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家族信託で相続対策|仕組み・メリット・デメリットと遺留分の関係を弁護士が解説

家族信託で相続対策|仕組み・メリット・デメリットと遺留分の関係を弁護士が解説

家族信託で相続対策|仕組み・メリット・デメリットと遺留分の関係を弁護士が解説

家族信託で相続対策|仕組み・メリット・デメリットと遺留分の関係を弁護士が解説

「親が認知症になったとき、財産の管理はどうすればいいのだろう」「自分が亡くなった後、財産を希望どおりに引き継いでほしいが、遺言だけで大丈夫なのか」――そうした悩みや不安を抱えていらっしゃる方は少なくありません。特に高齢化が進む現代において、生前の財産管理と相続対策をセットで考えることは非常に重要です。

近年、こうした課題の解決策として注目されているのが「家族信託」という制度です。本記事では、家族信託の基本的な仕組みとメリット・デメリット、成年後見制度との違い、そして相続において見落とされがちな遺留分との関係と対策について、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

家族信託とは?基本的な仕組み

家族信託(民事信託)とは、自分(委託者)が保有する財産を、信頼できる家族(受託者)に対して「託す」ことで、自分または家族(受益者)のために管理・運用・処分してもらう制度です。根拠法は信託法(平成18年法律第108号)です。

家族信託には次の三者が登場します。

当事者 役割 具体例
委託者 財産を持ち、信託を設定する人 高齢の親
受託者 財産の名義上の管理者として実際の管理・運用・処分を行う人 長男・長女など信頼できる家族
受益者 信託財産から生じる利益を受ける人 委託者本人(生前)・子(死後)など

信託が設定されると、不動産や金融資産などの信託財産は受託者名義に移転されます。受託者は受益者の利益のためにその財産を管理・運用し、委託者は信託期間中および信託終了後の財産の行き先をあらかじめ決めておくことができます。

ポイント:家族信託は、財産の「管理する権利」と「利益を受ける権利」を分離し、管理権を家族に移すことで、柔軟な財産管理を実現する仕組みです。

家族信託が注目される背景―「財産凍結」問題

家族信託への関心が急速に高まっている背景には、認知症による「財産凍結」という深刻な問題があります。

親が認知症を発症して判断能力を失うと、本人保護のために銀行口座が凍結され、預金の引き出しが事実上できなくなる場合があります。また、不動産の売却・賃貸・修繕などの契約行為も、意思能力のない本人を代理することは原則としてできないため、財産が文字どおり「凍結」してしまいます。介護費用や生活費の捻出のために実家を売りたくても売れない、という状況が生じるのです。

家族信託を判断能力があるうちに設定しておけば、信託財産の名義は受託者(子など)に移っているため、委託者が認知症になった後も受託者が継続して財産管理を行えます。この点が成年後見制度にはない家族信託の大きな強みです。

家族信託のメリット

① 認知症・判断能力低下への備えができる

前述のとおり、委託者の判断能力が低下・喪失した後も、受託者が信託財産の管理・運用・処分を継続できます。特に収益不動産を保有している方や、相続財産が多岐にわたる方にとって、大きなメリットといえます。

② 遺言に代わる柔軟な財産承継が可能

信託契約の中で「委託者死亡後に誰が受益権を取得するか」を定めておくことができます。これにより、遺言と同様の財産承継機能を信託に持たせることが可能です。また、遺言公正証書の作成と組み合わせることで、より確実な承継設計ができます。

③ 後継ぎ遺贈型受益者連続信託が設計できる

信託法第91条は「受益者の死亡により他の者が受益権を取得する旨の定めのある信託(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)」を認めています。これにより、「自分の死後は配偶者へ、配偶者の死後は子へ」というように、複数の世代にわたって財産の承継先を指定することができます。遺言では原則として二次以降の承継先の指定が難しいため、この点は家族信託ならではの強みといえます。

④ 柔軟・機動的な資産管理が可能

受託者が財産の名義人であるため、収益不動産の管理・修繕・売却、株式等の金融資産の運用など、本人の代わりに機動的な管理ができます。成年後見制度では裁判所の許可が必要な財産処分も、信託契約の範囲内であれば受託者の判断で行える場合があります。

家族信託のデメリット・注意点

① 設定に費用がかかる

家族信託の設定には、弁護士・司法書士などの専門家への報酬(おおむね数十万円から百万円程度、財産規模や設計の複雑さによって異なります)のほか、不動産を信託財産とする場合は登録免許税等の費用も必要です。成年後見制度の申立費用よりは高くなる傾向がありますが、設定後の継続コストが少ない点はメリットです。

② 受託者の負担・責任が重い

受託者は信託財産を自己の固有財産と区別して管理する義務(分別管理義務、信託法第34条)や、忠実義務(信託法第30条)など、多くの法的義務を負います。家族が受託者となる場合、その責任の重さを十分に理解した上で設定することが必要です。受託者の不適切な管理行為は、受益者や受益者の相続人との紛争につながる場合があります。

③ 家族間の不公平感・紛争リスク

信託設定により一部の家族(受託者)に財産管理権が集中すると、他の相続人が不公平感を抱き、紛争に発展する場合があります。信託契約の設計段階から家族全員で十分な話し合いをしておくことが重要です。

④ 信託できない財産・税務上の制約がある

農地や一身専属的な権利(年金受給権など)は信託財産とすることができません。また、信託財産から生じる損失は、原則として他の所得と損益通算ができないなど、税務上の制約もあります。信託設定の前に税理士への相談も検討されることをお勧めします。

成年後見制度との比較

家族信託と並んで認知症対策として挙げられるのが成年後見制度です(民法第7条)。両者の主な違いは以下のとおりです。

比較項目 家族信託 成年後見制度
設定のタイミング 判断能力があるうちに設定が必要 判断能力低下後に家庭裁判所に申立て
管理者 受託者(家族など) 後見人(家族または専門職)
裁判所の監督 原則として不要(信託監督人を置く場合あり) 家庭裁判所の監督下に置かれる
財産処分の柔軟性 信託契約の設計次第で柔軟に対応可能 裁判所の許可が必要な場合が多い
継続コスト 受託者が家族であれば比較的低い 専門職後見人の場合、継続的な報酬が必要
財産承継機能 あり(信託契約で設計可能) なし(あくまで管理・保護が目的)

どちらの制度が適しているかは、財産の種類・規模、家族の状況、目的によって異なります。両制度を組み合わせて利用するケースもあります。

家族信託と遺留分の関係―実務上の重要な論点

家族信託を利用するうえで必ず検討しなければならない重要な論点が「遺留分」との関係です。この点を見落としたまま信託を設定すると、後から深刻な紛争に発展する場合があります。

遺留分とは

遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・父母等)が、相続財産から最低限受け取れることが保障された権利です(民法第1042条)。たとえ遺言や信託契約で財産の行き先を指定したとしても、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権(民法第1046条)を行使できる場合があります。

家族信託の受益権と遺留分侵害額請求の対象

信託により移転した受益権が遺留分侵害額請求の対象となるかについては、現在も解釈上の議論が続いています。この点に関して、東京地方裁判所平成30年9月12日判決は、遺留分制度を潜脱する目的で家族信託が設定されたと認められる場合には、公序良俗(民法第90条)に反して信託契約の一部が無効とされる場合があると判示しました。

具体的には、遺留分権利者に対して経済的利益が実質的に与えられない信託設計(例えば、収益を生まない不動産を信託財産として特定の相続人の受益権に集中させるような設計)については、遺留分制度の潜脱として一部無効と判断される可能性があるとされています。

注意:最高裁判所による統一的な判断はまだ示されておらず、下級審の判断は事案によって異なる場合があります。家族信託と遺留分の問題は、専門家への相談が特に重要な領域です。

遺留分対策として検討すべき措置

家族信託を設定する際には、以下のような遺留分への対応策を同時に検討することが実務上重要とされています。

  • 遺留分権利者が遺留分相当額を取得できる内容の遺言(公正証書遺言)を同時に作成する
  • 遺留分権利者を受益者の一人に含める信託設計にする
  • 家庭裁判所での遺留分の生前放棄(民法第1049条)を活用する(相続人の協力が必要)
  • 信託財産の外に遺留分相当額の現金・生命保険金を用意しておく
  • 遺留分侵害が生じた場合に備えて分割払い(民法第1047条第5項の期限の許与)の対応を想定しておく

まとめ―家族信託の設計は弁護士への相談から

家族信託は、認知症対策・柔軟な財産管理・多世代にわたる承継設計など、従来の遺言や成年後見制度では実現しにくかった機能を持つ優れた制度です。しかしその一方で、信託設計の複雑さ、受託者の法的責任、遺留分との関係など、専門的な知識なしには適切に活用することが難しい側面もあります。

設計が不適切だった場合には、信託が一部無効と判断されるリスク、相続人間の深刻なトラブル、税務上の予期せぬ不利益などが生じる可能性があります。家族信託を検討される際は、相続分野の経験が豊富な横浜の弁護士など、専門家に早めに相談されることをお勧めします。遺留分問題も含めた総合的な相続対策の設計を、ご依頼者の実情に合わせてサポートすることが可能です。

家族信託・相続対策についてお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。家族信託の設計から遺留分トラブルへの対処まで、ご依頼者の状況に応じた最適な解決策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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