タングラム法律事務所

Xの投稿で開示請求されたら?意見照会書と投稿者側の対応を解説

Xの投稿で開示請求されたら?意見照会書と投稿者側の対応を解説

Xの投稿で開示請求されたら?意見照会書と投稿者側の対応を解説

Xの投稿で開示請求されたら?意見照会書と投稿者側の対応を解説

Xの投稿で開示請求されたら?意見照会書と投稿者側の対応を解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月30日 最終更新日:2026年9月30日

X(旧Twitter)に以前投稿した内容について、Xから「アカウントに関する法的な要請を受け取った」という趣旨の通知が届いた。しばらくして、今度は契約している携帯電話会社やプロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が郵送されてきた――。匿名のアカウントで投稿していたのに、なぜ自分のところに書面が届いたのか、このまま氏名や住所が相手に知られてしまうのかと、不安を感じている方は少なくありません。

この記事では、Xの投稿について開示請求を受けた投稿者(発信者)側の立場から、書面が届くまでの仕組み、X特有の「ログイン型」の手続で確認すべき点、意見照会書への回答の考え方、開示された後の流れとやってはいけない対応を、横浜の弁護士が解説します。

結論から言えば、Xの投稿で意見照会書が届いた時点では、まだ氏名・住所は相手に開示されていません。Xでは投稿そのものではなく「ログイン時の通信」などから契約者をたどるため、投稿した人と回線契約者が本当に一致するのかという点が争点になりやすいのが特徴です。回答期限内に、対象の投稿と日時を確認したうえで、同意・不同意の方針を決めることが重要です。

Xの投稿で開示請求されるまでの流れ(ログイン型の仕組み)

Xの投稿をめぐる開示請求は、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。2025年4月1日施行。旧プロバイダ責任制限法)に基づく手続です。投稿で権利を侵害されたと主張する人が請求する側、投稿した人が発信者にあたります。

段階誰から誰へ投稿者から見えること
①ログイン時のIPアドレス・電話番号等の開示請求請求者 → XXから通知が届くことがある
②回線事業者の判明IPアドレスから割り出し通常は何も見えない
③契約者の氏名・住所の開示請求請求者 → 回線事業者―
④意見照会回線事業者 → 回線契約者意見照会書が郵送で届く
⑤開示の可否の判断回線事業者・裁判所開示されれば氏名・住所が相手に渡る

Xのように、ログインした状態で投稿するサービスを「ログイン型」と呼びます。Xは投稿時のIPアドレスを保有していないことが多いとされ、請求者は、アカウントへのログインなど投稿に関連する通信(侵害関連通信。情プラ法5条3項)の記録や、登録された電話番号等の開示を求めます(同法5条1項3号)。そのうえで、ログインに使われた回線の事業者に契約者の氏名・住所の開示を求めます(同法5条2項)。この仕組みはログイン型SNSの「特定発信者情報」開示請求の記事で詳しく解説しています。

なお、Xは、アカウントに関する法的要請を受けた場合、禁止されている場合などを除き、登録メールアドレスやアプリ内の通知によってアカウント保有者に知らせる方針を公式ヘルプで公表しています。この通知が届いた段階は①にあたり、まだ氏名・住所が請求者に渡ったわけではありません。

意見照会書が届いたら最初に確認すること

回線事業者は、開示請求を受けたとき、発信者と連絡することができない場合などを除き、発信者の意見を聴かなければならないとされています(情プラ法6条1項)。これが意見照会書の根拠です。回答期限は2週間程度とされることが多いため、まず次の点を確認してください。

  • 差出人と回答期限――どの回線事業者から、いつまでに回答を求められているか
  • 対象の投稿――アカウント名、投稿のURL・日時・本文。複数の投稿やリポストがまとめて対象になっていないか
  • 通信の日時――記載されているのが投稿日時か、ログイン日時か
  • 侵害されたとされる権利――名誉権、プライバシー、名誉感情、肖像権など
  • 開示を求められている情報――氏名・住所・電話番号・メールアドレスなど

手続全体の流れは開示請求されたらどうなるか(意見照会から損害賠償までの流れ)でも整理しています。

X特有の争点――投稿者と回線契約者は一致するか

ログイン型の手続では、「そのログインをした人が、問題の投稿をした人か」という点が問題になりやすくなります。次のような事情がある場合は、回答書で具体的に指摘できる可能性があります。

  • アカウントを家族や知人と共有していた、またはパスワードを他人が知っていた
  • 自宅のWi-Fiやスマートフォンを家族・同居人も使っていた
  • 記載されたログイン日時と投稿日時が大きく離れている
  • アカウントが乗っ取られていた時期がある

また、Xから登録電話番号が開示された場合、請求者は弁護士会照会などにより携帯電話会社に契約者を照会することがあります。この経路では、意見照会書が届かないまま氏名・住所が判明する可能性もあります。

SNS・掲示板ごとの手続の違いは掲示板・SNS別の削除・投稿者特定のページでもご案内しています。

開示に同意する・しないの判断

回答書は通常「開示に同意する」「開示に同意しない」の選択式で、同意しない場合は理由を記載します。

回答想定される展開
同意する回線事業者が任意に開示し、氏名・住所が請求者に渡る。その後、損害賠償請求や示談交渉に進むことが多い
同意しない回線事業者は任意開示を控えるのが通常。請求者が裁判所の発信者情報開示命令を求めるかを判断する
回答しない言い分が記録に残らないまま手続が進む。有利に働くことはない

不同意と回答しても、裁判所が要件を満たすと判断すれば開示命令が出されます。その場合、回線事業者は、開示に反対していた発信者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければなりません(情プラ法6条2項)。開示命令の決定に不服がある当事者は、告知を受けた日から1か月以内に異議の訴えを提起できます(同法14条1項)。

開示が認められるには、投稿によって権利が侵害されたことが明らかであることなどが必要です(同法5条1項)。名誉毀損にあたる事実の摘示でも、公共の利害に関する事実について公益目的で投稿され、真実であることが証明されれば違法性がないとされます(最高裁昭和41年6月23日判決)。意見・論評についても、前提事実が重要な部分で真実であり、人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱していなければ違法性を欠くとされています(最高裁平成9年9月9日判決)。不同意の理由は、こうした点を投稿の文言に即して具体的に書くことが大切です。書き方の基本は意見照会書の回答書を自分で書く方法で解説していますが、書き方次第で投稿者であることや不利な事情を自ら認める結果になりかねません。当事務所の意見照会対応のページもあわせてご覧ください。

開示された後の損害賠償請求と時効

氏名・住所が開示されると、多くの場合、請求者の代理人弁護士から損害賠償を求める通知書が届きます。根拠は不法行為(民法709条・710条)で、慰謝料に加えて、投稿者の特定に要した調査費用や弁護士費用相当額が請求されるのが一般的です。

慰謝料の水準について、法務省が令和8年に公表した「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」では、分析対象の裁判例における慰謝料の中央値が30万円程度と示されています。ただし実際の請求額はこれを大きく上回ることもあります。損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。

やってはいけない対応

  • 書面を放置する――反論の機会を自ら手放すことになります
  • 慌ててアカウントや投稿を削除する――請求者は投稿画面を保存しているのが通常で、削除しても既に生じた責任は消えません。経緯によっては不利に評価されるおそれもあります
  • Xで反論や謝罪をポストする、相手にDMを送る――新たな投稿が別の権利侵害と評価されたり、投稿者であることの裏付けになったりするおそれがあります

よくある質問

Xから「法的要請を受け取った」という通知が来ました。もう氏名は知られていますか。

通知が届いた時点では、通常、まだ氏名・住所は開示されていません。Xに対する開示請求は、ログイン時のIPアドレスや電話番号などを対象とするもので、その後に回線事業者への請求が必要になります。ただし手続は進んでいるため、事実関係の整理を始めておくことをおすすめします。

鍵アカウント(非公開アカウント)の投稿でも開示請求されますか。

対象になる可能性があります。非公開アカウントでも、フォロワーを通じて内容が広まり得る場合などには、権利侵害が問題にされることがあります。公開範囲の狭さは、回答書で主張し得る事情の一つです。

リポストしただけでも責任を問われますか。

問われる可能性があります。裁判例では、他人の投稿をコメントなしでリポストした場合でも、名誉毀損の責任が認められた例があります。対象の投稿が自分の文章か、リポストや引用かを確認したうえで回答することが重要です。

アカウントを削除すれば、開示請求は止まりますか。

止まるとは限りません。削除によって既に生じた損害賠償請求権が消えることはなく、請求者は通常、証拠を保存したうえで手続に入っています。削除の前に、弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

Xの投稿をめぐる開示請求は、Xへのログイン情報等の請求と、回線事業者への氏名・住所の請求という2段階で進みます。Xからの通知や意見照会書が届いた段階では、まだ氏名・住所は開示されていません。

ログイン型の手続では、ログインした人と投稿した人が一致するかが争点になりやすく、投稿の内容についても、真実性や意見・論評の枠組みで争う余地がある場合があります。他方で、開示を前提に示談の見通しを立てたほうが結果的に負担を抑えられる事案もあります。方針は投稿の文言と事実関係によって変わるため、自己判断で回答する前に、横浜のタングラム法律事務所など、この分野を扱う弁護士に相談することをおすすめします。

Xの投稿で意見照会書・通知が届いた方へ

タングラム法律事務所(横浜)では、発信者情報開示請求に係る意見照会への対応について、豊富な取扱い実績を有しております。回答期限が短いことが多いため、書面が届いたらお早めにご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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