LINEグループ・オープンチャットの誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
2026/05/04
LINEグループ・オープンチャットの誹謗中傷への法的対処法|削除申請・発信者情報開示・損害賠償を弁護士が解説
「LINEのグループで自分の悪口が書かれているらしい」「オープンチャットに根も葉もない嘘を投稿された」――LINEは日本で最も利用者数の多いメッセージアプリであり、その分、誹謗中傷の被害が起きやすい場でもあります。身近なツールだからこそ、加害者も軽い気持ちで書き込んでしまいがちですが、書かれた側には深刻な精神的ダメージが残ります。
しかし、「LINEは閉じたコミュニティだから法的に対処できないのでは?」と思い、泣き寝入りしている方も少なくありません。本記事では、LINEグループチャットとオープンチャットそれぞれの法的な違いをふまえたうえで、削除申請・発信者情報開示請求・損害賠償請求の具体的な方法を弁護士の視点からわかりやすく解説します。
LINEグループチャットとオープンチャットの違い——法的に重要なポイント
LINEを介した誹謗中傷への対応を考えるとき、まず「どのサービスで書かれたか」を正確に把握することが非常に重要です。なぜなら、LINEグループチャット(通常のグループトーク)とLINEオープンチャットとでは、法的な扱いが大きく異なるからです。
LINEグループチャット(通常のグループトーク)の場合
通常のLINEグループトークは、招待されたメンバーだけが参加・閲覧できるクローズドな空間です。名誉毀損罪(刑法230条)や民事上の名誉毀損が成立するには「公然性」——不特定または多数の人が知りえる状態——が要件の一つとなります。
グループの人数が少なく、特定の関係者のみで構成されている場合、裁判所は公然性を認めないことがあります。ただし、グループ内の誰かがスクリーンショットを拡散する可能性がある場合や、グループ参加者が不特定多数に近い場合には「伝播可能性」が認められ、公然性が肯定されることもあります。また、プライバシー侵害や侮辱行為については、公然性がなくても民事上の不法行為(民法709条)が成立しうるケースがあります。
さらに、発信者情報開示請求の観点からも重要な問題があります。通常のLINEグループトークは「特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」と判断される可能性があり、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)が適用される「特定電気通信」に該当しないと判断される場合があります。その場合、法律上の発信者情報開示請求の枠組みが使えず、投稿者特定が困難になります。
LINEオープンチャットの場合
一方、LINEオープンチャットは最大5,000人が匿名で参加できる、不特定多数に向けた公開型の掲示板に近いサービスです。参加者は匿名のニックネームで投稿でき、URLを知っていれば誰でも参加できる仕様になっています。
この「不特定多数による受信を目的とした電気通信」という性質から、LINEオープンチャットは情プラ法(旧プロバイダ責任制限法)の「特定電気通信」に該当すると解されています。したがって、名誉毀損の公然性も認められやすく、発信者情報開示請求の手続きを利用することができます。
通常のLINEグループ:参加メンバーが限定的 → 公然性・発信者情報開示請求の適用に障壁あり
LINEオープンチャット:不特定多数が閲覧可能 → 公然性が認められやすく、発信者情報開示請求の対象となりやすい
LINEでの誹謗中傷——まず取るべき初動対応
被害を発見した直後の行動が、その後の法的手続きの成否を左右します。以下の初動対応を速やかに行ってください。
証拠の保全
まず最優先すべきは証拠の確保です。問題の投稿が含まれるトーク画面全体(投稿日時・投稿者名・本文が確認できる状態)をスクリーンショットで保存してください。スクリーンショットを撮る際は、日時が表示されているか、投稿が前後の文脈ごと確認できるか、をチェックしましょう。スマートフォンの日時設定を正確にしておくことも重要です。
オープンチャットの場合は、投稿のURLも控えておきましょう。後の手続きで参照先として必要になります。
通報・削除申請
LINEには、ガイドライン違反の投稿を報告する仕組みが設けられています。問題の投稿を長押し(または右クリック)し、「通報」を選択することで、LINEの運営(LINEヤフー株式会社)に報告できます。特にオープンチャットは情プラ法の対象となっているため、運営は受け付けた削除申請に対して一定期間内に対応することが求められています。ただし、通報したからといって必ずしも削除されるわけではなく、内容によっては対応されないケースもあります。
弁護士への早期相談
LINEのログデータ(IPアドレスや通信記録)の保存期間は、一般に3〜6ヶ月程度とされています。発信者情報開示請求によって投稿者を特定するためにはこのログが不可欠ですが、保存期限を過ぎると取得できなくなります。被害に気づいたら、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
LINEオープンチャットでの発信者情報開示請求の手続き
匿名で書き込まれた誹謗中傷について投稿者を特定したい場合は、発信者情報開示請求(情プラ法に基づく開示命令申立を含む)の手続きを進めることになります。手続きは大きく2段階に分かれます。
第1段階:LINEヤフーへのIPアドレス等の開示請求
まず、LINEオープンチャットを運営するLINEヤフー株式会社に対して、問題の投稿に紐づくIPアドレスおよびタイムスタンプ(投稿日時)の開示を求めます。2022年の改正プロバイダ責任制限法の施行(情プラ法の前身)により、裁判所に「発信者情報開示命令」の申立てを行うことで、かつては2回に分かれていた手続きを1つの非訟手続きにまとめられるようになりました。
LINEヤフーは原則として発信者の同意なしには情報を開示しませんが、裁判所の命令が出た場合はこれに従います。
第2段階:プロバイダへの契約者情報の開示請求
IPアドレスとタイムスタンプが取得できたら、次にそのIPアドレスを管理するインターネットプロバイダ(ISP)に対して、契約者の氏名・住所等の開示を求めます。プロバイダも原則として任意開示には応じないため、裁判所を通じた開示命令申立が必要です。
発信者情報開示命令の手続きでは、LINEヤフーへの請求とプロバイダへの請求を1つの事件として一体的に進めることが可能です(情プラ法上の「提供命令」の制度を活用)。これにより、従来よりも迅速に投稿者を特定できるようになっています。
| 手続き | 相手方 | 取得できる情報 |
|---|---|---|
| 第1段階 | LINEヤフー株式会社 | IPアドレス・投稿日時(タイムスタンプ) |
| 第2段階 | インターネットプロバイダ(ISP) | 契約者の氏名・住所・メールアドレス等 |
LINEヤフーが保存するIPアドレスやタイムスタンプのログは、一般的に3〜6ヶ月程度で削除されます。被害を発見したらすぐに弁護士へ相談し、早急にログの保存申請と開示請求の準備を進めることが重要です。
LINEグループチャットでの誹謗中傷——対処法の現実
通常のLINEグループトーク内での誹謗中傷は、発信者情報開示請求が困難なケースがあることは前述のとおりです。しかし、法的な手段が全くないわけではありません。
グループメンバーに心当たりがある場合
書いた人物にすでに心当たりがある場合は、内容証明郵便で削除要求・謝罪要求・損害賠償請求を行うことができます。書き込みの内容が侮辱的・プライバシー侵害的であれば、民法709条に基づく不法行為として損害賠償請求(慰謝料請求)が可能です。
グループ管理者へのスクリーンショット入手協力の依頼
グループの管理者が知人や同僚であれば、問題の投稿のスクリーンショット提供に協力してもらえる場合があります。これにより投稿者が特定できれば、民事・刑事両面で対応が可能になります。
警察への相談
誹謗中傷の内容が名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)、脅迫罪(刑法222条)などに該当する可能性がある場合には、警察への相談も選択肢です。刑事事件化することで、捜査機関がLINEヤフーに対して通信記録の提供を求めることができます。
投稿者を特定した後の対応——損害賠償請求と示談交渉
発信者情報開示請求によって投稿者の氏名・住所が判明したら、いよいよ損害賠償請求(慰謝料請求)の段階に進みます。
内容証明による損害賠償請求
まずは弁護士名義で内容証明郵便を送付し、一定の金額の賠償と書き込みの削除を求めるのが一般的な流れです。相手が応じる場合は示談(和解)で解決します。示談書には、口外禁止条項(再び誹謗中傷しない旨の誓約)などを盛り込むことで、再被害を防ぐ効果も期待できます。
裁判(損害賠償請求訴訟)
相手が応じない場合や、被害が重大で相応の賠償額を求める場合には、民事訴訟に移行します。ネット誹謗中傷に関する慰謝料の認容額は、投稿の内容・拡散の程度・被害者の社会的地位・精神的ダメージなどによって異なりますが、数十万円から数百万円に及ぶ事例もあります。
刑事告訴
特に悪質な場合や、民事での解決が困難な場合には、名誉毀損罪・侮辱罪での刑事告訴も検討に値します。2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられ(拘禁刑1年以下または30万円以下の罰金等)、厳罰化が図られています。刑事手続きを進めることが、相手に対する抑止力として機能することもあります。
LINEでの誹謗中傷対応における情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法)の影響
2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、旧プロバイダ責任制限法を大幅に改正したものです。LINEオープンチャットのように不特定多数に情報を送信するサービスは「特定電気通信役務提供者」として同法の規制対象となります。
主な改正点として、特定の規模以上の事業者(大規模特定電気通信役務提供者)は削除申請を受けた場合に一定期間内(原則として受付後7日以内)で対応することが求められるようになりました。また、削除対応の判断基準の公表や、開示請求への対応手続きの整備も義務化されています。これにより、被害者にとっては以前よりも迅速に削除申請の結果を得やすくなりました。
ただし、情プラ法の適用対象はあくまで「特定電気通信」によるものに限られます。前述のように、通常のLINEグループトークはこの「特定電気通信」に該当しないと判断される可能性があるため、適用範囲には注意が必要です。
まとめ——LINEでの誹謗中傷は早期に専門家へ相談を
LINEでの誹謗中傷への対応は、グループチャットかオープンチャットかによって取りうる法的手段が大きく異なります。特にオープンチャットでは、発信者情報開示請求によって匿名の投稿者を特定し、損害賠償請求まで進むことが十分に可能です。
一方で、発信者情報開示請求に必要なログデータには保存期限があり、被害を放置するほど手続きが困難になります。「自分だけの問題」「大げさかもしれない」と感じていても、法的に対処できる可能性は十分ありますので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談することで、あなたのケースに応じた最適な対応方針(削除申請のみで済むか、開示請求・損害賠償まで進めるべきか)を具体的に把握することができます。費用や手続きの流れについても、初回の相談時に確認しておきましょう。
LINEでの誹謗中傷・悪口書き込みにお悩みの方へ
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。LINEグループ・オープンチャットでの誹謗中傷についても、お早めにご相談いただくことで、より多くの選択肢をご提案できます。オンライン相談にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案については、弁護士にご相談ください。