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相続で寄与分を主張されたら?反論のポイントと判断基準を弁護士が解説

相続で寄与分を主張されたら?反論のポイントと判断基準を弁護士が解説

相続で寄与分を主張されたら?反論のポイントと判断基準を弁護士が解説

相続で寄与分を主張されたら?反論のポイントと判断基準を弁護士が解説

相続で寄与分を主張されたら?反論のポイントと判断基準を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月12日 最終更新日:2026年10月12日

遺産分割の話し合いの途中で、兄弟姉妹から「親の介護をずっと担ってきたのだから、自分は多くもらうべきだ」「家業を無給で手伝ってきた分を寄与分として認めてほしい」と言われ、戸惑っている方は少なくありません。提示された金額が大きすぎる、本当にそこまでの貢献があったのか疑問だ、と感じることもあるでしょう。

この記事では、相続で寄与分を主張された側の立場から、寄与分が認められるための要件、反論するときに確認すべきポイント、遺産分割調停・審判での扱い、期限や遺留分との関係までを、横浜の弁護士が条文に沿って解説します。

結論として、寄与分は「相続人であれば当然に期待される程度」を超える特別な貢献があり、それによって被相続人の財産が維持・増加した場合に限って認められるものです。主張された側は、貢献の特別性・無償性・継続性・専従性や財産への影響、そして裏付けとなる証拠の有無を一つずつ確認することで、過大な寄与分の主張に冷静に対応することができます。

寄与分とは?相続で主張されたときにまず押さえたい仕組み

寄与分は、民法904条の2に定められた制度です。共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によって、被相続人の財産の維持または増加について「特別の寄与」をした人がいる場合に、その人の取り分を法定相続分より増やして公平を図るものです。

計算は、相続開始時の財産の価額から寄与分を差し引いたものを相続財産とみなし、これを法定相続分などで分けたうえで、寄与した相続人に寄与分を加算する、という方法で行われます(民法904条の2第1項)。

具体例(相続人は兄と弟の2人)金額
相続開始時の遺産4,000万円
兄の寄与分(仮に認められた場合)400万円
みなし相続財産(4,000万円−400万円)3,600万円
兄の取得額(3,600万円×1/2+400万円)2,200万円
弟の取得額(3,600万円×1/2)1,800万円

なお、寄与分は相続財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(同条3項)。また、寄与分を主張できるのは共同相続人に限られます。相続人ではない親族(たとえば被相続人の子の配偶者)の貢献は、寄与分ではなく「特別寄与料」(民法1050条)という別の制度の問題になります。

寄与分が認められる要件|「特別の寄与」のハードルは高い

寄与分の主張でよく問題になるのは、貢献が「特別の寄与」といえるかどうかです。親子や夫婦などの家族の間では、法律上も互いに扶養・協力し合うことが予定されています。そのため、実務上は、身分関係から通常期待される程度を超える貢献でなければ「特別の寄与」には当たらないと解されています。

寄与の態様は、一般に次のような類型に整理されています。

類型典型例主な確認ポイント
家業従事型親の農業・商店を無給または低額の報酬で手伝った報酬の有無・金額、従事の期間と頻度
金銭等出資型親の借金返済や自宅購入の資金を援助した出資の事実と金額、贈与か貸付か
療養看護型要介護状態の親を自宅で長期間介護した介護の必要性、期間、介護サービス費用の節約効果
扶養型親の生活費を継続的に負担した負担額、親自身の収入・資産の状況

いずれの類型でも、実務上は「無償性(対価を得ていないこと)」「継続性(一定期間続いていること)」「専従性(片手間ではないこと)」といった観点や、貢献と財産の維持・増加との因果関係が重視される傾向にあります。たとえば療養看護型では、精神的な支えになったというだけでは足りず、本来であれば介護サービス等に支払うはずだった費用の支出を免れた、という財産上の効果が必要と解されています。

介護をめぐる寄与分の主張方法そのものについては、親の介護をした相続人の寄与分の主張方法と限界でも詳しく解説しています。

寄与分を主張された側の反論のポイント

寄与分を主張された場合は、感情的に否定するのではなく、要件ごとに事実と証拠を確認していくことが重要です。

1.通常期待される扶養・協力の範囲を超えているか

同居して身の回りの世話をした、通院に付き添った、といった事情は、家族として通常期待される範囲の協力にとどまると評価されることも少なくありません。

2.対価や見返りを受けていなかったか

家業を手伝っていた相続人が給与を受け取っていた、親と同居して家賃や生活費の負担を免れていた、生前に贈与を受けていた、といった事情があれば、無償性が否定されたり、寄与の評価が小さくなったりする可能性があります。生前贈与がある場合は、特別受益(民法903条)として反対に主張できないかも検討します。

3.継続性・専従性があったか

介護や家業への従事が短期間にとどまる場合や、仕事の合間に時々手伝っていた程度の場合は、特別の寄与とは評価されにくい傾向にあります。施設入所中や入院中の期間は、原則として療養看護の寄与が認められにくいと解されています。

4.被相続人の財産の維持・増加につながったか

介護保険サービスを十分に利用していた場合などは、財産の維持への貢献が限定的と評価されることがあります。

5.主張を裏付ける証拠があるか

寄与分は、主張する側が具体的な事実と裏付け資料を示す必要があります。介護記録、要介護認定の資料、医療機関の記録、家業の帳簿、振込記録などが示されているかを確認し、資料がなければ提出を求めることが考えられます。

6.金額の算定が過大でないか

療養看護型では、介護報酬相当額×介護の日数×裁量的な割合(専門職でないこと等を考慮)で算定する方法が実務上用いられることがあります。日当や期間を過大に見積もっていないか確認しましょう。

遺産分割調停・審判での寄与分の扱い

寄与分は、まず相続人全員の協議で定めます。協議が調わないとき、または協議ができないときは、寄与をした相続人の請求により、家庭裁判所が「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情」を考慮して定めます(民法904条の2第2項)。この請求は、遺産分割の請求がされている場合などに限ってすることができます(同条4項)。

  • 調停段階:遺産分割調停が係属していれば、その調停の中で寄与分を主張することができます。独立して「寄与分を定める処分調停」を申し立てる場合の費用は、裁判所の案内によれば申立人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。
  • 審判段階:遺産分割審判で寄与分を考慮してもらうには、寄与分を定める処分の審判の申立てが必要とされています。遺産分割審判と寄与分の審判は併合して行われます(家事事件手続法192条)。
  • 申立ての期間:家庭裁判所は、遺産分割審判の手続で寄与分の申立期間(1か月以上)を定めることができ、期間経過後の申立てや、時機に後れて手続を著しく遅らせる申立ては却下されることがあります(家事事件手続法193条)。

調停委員への伝え方については遺産分割調停を有利に進める方法もご参照ください。当事務所の相続分野の取扱内容は、遺産分割・遺留分など相続トラブルのご相談ページでご紹介しています。

寄与分の期限|相続開始から10年を過ぎると主張できない

令和5年4月1日施行の改正により、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として特別受益や寄与分の規定は適用されず、法定相続分(または指定相続分)で分けることになりました(民法904条の3)。ただし、10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していた場合などは例外とされています。

相続開始から長期間が経過している事案では、まずこの点を確認しましょう。経過措置を含む詳細は遺産分割の10年ルールで解説しています。

遺留分侵害額請求と寄与分の関係

遺言で特定の相続人に多くの財産が残され、遺留分侵害額請求が問題になる場面で、財産を多く受け取った側が「自分には寄与分がある」と主張することがあります。しかし、遺留分侵害額の算定方法を定めた民法1046条2項は、民法900条から902条まで、903条、904条を引用しているものの、寄与分を定めた904条の2を引用していません。このため、遺留分の計算においては寄与分は考慮されないと解されています。

なお、寄与分が認められると各相続人の取得額が変わり、相続税の負担の分かれ方にも影響します(相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。相続税法27条1項)。税務の具体的な取扱いについては、税理士または税務署にご確認ください。

よくある質問

Q1.同居して親の面倒を見ていたというだけで寄与分は認められますか?

同居して日常的な世話をしていたというだけでは、家族として通常期待される範囲の協力と評価され、寄与分が認められないことも少なくありません。介護の必要性、期間、専従性、財産の維持への効果などが具体的に問題になります。

Q2.寄与分の主張に証拠がない場合はどうなりますか?

寄与分は、主張する側が具体的な事実と資料を示す必要があります。裏付けとなる資料がなければ、調停や審判で寄与分が認められない、または低く評価される可能性があります。

Q3.相手の寄与分の主張を受け入れないと、遺産分割はいつまでも終わりませんか?

協議で合意できなければ遺産分割調停で話し合い、それでも合意できなければ審判で家庭裁判所が一切の事情を考慮して判断します。

Q4.遺留分侵害額請求をしたら、相手から寄与分を主張されました。減額されますか?

遺留分侵害額の算定規定(民法1046条2項)は寄与分の規定を引用しておらず、遺留分の計算において寄与分は考慮されないと解されています。

まとめ|寄与分を主張されたら要件と証拠を冷静に確認

  • 寄与分は、共同相続人による「特別の寄与」があり、被相続人の財産が維持・増加した場合に限って認められる(民法904条の2)
  • 家族として通常期待される範囲の協力は、特別の寄与に当たらないと評価されることが多い
  • 反論では、無償性・継続性・専従性、財産への効果、証拠の有無、金額の算定根拠を確認する
  • 審判では寄与分を定める処分の申立てが必要で、申立期間を定められることもある
  • 相続開始から10年を経過すると原則として寄与分は主張できない(民法904条の3)
  • 遺留分の計算では寄与分は考慮されないと解されている

寄与分の争いは感情が絡み、当事者同士では平行線になりやすい問題です。弁護士に依頼すれば、相手の主張を要件と証拠の観点から整理し、調停・審判での見通しを踏まえた対応を検討することができます。横浜で相続問題に取り組む弁護士として、早めのご相談をおすすめします。

寄与分を主張されてお困りの方へ

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求など、紛争性のある相続事件に数多く対応してきました。相手方から寄与分を主張されている場合も、主張の妥当性や今後の見通しを丁寧にご説明いたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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