女性活躍推進法の改正|101人以上の企業の賃金差異公表を弁護士が解説
女性活躍推進法の改正|101人以上の企業の賃金差異公表を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月6日 最終更新日:2026年10月6日
「うちの会社も男女の賃金差を公表しなければならないらしいが、何をいつまでに公表すればよいのか分からない」――従業員が100人を超える中小企業から、このようなご相談が増えています。これまで男女間賃金差異の公表は従業員301人以上の大企業の話と受け止められてきましたが、2026年4月1日から対象が大きく広がりました。
この記事では、改正女性活躍推進法により101人以上の企業に課された情報公表義務の内容、公表の時期と方法、男女間賃金差異と女性管理職比率の算出方法、公表しなかった場合のリスク、そして企業が今から進めるべき準備を、横浜の弁護士が中小企業向けに解説します。
結論として、2026年4月1日以降、常時雇用する労働者が101人以上の企業は「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」を含む情報を定期的に公表しなければなりません。初回は施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度開始後おおむね3か月以内に公表する必要があり、決算期によっては既に期限を迎えているため、早めの確認が重要です。
女性活躍推進法の改正(2026年4月施行)で何が変わったか
女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、2025年6月11日に公布された「労働施策総合推進法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)により改正されました。この改正法は、就活セクハラ防止措置の義務化なども含む一括改正であり、就活セクハラ防止の義務化を解説した記事で詳しく取り上げています。
女性活躍推進法に関する主な改正点は次のとおりです。
- 情報公表義務の拡大:常時雇用する労働者が101人以上の企業に、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表を義務付け(2026年4月1日施行)
- 法律の有効期限の延長:2026年3月31日までとされていた期限を10年延長し、2036年3月31日(令和18年3月31日)まで
- 女性の健康上の特性への配慮:女性の健康上の特性に留意して女性活躍を推進することを基本原則として明記し、女性の健康支援に取り組む企業を認定する「えるぼしプラス」を創設
情報公表義務の対象企業と公表項目
改正後は、企業規模に応じて次のとおり公表義務が定められています(女性活躍推進法20条)。
| 常時雇用する労働者数 | 必須の公表項目 | 公表すべき項目数 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異・女性管理職比率 | 必須2項目を含め4項目以上 |
| 101人~300人 | 男女間賃金差異・女性管理職比率 | 必須2項目を含め3項目以上 |
| 100人以下 | なし | 1項目以上の公表が努力義務 |
301人以上の企業は、男女間賃金差異の公表が2022年7月から既に義務となっていましたが、今回の改正で女性管理職比率が必須項目に加わりました。101人~300人の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率の両方が新たに必須となった点が大きな変化です。必須項目以外は、採用した労働者に占める女性の割合や男女の平均継続勤務年数の差異など、法令で定められた項目の中から選択して公表します。
なお、101人以上の企業は従来から、自社の状況を把握・分析したうえで一般事業主行動計画を策定し、届け出る義務を負っています(同法8条1項・3項)。情報公表は行動計画とは別の義務ですので、両方の対応状況を確認しておきましょう。
公表の時期と方法|決算期によっては既に期限が到来
厚生労働省の解説によれば、改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表することとされています。その後は、おおむね年1回、最新の数値に更新します。
- 3月決算の企業:2027年3月期の実績を、2027年6月末頃までに公表
- 6月決算の企業:2026年6月期の実績を、2026年9月末頃までに公表
3月決算以外の企業では、既に初回の公表期限を迎えている場合があります。公表方法は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が推奨されており、自社のホームページで公表することも可能です。
男女間賃金差異・女性管理職比率の算出方法
男女間賃金差異
男女間賃金差異は、男性労働者の平均年間賃金に対する女性労働者の平均年間賃金の割合(%)で示します。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分で算出し、厚生労働省の示す方法では小数点第2位を四捨五入して小数点第1位まで表示します。
ここでいう賃金は労働基準法11条の賃金であり、基本給、時間外手当、賞与等を含みます。退職手当や通勤手当は、企業の判断で除外することができます。どの範囲で計算したかによって数値が変わるため、算出の前提を社内で決めて記録しておくことが大切です。
女性管理職比率
女性管理職比率は、管理職に占める女性労働者の割合です。ここでの管理職は「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計とされています。社内の役職名ではなく実態で判断するため、役職体系が独自の企業は、どの役職が課長級に当たるかを整理しておく必要があります。
公表しなかった場合のリスク
情報公表義務に違反しても、直ちに罰金が科されるわけではありません。しかし、厚生労働大臣(実際には都道府県労働局)は、必要があると認めるときは企業に報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができます(同法30条)。公表をしない、又は虚偽の公表をした企業が勧告に従わない場合には、その旨が公表されることがあります(同法31条)。さらに、報告を求められたのに報告をしない、又は虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料の対象となります(同法39条)。
企業名の公表は採用活動や取引先の評価に影響し得ます。障害者雇用率の引上げを解説した記事でも触れたとおり、「罰則がないから大丈夫」とはいえません。
企業が今から進めるべき準備
- 対象かどうかの確認:常時雇用する労働者の数を確認します。パートタイマーも雇用期間等によって含まれます。
- 公表期限の確認:自社の事業年度から、初回の公表期限を逆算します。
- データの収集と算出:賃金データを正規・非正規の区分ごとに集計し、管理職の範囲を確定させます。
- 数値の分析と説明の準備:賃金差異が生じている理由(職種・等級の構成、勤続年数、短時間勤務の利用状況など)を分析します。厚生労働省も、任意の「説明欄」を活用して背景事情や取組を補足することが望ましいとしています。
- 是正に向けた取組:差異の原因が評価制度や配置にある場合は、制度の見直しを検討します。正規・非正規間の待遇差については、パートタイム・有期雇用労働法の同一労働同一賃金の観点からの点検も欠かせません。考え方は定年後再雇用の賃金と同一労働同一賃金を解説した記事もご参照ください。
公表した数値は求職者や従業員の目に触れるため、自社の人事制度を説明できる状態にしておくことが大切です。賃金制度や就業規則の見直しを伴う場合は、企業法務の取扱分野ページでご案内しているとおり、弁護士がご相談をお受けしています。
よくある質問
Q. 従業員が100人以下の会社にも公表義務はありますか?
常時雇用する労働者が100人以下の企業は、情報公表は努力義務にとどまり、男女間賃金差異や女性管理職比率の公表は義務ではありません。ただし、労働者数が増えて101人以上になると義務の対象となるため、人数の推移には注意が必要です。
Q. 最初の公表はいつまでに行えばよいですか?
改正法の施行(2026年4月1日)後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表します。3月決算の企業であれば2027年3月期の実績を2027年6月末頃までに公表することになります。決算期によっては既に期限が到来している場合があります。
Q. 賃金差異の数値が大きいと罰則がありますか?
男女間賃金差異の数値の大小そのものに罰則はありません。義務となっているのは公表することであり、公表をしない、又は虚偽の公表をした場合に、厚生労働大臣による勧告や、勧告に従わない場合の公表の対象となり得ます。数値の背景は説明欄で補足することが望ましいとされています。
まとめ
2026年4月施行の改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率を含む情報の公表が義務となりました。初回の公表期限は決算期によって異なり、既に到来している企業もあります。公表を怠ると、勧告や企業名公表の対象となるおそれがあります。
算出方法の判断や、公表した数値をめぐる従業員からの問い合わせ、賃金制度の見直しなどは、法的な検討を要する場面も少なくありません。顧問弁護士として継続的に相談できる体制を整えておくと、法改正への対応もスムーズになります。横浜で企業法務に対応する弁護士として、当事務所でも制度設計の段階からサポートいたします。
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