タングラム法律事務所

電子契約で締結した契約書は法的に有効か?電子署名法の基本を中小企業向けに横浜の弁護士が解説

電子契約で締結した契約書は法的に有効か?電子署名法の基本を中小企業向けに横浜の弁護士が解説

電子契約で締結した契約書は法的に有効か?電子署名法の基本を中小企業向けに横浜の弁護士が解説

2026/05/01

電子契約で締結した契約書は法的に有効か?電子署名法の基本を中小企業向けに横浜の弁護士が解説

取引先から「契約書は電子契約(クラウドサイン・DocuSignなど)でお願いします」と言われた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。近年、電子契約サービスの普及は目覚ましく、大企業だけでなく中小企業や個人事業主の間でも広く利用されるようになっています。

しかし、「電子契約で結んだ契約書は、本当に紙の契約書と同じ法的効力があるのか?」「後でトラブルになったとき、裁判所で証拠として使えるのか?」といった疑問を持つ経営者の方は少なくありません。本記事では、横浜の弁護士が電子署名法の基本を踏まえ、電子契約の法的有効性と中小企業が押さえるべき実務上の注意点をわかりやすく解説します。

1. 電子契約とは何か——紙の契約書との根本的な違い

電子契約とは、契約の締結に際して紙と印鑑(署名)を使わず、電磁的な方法によって合意を成立させる契約方式です。クラウド型の電子契約サービスでは、契約書データをPDF等の電子ファイルとして作成・送付し、各当事者がオンライン上で電子署名(または電子的な合意表示)を行うことで契約が成立します。

民法上、契約は「申込み」と「承諾」の意思表示が合致した時点で成立するとされており(民法第522条第1項)、原則として契約の成立に書面や押印は必要とされていません。したがって、口頭や電子メール、あるいは電子契約システムを通じた合意も、法律上は契約として有効と解されています。

ただし、「口頭や電子的な合意も有効」ということと、「その合意を後から証明できる」ということは別問題です。紙の契約書に実印を押して印鑑証明書を添付すれば、偽造のリスクは低く、裁判所でも強力な証拠となります。電子契約についても同様に、「本人が確かに合意した」という証明力を高めるための仕組みが必要であり、それを規律するのが電子署名法です。

2. 電子署名法の概要——法的有効性の根拠

電子署名法(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)は2001年に施行された法律で、電子文書における署名の有効性と認証機関の要件を定めています。

同法第3条は、次のように規定しています。「電磁的記録であって情報を表すものは、当該情報の作成者(中略)による電子署名(中略)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」この規定により、適切な電子署名が付された電子文書は、民事訴訟法第228条第4項が定める「推定規定」(二段の推定)と同様に、本人が作成したものと推定され、裁判上の証拠能力が認められます。

つまり、電子署名法に対応した電子署名が付されていれば、相手方が「自分は合意していない」と主張しても、その主張を覆す立証責任は相手方側に移ることになります。これが電子契約の法的有効性を支える柱となっています。

【ポイント】電子署名法第3条の推定が働くためには、「本人だけが行うことができる」電子署名の要件を満たす必要があります。すべての電子サービスが自動的に同条の推定を受けるわけではない点に注意が必要です。

3. 立会人型と当事者型——電子契約サービスの主な種類

現在普及している電子契約サービスは、大きく「立会人型(クラウド型)」と「当事者型」に分類されます。それぞれの仕組みと法的な位置づけを理解しておくことが大切です。

種類 仕組み 代表的なサービス 電子署名法第3条の推定
立会人型(クラウド型) サービス事業者が「立会人」として電子署名を付与。利用者はメール認証等で合意を表示する。 クラウドサイン、GMOサイン、DocuSign等 直接的な適用は不明確(ただし証拠力は認められうる)
当事者型 各当事者が認定認証局(または非認定認証局)から取得した電子証明書を用いて自ら署名する。 freeeサイン(当事者型)、セコムパスポート等 認定認証局利用の場合、第3条の推定あり

立会人型は手軽さから広く普及していますが、厳密には電子署名法第3条の「本人の電子署名」ではなくサービス事業者の電子署名となる場合があります。もっとも、メール認証の記録・タイムスタンプ・アクセスログ等の付随情報が保存されていれば、裁判上でも合意の証拠として機能すると解されており、実務上は多くの場面で有効活用されています。

一方、当事者型のうち認定認証局(総務大臣が認定した機関)が発行した電子証明書を用いるものは、電子署名法第3条の推定が明確に働くとされており、証明力の面で最も強固です。

4. 電子契約を使えないケース——書面・押印が法令上必須な契約

すべての契約が電子化できるわけではありません。法令によって書面の作成や交付、あるいは公正証書による締結が義務付けられているケースでは、電子契約だけでは法的要件を満たさない場合があります。主なものを以下に整理します。

  • 定期借地契約・定期建物賃貸借契約(借地借家法第22条・第38条)——書面または電磁的方法による交付が必要。2020年の法改正で電磁的方法も認められましたが、テナント(借主)の承諾が必要です。
  • 公正証書遺言・離婚給付契約等の公正証書が必要な場面——公証人の関与が必要なため、電子契約のみでは対応できません。
  • 不動産登記申請——オンライン申請(電子署名利用)は法令上可能ですが、別途の手続きが必要です。
  • 労働条件通知書(労働基準法第15条)——2024年4月の法改正で電子的交付も原則可能となりましたが、労働者が希望する場合は書面交付が必要です。
  • 手形・小切手——手形法・小切手法上、書面性が要求されます(電子記録債権はでんさいネット等を利用)。
【注意】法令改正により電子化が認められる範囲は拡大傾向にありますが、個別の契約類型ごとに最新の法令を確認することが重要です。不明な場合は横浜の弁護士にご相談ください。

5. 電子契約の導入時に会社が整備すべき実務上のポイント

電子契約を安全に活用するために、中小企業が実務上確認・整備すべきポイントを以下にまとめます。

(1)サービス選定時の確認事項

導入する電子契約サービスが、タイムスタンプ・通信ログ・メール認証記録などを長期間保存できるかどうかを確認してください。万一の訴訟時に「いつ・誰が・どのデータに合意したか」を証明できるエビデンスが残るサービスを選ぶことが重要です。また、相手方がそのサービスに対応しているかどうかも事前確認が必要です。

(2)電子帳簿保存法への対応

2022年施行の改正電子帳簿保存法により、電子取引データは紙に印刷して保存することが認められなくなり(経過措置終了後)、電子データのまま保存することが義務付けられています。電子契約で締結した契約書も「電子取引」に該当するため、改ざん防止措置(タイムスタンプ付与など)を施した上でデータ保存する体制を整える必要があります。

(3)社内規程・ワークフローの整備

電子契約の利用に関する社内規程(誰が電子署名権限を持つか、どのサービスを使うか、保存先はどこか等)を明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。特に担当者が退職した後も契約データにアクセスできる管理体制を整えておくことが大切です。

(4)相手方の本人確認

立会人型の電子契約サービスでは、メールアドレスへの送付が認証手段となります。そのメールアドレスが正当な代表者・担当者に届いているかを事前に別途確認しておくと、「知らないうちに勝手に署名された」というトラブルを防ぐことができます。

6. 電子契約をめぐるトラブル事例と弁護士への相談タイミング

電子契約に関連して実際に起こりうるトラブルとしては、次のようなものが考えられます。

  • 「電子サイン後に送られてきたPDFを見たら、合意した内容と異なる条項が入っていた」——契約書の内容確認を怠った場合に生じるリスク。署名前に必ず全文を精査する必要があります。
  • 「相手が『電子署名は担当者が勝手にやった。会社として合意していない』と主張してきた」——代理権・表見代理の問題。名刺・肩書き・メールのドメイン等で担当者の権限を確認しておくことが有効です。
  • 「サービス会社が廃業し、契約締結の記録が確認できなくなった」——サービス終了リスク。契約書PDFと署名証跡を自社でダウンロード・保存しておく運用が必須です。

このようなトラブルが発生した場合、あるいは「電子契約で結んだ契約条項は本当に有効か」という法的判断が必要な場合は、早めに横浜の弁護士に相談されることをお勧めします。電子契約の証拠評価や契約内容の解釈は専門的な判断を要するケースが少なくありません。

まとめ

電子契約は、適切に利用すれば紙の契約書と同等以上の法的効力を持ちうるものです。電子署名法第3条に基づく推定規定や、タイムスタンプ・通信ログ等の付随情報が証拠力を担保します。一方で、すべての契約が電子化できるわけではなく、書面・押印が法令上必要な契約類型では書面での締結が引き続き必要です。

中小企業が電子契約を安全に活用するためには、信頼性の高いサービスの選定、電子帳簿保存法への対応、社内規程の整備、相手方の本人確認といったポイントを押さえることが重要です。電子契約の導入や既存の電子契約をめぐるトラブルでお困りの際は、タングラム法律事務所(横浜)にお気軽にご相談ください。

電子契約の有効性・導入に関するご不明点は、
タングラム法律事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。

法律相談のご予約・お問い合せはこちら|タングラム法律事務所

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。また、法令の内容は記事執筆時点のものであり、その後の改正等により変更されている場合があります。

安心に繋げる横浜の企業法務

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。