故人のSNSアカウントはどうなる?削除・追悼アカウント・相続の可否を横浜の弁護士が解説
故人のSNSアカウントはどうなる?削除・追悼アカウント・相続の可否を横浜の弁護士が解説
家族が亡くなった後、遺品整理を進める中で「故人のスマートフォンに複数のSNSアカウントがある」「友人知人がまだメッセージを送り続けている」「本人が亡くなったことを知らずにコメントがついている」といった状況に直面し、戸惑う遺族は少なくありません。現代において、SNSは日常的なコミュニケーションの場であり、写真や思い出が大量に記録されたいわば「デジタルの遺品」でもあります。しかし、その扱いをめぐっては、法的にも手続き的にも未整備な部分が多く残されています。
本記事では、故人のSNSアカウントが法的に「相続の対象」になるかどうかという根本的な問いから、Facebook・Instagram・X(旧Twitter)・LINEなど主要プラットフォームごとの対応方針、遺族が取ることのできる手続き、そして生前にできる対策まで、相続問題を扱う弁護士の視点からわかりやすく解説します。
SNSアカウントは「相続」の対象になるのか?法的な基本
民法第896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。では、故人のSNSアカウントはこの「財産に属した権利義務」に含まれるのでしょうか。
結論からいえば、通常のSNSアカウントは相続の対象とはならないと考えられています。SNSのアカウントは、不動産や預金のような「物」ではなく、プラットフォーム事業者(FacebookやXの運営会社など)とユーザーとの間の「契約上の地位」にすぎません。そして各プラットフォームの利用規約には、「アカウントの第三者への譲渡・相続を禁止する」旨の条項が設けられているケースがほとんどです。
また、SNSアカウントには故人のプライバシーや個人情報が大量に含まれており、通信の秘密(日本国憲法第21条第2項)との関係からも、遺族が自由にアクセスできるとは限りません。いわゆる「一身専属権」の問題として、たとえ相続人であっても当然にアカウントを引き継ぐ権利があるとはいえない、というのが現在の法的な理解の大勢です。
主要SNSの死後対応まとめ(X・Facebook・Instagram・LINE)
各プラットフォームの対応方針を以下の表に整理します。なお、各社のポリシーは随時変更される場合があるため、実際の手続きにあたっては必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
| プラットフォーム | 追悼アカウント | 削除申請 | アカウントの引継ぎ | 申請できる人 |
|---|---|---|---|---|
| あり(管理人指定も可能) | 可能 | 不可 | 遺族・近親者 | |
| あり | 可能 | 不可 | 遺族・近親者 | |
| X(旧Twitter) | なし | 可能 | 不可 | 遺族・遺産管理人 |
| LINE | なし | 可能 | 不可 | 遺族 |
主要なSNSのいずれも、遺族がアカウントを「引き継いで使用する」ことは認められていません。できることは「削除」か(対応しているプラットフォームでは)「追悼アカウントへの移行」に限られます。
追悼アカウントとは?FacebookとInstagramの対応
「追悼アカウント」とは、ユーザーの死後にアカウントを特定の状態に変換し、故人を偲ぶ場として保存する機能です。FacebookとInstagramが対応しています。
Facebookの追悼アカウント
Facebookでは、故人のアカウントを追悼アカウントに移行すると、プロフィールに「追悼」の表示がされ、故人の友人・家族が思い出を投稿できるようになります。一方で、故人へのログインや新しいフレンドリクエストの送受信など、故人になりすますような操作はできなくなります。
Facebookの大きな特徴は、本人が生前に「追悼アカウント管理人」を指定できる点です。管理人に指定された人は、プロフィール写真の変更、投稿の固定、友人のリクエストへの対応などが可能になります。生前にこの設定をしておくことで、遺族の手続き負担を大幅に減らすことができます。
追悼アカウントへの移行申請は、故人のプロフィールURLや逝去日、死亡を証明できる書類(死亡証断書のコピーなど)を用意してFacebookの公式フォームから申請します。アカウントの完全削除を希望する場合も、同様に必要書類を提出して申請します。
Instagramの追悼アカウント
Instagramでも同様の追悼アカウント機能があります。追悼アカウントに移行されると、アカウントはフォロワーがつながっていた状態のまま保持されますが、誰もログインできなくなります。申請者は故人の近親者に限られ、故人のユーザー名・本名・逝去日のほか、申請者と故人の関係を示す書類が必要となる場合があります。なお、インターネット上に存在するプロフィールやコンテンツは基本的にそのまま保持される形で、プロフィールに「追悼」の旨が表示されます。
X(旧Twitter)・LINEのアカウント削除手続き
XとLINEには追悼アカウント機能がないため、遺族が取れる手続きは「削除申請」のみです。
X(旧Twitter)の削除申請
Xでは、権限のある遺産管理人または故人の家族が、Xのヘルプセンターから削除申請を行うことができます。申請の過程では、申請者の身分証明書、故人の死亡証明書のコピー、申請者と故人との関係を証明する書類などを求められることがあります。書類のやり取りや確認のため、手続きに時間がかかる場合もあります。なお、X側からログイン情報が開示されることはなく、遺族がアカウントの内容にアクセスできるようになるわけではありません。
LINEのアカウント削除手続き
LINEについても、遺族からの申し出によりアカウントの削除手続きを受け付けています。ただし、LINEは端末とひも付いたサービスであるため、故人のスマートフォンが手元にある場合は、まずLINEのサポートに連絡して状況に応じた対応を確認することをお勧めします。LINEのトーク内容は端末内に保存されているため、削除前に遺族が確認しておくべきデータがないかを慎重に判断してください。
財産的価値の高いSNSアカウントの相続はどう考える?
通常の個人的なSNSアカウントは財産的価値がほとんどなく「一身専属的な権利」として扱われますが、ビジネスとして運営されているアカウントの場合は別途の検討が必要です。
例えば、数万人以上のフォロワーを持つYouTubeチャンネル、インスタグラマーとしてのアカウント、TikTokアカウントなど、広告収入や案件収入が発生しているものは財産的価値を持ちます。このような場合、アカウント自体あるいはそこから得られる収益権が相続財産にあたる可能性があります。ただし、各プラットフォームの利用規約上、アカウントの承継が認められないケースがほとんどであるため、実際に収益を引き継ぐためにはプラットフォームとの交渉や法的手続きが必要になることも考えられます。
また、SNSと連携した収益チャンネル(YouTubeのアドセンス収益、アフィリエイト報酬など)については、それぞれの契約形態によって相続の可否が異なります。このような財産的価値のあるデジタル資産については、横浜をはじめ各地の弁護士に相談し、個別に精査することを強くお勧めします。
遺族が困らないための生前対策
SNSアカウントの死後の扱いをめぐるトラブルを防ぐには、本人の生前における準備が最も効果的です。具体的には以下のような対策が考えられます。
アカウント一覧の作成とエンディングノートへの記録
自分が利用しているSNSアカウントの一覧(サービス名・ID・希望する死後の処分方法)をまとめ、エンディングノートや信頼できる家族に伝えておくことが有効です。エンディングノートは法的な拘束力はありませんが、遺族が迷いなく手続きを進めるための指針となります。なお、パスワードそのものをエンディングノートに記録することはセキュリティ上のリスクがあるため、専用のパスワード管理ツールを活用した上で、その使用方法だけを伝える形が望ましいでしょう。
Facebookの追悼アカウント管理人の事前指定
Facebookを利用している方は、設定画面から「追悼アカウント管理人」を生前に指定しておくことをお勧めします。信頼できる家族や友人を管理人として登録しておくと、死後にスムーズに対応してもらうことができます。また、アカウントの完全削除を希望する場合も、Facebookの設定でその旨を事前に設定しておくことができます。
財産的価値の高いアカウントは遺言書での対応を検討
ビジネス的な価値を持つアカウントや関連する収益・著作権がある場合は、遺言書に「デジタル資産の承継に関する条項」を盛り込むことを検討してください。エンディングノートと異なり、遺言書には法的な効力があります。ただし、各プラットフォームの利用規約との整合性や、受取人が実際に承継できるかどうかについては、相続を扱う弁護士への相談が欠かせません。
不要なアカウントの生前整理
利用していないSNSアカウントは、生前に削除しておくことをお勧めします。使われていないアカウントが死後に放置されると、スパム被害やなりすまし被害のリスクが残る上、遺族の手続き負担にもなります。定期的にアカウントの棚卸しを行い、不要なものは早めに整理しておく習慣をつけることが大切です。
まとめ|デジタル遺品の問題は早期に専門家へ相談を
故人のSNSアカウントは、法的には原則として相続の対象とはならず、各プラットフォームの利用規約に基づいた手続き(削除または追悼アカウントへの移行)を取ることになります。しかし、財産的価値の高いアカウントの扱いや、相続財産と関連した収益権の問題など、個別の事情によっては法的な検討が必要になるケースも少なくありません。
また、デジタル遺品の問題は、相続手続き全体の中でも見落とされがちな分野ですが、放置しておくとプライバシーの侵害やなりすましのリスク、あるいは相続人間でのトラブルに発展する可能性もあります。相続に関する問題はできる限り早期に弁護士に相談することで、遺族の負担を大幅に軽減できます。横浜エリアで相続問題にお困りの方は、タングラム法律事務所へお気軽にご相談ください。
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