連帯保証人を求められた中小企業・経営者が知るべき民法改正の要点|横浜の弁護士が解説
連帯保証人を求められた中小企業・経営者が知るべき民法改正の要点|横浜の弁護士が解説
「銀行から融資を受ける際に、代表者個人の連帯保証を求められた」「取引先から保証人になるよう依頼された」——中小企業を経営していると、このような場面に遭遇することは少なくありません。しかし、保証契約は一度締結すると簡単には解除できず、主たる債務者が支払不能になれば保証人が多額の債務を負うことになります。
2020年4月1日に施行された改正民法(令和元年法律第44号)により、個人が保証人となる契約のルールが大きく変わりました。特に「極度額の設定義務」と「保証意思宣明公正証書の作成義務」は、保証契約の有効性を左右する重要な改正点です。知らないままでいると、いざという場面で保証契約が無効になったり、逆に想定外の多額の保証債務を負ったりするリスクがあります。
本記事では、2020年民法改正による個人保証に関する主要な変更点を、法務担当者のいない中小企業・個人経営者の方にもわかりやすく解説します。
1. 個人保証をめぐる法的リスクとは——改正前の問題点
従来の保証制度では、個人が「根保証(ねほしょう)」の保証人になった場合、理論上は無限に保証責任を負わされる可能性がありました。根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約のことで、賃貸借契約の保証人や会社の銀行融資に対する経営者保証などが典型例です。
たとえば、会社の代表者が銀行融資に個人保証をした場合、その後に会社が追加で融資を受けたり、利息が膨らんだりすると、当初は想定していなかった金額まで保証責任が拡大していくことがありました。こうした問題は、特に中小企業の経営者が会社の負債を個人破産という形で引き受けざるを得なくなるケースを生み出す一因となっていました。
こうした状況を改善するために民法が改正され、個人の保証人を保護するための規定が新たに設けられました。
2. 個人根保証における極度額の設定義務(民法第465条の2)
改正民法で最も重要な変更点の一つが、個人が根保証の保証人になる場合には、必ず「極度額」を書面(または電磁的記録)で定めなければならないという規定の新設です(民法第465条の2第1項・第2項)。
極度額とは、保証人が最終的に負担する債務の上限金額のことです。たとえば「極度額500万円」と定めれば、どれだけ元本・利息・損害金が積み上がっても、保証人が支払う必要があるのは最大500万円ということになります。
2020年の改正前は、この極度額の義務が課されていたのは「貸金等債務に関する根保証」(銀行借入等)に限られていました。しかし改正後は、個人が保証人となるすべての根保証契約に適用範囲が拡大されました。これにより、賃貸借契約の保証人(いわゆる賃貸保証)や継続的な取引基本契約の保証人など、多様な保証契約が規制の対象となっています。
極度額の金額設定の考え方
極度額は「金○○万円」のように具体的な金額で定めるのが原則です。「賃料○か月分」のような定め方も一定の条件下では認められますが、変動しうる基準(毎月変動するロイヤリティなど)を基準とする場合は、根保証契約自体が無効とみなされる可能性があるため、具体的な金額で定めることが実務上は推奨されます。
極度額の金額設定に明確な法律上の基準はありませんが、横浜を拠点とする弁護士に相談した場合、保証対象となる債務の見込み額・リスクを踏まえて合理的な金額設定のアドバイスを受けることができます。
3. 事業融資の保証には「保証意思宣明公正証書」が必要(民法第465条の6)
改正民法では、事業のために負担する債務を主債務とする保証契約(いわゆる事業用保証)について、個人が保証人になる場合には、原則として公正証書を作成することが義務づけられました(民法第465条の6第1項)。これを「保証意思宣明公正証書」といいます。
この手続きの流れは次のとおりです。
- 保証契約を締結する日の前1か月以内に、保証人になろうとする者が公証人役場に出頭する
- 公証人の前で、保証債務を負うことについての意思を表示する(保証意思宣明)
- 公証人がこれを公正証書(保証意思宣明公正証書)に記録する
- 保証意思宣明公正証書の作成後、1か月以内に保証契約を締結する
この公正証書の作成なく締結された事業用保証は、原則として無効となります(民法第465条の6第1項)。ただし、主たる債務者が法人(株式会社等)であり、その法人の取締役・執行役・業務執行社員等が保証人になる場合には、この公正証書の作成義務は免除されています(民法第465条の9第1号・第2号)。つまり、会社の代表取締役や取締役が会社の融資について保証人となる場合には、公正証書の作成は不要です。
4. 主たる債務者による情報提供義務(民法第465条の10)
改正民法では、事業のために負担する債務の個人保証を依頼する場合に、主たる債務者(保証を依頼する側)が保証人候補者に対して、一定の情報を提供することが義務づけられました(民法第465条の10)。
提供すべき情報の内容は次の3点です。
- 主たる債務者の財産・収支の状況
- 主たる債務以外に負担している債務(他の借入等)の有無・内容
- 主たる債務の担保として他に提供しているものの有無・内容
この情報提供義務に違反し、保証人が誤った情報に基づいて保証契約を締結した場合、保証人は保証契約を取り消すことができる可能性があります(ただし、債権者(金融機関等)が情報不提供・誤情報提供を知っていたか知ることができた場合に限ります)。逆に、第三者から保証を依頼された際に、この情報提供を受けていなければ、後日に保証契約の取消しを主張できる可能性があります。横浜の弁護士に依頼することで、保証契約を締結する前の段階でのリスク評価が可能です。
5. 経営者保証ガイドラインと2024年の制度改正
2013年に日本商工会議所と全国銀行協会により「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、以後、中小企業の経営者個人が会社の融資に対して個人保証を提供しなくても済むような融資慣行の確立が促進されてきました。
このガイドラインでは、次の3要件をすべて満たせば経営者保証なしの融資を求めることができるとされています。
- 法人と経営者個人の財産・経理が明確に分離されていること
- 法人のみの資産・収益力で借入金の返済が可能と判断されること
- 法人から適時・適切に情報開示が行われていること
さらに、2023年4月には金融庁による金融機関への監督指針改正が行われ、経営者に個人保証を求める際の透明性・合理性がより厳しく求められるようになりました。そして2024年3月からは、信用保証協会付き融資において、一定の要件を満たす場合に保証料率の上乗せを条件として経営者保証を不要とする選択肢が創設されました。つまり、経営者が「保証なし」を選択できる仕組みが制度として整備されつつあります。
既存の個人保証を解除したいと考えている中小企業経営者も少なくありませんが、保証解除には主債権者(金融機関)との交渉が必要です。このような場面でも弁護士のサポートが有効です。
6. 保証人になる前に確認すべきチェックポイント
保証契約を締結する前に、以下のポイントを必ず確認してください。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 極度額の設定 | 個人が根保証の保証人になる場合、極度額が書面で明確に定められているか確認する |
| 保証意思宣明公正証書 | 事業用融資で取締役等以外の個人が保証人となる場合、公証人役場での手続きが必要 |
| 情報提供の受領 | 主たる債務者の財産・収支状況・他の債務・担保提供状況について情報提供を受けているか |
| 保証の種類 | 「通常の保証」か「連帯保証」かを確認する(連帯保証では催告・検索の抗弁権がない) |
| 保証範囲 | 保証対象の債務の範囲(元本・利息・損害金)が契約書で明確化されているか確認する |
| 経営者保証の要否 | 法人の財務状況によっては経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある |
なお、連帯保証の場合は、通常の保証と異なり、①債権者は主たる債務者に先に請求しなくてよい(催告の抗弁権なし)、②主たる債務者に財産があっても先にそちらから取り立てることを要求できない(検索の抗弁権なし)という点で、保証人にとって非常に重い責任を伴います。これらの点は民法第454条に規定されており、連帯保証人として署名する場合は特に慎重に判断する必要があります。
7. 保証債務を負ってしまった場合の対応
すでに保証人としての立場にあり、主たる債務者の経営が悪化している場合は、早期に弁護士に相談することが重要です。主な対応策としては、以下のようなものが考えられます。
まず、主たる債務者が事業再生(私的整理・民事再生等)を進める場面で、経営者保証ガイドラインを活用することで、保証人が自由財産を超える部分について保証債務の免除を求める余地があります。また、保証契約自体に無効事由(極度額の欠如、公正証書の未作成、情報提供義務違反等)がある場合には、契約の無効・取消しを主張できる可能性があります。さらに、個人再生・自己破産といった個人の法的整理手続きも選択肢の一つです。
いずれの場合も、状況を複雑化させる前に横浜や神奈川エリアの弁護士に早期相談することで、取れる選択肢が広がります。
まとめ
2020年の民法改正により、個人が保証人となる場合のルールは大きく変わりました。特に「極度額の設定義務(民法第465条の2)」と「保証意思宣明公正証書の作成義務(民法第465条の6)」は、保証契約の有効要件として重要な意味を持ちます。これらの手続きを踏まずに締結された保証契約は無効となる可能性があるため、保証人を求める側も、保証人になる側も、改正内容を正確に理解しておく必要があります。
また、経営者保証ガイドラインの活用や2024年以降の制度改正により、一定の要件を満たせば個人保証なしで融資を受けられる可能性も広がっています。保証契約の締結前、またはすでに保証人になっている場合のリスク評価のためにも、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
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