タングラム法律事務所

契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方を横浜の弁護士が解説

契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方を横浜の弁護士が解説

契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方を横浜の弁護士が解説

契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方を横浜の弁護士が解説

契約解除の進め方|催告解除と通知書の書き方を横浜の弁護士が解説

「納期を何度も守らない外注先との取引を打ち切りたい」「代金を払ってくれない取引先との契約をやめたい」——事業を続けていれば、契約を途中で終わらせたい場面は必ず出てきます。ところが、解除は手順を誤ると効力が認められず、逆に「一方的に取引を打ち切られた」として自社が損害賠償を請求される側に回ってしまうこともあります。

この記事では、債務不履行を理由とする契約解除について、催告解除(民法541条)と無催告解除(民法542条)の違い、解除が認められないケース、解除通知書に書くべき事項と送り方、そして解除した後の原状回復・損害賠償までを、中小企業の実務の流れに沿って整理します。

「解除」「解約」「合意解除」——まず言葉と類型を整理する

契約を終わらせる方法にはいくつかの類型があり、実務では次のように整理すると混乱がありません。

類型根拠特徴
法定解除民法541条・542条など相手方の債務不履行があるときに、法律の規定に基づいて一方的に解除する
約定解除契約書の解除条項契約書で定めた解除事由(支払遅延・信用不安・反社会的勢力該当など)に当たるときに解除する
合意解除当事者の合意双方が合意して契約を終了させる。清算条件を合意書に落とし込むのが通常
任意解除民法641条・651条など請負の注文者や委任の各当事者のように、不履行がなくても解除できる場合

解除の効果は原則として契約時にさかのぼりますが、賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生じ(民法620条)、委任にも同様の扱いが準用されています(同652条)。継続的な契約について「解約」という言葉が使われるのは、この将来効の性質を指していることが多いといえます。

債務不履行による解除は2つ——催告解除と無催告解除

催告解除(民法541条)

もっとも基本となるのが催告解除です。民法541条は、当事者の一方が債務を履行しない場合に、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは契約を解除できると定めています。つまり、①債務不履行、②相当の期間を定めた催告、③期間内に履行がないこと、という三段階を踏むのが原則です。

ただし同条ただし書は、期間を経過した時点における債務の不履行が「その契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は解除できないとしています。わずかな数量不足や短期間の遅れだけを理由に取引全体を打ち切ることはできない、ということです。

無催告解除(民法542条)

催告をしても意味がない場面では、催告なしに直ちに解除できます。民法542条1項は、次の場合を挙げています。

  • 債務の全部の履行が不能であるとき
  • 債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
  • 債務の一部の履行が不能である場合や一部の履行を明確に拒絶した場合で、残りの部分だけでは契約の目的を達することができないとき
  • 契約の性質や当事者の意思表示により、特定の日時・一定の期間内に履行しなければ契約の目的を達することができない場合に、その時期を経過したとき(いわゆる定期行為)

なお、2020年4月1日に施行された改正民法により、解除の要件として債務者の帰責事由は不要と整理されました。解除は「相手に責任を取らせる制度」ではなく「契約の拘束力から離脱するための制度」と位置づけられているためです。もっとも、損害賠償を請求するには別途、債務者の帰責事由が問題になります。

解除できない・してはいけないケース

解除を検討する際は、「解除できるか」と同じくらい「解除してはいけない場面ではないか」の確認が重要です。

  • 不履行が軽微な場合:民法541条ただし書により解除できません。
  • 自社(債権者)側に原因がある場合:債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるときは解除できません(民法543条)。仕様の指示を出していない、材料を支給していないといった事情がないか確認します。
  • 当事者が複数いる場合:契約当事者の一方が数人あるときは、解除は全員から、または全員に対してのみ行う必要があります(民法544条1項)。共同事業者や共有物件のケースで見落としやすい点です。
  • いったん解除した後の撤回:解除の意思表示は撤回できません(民法540条2項)。

さらに、長期にわたる継続的な契約では、形式的に契約違反があるというだけで解除が認められるとは限りません。賃貸借の分野では、当事者間の信頼関係を破壊する程度の事情があるかどうかで解除の可否を判断する考え方(信頼関係破壊の法理)が定着しており、最高裁昭和39年7月28日判決などで示されてきました。継続的な取引一般についても、裁判例では解除の可否を実質的に判断する傾向がみられます。

解除を急ぐあまり、催告書と解除通知を同じ日に出してしまう、催告期間が経過する前に取引を止めてしまう、といった対応は、後の紛争で不利に働きます。少なくとも、催告の日付・期間・到達の記録は必ず残してください。

まず契約書の解除条項を確認する

実務では、民法の規定より先に契約書を確認します。多くの取引基本契約書には、以下のような約定解除条項が置かれています。

  • 支払を一定期間遅滞したとき
  • 手形・小切手の不渡り、差押え、破産手続開始の申立てなど信用不安が生じたとき
  • 反社会的勢力に該当することが判明したとき(暴力団排除条項)
  • 許認可の取消しなど、事業継続に支障が生じたとき

これらに「催告を要しないで直ちに解除できる」旨の無催告解除条項が付いていることも多く、その場合は催告の手間を省けます。ただし、ごく軽微な違反まで無催告解除の対象とする運用は、事案によっては権利濫用等として制限される可能性がありますので、条項があるから常に安全というわけではありません。あわせて、期限の利益喪失条項があれば、解除と同時に未払残債の一括請求ができるかも確認します。

契約期間そのものについては、自動更新条項が入った契約の解約し忘れを防ぐ実務対応もあわせてご確認ください。更新拒絶の通知期限を過ぎてしまうと、そもそも解除の必要がなかった場面で解除を検討せざるを得なくなります。

解除通知書の書き方と送り方

記載すべき事項

解除通知書に決まった書式はありませんが、後日の紛争に備えて次の事項を明記します。

  • 差出人・宛先(契約書上の正式な商号・代表者名で記載する)
  • 対象となる契約の特定(契約名・契約日・注文番号など)
  • 債務不履行の具体的な内容(何が、いつまでに、どのように履行されていないか)
  • 催告する場合は、履行を求める内容と履行期限(相当の期間)
  • 解除する場合は、解除する旨の明確な意思表示と根拠(契約書第○条、民法541条など)
  • 未払代金・違約金・損害賠償の請求、貸与物の返還請求など付随する請求

実務では、催告書と解除通知を二段階に分けるほか、「本書面到達後○日以内に履行がない場合は、あらためて通知することなく本契約を解除する」という形で、催告と条件付きの解除の意思表示を1通にまとめる方法もよく用いられます。手続を1回で済ませられる反面、要件を満たさないと解除の効力が争われるため、文言は慎重に検討する必要があります。

送り方——到達の証拠を残す

解除は相手方に対する意思表示によって行い(民法540条1項)、意思表示は相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。したがって、「いつ届いたか」を証明できる形で送ることが決定的に重要です。一般的には、内容証明郵便に配達証明を付けて送付します。文面と送付日、到達日の三点が公的に記録されるためです。書き方や費用は内容証明郵便を自分で出す方法(書き方・費用・出し方)で詳しく解説しています。

なお、相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(民法97条2項)。受取拒否をされた場合でも、直ちに手詰まりになるわけではありません。

解除の効果——原状回復と損害賠償

解除権が行使されると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(民法545条1項本文)。ただし、第三者の権利を害することはできません(同項ただし書)。金銭を返還するときは受領の時からの利息を付す必要があり(同条2項)、金銭以外の物を返還するときは受領の時以後に生じた果実も返還します(同条3項)。

そして、解除権の行使は損害賠償の請求を妨げません(同条4項)。解除して契約から離脱したうえで、代替品を高値で調達した差額や、再委託にかかった費用などを請求していくことになります。

場面解除後の主な処理
売買(未納品・未払い)支払済代金の返還、引渡済商品の返還、差額損害の賠償請求
請負・システム開発出来高部分の扱い、成果物・データの引渡し、著作権や検収の清算
継続的な売買・業務委託将来に向けた終了、既発生の代金債権は残る、在庫・貸与物の返還
不動産賃貸借将来効(民法620条)、明渡し、未払賃料と原状回復費用の清算

継続的な取引を打ち切るときの追加チェックポイント

長年続いてきた取引を終了させる場合は、民法の解除要件だけでなく、次の点も確認してください。

予告期間と「やむを得ない事由」

期間の定めのない継続的取引を一方的に打ち切るケースについては、裁判例で、相応の予告期間を置くべきである、あるいは取引を終了させるだけの事由が必要であると判断されることがあります。相手方が自社との取引を前提に設備投資や人員配置を行っていた場合は特に注意が必要です。取引形態ごとの留意点は代理店契約と販売店契約の違いと法的リスクもご参照ください。

フリーランス法の30日前予告

相手方が個人で業務を受託するフリーランス(特定受託事業者)である場合、特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約を解除しようとするとき(期間満了後に更新しない場合を含む)、少なくとも30日前までに予告しなければなりません(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律16条1項。2024年11月1日施行)。対象となる「継続的業務委託」は、政令により6か月以上の期間行う業務委託とされています。また、相手方から理由の開示を請求されたときは、遅滞なく開示する義務があります(同条2項)。いずれも厚生労働省令で定める例外がありますので、個別の適用は所管の公表資料で確認してください。

取適法(旧下請法)・独占禁止法

2026年1月1日には、下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が施行されています。同法では、違反行為を公正取引委員会等に知らせたことを理由に取引数量の削減や取引停止といった不利益な取扱いをすることが禁止されています。また、優越的地位にある事業者が一方的に取引を打ち切る行為は、独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となる可能性があります。契約解除は、契約法・債権回収・取引規制が交錯する場面ですので、当事務所の企業法務(契約書レビュー・労務・トラブル対応)のページもあわせてご覧ください。

よくある質問

催告の「相当の期間」はどのくらい設定すればよいですか。

民法541条は「相当の期間」とのみ定めており、日数は明示されていません。何日が相当かは債務の内容や取引の規模によって変わります。実務では1週間から2週間程度を設定する例が多く見られますが、短すぎると相当な期間を定めた催告といえないと判断されるおそれがあります。

契約解除の通知はメールで送っても有効ですか。

解除は相手方に対する意思表示によって行うもので(民法540条1項)、法律上は書面に限られていません。したがってメールでも解除の効力自体は生じ得ます。もっとも、意思表示は相手方に到達した時から効力を生じるため(民法97条1項)、後日「届いていない」と争われると、到達の立証が問題になります。重要な取引では、内容証明郵便に配達証明を付けて送る方法が安全です。

契約を解除すると、それまでの未払い代金や損害は請求できなくなりますか。

解除権の行使は損害賠償の請求を妨げないと定められており(民法545条4項)、解除したうえで損害賠償を求めることができます。また、解除により当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(同条1項)。賃貸借など継続的な契約の解除は将来に向かってのみ効力を生じるため(民法620条)、過去の期間の賃料は当然には消えません。

解除の通知を出した後で、やはり取引を続けたいと思ったら撤回できますか。

解除の意思表示は撤回することができません(民法540条2項)。相手方の同意を得て新たに契約を締結し直すことは可能ですが、一方的に「先の解除はなかったことにする」という扱いはできません。解除は取引関係を終わらせる強い効果を持つ行為ですので、通知を出す前に社内で方針を固めておくことが重要です。

契約書に解除条項がない場合、契約解除はできないのでしょうか。

契約書に解除条項がなくても、民法541条・542条の要件を満たせば法定解除ができます。解除条項は、解除できる場面をあらかじめ明確にし、催告を不要とするなど手続を簡略にするためのものです。条項がない場合は原則どおり催告を経る必要があります。

まとめ

契約解除の進め方は、次の順序で考えると整理しやすくなります。

  • ①契約書の解除条項と期限の利益喪失条項を確認する
  • ②無催告で解除できる場面か(民法542条・無催告解除条項)を検討する
  • ③そうでなければ、相当の期間を定めて催告する(民法541条)
  • ④不履行が軽微でないか、自社側に原因がないかを点検する(541条ただし書・543条)
  • ⑤到達の記録が残る方法で解除通知を送る(民法97条1項)
  • ⑥原状回復と損害賠償・未払代金の回収を並行して進める(民法545条)

解除は、いったん通知を出すと撤回できず、取引関係を後戻りできない形で変えてしまいます。相手方に一定の言い分がある場合や、長年の継続的取引を終了させる場合は、通知を出す前の段階で弁護士に相談し、催告の内容や時期、解除後の回収方針までを一体で設計しておくことをおすすめします。横浜のタングラム法律事務所では、通知書の起案から、その後の交渉・回収手続までを一貫してお引き受けしています。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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