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限定承認とは?単純承認・相続放棄との違いと手続きの流れを弁護士が解説

限定承認とは?単純承認・相続放棄との違いと手続きの流れを弁護士が解説

限定承認とは?単純承認・相続放棄との違いと手続きの流れを弁護士が解説

限定承認とは?単純承認・相続放棄との違いと手続きの流れを弁護士が解説

限定承認とは?単純承認・相続放棄との違いと手続きの流れを弁護士が解説

「亡くなった親に借金があるらしいが、どれだけあるのか分からない。財産も多少は残っているようだが、相続すると借金まで引き継いでしまうのではないか」——このような不安を抱えて相続の手続きを検討されている方は少なくありません。相続には「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つの選択肢がありますが、財産と借金のどちらが多いか判断がつかない場合、限定承認という選択肢が有効な手段となる場合があります。

本記事では、限定承認の基本的な仕組みから、単純承認・相続放棄との違い、手続きの具体的な流れ、そして見落とされがちな税務上のリスクまで、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。限定承認は手続きが複雑で専門家のサポートが不可欠な手続きですので、ぜひ最後までお読みください。

限定承認とは?民法922条の基本ルール

限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でのみ被相続人(亡くなった方)の借金を返済することを条件として、相続を承認する制度です。民法第922条に「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」と定められています。

つまり、プラスの財産の範囲でのみ借金を引き受けるという「条件付きの相続」です。仮に相続した財産が100万円で、借金が300万円あったとしても、返済義務は100万円に限定され、残りの200万円については相続人が自腹で払う必要はありません。一方、プラスの財産が借金を上回る場合は、その差額(プラス分)を相続人が受け取ることができます。

単純承認・相続放棄・限定承認の3択を整理する

相続人は、相続が開始したことを知った日から原則3か月以内(民法第915条第1項の「熟慮期間」)に、次の3つのいずれかを選択しなければなりません。

選択肢 内容 借金の引き継ぎ プラス財産の取得
単純承認 プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ 全額引き継ぐ 全部取得可
相続放棄 相続人の地位を完全に放棄する 一切引き継がない 取得不可
限定承認 相続財産の範囲内でのみ借金を返済する 相続財産の範囲内のみ 余剰分を取得可

単純承認は何も手続きをしないと自動的に選択される扱いになり(法定単純承認:民法第921条)、相続放棄は各相続人が単独で申述できます。これに対して限定承認は、相続人全員が共同して申述しなければなりません(民法第923条)。一人でも反対する相続人がいると、限定承認を選ぶことはできない点が大きな特徴です。

限定承認が有効な3つのケース

限定承認は手続きが複雑である分、特定の状況では非常に有効な選択肢となります。具体的には次のようなケースが考えられます。

① 借金の全貌が不明な場合

被相続人が事業を営んでいたり、複数の金融機関から借入をしていたりする場合、相続開始直後の段階では借金の総額が把握できないことがあります。このような場合、単純承認を選んで後から多額の借金が発覚するリスクを避けるため、限定承認が有効な手段となる場合があります。

② 特定の財産(実家の不動産など)を手元に残したい場合

相続放棄をすると一切の財産を取得できなくなります。借金はあるものの、思い出の詰まった実家や特定の財産だけは手元に残したいという場合、限定承認を選んで「先買権」(民法第932条)を行使することで、相続人が時価で買い取る形で取得できる場合があります。

③ プラス財産がわずかに残る可能性がある場合

借金がプラス財産を上回りそうだが、精算後に若干の余剰が生じる可能性がある場合、相続放棄では取得できる財産はゼロとなります。限定承認であれば、余剰がある場合に相続人がそれを受け取ることができます。

限定承認の手続きの流れ

限定承認の手続きは、申述から清算の完了まで複数のステップがあり、全体で1年以上かかることも珍しくありません。主な流れは次のとおりです。

STEP1:相続人全員で合意する(熟慮期間内)

相続の開始を知った日から3か月以内に、相続人全員が限定承認を行うことに同意しなければなりません。なお、この3か月の期間は、必要があれば家庭裁判所に申し立てて延長(伸長)してもらうことも可能です(民法第915条第1項ただし書)。

STEP2:財産目録の作成と家庭裁判所への申述

相続財産の目録(不動産・預貯金・株式・借金等)を作成し、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「限定承認申述書」を提出します(民法第924条)。申述書のほか、申述人全員の戸籍謄本、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票除票等が必要です。

STEP3:家庭裁判所の審判・受理

裁判所から照会書が届き、回答後に審判が行われます。限定承認の申述が受理されると、受理通知書が送付されます。

STEP4:相続財産管理人による公告・清算手続き

限定承認が受理されると、相続人(または相続財産管理人)は官報に公告を行い、債権者に対して一定期間内に申し出るよう知らせます(民法第927条)。この公告期間は2か月以上必要です。その後、申し出た債権者に対して相続財産から順次弁済します。

STEP5:残余財産の分配

清算後に相続財産が残った場合は、相続人がその余剰分を取得します。逆に財産が不足した場合でも、相続人が自腹で補填する必要はありません。

【注意】相続人が複数いる場合、限定承認の受理後は「相続財産管理人」を選任する必要があります(民法第936条)。相続財産管理人は家庭裁判所が選任し、相続人が就任するのが一般的ですが、その管理・清算業務は非常に複雑です。

限定承認の大きなデメリット|みなし譲渡所得税の落とし穴

限定承認には、多くの方が見落としがちな重大なデメリットがあります。それが「みなし譲渡所得税」の問題です。

税制上、限定承認が行われると、被相続人が死亡した時点で「被相続人から相続人へ相続財産を時価で譲渡した」とみなされます(所得税法第59条第1項第2号)。これにより、被相続人が保有していた財産(特に不動産や株式)に含み益(取得時よりも値上がりした分)がある場合、その含み益に対して譲渡所得税が課税されることになります。

さらに、限定承認の場合は「親族間の譲渡」に関する税制上の特例(居住用財産の3,000万円特別控除など)の一部が適用できないため、通常の相続よりも税負担が重くなる可能性があります。このみなし譲渡所得税は被相続人の準確定申告(死亡した年の確定申告)として、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納付しなければならず、その税金も相続財産から支払うことになります。

不動産を長年保有していた場合や、株式に多額の含み益がある場合には、みなし譲渡所得税が高額となり、限定承認を選択したにもかかわらず実質的に手元に残る財産が想定より少なくなる場合があります。限定承認を検討する際には、事前に弁護士だけでなく税理士にも相談して、税負担を含めた総合的なシミュレーションを行うことが重要です。

限定承認の手続きで注意すべきその他のポイント

法定単純承認になる行為に注意

限定承認の申述前に相続人が「単純承認したとみなされる行為」(法定単純承認:民法第921条)を行ってしまうと、限定承認の選択肢が消えてしまいます。相続財産の処分・費消、財産目録への財産隠匿などが該当します。相続が発生したら、財産に手をつける前に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士費用の目安

限定承認の手続きを弁護士に依頼した場合、手続きの複雑さや財産の規模によって異なりますが、概ね50万円〜100万円程度となる傾向があります(相続放棄の場合は7万円前後が目安とされています)。費用は決して低くありませんが、手続きミスによるリスクを考えると、専門家への依頼が合理的な選択といえます。

相続放棄との選択基準

借金がプラスの財産を明らかに上回ることが確実な場合は、手続きの簡便さや費用面から相続放棄を選択する方が現実的な場合が多いと考えられます。限定承認は「財産と借金のどちらが多いか不明」「特定の財産は残したい」というケースで特に有効な手段となります。どちらを選ぶかは、財産の内容・規模・相続人全員の意向を踏まえて慎重に判断する必要があります。

まとめ|限定承認は弁護士への早期相談が不可欠

限定承認は、被相続人の財産状況が不明確な場合や特定の財産を手元に残したい場合に有効な選択肢ですが、相続人全員の合意が必要なこと、手続きが極めて複雑であること、みなし譲渡所得税という税務上のリスクがあることなど、多くの注意点があります。

また、3か月という熟慮期間は思いのほか短く、その間に財産調査・相続人全員との協議・専門家への相談をすべてこなす必要があります。横浜をはじめ全国各地で相続問題を扱う弁護士に早期に相談することで、自身のケースに最適な選択肢を見極め、手続きミスや税務上のトラブルを未然に防ぐことができます。「限定承認を選ぶべきか迷っている」「相続財産に借金がありそうで不安」という方は、まず弁護士に状況をお話しください。

限定承認・相続放棄の選択でお困りの方へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。限定承認・相続放棄・遺産分割など、相続に関するご相談を横浜を拠点に承っております。熟慮期間内に最適な判断ができるよう、早期のご相談をお勧めします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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