タングラム法律事務所

名誉毀損の成立要件|請求された側の5つの検討順序を弁護士が解説

名誉毀損の成立要件|請求された側の5つの検討順序を弁護士が解説

名誉毀損の成立要件|請求された側の5つの検討順序を弁護士が解説

名誉毀損の成立要件|請求された側の5つの検討順序を弁護士が解説

名誉毀損の成立要件|請求された側の5つの検討順序を弁護士が解説

損害賠償を求める通知書には、対象となった投稿が引用され、それが名誉毀損にあたると書かれています。しかし、相手方がそう主張しているというだけで、名誉毀損の成立が確定したわけではありません。請求を受けた側にとって最初の問いは、金額がいくらかではなく、そもそも責任を負う立場にあるのかです。

この記事では、名誉毀損が成立するかどうかを、5つの段階に分けて順に検討する方法を示します。どこかの段階が欠ければ責任は生じません。すべて認められる場合には、次に金額の検討に移ることになります。個々の論点の詳細は、それぞれの解説記事にリンクしています。

検討の全体像

順序検討する事項争点になりやすい場面
1発信者性——投稿したのは誰か回線を家族・同居人が利用していた場合
2公然性——不特定または多数が知り得たか閉じた場・少人数のやり取り
3同定可能性——誰のことか分かるか氏名や店名が書かれていない投稿
4社会的評価の低下——事実の摘示か、意見・論評か感想・評価にとどまる書き込み
5違法性阻却——真実性・公共性・公益目的等実際にあった出来事を書いた場合

1 投稿したのは、本当にあなたか

発信者情報の開示によって明らかになるのは、通常、インターネット接続契約の契約者の氏名と住所です。契約者と、実際にその投稿をした人物が同一であるとは限りません。家族や同居人が同じ回線を利用していた場合、あるいは職場や店舗の共用回線であった場合には、契約者と発信者が別人である可能性があります。

もっとも、「自分ではない」と述べるだけでは足りません。当時その回線を誰が使い得たのか、投稿された時間帯に自分が何をしていたのかといった、具体的な事情を示す必要があります。逆に言えば、この点に事情がある事案では、早い段階で整理しておく価値があります。

2 不特定または多数の人が知り得たか(公然性)

名誉毀損は、公然と事実を摘示して他人の社会的評価を低下させることによって成立します。ここでいう「公然」とは、不特定または多数の人が知り得る状態を指すと解されています。

インターネット上の投稿は、誰でも閲覧できる場所にされることが多いため、この要件が問題になる場面は限られます。ただし、限られたメンバーしか閲覧できないグループや、1対1のやり取りが対象とされている事案では、検討の余地があります。この論点は名誉毀損の「公然性」とDM・1対1のやり取りを扱った記事で詳しく説明しています。

3 読んだ人に、誰のことか分かるか(同定可能性)

名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価であるとされています(最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁)。社会からの評価が下がったといえるためには、その投稿を読んだ人が、対象となっている人物を特定できることが前提になります。

氏名が書かれていなくても、勤務先・地域・経歴といった情報の組合せや、前後の投稿の文脈から特定できる場合には、同定可能性が認められ得ます。反対に、読んだ人には誰のことか分からない書き方であれば、この点を争う余地があります。詳しくは名前が書かれていない投稿と同定可能性をご覧ください。

4 事実の摘示か、意見・論評か

「あの店は不衛生だ」と書くのと、「あの店で食中毒が発生した」と書くのとでは、法的な扱いが異なります。前者は評価の表明、後者は事実の摘示です。最高裁は、証拠等による証明になじまない物事の価値・善悪・優劣についての批評や論議は意見ないし論評にあたるとして、両者を区別しています(最判平成16年7月15日民集58巻5号1615頁)。

ただし、意見・論評であれば責任を負わないというわけではありません。最高裁は、事実を摘示するものであるか意見ないし論評を表明するものであるかを問わず、名誉毀損は成立し得るとしています(最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁)。区別が意味を持つのは、次の違法性阻却の場面で、要件が異なるためです。

なお、「死ね」「消えろ」といった短い罵倒は、具体的な事実を含まないため社会的評価の低下を認めにくく、名誉毀損ではなく名誉感情の侵害として扱われることがあります。この場合、認められる慰謝料額の水準は名誉毀損の事案より低くなる傾向があります。

5 違法性が阻却される場合

事実を摘示した場合

摘示した事実が公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的でされ、かつ摘示された事実の重要な部分が真実であると証明された場合には、違法性が阻却されるとされています(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。真実であることが証明できなくても、真実と信じるについて相当の理由があった場合には、故意・過失が否定されると解されています。

実務上のつまずきは、真実性そのものより公共性と公益目的にあります。個人の私生活上の出来事や、恨みを動機とする暴露的な投稿では、これらが認められにくい傾向があります。3つの要件の関係は名誉毀損が成立しない場合の3要件で整理しています。

意見・論評を表明した場合

意見ないし論評の表明については、その前提としている事実が重要な部分について真実であり、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない場合に、違法性が阻却されるとされています(前掲最判平成9年9月9日)。「意見だから自由」ではなく、前提事実の真実性と、表現の穏当さという2つの関門があるということです。

争える場合と、金額の交渉に移る場合

以上の5段階を検討して、いずれかの段階に実質的な争点がある事案では、責任そのものを争う方針が考えられます。一方、投稿したのは自分であり、誰のことか明らかで、根拠のない事実を書いてしまったという事案では、責任を争うより、請求されている金額が事案に見合うものかという検討に軸足を移すほうが現実的です。

どちらの方針を取るかで、相手方への回答の書き方も変わります。方針を決めないまま返信すると、争えたはずの点を自ら手放すことにもなりかねません。横浜の当事務所でも、受任後はまずこの見極めから着手しています。請求を受けた段階の対応全般については、損害賠償請求対応のページにまとめています。

よくある質問

投稿したのが自分だと決めつけられています。争えますか?

開示されるのは回線の契約者情報であり、実際に投稿した人物と契約者が一致するとは限りません。家族や同居人が利用していた場合など、契約者と発信者が別人である可能性があるときは、その点自体が争点になります。ただし主張するだけでは足りず、当時の利用状況を具体的に示す必要があります。

名前を書いていなければ名誉毀損にはなりませんか?

氏名が書かれていなくても、投稿の内容や前後の文脈から誰のことか特定できる場合には、名誉毀損が成立し得ます。これを同定可能性といいます。逆に、読んだ人が誰のことか分からない書き方であれば、この点を争う余地があります。

感想や意見を書いただけでも名誉毀損になりますか?

最高裁は、事実を摘示するものであるか、意見ないし論評を表明するものであるかを問わず名誉毀損は成立し得るとしています(最判平成9年9月9日民集51巻8号3804頁)。ただし、意見・論評の表明については、前提とした事実が真実であり、人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱していない場合には、違法性が阻却されるとされています。

書いたことが事実であれば、責任を負いませんか?

真実であれば直ちに免責されるわけではありません。摘示した事実が公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的でされ、かつ重要な部分が真実であると証明された場合に違法性が阻却されるとされています(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。私生活上の事実を暴露する投稿では、公共性・公益目的が認められにくい傾向があります。

争える余地があるかどうかは、どう見分ければよいですか?

発信者性、公然性、同定可能性、社会的評価の低下、違法性阻却という順に検討していくと、どの段階に争点があるかが整理できます。どこかの段階が欠ければ責任は生じず、いずれも認められる場合は金額の検討に移ることになります。

まとめ

名誉毀損の成否は、「ひどい書き込みかどうか」という感覚ではなく、要件を順に確かめることで判断されます。請求を受けた側にとって重要なのは、5つの段階のうち自分の事案がどこでつまずいているのか、あるいはどこにも問題がないのかを、早い段階で把握しておくことです。

この検討には、投稿の全文、掲載されていた場所、前後のやり取り、閲覧できた範囲といった資料が必要になります。当事務所は横浜に事務所を置き、ネット上の権利侵害を理由に開示請求・損害賠償請求を受けた方のご相談を扱っています。ITエンジニアの経験を持つ弁護士が、通信の記録やタイムスタンプの意味を含めて内容を確認します。やり取りはオンラインで完結し、来所の必要はありません。

その請求に、争う余地があるかを確かめたい方へ

タングラム法律事務所では、インターネット上の権利侵害を理由に損害賠償請求を受けた方の対応を数多くお引き受けしています。相手方に回答する前に、まずは通知書と投稿の内容をお持ちください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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