相続の遺産分割調停で答弁書を自分で書く方法|記載例を弁護士が解説
相続の遺産分割調停で答弁書を自分で書く方法|記載例を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月3日 最終更新日:2026年11月3日
家庭裁判所から遺産分割調停の申立書の写しが届き、同封の書面に「答弁書」を提出するよう書かれていた。何を書けばよいのか、書いた内容で不利にならないか、不安に感じている方は多いと思います。
この記事では、遺産分割調停の相手方になった方が答弁書を自分で書くときの手順、書く項目、記載例、提出時の注意点を、横浜の弁護士が解説します。
結論として、答弁書は、申立書のどの点を認め、どの点に異議があるかと、自分が希望する分け方を、遺産の項目ごとに簡潔に整理する書面です。提出した書面は他の当事者の目に触れる前提で作成し、不確かな点は断定せず、裏付けとなる資料を別に準備することが重要です。
遺産分割調停で答弁書が求められる場面
調停の申立てがあると、家庭裁判所は原則として申立書の写しを相手方に送付します(家事事件手続法256条1項)。あわせて、期日の通知や、提出すべき書面の案内が届くのが一般的です。
提出を求められる書面の名称や書式は、裁判所によって異なります。たとえば広島家庭裁判所の遺産分割ハンドブックでは、「答弁書」と「進行に関する照会回答書」をあらかじめ提出するよう案内されています。名古屋家庭裁判所の資料では「連絡先等の届出書」の提出が求められ、京都家庭裁判所の資料では「主張書面」「資料」「資料説明書」という整理がされています。
まずは、届いた封筒の中身をすべて確認し、次の点を押さえましょう。
- 提出を求められている書面の名称と提出期限
- 裁判所指定の用紙の有無
- 事件番号、担当の係、提出先
- 第1回調停期日の日時と場所
裁判所の用紙があれば、それを使います。期日の欠席リスクなど、書類が届いた直後の対応全般については、遺産分割調停の呼出状が届いたときの対応もご覧ください。
答弁書を書く前に確認・準備すること
いきなり書き始めず、申立書と手元の資料を照らし合わせます。申立書の写しや添付の遺産目録を読み、次の点に印を付けていくと整理しやすくなります。
- 相続人の範囲:記載された相続人に漏れや誤りがないか
- 遺言書・遺産分割協議:遺言書や、過去の合意の有無
- 遺産の範囲:目録にない遺産、目録にあるが被相続人のものではない財産がないか
- 遺産の評価:不動産などの評価額に異論がないか
- 特別受益・寄与分:生前贈与や、被相続人への特別な貢献の主張があるか
- 分割方法:取得を希望する財産、代償金の支払可否、売却の希望
この順序は、遺産分割調停で話合いが進められる順序ともおおむね重なります。全体の進め方は遺産分割調停を有利に進めるポイントで解説しています。
答弁書に書く項目と記載例
指定の用紙がない場合の一例として、次の構成が考えられます。裁判所から書き方の指定があれば、そちらを優先してください。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 冒頭 | 事件番号、裁判所名、提出日、提出者(相手方)の氏名と押印 |
| 申立書への意見 | 相続人の範囲、遺産の範囲などについて、認める点・異議がある点 |
| 異議の理由 | 事実を時系列で簡潔に。感情的な評価は書かない |
| 分割についての希望 | 取得を希望する財産、代償金や売却に関する考え |
| 調停の進行についての事情 | 出席しにくい日、他の当事者と同席しにくい事情など(照会回答書の欄があればそちらへ) |
本文の記載例は次のとおりです(架空の例です)。
1 相続人の範囲について 申立書の記載のとおりで争いません。
2 遺産の範囲について 遺産目録の土地及び建物が遺産であることは認めます。目録記載の○○銀行の預金のほか、被相続人名義の△△銀行の預金があると思われますが、残高は確認中です。
3 生前贈与について 申立人は平成○年頃、被相続人から自宅購入資金として○○万円の援助を受けたと聞いており、特別受益として考慮を求めます。裏付け資料は調査中で、確認でき次第提出します。
4 分割の方法について 相手方は建物に居住しているため、土地及び建物の取得を希望します。代償金の支払方法については、評価額を確認したうえで検討します。
他の相続人から寄与分を主張されている場合の反論の組み立て方は、寄与分を主張された場合の反論のポイントが参考になります。
答弁書の提出方法と部数・書式
提出方法の案内は裁判所ごとに異なるため、同封の書面が最優先です。参考として、公開されている資料には次のような説明があります。
- 書式:A4サイズ・横書きで、左端に3センチメートル程度の綴じしろを設ける(京都家裁・名古屋家裁の資料)
- 記載事項:事件番号、提出者の氏名と押印、裁判所名を記載し、控えを手元に残す(名古屋家裁の資料)
- 部数:裁判所分に加え、他の当事者の人数分のコピーを提出する(京都家裁・名古屋家裁の資料)。たとえば自分以外の当事者が5名なら合計6部となる
- 資料:原本は手元に保管し、コピーを提出する。主張書面の末尾に添付せず分けて綴じる。相手方提出の資料には「乙」の番号を付す(京都家裁の資料)
持参か郵送かも案内に従います。第1回期日は申立てからおおむね2か月程度で開かれるとの案内が複数の家庭裁判所にあり、準備の時間は長くありません。期限に間に合わないときは、放置せず担当の書記官に連絡しましょう。
他の相続人に読まれる前提で書く
答弁書で最も注意したいのが開示の問題です。京都家裁・名古屋家裁の資料では、提出された書面は他の当事者に交付され、または閲覧・謄写され得る前提で作成するよう案内されています。法律上も、調停記録の閲覧・謄写は家庭裁判所の許可を得て請求できるものとされ(家事事件手続法254条1項、3項)、調停が審判に移行した後は、当事者の申立てに対し原則として許可しなければならないとされています(同法47条3項、4項の例外あり)。
そこで、次の点に気をつけましょう。
- 他の相続人への非難や人格攻撃は書かない。話合いが硬直する原因になる
- 現住所、勤務先、口座番号など、知られたくない情報が資料に含まれていないか確認し、不要な部分はマスキングする
- どうしても伏せたい場合は「非開示の希望に関する申出書」等の案内を確認する。ただし、裁判官の判断で開示される場合があるとされている
- 「確かではないこと」は断定せず、「確認中」「と聞いている」と書き分ける
答弁書とあわせて確認したい期限
答弁書の作成に気を取られて、別の手続の期限を見落とさないようにしましょう。
- 遺留分侵害額請求:遺言や生前贈与で遺留分を侵害されている場合、相続の開始と侵害を知った時から1年で時効により消滅します(民法1048条)。答弁書の提出や調停への参加とは別に、配達証明付き内容証明郵便などで請求の意思表示をしておくことを検討すべきです(民法1046条1項)。
- 特別受益・寄与分:相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として主張できなくなります(民法904条の3)。
- 相続税の申告:申告が必要な場合、期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。調停中でも期限は延びないため、具体的な対応は税理士または税務署にご確認ください。
自分で対応する場合の限界と弁護士に依頼する違い
相続人の範囲に争いがなく、遺産も少なく、申立書の内容におおむね異論がない場合には、ご自身で答弁書を作成して調停に臨むことも十分に考えられます。
一方、次のような場合は、自分で書いた内容が後の審判まで影響するおそれがあるため、提出前に弁護士へ相談することをおすすめします。
- 使途不明金、特別受益、寄与分など、事実関係に争いがある
- 不動産の評価額や分割方法で対立が大きい
- 申立人に弁護士がついている
- 遺留分の問題が絡んでいる
弁護士に依頼すると、手続代理人(家事事件手続法22条1項)として、書面の作成、資料の整理、期日への同席や対応を任せることができます。ご相談を検討される方は、遺産分割などの相続問題の取扱分野ページもご参照ください。
よくある質問
答弁書の用紙が同封されていません。自分で作ってもよいですか?
同封の書面で指定がなければ、A4横書きで作成した書面を提出することが考えられます。ただし、提出すべき書面の名称や書式は裁判所によって異なるため、まず同封の案内を確認し、不明な点は担当の書記官にお問い合わせください。
提出期限に間に合いそうにありません。どうすればよいですか?
分かる範囲で作成して提出するか、期限前に担当の書記官へ連絡して対応を相談してください。事実関係を確認中の部分は「確認中」と記載し、後日の主張書面で補う方法も考えられます。
答弁書に書いた内容を後から変更できますか?
事実関係の確認が進んだ結果として、主張書面で補足・訂正することは可能と考えられます。ただし、提出済みの書面は記録に残るため、説明が変わると信用性を疑われるおそれがあります。不確かな内容は断定せずに書くことが大切です。
まとめ
遺産分割調停の答弁書は、申立書のどこに異論があるのかと自分の希望を、裁判所と他の相続人に伝える最初の書面です。同封の案内に従い、項目ごとに事実を簡潔に整理し、開示される前提で作成しましょう。争点が多い事案では、最初の書面の段階から弁護士に相談することで、主張の整理や資料の準備を進めやすくなります。横浜で遺産分割調停への対応にお悩みの方は、お早めに弁護士へご相談ください。
遺産分割調停の申立書が届いてお困りの方へ
タングラム法律事務所では、遺産分割や遺留分侵害額請求など、相続に関する紛争のご相談をお受けしています。答弁書の内容や調停の進め方について、事案に即して検討いたします。
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