タングラム法律事務所

遺産分割調停を有利に進めるには?調停委員への伝え方を弁護士が解説

遺産分割調停を有利に進めるには?調停委員への伝え方を弁護士が解説

遺産分割調停を有利に進めるには?調停委員への伝え方を弁護士が解説

遺産分割調停を有利に進めるには?調停委員への伝え方を弁護士が解説

遺産分割調停を有利に進めるには?調停委員への伝え方を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月28日 最終更新日:2026年9月28日

「兄弟との話し合いがまとまらず、遺産分割調停を申し立てた(申し立てられた)。でも、調停委員に何をどう話せばよいのかわからない」「相手ばかりが言いたいことを言って、こちらが不利になるのではないか」。初めての調停を前に、このような不安を抱える方は少なくありません。

この記事では、家庭裁判所の遺産分割調停がどのような順序で進むのか、調停委員に主張を伝えるときのポイント、そして不利な結果を避けるために準備しておきたいことを、相続の紛争事案を扱う横浜の弁護士が解説します。

結論から言うと、遺産分割調停を有利に進めるためには、調停が「相続人の範囲→遺産の範囲→評価→特別受益・寄与分→分割方法」の順に段階的に進むことを理解し、各段階で争点を絞った主張を、裏付け資料とともに書面で出すことが重要です。感情的な不満を繰り返すよりも、法律上意味のある主張と証拠に集中するほうが、結果として自分の取り分を守りやすくなります。

遺産分割調停の仕組みと調停委員会の役割

遺産分割調停は、家庭裁判所で相続人同士が話し合い、遺産の分け方について合意を目指す手続です。調停は、裁判官1人と家事調停委員2人以上で構成される調停委員会が進めます(家事事件手続法248条1項)。実際の期日では、主に2人の調停委員が当事者から交互に話を聞き、必要に応じて裁判官と評議しながら進行します。

調停委員は、どちらか一方の味方をする立場ではありません。一方で、調停委員会は法律や裁判所の実務を前提に、「審判になったらどうなるか」という見通しも踏まえて調整を進めます。つまり、法的な根拠のある主張は調停の場でも重く扱われやすく、根拠のない主張は取り上げられにくいということです。

なお、申立書の写しは原則として相手方に送付されます(同法256条1項)。申立書や提出書面に相手への感情的な非難を書き連ねると、かえって対立を深めるおそれがある点にも注意が必要です。申立ての具体的な手順は、遺産分割調停を自分で申し立てる方法の記事で解説しています。

調停は段階的に進む|各段階で主張すべきこと

家庭裁判所が公表している案内資料では、遺産分割調停は次のような順序で争点を整理しながら進めることが示されています。前の段階で合意ができていないのに先の話をしても、議論がかみ合いません。

段階話し合う内容準備のポイント
1. 相続人の範囲誰が相続人か戸籍で確認。養子縁組の無効などを争う場合は別途人事訴訟が必要
2. 遺言の有無有効な遺言があるか遺言があれば原則としてその内容が前提になる
3. 遺産の範囲分割の対象となる財産は何か通帳・残高証明書・登記事項証明書などを自分で集めて提出
4. 遺産の評価不動産・非上場株式などをいくらと見るか査定書や路線価等の資料。合意できなければ鑑定を検討
5. 特別受益・寄与分法定相続分を修正すべき事情があるか主張する側が資料で立証する必要がある
6. 分割方法誰が何を取得するか現物分割・代償分割・換価分割などの希望と、その実現可能性

特に不動産の評価は、分割結果に大きく影響する争点です。家庭裁判所の資料でも、評価額は当事者間の合意で決める方法が最も多く利用されているとされており、合意できない場合は裁判所が選ぶ鑑定人による鑑定を検討し、当事者が鑑定費用を納めることになります。評価の考え方は、相続した不動産の評価でもめたときの解説記事もご参照ください。

調停委員に伝わる主張のしかた

主張は書面にまとめ、資料を添える

口頭で長く話しても、調停委員が要点を正確に把握できるとは限りません。家庭裁判所の案内でも、複雑な内容は主張書面にわかりやすくまとめ、関係資料を併せて提出するよう求められています。裏付け資料のない主張は、最終的に取り上げられないこともあるとされています。

「何を求めるか」を具体的に示す

「兄は昔から優遇されていた」という不満ではなく、「兄は被相続人から住宅購入資金として○○万円の贈与を受けており、特別受益として持ち戻すべきである」というように、法律上の主張と金額、根拠資料をセットで示すと、調停委員会も検討しやすくなります。

譲れる点と譲れない点を整理しておく

調停は全員の合意がなければ成立しません。すべての点で自分の主張を通そうとすると、かえって解決が遠のくこともあります。「実家は自分が取得したい」「代償金の額には一定の幅で応じられる」など、優先順位を事前に整理しておくと、調停委員からの提案にも冷静に対応できます。

不利になりやすい行動と注意点

  • 期日の欠席や資料提出の遅れ:手続が進まず、調停不成立や審判移行の判断に影響するおそれがあります。欠席のリスクは遺産分割調停の呼出状が届いたときの対応の記事で解説しています。
  • 遺産分割の対象外の問題にこだわる:生前の使途不明金、葬儀費用、祭祀承継、介護をめぐる不満などは、本来の遺産分割とは別の問題と位置づけられています。当事者全員が合意すれば調停の中で調整されることもありますが、合意できなければ別の手続(民事訴訟など)が必要になる場合があります。
  • 10年の期間制限を意識しない:相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益・寄与分を考慮した具体的相続分による分割を求められなくなります(民法904条の3)。令和5年4月1日より前に開始した相続には、施行から5年間(令和10年3月31日まで)の猶予が設けられています。

調停が成立しないとどうなるか

合意が成立して調書に記載されると、その記載は確定した審判と同一の効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。合意の見込みがない場合、調停委員会は調停を不成立として終了させることができ(同法272条1項)、その場合は調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされます(同条4項)。また、家庭裁判所が相当と認めるときは、調停に代わる審判がされることもあります(同法284条1項)。

審判では、裁判官が遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・生活の状況その他一切の事情を考慮して分け方を判断します(民法906条)。当事者の希望どおりの結果になるとは限らないため、「審判になったらどうなるか」の見通しを持ちながら調停で合意を目指すことが、結果的に有利な解決につながります。審判の流れは遺産分割審判の解説記事をご覧ください。

なお、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)は、調停が続いていても延びません。未分割の場合の申告方法などについては、国税庁の公表情報を確認のうえ、詳細は税理士または税務署にご確認ください。

遺産分割調停で弁護士に依頼するメリット

調停は本人だけでも進められますが、各段階でどのような主張が法的に意味を持つのか、どの資料が立証に役立つのかを判断するのは簡単ではありません。弁護士は手続代理人として期日に同席し、主張書面の作成や証拠の整理、調停委員会の提案が審判の見通しと比べて妥当かどうかの検討を行います。相手方に弁護士がついている場合には、なおさら早めの相談が有効です。当事務所の相続事件への対応は、遺産相続・遺留分の取扱分野のページでもご案内しています。

よくある質問

調停委員は自分の味方になってくれますか?

調停委員はどちらの当事者の味方でもなく、中立の立場で合意に向けた調整を行います。ただし、法的な根拠と資料に裏付けられた主張は検討の対象として重く扱われやすいため、主張を書面と証拠で示すことが重要です。

生前の使い込み(使途不明金)を遺産分割調停で請求できますか?

使途不明金は、本来の遺産分割とは別の問題と位置づけられています。相続人全員が合意すれば調停の中で調整されることもありますが、合意できない場合は、不当利得返還請求などの民事訴訟を別に検討する必要があります。

弁護士をつけると調停委員の印象が悪くなりませんか?

家事調停では弁護士を手続代理人とすることが認められており、弁護士がついていることだけで不利に扱われることは通常ないと考えられます。むしろ、争点や主張が整理されることで、手続が円滑に進む場合があります。

調停が不成立になったらどうなりますか?

遺産分割調停が不成立で終了した場合、調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して遺産の分け方を判断します。

まとめ

  • 遺産分割調停は、裁判官1人と家事調停委員2人以上の調停委員会が進める(家事事件手続法248条1項)
  • 相続人の範囲→遺産の範囲→評価→特別受益・寄与分→分割方法の順に、段階的に合意を積み上げる
  • 主張は書面にまとめ、裏付け資料を添えて具体的に示す
  • 使途不明金などの付随問題や、相続開始から10年の期間制限(民法904条の3)に注意する
  • 不成立の場合は審判に移行するため、審判の見通しを踏まえて調停に臨む

遺産分割調停は、準備の差が結果の差につながりやすい手続です。相手方との対立が深い場合や、不動産の評価・特別受益などの争点がある場合は、調停の早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

遺産分割調停の進め方に不安がある方へ

タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、交渉から調停・審判まで一貫して対応しております。調停での主張の組み立てや資料の準備、調停委員会の提案の検討をお手伝いします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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