遺留分を侵害している相手方に対し、財産そのものではなく金銭での支払いを請求する仕組みとなっています。
遺留分侵害額請求ができる人(遺留分権利者)の範囲
遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。民法が遺留分権利者として定めているのは、次の相続人に限られます。
- 配偶者(内縁関係には認められません)
- 子・孫など直系卑属(子が先に亡くなっている場合は代襲相続人である孫など)
- 父母・祖父母など直系尊属(子がいない場合に限る)
一方、兄弟姉妹および甥・姪には遺留分は認められません(民法第1042条)。相続人であっても兄弟姉妹には遺留分請求権がない点は、実務上よく誤解されるポイントですので注意が必要です。
また、相続放棄をした場合や、相続欠格・廃除に該当する場合は遺留分権利者とはなれません。
遺留分の割合一覧|相続人の組み合わせ別にわかりやすく整理
遺留分の割合は、まず「総体的遺留分」(遺産全体に対する遺留分の割合)を求め、次にそこに各自の法定相続分を乗じて「個別的遺留分」を算出します。
総体的遺留分は以下のとおりです(民法第1042条)。
- 相続人が直系尊属のみの場合:遺産の 3分の1
- 上記以外の場合(配偶者・子が含まれる場合など):遺産の 2分の1
ケース別の個別的遺留分(各相続人が請求できる割合)をまとめると以下のとおりです。
| 相続人の構成 | 配偶者の遺留分 | 子(全員合計)の遺留分 | 直系尊属(全員合計)の遺留分 |
|---|---|---|---|
| 配偶者のみ | 遺産の1/2 | ― | ― |
| 子のみ | ― | 遺産の1/2 | ― |
| 配偶者+子 | 遺産の1/4 | 遺産の1/4 | ― |
| 配偶者+直系尊属 | 遺産の1/3 | ― | 遺産の1/6 |
| 直系尊属のみ | ― | ― | 遺産の1/3 |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 遺産の1/2 | ― | ―(兄弟姉妹に遺留分なし) |
子や直系尊属が複数人いる場合は、合計の遺留分を頭数で均等に分けることが原則です(遺留分権利者間で特別受益がある場合は調整が入ります)。
遺留分侵害額の計算方法をステップで解説
遺留分侵害額請求で実際に請求できる金額は「遺留分侵害額」であり、単に遺産全体に遺留分割合を乗じるだけでは算出できません。以下の手順で計算します。
ステップ1:遺留分算定の基礎財産を求める
遺留分算定の基礎となる財産は、次の計算式で求めます。
基礎財産 = 相続開始時の積極財産(プラスの財産)+ 加算される贈与の額 - 相続債務の額
加算される贈与とは、相続人以外への贈与は相続開始前1年以内のもの、相続人への贈与(生計の資本等)は相続開始前10年以内のものが対象となります(民法第1044条)。ただし、当事者双方が遺留分権利者を害することを知って行った贈与はこの期間制限がありません。
ステップ2:遺留分額を算出する
基礎財産に個別的遺留分割合を乗じて、自分の「遺留分額」を計算します。
遺留分額 = 基礎財産 × 個別的遺留分割合
ステップ3:遺留分侵害額を算出する
遺留分額から、自分がすでに受け取った(または受け取れる)財産を控除し、承継する債務を加算します(民法第1046条)。
遺留分侵害額 = 遺留分額 - (遺贈・特別受益として受け取った財産額 + 相続分として取得できる遺産額) + 承継する債務額
実際の計算では、不動産の評価方法や特別受益の認定などで当事者間に争いが生じることが多く、専門家のサポートが重要です。
遺留分侵害額請求の手続きの流れ
遺留分侵害額請求は、相手方(遺留分を侵害している受遺者や受贈者)への意思表示から始まります。
①内容証明郵便による請求
まず、遺留分侵害額の支払いを求める意思表示を内容証明郵便で相手方に送付します。この時効中断の観点からも、書面による請求は早急に行うことが大切です。金額の合意が成立すれば、合意書(示談書)を作成して解決します。
②遺留分侵害額請求調停
相手方が支払いに応じない場合や、金額について折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てます。調停委員を交えた話し合いで解決を目指します。
③遺留分侵害額請求訴訟
調停が不成立に終わった場合は、地方裁判所(請求額により簡易裁判所)に遺留分侵害額請求訴訟を提起することになります。判決や和解により最終的な解決が図られます。
遺留分侵害額請求には時効がある|1年と10年の2つの期限
遺留分侵害額請求権には時効があり、期限を過ぎると権利が消滅します(民法第1048条)。
- 1年の時効(消滅時効):相続の開始および遺留分を侵害する遺贈・贈与があったことを知った時から1年間行使しないと時効により消滅します。
- 10年の除斥期間:相続開始から10年が経過すると、知る・知らないにかかわらず権利が消滅します。
特に1年の時効は注意が必要です。相続開始を知った日から遺言の内容を認識したのであれば、そこから1年以内に請求を行わなければなりません。内容証明郵便を送付することで時効を中断(更新)させることができますので、時効が迫っている場合は速やかに行動することが重要です。
まとめ:遺留分問題は早期に弁護士へ相談を
遺留分侵害額請求は、不公平な遺言や生前贈与によって遺産を十分に受け取れなかった相続人を守るための重要な権利です。しかし、基礎財産の計算・特別受益の認定・不動産評価など、実際の請求額を正確に算出するためには専門的な知識が必要です。また、時効という厳格な期限も設けられており、対応を先延ばしにするほど選択肢が狭まるリスクがあります。
横浜で相続問題や遺留分侵害額請求に関してお悩みの方は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。弁護士に依頼することで、適正な請求額の算出、相手方との交渉、調停・訴訟への対応まで一貫したサポートを受けることができ、精神的な負担を大幅に軽減できる場合があります。
遺留分侵害額請求についてご不安な方へ
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