不貞慰謝料を請求されたら会社や家族にバレる?対応を弁護士が解説
不貞慰謝料を請求されたら会社や家族にバレる?対応を弁護士が解説
不貞慰謝料を請求する通知書が届いたとき、多くの方が金額と同じくらい気にされるのが「これは会社や家族に知られてしまうのか」という点です。相手方から「払わないなら職場に言う」と告げられ、そちらのほうが怖くて冷静に判断できない、というご相談も少なくありません。
この記事では、不貞慰謝料を請求された方に向けて、周囲に知られる可能性がある場面はどこか、相手方から暴露をほのめかされた場合にどのような法的問題が生じるのか、そして知られるリスクを下げるために実務上できることは何かを、条文に沿って整理します。
不貞慰謝料を請求されただけでは、周囲に自動的には知られない
まず前提として、不貞慰謝料の請求は私人と私人の間の民事上の請求です。刑事事件ではないため、請求されたこと自体で前科・前歴のような公的な記録が残ることはありませんし、勤務先や家族に裁判所や役所から通知が届く仕組みもありません。
内容証明郵便が届いても、封筒の外側に中身は書かれていません。したがって「請求された」という事実だけを理由に、自動的に周囲に伝わることはないと考えてよいでしょう。知られるとすれば、相手方が自分の意思で誰かに伝えた場合か、後述するように手続の性質上どうしても第三者が関わる場合に限られます。請求への初動対応の全体像は、不貞慰謝料の内容証明が届いたときの対応もあわせてご覧ください。
「職場に伝える」と言われた場合|相手方の行為に生じ得る法的問題
請求する側が交渉を有利に進めようとして、勤務先や家族への暴露をほのめかすことがあります。こうした言動は、内容や態様によっては次のような問題を生じ得ます。
| 相手方の行為 | 問題となり得る法的責任 |
|---|---|
| 不特定または多数の人に不貞の事実を告げる | 名誉毀損罪(刑法230条。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金) |
| 「言いふらす」と告げて怖がらせる | 脅迫罪(刑法222条。2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金) |
| 暴露をちらつかせて義務のない支払いをさせる | 強要罪(刑法223条。3年以下の拘禁刑) |
| 私生活上の事実をみだりに第三者へ知らせる | プライバシー侵害を理由とする損害賠償(民法709条) |
ここで注意していただきたいのは、相手方にこうした問題があるとしても、それによって慰謝料の支払義務そのものが当然に消えるわけではないという点です。両者は別の問題として整理し、暴露をほのめかされた日時と内容は記録に残したうえで、慰謝料の当否・金額の検討は冷静に進める必要があります。なお、請求する側から見た同じ問題は不倫相手の職場・会社に連絡する法的リスクの記事で扱っています。
実際に周囲へ知られる可能性がある場面
段階ごとに、第三者が事情を知り得る場面を整理すると次のとおりです。
| 段階 | 周囲に知られる可能性 |
|---|---|
| 通知書の受領・示談交渉 | 低い。書面のやり取りは当事者間で完結する。ただし相手方が独自に周囲へ伝える可能性は残る |
| 訴訟 | 法廷は公開であり、訴訟記録も原則として閲覧の対象になる(後述の制限あり) |
| 判決後の強制執行(給与差押え) | 差押命令は勤務先にも送達されるため、勤務先が事情の一端を知ることになる |
実務上、最も現実的なリスクは最後の給与差押えです。判決や公正証書があるのに支払わずに放置すると、勤務先に裁判所から書類が届く可能性があります。逆にいえば、交渉段階できちんと解決してしまうことが、周囲に知られないための最も確実な方法ということになります。
訴訟になった場合の記録の閲覧と「閲覧等の制限」
民事訴訟の記録は、原則として何人も裁判所書記官に対して閲覧を請求できるとされています(民事訴訟法91条1項。電磁的訴訟記録については同法91条の2)。裁判の公開という要請に基づく制度です。
もっとも、不貞をめぐる事件では、記録に私生活の極めて立ち入った事実が記載されます。そこで同法92条1項は、訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載されており、第三者がその部分を閲覧すると当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることを疎明した場合に、裁判所が決定で、閲覧等をすることができる者を当事者に限ることができると定めています。
さらに、この申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、第三者は当該部分の閲覧等を請求することができません(同条2項)。訴訟に進む場合には、この閲覧等制限の申立てを早い段階で検討することになります。
知られるリスクを下げるために実務上できること
交渉の進め方によって、周囲に知られる可能性はある程度コントロールできます。
第一に、代理人を立てることです。弁護士が就任して通知すれば、以後のやり取りは代理人を窓口に行われます。弁護士職務基本規程52条は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なくその代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならないと定めており、相手方に弁護士が付いている場合には、本人の携帯や自宅への直接の連絡は止まるのが通常です。感情的なやり取りが減ることで、暴露をほのめかされる場面自体を減らせます。
第二に、連絡方法と送付先を整理することです。書面の送付先を代理人の事務所にしておけば、自宅に書面が届いて家族の目に触れる事態を避けやすくなります。
第三に、示談書に口外禁止条項(秘密保持条項)を設けることです。誰に対して、何を、いつまで口外しない義務なのかを具体的に定め、違反した場合の取扱いも決めておきます。条項の設計については示談書の口外禁止条項・秘密保持条項の記事で詳しく解説しています。
なお、職業や働き方によって、知られることの影響の大きさは大きく異なります。夜職・パパ活に関連して慰謝料を請求された方向けには、夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応のページもご用意しています。
やってはいけない対応
周囲に知られたくないという気持ちが先に立つと、かえって不利になる対応をとってしまいがちです。
- 相手方の言い値をその場で承諾する。金額の妥当性を検討する機会を失います
- その場しのぎで「払います」と書面や録音に残す。支払義務を認めたものと評価される可能性があります
- 連絡を無視する。訴訟に移行すれば、かえって公開の法廷で争うことになります
- 相手方の配偶者や関係者に直接連絡して口止めを図る。新たな紛争を招きかねません
不貞慰謝料を請求された側の対応全般については、不貞慰謝料請求の取扱分野ページもあわせてご覧ください。
よくある質問
不貞慰謝料を請求されると、会社に自動的に連絡がいきますか。
いいえ。不貞慰謝料の請求は私人間の民事上の請求であり、請求されたこと自体が勤務先に通知される仕組みはありません。前科・前歴のような公的な記録が残るものでもありません。周囲に知られるとすれば、相手方が自分で伝えた場合か、判決後の給与差押えなど手続の性質上どうしても勤務先が関与する場合に限られます。
「支払わなければ職場にバラす」と言われました。これは違法ではないのですか。
内容や態様によっては、名誉毀損罪(刑法230条)、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)にあたる可能性があり、民事上もプライバシー侵害として損害賠償の対象となり得ます。もっとも、こうした発言があったからといって支払義務そのものが当然になくなるわけではありません。発言の日時と内容を記録として残したうえで、慰謝料の当否とは切り離して対応を検討することが重要です。
裁判になったら、誰でも記録を見られるのですか。
民事訴訟の記録は、原則として何人も裁判所書記官に対し閲覧を請求できるとされています(民事訴訟法91条1項、電磁的訴訟記録については同法91条の2)。ただし、私生活についての重大な秘密が記載され、第三者が閲覧すると社会生活を営むのに著しい支障が生じるおそれがあるときは、当事者の申立てにより閲覧等できる者を当事者に限る決定を求めることができます(同法92条1項)。申立てがあると、その裁判が確定するまで第三者は請求できません(同条2項)。
示談で解決すれば、後から周囲に言いふらされる心配はなくなりますか。
示談書に口外禁止条項(秘密保持条項)を入れておくことで、当事者間で口外しない義務を明確にできます。違反した場合の違約金を定めておく例もあります。ただし条項の書き方によっては範囲が不明確になり、実効性が下がることがあります。誰に対して、何を、いつまで口外しない義務なのかを具体的に定めておくことが大切です。
まとめ
不貞慰謝料を請求されただけで、勤務先や家族に自動的に知られることはありません。周囲に知られる可能性が現実に高まるのは、訴訟に進んだ場合と、判決後に給与の差押えを受けた場合です。訴訟では記録の閲覧が原則として開かれていますが、私生活についての重大な秘密については閲覧等の制限を申し立てる余地があります(民事訴訟法92条)。
相手方から暴露をほのめかされたとしても、それに動揺して不利な条件を受け入れる必要はありません。代理人を立てて窓口を一本化し、口外禁止条項を含む形で交渉段階のうちに解決することが、結果的に最も周囲に知られにくい進め方です。判断に迷う段階で、横浜の弁護士など専門家に相談しておくことをおすすめします。
不貞慰謝料を請求され、周囲に知られたくないとお考えの方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料を請求された側からのご相談を数多くお受けしています。金額の妥当性はもちろん、勤務先や家族に知られないための進め方についても、横浜の弁護士がご事情を伺ったうえでご説明します。
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