タングラム法律事務所

相続した不動産の評価でもめたら?4つの価格と基準時を弁護士が解説

相続した不動産の評価でもめたら?4つの価格と基準時を弁護士が解説

相続した不動産の評価でもめたら?4つの価格と基準時を弁護士が解説

相続した不動産の評価でもめたら?4つの価格と基準時を弁護士が解説

相続した不動産の評価でもめたら?4つの価格と基準時を弁護士が解説

「実家をあなたが取るなら代償金として3,000万円を払ってほしい」「いや、あの家はせいぜい1,800万円だ」——遺産分割が行き詰まる原因として非常に多いのが、不動産をいくらと評価するかという問題です。不動産には「唯一の正解」がなく、どの資料を持ち出すかで金額が大きく変わるため、感情的な対立に発展してしまうことも珍しくありません。

この記事では、不動産の「4つの価格」の違い、遺産分割と遺留分とで異なる評価の基準時、評価がまとまらない場合の進め方と鑑定費用について、横浜で相続案件を取り扱う弁護士の視点から解説します。

なぜ相続で不動産の評価がもめるのか

遺産分割は、遺産に属する物や権利の種類・性質、各相続人の年齢や職業その他一切の事情を考慮して行うものとされています(民法906条)。しかし、現金や上場株式と違い、不動産には一義的な価格が存在しません。同じ土地でも、税務上の評価額、業者の査定額、実際の成約価格はそれぞれ異なります。

加えて、立場によって「望ましい評価額」が正反対になることも対立を深めます。不動産を取得する側は評価額が低いほど代償金が少なくて済み、受け取る側は評価額が高いほど受取額が増えるためです。借地権や共有持分、再建築が難しい土地は市場価格の算定自体が難しく、専門家の間でも評価が分かれます。

不動産の「4つの価格」とその違い

相続の場面で登場する不動産の価格は主に次の4つです。目的も算定主体も異なるため、どの数字を根拠にしているのかを明確にすることが話し合いの出発点になります。

価格の種類決める主体・時点水準の目安主な用途
実勢価格(時価)市場(実際の取引)基準となる価格遺産分割・代償金の算定
公示価格国(毎年1月1日時点)適正な地価の指標取引の目安・公共用地の取得
相続税路線価国税庁(毎年1月1日時点、7月頃公表)公示価格の8割程度とされる相続税・贈与税の申告
固定資産税評価額市町村(3年に1度評価替え)公示価格の7割程度とされる固定資産税・登録免許税

注意していただきたいのは、相続税の申告で使う評価額と、遺産分割で使う評価額は別のものだという点です。相続税の計算は財産評価基本通達に沿って行われますが、遺産分割は相続人間で財産を公平に分ける手続ですから、実際に売買される価格、すなわち時価を基準に考えるのが原則です。

固定資産税の納税通知書の価格は手元で確認できるため話し合いに出てきやすい数字ですが、市場価格とは開きが生じ得ます。「手元にある資料だから」という理由だけで基準にしないよう注意してください。

評価の「基準時」は手続によって異なる

遺産分割は「分割時」の価格が基準

遺産分割においては、実際に分割を行う時点の時価を基準とする取扱いが実務上一般的です。相続開始から分割成立までに何年も経過し、その間に地価が動いた場合、古い評価をそのまま用いると実態に合わない分配になってしまうためです。長期化しているケースでは、数年前の査定書の数字が独り歩きしていないか確認が必要です。

遺留分は「相続開始時」の価格が基準

これに対し、遺留分を算定するための財産の価額については、民法1043条1項が「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」と定めています。条文上、相続開始時が基準となる点で遺産分割とは異なります。具体的な計算方法は遺留分侵害額の計算方法を解説した記事もあわせてご覧ください。

特別受益として持ち戻す場合

生前贈与を特別受益として持ち戻す場面でも評価の時点が問題になります。最高裁昭和51年3月18日判決は、贈与された財産が金銭である場合について、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した価額をもって評価すべきであると判断しました。どの土俵で議論しているのかによって用いるべき基準時が変わるため、取り違えたまま交渉を続けると後から前提が崩れかねません。

評価がまとまらないときの進め方

評価の対立は、いきなり鑑定に進むのではなく、費用の軽い方法から段階的に検討するのが現実的です。

①複数の査定を取り、差の理由を検証する

相続人がそれぞれ不動産業者から査定書を取得し、内容を突き合わせます。査定額の差は、想定する売却期間、私道の負担、再建築の可否、境界の未確定といった事情に理由があることが多く、その理由を検証するだけで歩み寄りができる場合があります。

②中間値や一定の割合で合意する

相続人全員が納得するのであれば、複数の査定額の平均や中間値で合意する解決も可能です。遺産分割は相続人全員の合意で成立させることができますから(民法907条1項)、厳密な鑑定を経ずに終えられるのであれば時間と費用の面でメリットがあります。

③私的鑑定を利用する

不動産鑑定士に依頼して鑑定評価書を取得する方法です。業者査定より客観性が高い一方、依頼した側に有利な前提が置かれていると反論される余地があるため、鑑定士の選任を事前に合意しておくことが望ましいといえます。

④遺産分割調停・審判の中で鑑定を求める

協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は家庭裁判所に遺産分割を請求することができます(民法907条2項)。その手続の中では、当事者の申出により、家庭裁判所が選任した鑑定人による鑑定が行われることがあります。調停が成立しない場合の流れは遺産分割審判の手続と判断基準を解説した記事で説明しています。

鑑定にかかる費用と負担

家庭裁判所の手続で鑑定を実施する場合、鑑定を求める当事者があらかじめ費用を予納するのが通常です。金額は対象不動産の種類・数量・複雑さによって幅がありますが、数十万円に及び、評価が難しい物件では100万円を超えることもあるとされています。最終的には相続分に応じて分担する形で清算されるのが一般的です。

したがって、鑑定に進むかどうかは争っている評価額の差額が鑑定費用や追加の時間に見合うかという視点で判断します。差額が数百万円に及ぶなら鑑定の意味は大きい一方、差が数十万円程度であれば合意で決着させたほうが結果的に有利なことも少なくありません。弁護士費用の考え方は弁護士費用のページに掲載しています。

分割方法によって評価の重みは変わる

  • 代償分割:取得する相続人が他の相続人に代償金を支払う方法。評価額が支払額に直結し、最も争われやすい
  • 換価分割:売却して代金を分ける方法。実際の成約価格で分けるため評価の対立が生じにくい
  • 現物分割:分筆するなどして現物のまま分ける方法。分筆後の各区画の価値の均衡が問題になる
  • 共有分割:共有のまま残す方法。当面の対立は避けられるが、将来の管理・処分で新たな紛争を生みやすい

評価で膠着している事案では、換価分割に切り替えることで解決に向かうこともあります。売却を選ぶ場合は税負担も検討事項となるため、相続した不動産を売却するときの手続きと税金の記事もご参照ください。なお、譲渡所得税や相続税の計算・申告は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

よくある質問

Q1.固定資産税評価額を使って遺産分割をしてもよいのですか。

相続人全員が合意すれば可能です。ただし固定資産税評価額は公示価格の7割程度を目安に定められているとされ、実際の売買価格より低くなる傾向があります。代償金を受け取る側は、時価との差を確認したうえで判断することをおすすめします。

Q2.不動産の評価は、いつの時点の価格で行うのですか。

遺産分割の実務では、分割を行う時点の時価を基準とする取扱いが一般的です。他方、遺留分を算定するための財産の価額は、民法1043条1項が「相続開始の時において有した財産の価額」と定めており、相続開始時が基準となります。

Q3.相手が極端な評価額を主張して譲りません。どうすればよいですか。

まずは複数の査定書など根拠のある資料を出し合い、差の理由を検証します。歩み寄れない場合は、遺産分割調停を申し立てて家庭裁判所の手続の中で鑑定を求める方法があります。鑑定には費用と時間がかかるため、差額と費用を比較して検討することが大切です。

Q4.家庭裁判所での不動産鑑定の費用は誰が負担しますか。

鑑定を求める当事者があらかじめ費用を予納するのが通常です。金額は物件の種類や数によって幅がありますが、数十万円に及び、複雑な物件では100万円を超えることもあるとされています。最終的には相続分に応じて分担する形で清算されることが多いといえます。

まとめ|評価の争いは「根拠」と「基準時」の整理から

  • 不動産には実勢価格・公示価格・相続税路線価・固定資産税評価額という異なる価格があり、目的が違う
  • 相続税の申告に用いる評価額と、遺産分割で用いる時価は別のものである
  • 遺産分割は分割時の時価が基準、遺留分の基礎財産は民法1043条1項により相続開始時が基準
  • 査定の突き合わせ→合意による調整→私的鑑定→家庭裁判所での鑑定と段階的に進める
  • 鑑定費用は数十万円から100万円を超えることもあり、争っている差額との比較で判断する

どの資料に基づいてどこまで主張できるか、鑑定に進むべきかどうかの判断は、対象不動産の性質や相続人の関係によって変わります。弁護士に依頼すれば、交渉を代理して感情的な対立を避けつつ、評価の根拠となる資料を整えて有利な条件を引き出すことが期待できます。当事務所の取扱いは遺産分割・遺留分など相続問題のページをご覧ください。

相続した不動産の評価でお困りの方へ

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分をはじめとする紛争性のある相続案件を数多く取り扱っております。不動産の評価が争点となっている事案について、資料の整え方から交渉・調停の進め方まで、横浜の弁護士がご相談に対応します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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