遺産分割で不動産をどう分ける?現物分割・代償分割・換価分割の比較を弁護士が解説
2026/04/21
遺産分割で不動産をどう分ける?現物分割・代償分割・換価分割の比較を弁護士が解説
「実家を相続することになったけれど、兄弟で平等に分けるにはどうすればいいの?」「不動産は現金と違って簡単に分けられないと聞いたが、具体的にどんな方法があるのか」——相続が発生した際に不動産の扱いをめぐって頭を抱えるご家族は非常に多く見受けられます。預貯金であれば金額に応じて単純に分配できますが、土地や建物といった不動産はそう簡単にはいきません。評価額の算定方法についても相続人間で意見が食い違うケースがあり、気づけばトラブルの温床になってしまうこともあります。
本記事では、不動産を含む遺産分割の場面で選択できる「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法について、それぞれの仕組み・メリット・デメリット・向いているケースを横浜の弁護士の視点からわかりやすく整理します。どの方法を選ぶべきか迷っている方、相続人間でなかなか話し合いがまとまらない方にとって、判断の指針となれば幸いです。
不動産の遺産分割がなぜ難しいのか
遺産分割において不動産が特に難しいとされる理由は、大きく分けて3点あります。
第一に、「分割しにくい」という物理的な問題があります。現金や預貯金は金額をそのまま按分できますが、土地や建物を物理的に切り刻んで相続人に分配することは、現実的に困難な場合がほとんどです。仮に土地を分筆(区画を分けること)しようとしても、面積・形状・接道条件によっては価値が著しく低下してしまいます。
第二に、「評価額の算定が難しい」という問題があります。不動産の価値は、路線価・固定資産税評価額・実勢価格(時価)など、評価方法によって金額に大きな差が生じます。相続人間でどの評価基準を使うかについて合意が取れないと、分割の前提条件すら固まりません。
第三に、「感情的な問題を含みやすい」点が挙げられます。実家など思い入れのある不動産については、相続人の一人が「売却したくない」「このまま住み続けたい」と主張し、ほかの相続人との間で対立が生じることも少なくありません。
こうした複合的な難しさがあるため、不動産を含む遺産分割では、まず「どの方法で分けるか」を慎重に検討することが重要です。
不動産の遺産分割方法は4種類ある
民法第906条は、遺産分割の基準として「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています。この規定に基づき、不動産を分割する方法は主に次の4種類とされています。
家庭裁判所の調停や審判では、実務上、①現物分割 → ②代償分割 → ③換価分割 → ④共有分割という順序で検討されるのが一般的です。後に説明するとおり、共有分割は最後の手段と位置づけられています。
| 分割方法 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| ①現物分割 | 不動産をそのまま特定の相続人が取得する | 相続人の一人が住み続ける・遺産が複数ある |
| ②代償分割 | 不動産を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う | 不動産を手放したくないが、公平さを保ちたい |
| ③換価分割 | 不動産を売却し、代金を相続人で分配する | 誰も住まない・誰もが現金を希望している |
| ④共有分割 | 不動産を相続人が共有名義で取得する | 他の方法が難しい場合の最後の手段 |
以下、それぞれの方法を詳しく解説します。
現物分割|不動産をそのまま一人が取得する方法
現物分割とは、不動産をその現状のままで特定の相続人が取得する方法です。たとえば、相続人が兄弟2人(長男・次男)で、遺産として自宅不動産と預貯金がある場合に、長男が自宅を取得し、次男が預貯金を取得するというケースが典型例です。法律上、現物分割は遺産分割の原則的な方法であり、審判においても最初に検討される方式です。
現物分割のメリット
- 手続きがシンプルで、売却や代償金の支払いが生じない
- 不動産を手放さずに済むため、居住を継続したい相続人にとって安心できる
- 不動産の名義を単独にできるため、将来の処分が容易になる
現物分割のデメリット
- 遺産の内容によっては公平な分割が難しく、不公平感が生じやすい
- 不動産の価値が他の遺産(預貯金等)と大きく異なる場合に調整が困難
- 相続人の一方が自宅を取得し、他方が現金のみとなると納得感が得られにくいことがある
代償分割|不動産を取得した相続人が代償金を支払う方法
代償分割とは、相続人の一人が不動産を現物で取得し、その価値のうち自分の法定相続分を超える部分について、他の相続人に対して金銭(代償金)を支払う方法です。不動産の一体性を維持しながら、相続人間の公平を図ることができる点が大きな特徴です。自宅に引き続き居住したい相続人がいる場合に特に有効な手段です。
代償分割のメリット
- 不動産を売却せずに維持できるため、居住継続や事業継続が可能
- 不動産の一体性が保たれるため、価値の毀損を防ぎやすい
- 金銭で調整するため、相続人間の公平感が確保されやすい
代償分割のデメリット
- 不動産を取得する相続人に代償金を支払う経済的余力が必要
- 不動産の評価額をどう算定するかで争いになりやすい
- 代償金の額が高額になる場合、借入れや生命保険の活用が必要になることがある
換価分割|不動産を売却して売却代金を分配する方法
換価分割とは、相続した不動産を売却(換価)し、その売却代金から諸費用を差し引いた金額を相続人の間で法定相続分等に応じて分配する方法です。誰も不動産を取得したくない場合や、代償金を用意できる相続人がいない場合に選ばれることが多く、金銭的な公平性が最も確保しやすい方法ともいえます。
換価分割のメリット
- 売却代金を按分するだけでよいため、相続人間の公平感が最も高い
- 不動産の評価をめぐる争いが生じにくい(市場価格が客観的な基準となる)
- 相続人全員が現金を受け取ることができる
換価分割のデメリット
- 不動産を手放すことになるため、居住継続はできない
- 売却益に対して譲渡所得税がかかる場合がある(相続税の取得費加算特例の活用を要検討)
- 売却までに時間がかかり、市況によっては希望価格で売れないリスクがある
- 相続人全員の同意が必要であり、一人でも反対すると進められない
共有分割|最後の手段として検討すべき方法
共有分割とは、不動産を相続人が共有名義で取得する方法です。たとえば、兄弟2人で遺産分割協議がまとまらない場合に、とりあえず2分の1ずつの共有名義にするというケースがあります。しかし、共有分割は実務上「最後の手段」とされており、積極的にはお勧めできない方法です。
共有状態では、不動産を売却・大規模改修・賃貸に出す際に共有者全員の合意が必要になることが多く(管理行為・変更行為)、将来にわたって権利関係が複雑化するリスクがあります。また、共有者が亡くなると持分が次世代に相続され、共有者の数が雪だるま式に増えていく「所有者不明土地問題」の一因にもなっています。令和3年の民法改正(令和5年施行)では、共有物の利用・管理・分割に関するルールが整備されましたが、共有状態を作らないに越したことはありません。
どの方法を選ぶべきか?判断のポイント
分割方法の選択は、主に以下の観点から総合的に判断することになります。
①誰かが居住を継続するか
相続人の一人が対象不動産に住み続けることを希望しているならば、現物分割または代償分割が有力な選択肢となります。代償金を支払える資力があれば代償分割が最もバランスが取れた方法といえるでしょう。
②代償金を支払える資力があるか
代償分割を選ぼうとしても、不動産を取得する相続人に代償金を準備する経済的な余裕がなければ成立しません。生命保険金の受領が見込まれる場合や融資が受けられる場合は活用できますが、そうでなければ換価分割を検討する流れになります。
③相続人全員が売却に同意できるか
換価分割は全員の合意が前提です。一人でも「売りたくない」という相続人がいると、任意での換価分割は進められません。その場合は遺産分割調停・審判の申立てを経て、裁判所の判断に委ねることになる場合があります。
④不動産の評価額と他の遺産のバランス
不動産の評価額が他の遺産(預貯金・有価証券等)と比べてどの程度を占めるかによっても、最適な方法は変わります。不動産のみが遺産のほぼ全部を占めるケース(「不動産しか遺産がない」状況)では、代償分割か換価分割を軸に考えることになります。
まとめ|不動産の遺産分割は早期に専門家へ相談を
不動産を含む遺産分割では、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割という4つの方法があり、それぞれに一長一短があります。どの方法が最善かは、不動産の種類・評価額・各相続人の意向・資力・税務上の影響などを総合的に考慮して判断することが必要です。
相続人間の話し合いがまとまらないまま放置してしまうと、相続登記の義務化(令和6年4月1日施行・不動産登記法第76条の2)の観点からも不利益が生じる可能性があります。相続開始を知った日から3年以内に相続登記を行わなければ、正当な理由なく期限を過ぎた場合には10万円以下の過料が科される場合があります。
横浜をはじめ各地で相続に関するご相談に応じている弁護士に早めにご相談いただくことで、状況に応じた最適な分割方法を見つけ、手続きをスムーズに進められる可能性が高まります。相続人間での対立が深まる前に、一度専門家へのご相談をご検討ください。
不動産の遺産分割でお困りの方へ
タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。不動産の分割方法の選択から遺産分割協議・調停のサポートまで、状況に応じた解決策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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