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親の介護をした相続人は多くもらえる?寄与分の主張方法と限界を弁護士が解説

親の介護をした相続人は多くもらえる?寄与分の主張方法と限界を弁護士が解説

親の介護をした相続人は多くもらえる?寄与分の主張方法と限界を弁護士が解説

2026/04/15

親の介護をした相続人は多くもらえる?寄与分の主張方法と限界を弁護士が解説

「長年、一人で親の介護を続けてきたのに、相続では兄弟と同じ割合しかもらえないのは納得できない」——そのような思いを抱える方は少なくありません。毎日の介護は、身体的にも精神的にも大きな負担を伴うものです。仕事を辞めたり、自分の生活を犠牲にしながら親の療養を支えてきた方が、法定相続分どおりに遺産を分けなければならないとしたら、不公平に感じるのは当然のことです。

実は、民法にはそうした事情を相続に反映させるための「寄与分」という制度があります。ただし、寄与分はすべての介護に対して当然に認められるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。また、相続人以外の方(たとえば長男の嫁など)が介護をしていた場合には、別途「特別寄与料」という制度が用意されています。本記事では、寄与分の仕組み・認められる要件・計算方法・主張の手順、そして実務上の限界について、わかりやすく解説します。

寄与分とは?相続における介護貢献の評価制度

寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別の貢献をした共同相続人が、その貢献に見合う分を法定相続分に上乗せして受け取れる制度です(民法第904条の2)。たとえば、介護に専念することで被相続人が施設に入らずに済み、施設費用の支出を免れた場合、その節約分が財産の維持に貢献したと評価されることがあります。

寄与分が認められると、相続財産からその寄与分に相当する額を先に取り分け、残りを各相続人で法定相続分に応じて分け合う計算になります。これにより、貢献した相続人は実質的に多くの遺産を受け取れる可能性があります。

【ポイント】寄与分は、相続人が「特別の貢献」をした場合にのみ認められます。法律上の扶養義務の範囲内で行った通常の世話・援助は、原則として寄与分の対象にはなりません。

寄与分が認められるための5つの要件

実務上、親の介護による寄与分が認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要があると考えられています。

①「特別の寄与」であること

夫婦間の協力扶助義務(民法第752条)や親族間の扶養義務(民法第877条)の範囲内に収まるような通常の貢献は、「特別の寄与」にはあたりません。専業のヘルパーに代わる程度の療養看護を、無償でまたは十分な対価を得ずに継続的に行った場合に、「特別」と評価される傾向があります。

②継続性・専従性があること

日常的に介護を続けていたこと、また介護のために仕事を減らしたり辞めたりするなど、一定の専従状態にあったことが求められる傾向にあります。週末だけの短期的な手伝いにとどまる場合、要件を満たさないと判断されることがあります。

③無償性があること

被相続人から十分な報酬や生活費を受け取っていた場合は、無償性が否定され寄与分が認められない可能性があります。一方、家族として同居しながら生活費の一部を受け取っていた程度であれば、直ちに無償性が否定されるわけではないとされる場合もあります。

④財産の維持または増加への貢献があること

介護したことによって被相続人の財産が維持または増加した、という因果関係が必要です。たとえば、介護施設への入居費用や訪問介護費用の支出を免れた分が財産の維持に貢献したと評価される場合があります。

⑤被相続人が相続人であること

寄与分を主張できるのは共同相続人に限られます。相続人ではない方(たとえば長男の配偶者、孫など)は、後述する「特別寄与料」の制度を利用することになります。

介護型の寄与分はどのように計算するのか

介護(療養看護)による寄与分の計算では、主に次の計算式が用いられることがあります。

寄与分の金額(目安)= 介護報酬相当額(日額)× 介護日数 × 裁量割合

「介護報酬相当額(日額)」とは、プロのヘルパーや介護士を雇った場合に相当する1日あたりの費用です。要介護度や介護内容によって異なりますが、8,000円〜1万5,000円程度を目安とする場合が多いとされます。

「裁量割合」は、家族としての通常の配慮を超えた部分を評価するための係数であり、0.5〜0.7程度が目安とされることがあります。実際の金額は、要介護度・介護期間・介護の内容・介護サービスとの重複などの事情により変わってきます。

【計算例(あくまで目安)】
・要介護2の親を3年間(約1,000日)介護した場合
・日額1万円 × 1,000日 × 裁量割合0.6 = 600万円
実際の評価額は個別の事情に大きく左右されるため、弁護士への相談を推奨します。
考慮される要素 評価に影響するポイント
要介護度 要介護度が高いほど介護負担が重く、評価額が上がる傾向がある
介護期間 期間が長いほど評価額が増加する傾向がある
介護の内容 身体介護(入浴・排泄・食事介助等)は高く評価される傾向がある
介護サービスの利用状況 プロの介護サービスを併用していた期間は評価額が下がる場合がある
報酬の有無 被相続人から報酬相当を受け取っていた場合は評価額が減じられる

相続人以外が介護した場合は「特別寄与料」制度を活用

「長男の嫁が何年も義父の介護をしたのに、相続人でないために一切もらえない」という問題は従来から指摘されてきました。この不公平を解消するために、2018年の民法改正(令和元年7月1日施行)によって「特別寄与料」の制度が新設されました(民法第1050条)。

特別寄与料の請求権は、被相続人の親族(相続人を除く)が被相続人の療養看護等に「特別の貢献」をした場合に、その親族(特別寄与者)が相続人に対して金銭の支払いを求めることができる制度です。対象となる親族には、相続人の配偶者、被相続人の兄弟姉妹の配偶者なども含まれます。

【特別寄与料の時効に注意】特別寄与料の請求は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始の時から1年以内に行う必要があります(民法第1050条第2項)。この期間を過ぎると請求権が消滅する場合があるため、早期の行動が重要です。

寄与分の主張方法|協議から調停・審判まで

寄与分は、まず相続人全員による遺産分割協議の中で主張することになります。全員が合意できれば、その内容を遺産分割協議書に反映させます。しかし、他の相続人が寄与分を認めない場合や、金額について折り合いがつかない場合には、家庭裁判所に「寄与分を定める処分調停」を申し立てることができます。

調停でも合意に至らない場合には、審判手続きに移行します。審判では、裁判官が提出された証拠に基づいて寄与分の有無・金額を判断します。寄与分を主張する側には主張・立証の責任があるため、証拠の収集と整理が極めて重要です。

寄与分の主張に必要な証拠の例

  • 介護保険の認定記録・要介護認定書類
  • ケアプラン(介護支援専門員の記録)
  • 訪問介護や通所介護の利用記録
  • 介護日誌・写真・医療機関の診療記録
  • 仕事を辞めた・減らした事実を示す書類(退職証明書、給与明細等)
  • 同居していた事実を示す書類(住民票等)
  • 親族や近隣住民の陳述書

寄与分が認められにくい現実とその限界

寄与分の制度が存在しても、実際の遺産分割の現場では「認められなかった」「思ったより少なかった」というケースも珍しくありません。以下に、寄与分が認められにくい理由と限界について整理します。

① 通常の親族間の扶養と区別が難しい

介護を行った相続人が配偶者や子である場合、その介護が「法律上の扶養義務の範囲内」と判断されやすく、「特別の寄与」として評価されるには高いハードルがある傾向があります。特に、同居して自宅で介護を行っていたケースでは、通常の家族としての協力とみなされる部分が大きいとされることがあります。

② 証拠が残りにくい

家族による介護は記録として残されにくく、後から「どれだけ介護したか」を証明することが困難な場合があります。介護日誌をつけていない、ケアマネジャーとの連絡記録がない、といった状況では、主張が認められにくくなります。

③ 遺産総額を超える寄与分は認められない

民法上、寄与分は遺産の総額を超えることはできません(民法第904条の2第3項)。遺産総額が少ない場合には、寄与分として評価できる上限が限られてしまいます。

④ 相続開始から10年経過後は主張が制限される

2023年施行の民法改正(民法第904条の3)により、相続開始から10年を経過した後に遺産分割の手続きを行う場合、原則として具体的相続分(寄与分や特別受益を反映した相続分)を主張することができなくなりました。長期間放置した後に寄与分を主張しようとしても、権利が制限される可能性があります。

【横浜で相続をお考えの方へ】寄与分の問題は、証拠の収集・評価・交渉・調停・審判と、多岐にわたる対応が必要です。横浜エリアの相続問題に精通した弁護士に早期にご相談されることを強くお勧めします。

まとめ:寄与分の問題は早期の弁護士相談が重要

寄与分の制度は、長年にわたって親の介護を担ってきた相続人の貢献を法的に評価するための仕組みです。しかし、認められるためには「特別の寄与」であることを具体的な証拠で裏付ける必要があり、自分だけで適切な主張をすることには困難が伴う場合があります。

また、相続開始から10年が経過すると寄与分の主張が制限される可能性があるため、時間的な余裕があるように見えても、早期に動き出すことが重要です。特に遺産分割協議が始まった段階や、他の相続人との間で話し合いが難航しそうな場合には、弁護士への相談を検討されることをお勧めします。

弁護士に依頼することで、寄与分の評価額の試算、必要な証拠の整理・収集、遺産分割協議や調停における主張・交渉の代行など、総合的なサポートを受けることができます。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが、適正な解決への近道といえるでしょう。

介護による寄与分・遺産分割にお悩みの方は、まずはご相談ください

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。親の介護を担ってきた方の寄与分の主張や、相続人以外の方の特別寄与料請求、遺産分割協議・調停における交渉支援など、個別の事情に応じた対応が可能です。初回のご相談はお気軽にお問い合わせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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