タングラム法律事務所

内部通報窓口の作り方|中小企業の設置手順と12月改正への対応

内部通報窓口の作り方|中小企業の設置手順と12月改正への対応

内部通報窓口の作り方|中小企業の設置手順と12月改正への対応

内部通報窓口の作り方|中小企業の設置手順と12月改正への対応

内部通報窓口の作り方|中小企業の設置手順と12月改正への対応

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月3日 最終更新日:2026年11月3日

「内部通報窓口を作りたいが、何から始めればよいのか」「従業員が数十人の会社にも必要なのか」。法務担当者のいない中小企業では、こうした悩みから後回しになっていることも多いのではないでしょうか。

この記事では、2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法を踏まえ、中小企業が内部通報窓口を設置する手順、社内窓口と外部窓口の選び方、通報を受けた後の対応を、横浜の弁護士が実務の順序に沿って解説します。

結論として、常時使用する労働者が300人以下の事業者の場合、内部通報窓口の設置は努力義務にとどまりますが、2026年12月1日からは通報者の探索や通報の妨害の禁止、通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰が企業規模を問わず適用されます。中小企業では、責任者の決定、窓口の設置、担当者の指定、簡潔な規程の作成、周知の5段階で、無理のない範囲から整備することが現実的です。

内部通報窓口は中小企業にも必要か|300人以下は努力義務

公益通報者保護法11条は、常時使用する労働者が300人を超える事業者に、通報対応業務の従事者の指定と体制整備を義務付けています。300人以下の事業者は努力義務です(同条3項)。もっとも、令和7年改正(令和7年法律第62号)で新設された規律には、企業規模で区別されないものがあります。

項目300人超300人以下
従事者の指定(11条1項)義務努力義務
窓口等の体制整備・労働者等への周知(11条2項)義務努力義務
通報妨害の禁止(11条の2)規模を問わず適用
通報者探索の禁止(11条の3)規模を問わず適用
通報から1年以内の解雇・懲戒の推定(3条3項)規模を問わず適用
通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰(21条1項、23条)規模を問わず適用(行為者は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、法人は3,000万円以下の罰金)

改正の全体像は公益通報者保護法改正の解説記事にまとめています。書面で通報した人に対し20日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合などには、報道機関等への通報も保護の対象となります(法3条1項3号ホ)。社内に受け皿がなければ、問題が外部で初めて表面化するおそれがあります。

消費者庁の指針の解説は、300人以下の事業者についても、可能な限り解説の内容に沿って体制を整備・運用するよう努める必要があるとしています。300人に近い会社は、「常時使用する労働者」の範囲を消費者庁のQ&Aで確認してください。

内部通報窓口の作り方|設置の5ステップ

消費者庁の指針(令和8年3月31日一部改正)を、中小企業向けに順序立てると次のとおりです。

  1. 責任者と担当部署を決める:受付、調査、是正措置を担う部署と責任者を明確にします。経営陣に関する通報の扱いもあわせて決めます。
  2. 窓口を決める:社内か外部かを選び、連絡先と連絡方法(メール、書面、専用フォーム等)を定めます。匿名でも連絡できる方法を用意します。
  3. 従事者を指定する:受付や調査を行い、通報者を特定させる情報に接する人を従事者として定めます。指針は、守秘義務と罰則の対象となることが本人に明らかになる方法として、書面による指定などを挙げています。
  4. 内部規程を定める:受付から是正、通知、記録までの手順を短くても文書にします。就業規則とは別の規程として作ることも考えられます。
  5. 周知と教育を行う:窓口の存在を知らせ、従事者には通報者情報の取扱いを特に十分に教育します。

対象となる通報は、法律の別表に掲げる法律等に定める犯罪行為や過料対象行為などであり、社内の不満全般ではありません。ハラスメント相談と入口を分けるか一本化するかも決めておくと運用しやすくなります。規程の整備等の支援については企業法務のご案内ページもご覧ください。

内部通報窓口は社内か外部か|顧問弁護士に頼む際の注意点

設置方法長所注意点
社内窓口費用を抑えやすく、事情を把握しやすい社員同士が近く、通報をためらわれやすい。経営陣の事案では独立性に課題
外部窓口(法律事務所等)通報者の心理的負担を下げやすく、幹部からの独立性を確保しやすい委託費用が生じる。調査・是正を担う社内の担当者は別途必要
グループ共通窓口親会社等の体制を活用できる子会社側であらかじめ定め、子会社自身の責任者も定める必要がある
複数社の共同委託・事業者団体の窓口単独では設置が難しい企業でも負担を分けられる受付後の社内対応の手順を各社で定める必要がある

指針の解説は、中小企業の例として、何社かが共同で法律事務所等に窓口を委託する方法を挙げています。また、利益相反が生じるおそれのある法律事務所等の起用は避けることが適当とし、顧問弁護士を窓口とする場合には、顧問弁護士への通報をためらう人がいて問題の早期把握を妨げるおそれに留意し、その旨を利用者に明示することが望ましいとしています。

同族会社などでは、社長や親族役員に関する通報を社内だけで扱うのは困難です。解説も、中小事業者であっても幹部からの独立性を確保する仕組みの必要性は高いと述べており、社内窓口と外部窓口の併用は有力な選択肢です。

通報を受けたときの対応手順|受付から通知・記録まで

  • 受付:日時と内容を記録し、通報者情報に接する人を必要最小限に絞ります。書面の通報には、受付から20日以内に調査開始の有無を伝えることが推奨されています。
  • 調査:正当な理由がある場合を除き必要な調査を行い、事案に関係する人は関与させません。進め方はハラスメントの社内調査の進め方と共通する部分があります。
  • 是正措置:法令違反が明らかになれば速やかに是正し、その後も機能しているかを確認します。行為者の処分は懲戒処分の手順に沿って検討します。
  • 通知:書面の通報者には、是正した旨や通報対象事実がない旨を、関係者の秘密等に支障のない範囲で速やかに通知します。
  • 記録の保管:解説は具体的な年数を定めておらず、事業者ごとに適切な期間を定めることを求めています。閲覧権限の制限も必要です。

2026年12月改正で内部通報の運用を見直すポイント

通報者の探索:正当な理由なく、通報者であることを明らかにするよう求めるなど、通報者の特定を目的とする行為が禁じられます。経営者が「誰が言ったのか」と尋ねることも問題となり得るため、現場の管理職にも伝えておく必要があります。

通報の妨害:正当な理由なく、通報をしない旨の合意を求めることや、通報すれば不利益に扱うと告げることなどが禁じられ、これに反する合意等は無効とされます(11条の2)。誓約書、退職合意書、秘密保持条項に、通報を制約すると読める文言がないかの確認をおすすめします。

フリーランスへの対応:業務委託先のフリーランス(特定受託業務従事者)も保護対象に加わり、通報の日前1年以内に業務委託関係にあった者も含まれます。解説は、業務委託に関する書面やメールに窓口の連絡先を記載する方法を例示しています。

周知:周知は法律上の項目として明記され、指針では窓口の連絡先、独立性の確保、不利益取扱いの防止、範囲外共有・通報妨害・探索の防止など9項目が示されました。解説はポスター掲示や研修などを例示しており、小規模な事業所なら掲示と入社時の説明から始めることも考えられます。

人事記録:解雇・懲戒の推定規定は、改正法の施行後にされた解雇等に適用されます。処分理由の記録を日頃から整えておくことが重要です。

内部通報窓口に関するよくある質問

従業員30人の会社でも内部通報窓口は必要ですか?

常時使用する労働者が300人以下の事業者では、窓口を含む体制整備は努力義務です。もっとも、探索・妨害の禁止や刑事罰は規模を問わず適用されるため、規模に応じた窓口と手順を整えておくことが望ましいといえます。

顧問弁護士を内部通報窓口にできますか?

外部に窓口を設けることは可能です。ただし消費者庁の指針の解説は、顧問弁護士への通報をためらう人がいて早期把握を妨げるおそれに留意し、顧問弁護士が窓口である旨を利用者に明示することが望ましいとしています。

匿名の内部通報にも対応する必要がありますか?

指針の解説は、実効性確保のために匿名の通報も受け付けることが必要としています。個人が特定できないメールアドレスの利用や、外部窓口が氏名を会社に伝えない仕組みなどが例示されています。

通報者が誰か調べることはできますか?

2026年12月1日以降、正当な理由なく通報者を特定する目的の行為は禁止されます。解説は、匿名の通報で、どの局面で不正を認識したかを特定しなければ必要な調査や是正ができない場合に、守秘義務を負う従事者が特定につながる事項を問うことは正当な理由に該当し得るとしていますが、例外は限定的です。

まとめ|内部通報窓口は規模に応じて今から整備を

窓口の設置が努力義務にとどまる中小企業でも、12月1日以降の禁止規定と刑事罰は適用されます。まず責任者を決め、窓口の連絡先を定め、従事者を書面で指定し、簡潔な規程と周知を整えるところから進めるとよいでしょう。誓約書の見直しや、通報後の調査・処分の判断には法的な検討が必要です。早い段階で横浜などお近くの弁護士に相談することで、手戻りや紛争の拡大を防ぎやすくなります。

内部通報窓口の整備でお悩みの事業者様へ

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。内部通報規程の作成や誓約書の見直し、通報を受けた後の対応についてもご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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