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試用期間中の解雇は自由にできる?「本採用拒否」が違法になるケースを横浜の弁護士が解説

試用期間中の解雇は自由にできる?「本採用拒否」が違法になるケースを横浜の弁護士が解説

試用期間中の解雇は自由にできる?「本採用拒否」が違法になるケースを横浜の弁護士が解説

2026/04/29

試用期間中の解雇は自由にできる?「本採用拒否」が違法になるケースを横浜の弁護士が解説

「試用期間中だから、合わなければいつでも辞めてもらえる」——採用に不安を感じる中小企業の経営者から、このような声をよく耳にします。しかし、この認識は法的に大きな誤解を含んでいます。試用期間中であっても労働契約はすでに成立しており、解雇や本採用拒否には合理的な理由と適正な手続きが法律上必要とされています。

特に法務担当者のいない中小企業や個人経営の店舗では、この点を誤解したまま対応し、後から不当解雇として訴えられるケースが少なくありません。本記事では、試用期間の法的性質から、本採用拒否が違法となる具体的なケース、適法な対応手順まで、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

1. 試用期間の法的性質——「解約権留保付き労働契約」とは

試用期間は、採用選考だけでは十分に把握しきれなかった従業員の適格性・能力・勤務態度を実際の業務を通じて見極めるための期間です。最高裁判所は、昭和48年12月12日の三菱樹脂事件において、試用期間中の雇用契約を「解約権留保付き労働契約」と位置づけました。

これは、使用者が一定の条件で労働契約を解約できる権利(留保解約権)を持ちつつも、労働契約自体は採用日から既に成立しているという法律関係です。つまり、試用期間中であっても、従業員は労働基準法をはじめとする各種労働法の保護を受けます。具体的には以下の法律が適用されます。

  • 労働基準法第20条:解雇する場合は原則として30日前の予告、または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。ただし、採用後14日以内は予告不要(同条ただし書き)とされています。
  • 労働契約法第16条:客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効とされます。
  • 労働基準法第19条:業務上の傷病による休業中や産前産後休業中は解雇が禁止されています。

試用期間だからといって、これらの保護が外れるわけではありません。「試用期間中は好きなときに解雇できる」という考え方は、法律上根拠がないことに注意が必要です。

2. 本採用拒否・試用期間中の解雇に必要な「合理的な理由」

本採用拒否(試用期間満了時の留保解約権の行使)は、通常の解雇と比べると「広い範囲で認められる」と判例上解されています。これは、試用期間が適格性を判断するための期間であるという性質上、ある程度の柔軟性が認められているためです。

しかし、それでも客観的に合理的な理由社会通念上の相当性(労働契約法第16条)は必要です。裁判所が合理的な理由として認めてきた主なケースには、以下のようなものがあります。

  • 採用選考時に重大な経歴詐称(職歴・資格・学歴など)が判明し、それが業務遂行能力に直接関わる場合
  • 業務遂行能力が著しく不足しており、相当な指導を行っても改善の見込みがないと客観的に判断できる場合
  • 試用期間中に無断欠勤を繰り返すなど、著しい服務規律違反があった場合
  • 協調性の著しい欠如により、職場環境に深刻な支障を継続的に生じさせた場合
注意:「なんとなく合わない」「期待より少し仕事が遅い」「雰囲気が合わない」という程度では、合理的な理由として認められない可能性があります。本採用拒否を検討する際は、横浜の弁護士に具体的な事情を相談することをお勧めします。

3. 本採用拒否が違法とされた判例のポイント

実際の裁判例から、本採用拒否が違法・無効と判断されたパターンをいくつか確認しましょう。

①能力不足を理由とする場合——指導の有無が問われる

能力不足を理由に本採用拒否をしようとする場合、裁判所は「使用者が十分な指導・教育の機会を与えたか」という点を厳しく問います。入社直後に高度な業務をこなせなくても、それは必ずしも能力不足とはいえません。指導をほとんど行わずに成果を求め、達成できなかったからといって本採用拒否するのは、「相当性」を欠くとして違法と判断される可能性があります。

②試用期間中に発覚した個人的事情を理由とする場合

試用期間中に初めて判明した事情(持病、妊娠、家族の介護状況など)を理由に本採用を拒否することは、男女雇用機会均等法や障害者差別解消法などに抵触する可能性があります。業務との直接的な関連性が乏しい私的な事情を理由にすることは、違法と解される可能性が高く、慎重であるべきです。

③試用期間終了後に何も通知しなかった場合

試用期間が満了した後、本採用拒否の意思を何も伝えないまま放置すると、自動的に本採用となったと解されます。「試用期間が終わった時点で黙って連絡を絶つ」ことで雇用関係を終わらせようとする対応は、むしろ労働契約の継続を認めることになりかねず、後からトラブルに発展するリスクがあります。

4. 本採用拒否が認められやすいケースと適法な手順

本採用拒否が認められやすいのは、次のような条件がそろっている場合です。

  • 重大な経歴詐称:職歴・資格・学歴などに虚偽の記載があり、それが業務遂行能力に直結すると判断できる場合
  • 試用期間中の重大な非違行為:業務命令への明確な違反、ハラスメント行為、横領・窃盗などの不正行為
  • 明確な能力不足+指導記録あり:複数回の指導にもかかわらず改善が認められず、その経緯が書面で記録されている場合

適法に本採用拒否を進めるためには、以下の手順を踏むことが重要です。

ステップ1:試用期間中から問題点を記録する
業務上の問題(遅刻・欠勤・ミスの頻度、指導への反応など)を日付入りで文書として記録します。口頭だけの注意ではなく、書面による指導書・注意書を交付し、受け取りの確認を取ることが望ましいです。
ステップ2:改善指導を行い、改善の機会を与える
本採用拒否の前に、問題点を具体的に明示した上で改善を求める機会を与えます。一度も指導・警告をしないまま本採用拒否することは、「相当性」の観点から問題になりやすいです。
ステップ3:本採用拒否の意思を書面で通知する
試用期間満了の前(少なくとも30日前が目安)に、本採用拒否の旨を書面で通知します。理由を明記し、できれば本人から受領確認の署名を得ましょう。採用後14日を超えている場合は、労働基準法第20条に基づき、30日前の解雇予告または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。
ステップ4:弁護士に事前相談する
本採用拒否は法的に解雇と同様に扱われます。後から不当解雇として労働審判や訴訟に発展した場合、企業側に大きなリスクと費用が生じます。判断が難しいケースでは、横浜の弁護士に事前相談することで、リスクを最小化できます。

5. 試用期間の長さと「延長」の可否

試用期間の長さに関して法律上の上限は定められていませんが、3か月から6か月が一般的です。試用期間が著しく長い場合(例えば1年以上)は、それ自体が労働者への不当な拘束として問題になる可能性があると解されています。

試用期間の延長については、あらかじめ就業規則や労働契約書に「試用期間を延長することがある」旨の規定がある場合に限り、合理的な事情のもとで認められると解されています。規定がないにもかかわらず使用者が一方的に延長することは、労働者の不利益変更にあたり、労働契約法第8条・第9条の趣旨に反する可能性があるため注意が必要です。

また、延長を繰り返して事実上の本採用拒否の手段として使うことも、正当な留保解約権の行使とは認められないケースがあります。

6. 中小企業が採用時に整えておくべき書類と評価体制

試用期間に関するトラブルを未然に防ぐには、採用前から適切な書類と評価体制を整えることが重要です。以下の書類を整備することで、万が一のトラブル時にも企業側の正当性を主張しやすくなります。

書類・制度 主な記載・運用内容
雇用契約書(労働条件通知書) 試用期間の有無・長さ・延長条件・本採用拒否事由を明記
就業規則 試用期間中の解雇事由・本採用拒否の要件・服務規律を規定(労働基準法第89条)
経歴確認・誓約書 提出書類の真実性を宣誓させ、虚偽申告の場合の取り扱いを明記
指導記録・注意書 問題行動の日時・内容・会社の対応・本人の反応を時系列で記録
試用期間中の評価シート 業務遂行能力・勤怠・態度などを定期的に評価・記録

なお、常時10人以上の従業員を雇用する事業場では就業規則の作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。10人未満でも、就業規則を整備しておくことは労使間のトラブルを防ぐうえで有効です。

まとめ——「試用期間中なら安心」は禁物

試用期間は「いつでも自由に辞めさせられる期間」ではありません。労働契約は採用日から既に成立しており、本採用拒否・解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法第16条)。

中小企業・個人経営の店舗において採用トラブルを防ぐためには、①採用前の書類整備、②試用期間中の指導と記録の徹底、③本採用拒否の書面による適時通知、という三点が特に重要です。「問題のある従業員への対応に迷っている」「本採用拒否を検討しているがリスクが心配」という場合は、早めに専門家に相談することが重要です。

横浜のタングラム法律事務所では、労務問題・採用トラブルについての法律相談を承っております。解雇・雇用トラブルは早期対応が被害を最小限に抑えるポイントです。ぜひお気軽にご連絡ください。

試用期間中のトラブル・本採用拒否の適法性について、横浜の弁護士にご相談ください。
初回相談は丁寧にお話をうかがいます。お気軽にどうぞ。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。また、法令・判例等は記事執筆時点の情報に基づいており、最新情報とは異なる場合があります。

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