タングラム法律事務所

開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れを解説

開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れを解説

開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れを解説

開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れを解説

開示請求されたらどうなる?意見照会から損害賠償までの流れを解説

ある日、契約しているプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」と題する書面が届く——。多くの方にとって、これが「自分が開示請求をされている」と知る最初の瞬間です。見慣れない条文が並び、回答期限は2週間程度と短い。この先どこまで話が進み、いつ誰から何を請求されるのかがわからないまま期限だけが迫る状況は、強い不安を伴うものです。

この記事では、開示請求をされた側の視点で、①意見照会書の受領、②開示されるまで、③開示後の損害賠償請求・示談交渉、④交渉がまとまらない場合の訴訟という4段階に分けて全体の流れを整理します。どこに期限があり、どこで判断を誤ると不利になるのかを把握していただくことが目的です。

開示請求をされたと気づくきっかけは「意見照会書」

発信者情報の開示を請求する制度は、2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。旧・プロバイダ責任制限法の題名が改められたものです)に定められています。同法5条は、権利を侵害されたと主張する者が、投稿の媒介をした事業者に対して発信者情報の開示を請求できると定めています。

そして同法6条1項は、開示請求を受けた事業者に対し、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、原則として、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴かなければならないと定めています。これが実務でいう「意見照会」です。つまり意見照会書が届いたということは、すでに誰かがあなたの契約回線からの投稿等について開示を請求している、という意味になります。

照会の主体は、X(旧Twitter)やGoogle、掲示板の運営会社といったサイト側(コンテンツプロバイダ)と、サイト側から先にIPアドレスが開示された後に照会を行うアクセスプロバイダ(回線事業者)の2種類です。後者は氏名・住所そのものが対象になるため、より切迫した段階といえます。

書面が届いたらまず、①差出人(プロバイダ名)、②回答期限、③問題とされている投稿の内容と日時、④請求の根拠として主張されている権利(名誉毀損・著作権侵害・営業権侵害など)の4点を確認してください。詳しくは意見照会書が届いたときの対処法もご覧ください。

【第1段階】意見照会への回答——期限と3つの選択肢

意見照会書に対して発信者が取り得る対応は、「開示に同意する」「開示に同意しない」「回答しない(放置する)」の3つです。

対応その後に想定される展開
同意するプロバイダは任意に開示するのが通常です。氏名・住所が相手方に渡り、直接請求を受ける段階へ進みます。
同意しない多くのプロバイダは任意開示を控え、請求者は裁判手続によらなければ情報を得られなくなります。
回答しない「反対の意見がない」と扱われ、任意開示に傾きやすくなります。言い分を残す機会も失われます。

注意すべきは、不同意と回答しても開示を確実に防げるわけではない点です。法律上、プロバイダが発信者の意見に拘束される旨の規定は置かれていません。それでも不同意の回答に意味があるのは、任意開示を避けて裁判所の判断に委ねる契機となり、かつ、自分の言い分を示す機会が実質的にここしかないからです。逆に、事実と異なる説明や感情的な記載をすると、その書面が後の交渉・訴訟で不利な材料として使われます。放置のリスクは意見照会書を無視・放置するとどうなるかで整理しています。

なお、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会は、投稿型の誹謗中傷とは争点も相場観も異なります。この類型についてはBitTorrent著作権侵害の意見照会対応のページをご覧ください。

【第2段階】開示に至るまで——任意開示と発信者情報開示命令

不同意の回答をした場合、請求者は裁判手続に進むかどうかを判断します。現在の主流は、情プラ法8条が定める発信者情報開示命令という非訟手続です。これに同法15条の提供命令(サイト側にアクセスプロバイダの名称を申立人へ提供させ、IPアドレス等を当該プロバイダへ引き継がせる命令)と、同法16条の消去禁止命令(審理中のログ消去を防ぐ命令)が組み合わされ、サイト側からアクセスプロバイダへ途切れずに手続をつなぐことができます。

発信者の立場から特に理解しておくべきなのは、開示命令事件の当事者は申立人とプロバイダであり、発信者本人は当事者ではないという点です。発信者が裁判所に直接主張や証拠を提出する場は原則としてなく、言い分がこの手続に届く経路は、意見照会への回答書を通じてプロバイダが主張に反映させる場合に限られます。意見照会の段階での対応が重要である理由は、ここにあります。

決定に不服がある当事者は、告知を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起でき、これがされなければ決定は確定判決と同一の効力を有します。開示を命じる決定が確定すれば、プロバイダは契約者の氏名・住所等を開示します。当事務所の対応方針は意見照会対応のページで説明しています。

【第3段階】開示された後——損害賠償請求と示談交渉

氏名・住所が開示されると、多くの場合、相手方の代理人弁護士から内容証明郵便などで損害賠償請求の通知が届きます。請求されるのは慰謝料のほか、削除や開示手続に要した弁護士費用・調査費用などです。開示までの費用を「調査費用」として請求に含めるのが一般的で、請求額が慰謝料本体を上回ることも珍しくありません。

ここで検討すべきは、請求額の当否と、そもそも賠償義務を負うかどうかの両方です。主な争点は次のとおりです。

  • 投稿を行ったのが本当にあなたか(家族・同居人・共用回線の可能性)
  • 投稿が名誉毀損や侮辱等に該当し、違法といえるか
  • 投稿の対象者を特定できる記載であったか(同定可能性)
  • 請求額が裁判例の水準に照らして相当か
  • 調査費用の全額について相当因果関係が認められるか

多くの事案は判決まで進まず示談で終了します。示談の際は、支払額だけでなく、清算条項(今後互いに請求しない旨)、口外禁止条項、投稿の削除といった条項の内容を確認することが重要です。とりわけ清算条項がないと、後から別の請求を受ける余地が残ります。請求を受けた側の対応は誹謗中傷で損害賠償を請求されたときの対応で整理しています。

【第4段階】交渉がまとまらない場合——訴訟・支払督促

示談が成立しない場合、相手方は民事訴訟の提起、支払督促の申立て、少額訴訟といった手段を選択します。訴状には答弁書の提出期限と第1回口頭弁論期日が指定されており、何もせず欠席すると、相手方の主張を認めたものとみなされて敗訴する可能性があります。支払督促は、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てれば通常の訴訟手続に移行しますが、この期間を徒過して仮執行宣言が付されると、預金や給与の差押えに進み得ます。

全体でどれくらいの期間がかかるのか

期間は事案や相手方の方針により大きく異なりますが、目安は次のとおりです。

段階期間の目安
意見照会書の回答期限おおむね2週間程度(書面記載の期限が優先します)
不同意回答から開示まで裁判手続を経る場合、数か月程度
開示から請求通知の到達まで数週間から数か月程度
示談交渉1か月から数か月程度

意見照会書の受領から最終的な解決までは、全体として半年から1年以上を要することも少なくありません。他方、不法行為に基づく損害賠償請求権は民法724条により、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効消滅します。開示によって加害者を知った時点から3年の期間が進行すると解されるため、「時間が経てば請求されなくなる」と期待するのは危険です。

この段階でやってはいけないこと

  • 投稿を慌てて削除する——削除しても開示や賠償義務はなくならず、証拠は相手方が既に保全しているのが通常です。かえって不利に評価されることがあります。
  • 相手方に直接連絡する・謝罪する——賠償義務を認めたと受け取られ、交渉上の立場を失う可能性があります。
  • 記憶に頼って回答書を書く——投稿日時や利用状況を誤って記載すると、後の交渉で矛盾を突かれます。
  • 期限を確認しないまま放置する——回答期限、異議の訴えの期間、答弁書の提出期限は、いずれも過ぎれば戻せません。

横浜のタングラム法律事務所では、開示請求を受けた側からのご相談を数多くお受けしています。弁護士が関与する意味は、書面を代わりに作ることではなく、法的な反論を整理し、各段階の期限を管理し、最終的な支払額と条件の落としどころを見通したうえで、最初の回答書から一貫した対応を取る点にあります。

よくある質問

意見照会書に「開示に同意しない」と回答すれば、開示されずに済みますか。

回答に法的な拘束力はないため、不同意と回答しても開示される可能性は残ります。もっとも、不同意と回答すれば、多くのプロバイダは任意開示を控え、裁判所の判断を経るという扱いになるのが一般的です。裁判所が開示を命じるかどうかは、権利侵害が明らかといえるかどうかで判断されます。

発信者情報開示命令の手続に、発信者本人は参加できますか。

開示命令事件の当事者は、申立人(被害を主張する側)と開示関係役務提供者(プロバイダ等)であり、発信者本人は当事者ではありません。そのため、発信者が直接主張や証拠を提出する場は原則としてありません。発信者の言い分を反映させる機会は、意見照会に対する回答書がほぼ唯一の機会となります。

開示請求をされた事実が勤務先に知られることはありますか。

開示の対象となるのは契約者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス等であり、勤務先に通知される仕組みはありません。ただし、その後に訴訟提起や給与債権の差押えに至った場合には、勤務先が関与することがあり得ます。

弁護士に依頼するとしたら、どの段階が適切ですか。

意見照会書が届いた段階です。回答書は後の交渉や訴訟でも参照される書面であり、ここでの記載が不利に働くことがあります。回答期限は2週間程度と短いことが多いため、書面を受け取った段階で早めにご相談ください。

まとめ

開示請求をされた後の流れは、①意見照会への回答、②発信者情報開示命令等による開示、③損害賠償請求と示談交渉、④訴訟・支払督促という順に進みます。各段階に短い期限があり、とりわけ最初の意見照会への回答は、発信者が自分の言い分を手続に反映させ得る実質的に唯一の機会です。開示命令事件に発信者本人は当事者として関与できないため、この最初の対応の質が、その後の展開を大きく左右します。

早い段階で見通しを立てておけば、開示を避けられる事案なのか、開示は避けにくいが賠償額を相当な範囲に収めるべき事案なのかを見極め、一貫した方針で臨むことができます。まずは期限を確認したうえで、弁護士にご相談ください。

開示請求・意見照会書への対応は、タングラム法律事務所へ

横浜のタングラム法律事務所では、インターネット上の投稿に関する発信者情報開示請求について、請求を受けた発信者側の対応に豊富な実績を有しております。意見照会書への回答から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで、一貫して対応いたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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