SNS運用で著作権・肖像権侵害にならないために|中小企業のリスク管理を横浜の弁護士が解説
SNS運用で著作権・肖像権侵害にならないために|中小企業のリスク管理を横浜の弁護士が解説
Instagram・X(旧Twitter)・Facebook・TikTokなど、SNSを使った集客や広報活動は、いまや中小企業・個人経営の店舗にとって欠かせないマーケティング手段になっています。しかし、日々投稿を続ける中で、「他のアカウントの画像をシェアしてしまった」「スタッフの写真を本人に無断で掲載してしまった」というトラブルが後を絶ちません。
著作権侵害や肖像権侵害は、「知らなかった」では済まされない重大な法的リスクです。実際に損害賠償請求を受けたり、炎上によって事業に深刻なダメージを受けたりするケースも増えています。本記事では、横浜を拠点とするタングラム法律事務所の弁護士が、中小企業のSNS運用で特に注意すべき著作権・肖像権の基本知識と、実践的なリスク管理のポイントをわかりやすく解説します。
中小企業のSNS運用で増える著作権・肖像権トラブル
SNSが普及するにつれ、企業アカウントによる著作権・肖像権に関するトラブルは年々増加しています。特に中小企業や個人経営の事業者では、専任のSNS担当者を置けず、経営者本人やアルバイトスタッフが投稿を担当するケースが少なくありません。法的な知識がないまま運用を続けると、思わぬ場面でトラブルに発展するリスクがあります。
よく起きるのは、「ネットで見つけた料理の写真やイラストをそのまま投稿した」「他の企業アカウントの投稿を無断でリポストした」「スタッフのプロフィール写真を採用広告に無断で使った」といったケースです。いずれ゚悪意はなくても、法的には著作権侵害や肖像権侵害に該当する可能性があります。
著作権とは?SNS運用で侵害しやすい4つのパターン
著作権とは、著作物(思想・感情を創作的に表現したもの)を創作した著作者に自動的に発生する権利です(著作権法第17条)。登録や申請は不要で、写真・イラスト・文章・動画・音楽など幅広い表現物が保護の対象になります。
SNS運用でよく問題になる著作権侵害のパターンには、主に以下の4つがあります。
① 他者の画像・写真・イラストの無断使用
インターネット上で公開されている画像でも、著作権者の許可なく使用することは原則として著作権侵害となります。「フリー素材のサイトではなかったが、ダウンロードできたから使った」「他のSNSアカウントが使っていたので自分も使った」という理由は通りません。有料の写真素材サービスやCC0ライセンスが明記されたフリー素材サイトの画像を使用するか、自社で撮影した写真を使うのが基本です。
② 他者の投稿の無断リポスト・転載
他者のSNS投稿(写真・文章・動画など)を無断でリポスト・転載することも著作権侵害になり得ます。リポスト機能(リツイート等)はSNSの仕様として認められている場合でも、元投稿の画像や文章をコピーして自分の投稿として再掲載することは別問題です。元の投稿者に許可を得てから転載することが必要です。
③ 有名キャラクターや著名人の画像使用
ゆるキャラ・漫画・アニメのキャラクター画像を店舗のSNS投稿に使うことは、著作権者(制作会社等)の許諾がない限り著作権侵害となります。また、アイドルや俳優など著名人の写真を無断で使用すると、著作権侵害に加えてパブリシティ権の侵害にも問われる可能性があります。
④ 引用の要件を満たさない使用
著作権法第32条では、一定の条件を満たす「引用」であれば著作者の許可なく著作物を使用できると定めています。しかし、この引用が認められるには、自分の創作物が「主」で引用部分が「従」であること、引用箇所を明確に区別して出所を明示すること、引用目的が正当であることなど、複数の要件を満たす必要があります。SNSでは「元記事のURLを貼れば引用になる」と誤解されることがありますが、条件を満たさない引用は著作権侵害となり得ます。
肖像権とは?従業員・顧客の写真をSNSに載せる際の注意点
肖像権とは、自分の顔や姿を無断で撮影・公表されない権利です。著作権と異なり法律に明文規定はありませんが、人格権の一つとして判例上確立されており、無断で他人の肖像を公表することは不法行為(民法第709条)として損害賠償の対象となり得ます。
特に企業のSNS運用で問題になりやすいのが、従業員や顧客の肖像権です。
従業員をSNSに掲載する場合
「スタッフ紹介」や「職場の雰囲気を伝える投稿」など、従業員の写真をSNSに掲載する場合、本人の同意が必要です。雇用契約を結んでいるからといって、無断で氏名・顔写真・勤務の様子を公表することはできません。特に退職後に「掲載を辞めてほしい」と申し出を受けた場合、速やかに対応しないとトラブルに発展するケースがあります。
対応策として、採用時や入社時に「SNS掲載に関する同意書」を作成し、書面または電子的な方法で同意を取得しておくことが有効です。同意書には「どのSNSに」「どのような目的で」「どの期間」掲載するかを明記しておくことが望ましいです。
顧客・来店者をSNSに掲載する場合
イベントや来店時の写真を投稿する際も、写り込んだ顧客の肖像権に注意が必要です。大勢の人が写っている風景写真でも、特定の人物が識別できる場合は肖像権侵害となる可能性があります。「撮影・SNS掲載の同意をいただいています」「お断りの方はお申し付けください」等の告知を事前に行い、同意を得た上で掲載することが安全です。
著作権侵害・肖像権侵害が認められた場合の法的責任
著作権侵害が認められると、著作権者から差止請求(侵害行為の停止・削除の要求)と損害賠償請求の両方を受ける可能性があります。著作権法では、著作権者が受けた損害の算定方法として、①実際の損害額、②侵害者が侵害行為によって得た利益額、③著作権の行使につき受けるべきであった金銭(使用料相当額)のいずれかを選択できると定めています(著作権法第114条)。
刑事罰についても定められており、著作権侵害は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(著作権法第119条)。さらに、法人の代表者や従業員が業務に関して著作権侵害を行った場合、法人に対しても3億円以下の罰金刑が科されることがあります(著作権法第124条、いわゆる両罰規定)。
肖像権侵害については、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求が認められるケースがあります。損害額の算定は個別の事情によりますが、精神的損害に対する慰謝料として数万円から数十万円の支払いを命じられた事例も見られます。
横浜エリアの企業でも、SNSでの投稿をきっかけに著作権者や権利侵害を受けた個人から内容証明郵便による警告を受けるケースは珍しくありません。弁護士に相談することで、請求の当否や適切な対応策を迅速に判断することができます。
2025年4月施行「情報流通プラットフォーム対処法」の影響
2025年4月1日、「情報流通プラットフォーム対処法」(通称:情プラ法)が施行されました。この法律は、従来の「プロバイダ責任制限法」を改正・強化したもので、主にX(旧Twitter)・Instagram・TikTok等の大規模SNS事業者に対し、誹謗中傷や権利侵害コンテンツへの対応の迅速化と透明化を義務付けるものです。
法律が直接規制するのは主に大規模プラットフォーム事業者ですが、企業のSNS運用にも間接的な影響があります。具体的には、著作権侵害や肖像権侵害を受けた権利者が申告した場合、SNS事業者は7日以内に削除等の対応を判断・通知しなければならなくなりました。つまり、以前より削除対応が迅速化されると同時に、企業側が侵害投稿を行った場合も速やかに削除される可能性が高まっています。
また、情プラ法の施行を受けて、SNS上での権利侵害に対する権利者の申告・対応が以前より活発になる傾向も見られます。中小企業としても、SNS運用における法的リスクをこれまで以上に意識した体制整備が必要と言えます。
中小企業が今すぐできるSNSリスク管理の実務対応
著作権・肖像権のリスクを下げる�めに、中小企業が取り組むべき実務対応をまとめます。
①使用する画像の権利確認を徹底する
SNS投稿に使用する画像は、必ず権利の確認を行ってください。自社で撮影した写真を使うのが最も安全です。外部の画像を使う場合は、商用利用可能なフリー素材サイト(Unsplash・PixabayなどCC0ライセンスのもは)か、有料ライセンス契約のある素材サービスを利用してください。素材サイトの利用規約は定期的に確認し、商用利用・SNS利用が認められているかをチェックしましょう。
②SNS掲載に関する社内ルール・ガイドラインを作成する
担当者が変わっても同じ基準で運用できるよう、「どのような画像なら使ってよいか」「他社の投稿をリポストする場合のルール」「スタッフや顧客の写真掲載に関する手続き」などを明文化した社内ガイドラインを作成することをお勧めします。就業規則や社内規程の一部として整備するのもよいでしょう。
③従業員・顧客への同意取得を書面で行う
従業員のSNS掲載については、採用時や異動・業務変更時に書面(SNS掲載同意書)で同意を取得しましょう。顧客へのSNS掲載については、来店時やイベント参加時に「撮影・SNS掲載へのご同意」を明示する告知を行い、拒否り唳し出た場合には速やかに対応できる体制を整えておくことが重要です。
④AIり活用した画像生成利用時の注意
近年はAIを使った画像生成も普及していますが、AIが生成した画像が既存の著作物に類似している場合、著作権侵害が問われる可能性があります。また、著名なキャラクターや人物を連想させるプロンプトを使って生成した画像は、著作権侵害やパブリシティ権侵害にあたる可能性があるため、使用は避けるべきです。使用するAIサービスの利用規約も事前に確認してください。
SNSで権利侵害を指摘された場合の初動対応
万が一、著作権侵害や肖像権侵害を指摘する内容証明郵便が届いたり、SNS上で警告を受けたりした場合には、まず冷静に対応することが重要です。
第一に、指摘を受けた投稿を速やかに削除またはダウンロードを中止するなど、それ以上の侵害が拡大しないよう措置を取ることが望ましいとされています。第二に、相手方の請求内容(損害賠償額・謝罪要求など)を冷静に確認した上で、自社の法的な立場を整理することが必要です。
ただし、相手方の請求内容が正当かどうか、損害賠償額の主張が妥当かどうかは、法律の専門知識がなければ判断が難しい場合があります。「とりあえず謝罪すれば解決する」と思い込んで書面を作成すると、後々不利な証拠になりかねません。対応に迷った場合は、早期に弁護士に相談することをお勧めします。横浜エリアの弁護士に相談することで、地域の実情を踏まえた適切なアドバイスを受けることができます。
SNS運用に関わる著作権・肖像権トラブルはタングラム法律事務所へ
タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。SNSでの権利侵害トラブルが発生した場合の対応はもちろん、社内SNSガイドラインの整備・同意書の作成など、予防的な法務サポートもお気軽にご相談ください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。