不貞慰謝料が払えない場合の対応|分割・減額・放置リスクを弁護士が解説
不貞慰謝料が払えない場合の対応|分割・減額・放置リスクを弁護士が解説
ある日突然、内容証明郵便で数百万円もの不貞慰謝料を請求された——。金額の大きさに動揺し、「とてもこんな額は払えない」「一括では用意できない」と頭を抱えている方は少なくありません。これからの生活を考えると、どう対応してよいか分からなくなるのも当然のことです。
しかし、請求された金額をそのまま支払わなければならないとは限りませんし、一括で払えないからといって放置してよいわけでもありません。この記事では、不貞慰謝料を請求されたものの払えない・一括では用意できないという方に向けて、減額交渉・分割払い・自己破産の可否・放置した場合のリスクといった選択肢を、横浜の弁護士が整理して解説します。
払えないときにまず確認すべき3つのこと
「払えない」と感じたときに、慌てて全額を借金して支払ったり、逆に何もせず放置したりするのは避けたいところです。まずは冷静に、次の3点を確認しましょう。
1.請求額は妥当か(相場との比較)
請求書に書かれた金額は、あくまで相手方が主張している金額にすぎません。裁判で認められる不貞慰謝料の額は、婚姻期間、不貞の期間・回数、離婚に至ったかどうかなどを総合的に考慮して判断される傾向があり、離婚に至らないケースでは数十万円から100万円程度、離婚に至ったケースでも200万円から300万円程度が一つの目安とされることが多いといえます。請求額がこの目安を大きく上回る場合は、減額交渉の余地があります。
2.そもそも支払義務があるか
不貞慰謝料は、民法709条・710条に基づく不法行為責任として請求されます。裏を返せば、故意・過失や権利侵害といった要件を満たさなければ支払義務は生じません。既婚者であることを知らず、知らなかったことに落ち度がなかった場合や、不貞とされる行為の当時すでに夫婦関係が破綻していた場合などには、そもそも責任が否定されたり、大幅に減額されたりする可能性があります。
3.消滅時効が完成していないか
不貞慰謝料の請求権には、民法724条により、被害者が損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年という消滅時効があります。すでに時効期間が経過している場合には、時効を援用することで支払いを免れられる可能性があります。時効の起算点の判断は難しいため、慎重な検討が必要です。
減額交渉という選択肢
「払えない」場合の第一の選択肢は、支払総額そのものを減らす減額交渉です。慰謝料額は事情によって変動するため、減額が認められやすい事情があれば、これを主張して交渉します。代表的な減額事由は次のとおりです。
| 減額が認められやすい事情 | ポイント |
|---|---|
| 婚姻関係がすでに破綻していた | 不貞の前から別居・家庭内別居が続いていたなど、保護すべき婚姻共同生活が失われていた場合 |
| 既婚者と知らなかった | 独身と偽られていたなど、既婚を知らなかったことに相当の理由がある場合 |
| 不貞の期間・回数が限定的 | 短期間・少数回にとどまり、関係が継続的でなかった場合 |
| 主たる責任は配偶者側にある | 配偶者から強く誘われた等、相手方配偶者側の関与が大きい場合 |
| すでに一定の清算が済んでいる | 配偶者から慰謝料を受け取り済みで、二重取りにあたる部分がある場合 |
減額交渉では、こうした事情を裏づける事実や資料を示しながら、感情的にならず冷静に主張することが大切です。相手方が納得すれば、示談によって支払額を確定させ、清算条項を入れて紛争を終わらせることができます。
分割払いにしてもらう方法と注意点
総額が相当と考えられる場合でも、一括では用意できないことは珍しくありません。支払方法について法律上の制限はなく、当事者双方が合意すれば分割払いも可能です。ただし、相手方には本来一括で受け取る利益があるため、応じてもらうには工夫が必要です。
- 現実的な支払計画を提示する:収入や生活状況を具体的に示し、無理なく続けられる月額と期間を提案します。極端に低い月額や長すぎる期間は受け入れられにくい傾向があります。
- 支払日を給料日後に設定する:毎月末や25日など、収入のタイミングに合わせて滞納を防ぎます。
- 公正証書の作成を検討する:分割に応じてもらう代わりに、支払いを怠った場合に強制執行できる強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することで、相手方の不安を和らげ、合意に至りやすくなる場合があります。
自己破産すれば免責されるのか
「自己破産すれば慰謝料を払わなくてよくなるのでは」と考える方もいます。しかし、不貞慰謝料については注意が必要です。破産法253条1項2号は、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権を、免責されない債権(非免責債権)と定めています。
ここでいう「悪意」とは、単なる故意を超えて、積極的に相手を害する意図をいうと解されています。裁判例では非免責債権に当たらないと判断されたものもあれば、悪意が認定される場合もあり、事案によって結論が分かれます。悪意が認定されれば自己破産をしても支払義務は残るため、安易に「破産すれば解決する」と考えるのは適切ではありません。
支払いを放置・無視した場合のリスク
「払えないから」といって請求を放置することは、最も避けたい対応です。放置すると、次のような不利益が生じるおそれがあります。
- 訴訟を提起される:交渉に応じないと、相手方は訴訟に踏み切ることがあります。呼出しに応じず答弁書も出さなければ、相手の主張どおりの判決(欠席判決)が出るおそれがあります。
- 強制執行を受ける:確定判決や強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、給与や預貯金、不動産などの財産を差し押さえられる可能性があります。給与差押えは勤務先に知られる契機にもなります。
- 遅延損害金が加算される:支払いが遅れると、原則として年3%(2020年4月施行の改正民法による法定利率。2026年4月以降も年3%に据え置き)の遅延損害金が上乗せされ、総額がかえって増えていきます。
放置してもリスクが積み上がるだけで、解決にはなりません。払えない事情があるなら、それを伝えたうえで支払える形に条件を組み直す交渉を進めるほうが建設的です。
弁護士に依頼するメリット
払えないケースこそ、弁護士に相談する意味があります。弁護士は、まず請求額が相場に照らして妥当かを検討し、減額の余地があれば根拠をもって交渉します。そのうえで、収入や生活状況をふまえた現実的な分割案を組み立て、相手方や相手方代理人と直接やり取りします。
ご本人だけで交渉すると、感情的な対立に発展したり、不利な条件の示談書に署名してしまったりすることもあります。夜職やパパ活に関連して既婚者と知らずに交際していたケースなど、事情によっては減額の主張が通りやすい場面もあり、当事務所では請求された不倫慰謝料への対応(夜職・パパ活の慰謝料請求への対応)にも取り組んでいます。横浜・新横浜で不貞慰謝料の請求を受けてお困りの方は、早めにご相談ください。
よくある質問
Q1.不貞慰謝料を一括で払えない場合、分割払いは認められますか。
支払方法について法律上の制限はなく、当事者双方が合意すれば分割払いも可能です。ただし相手方には一括で受け取る利益があるため、応じてもらうには収入・生活状況を具体的に示し、現実的な月額と期間を提案することが重要です。分割に応じてもらう代わりに、支払いを怠った場合に強制執行できる強制執行認諾文言付きの公正証書を作成するケースもあります。
Q2.自己破産すれば不貞慰謝料の支払いを免れられますか。
破産法253条1項2号は、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権を非免責債権と定めています。ここでの悪意は積極的に相手を害する意図を指すと解されており、これが認定された場合には免責されず支払義務が残る可能性があります。単なる不貞行為にとどまるかは事案により判断が分かれるため、安易に自己破産で解決できると考えるのは適切ではありません。
Q3.支払いを放置・無視するとどうなりますか。
請求を放置すると訴訟を提起され、対応しなければ相手の主張どおりの判決が出るおそれがあります。確定判決や公正証書があれば、給与や預貯金などの財産を差し押さえる強制執行が可能になります。さらに支払いが遅れると、原則として年3%の法定利率による遅延損害金が加算されるため、放置は不利になりやすい選択です。
Q4.請求された金額が相場より高いと感じたら払わなくてよいですか。
請求額はあくまで相手方の主張であり、そのまま支払義務が確定するわけではありません。婚姻関係がすでに破綻していた、不貞の期間・回数が限定的である、既婚者と知らなかったことに相当の理由があるといった事情があれば、減額が認められる場合があります。金額の妥当性を確認したうえで交渉することが大切です。
まとめ
不貞慰謝料を請求されたが払えない・一括では用意できないという場合でも、取りうる選択肢はあります。まずは請求額が妥当か、支払義務があるか、時効が完成していないかを確認し、減額交渉や現実的な分割払いの提案へ進めるのが基本の流れです。自己破産は悪意が認定されれば免責されない可能性があり、請求の放置は遅延損害金や強制執行といった不利益を招くだけで、いずれも根本的な解決にはつながりません。
払えない事情があるからこそ、早い段階で弁護士に相談し、減額の可能性を検討しつつ、無理のない支払条件へと組み直すことが、結果的にご自身の負担を軽くすることにつながります。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることをおすすめします。
不貞慰謝料を請求されてお困りの方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。請求額が払えない・一括では用意できないという場合でも、減額交渉や現実的な分割案の検討を通じて、ご事情に応じた解決を目指します。まずはお気軽にご相談ください。
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