タングラム法律事務所

J:COM・ケーブルテレビから意見照会書|トレント開示請求への対応

J:COM・ケーブルテレビから意見照会書|トレント開示請求への対応

J:COM・ケーブルテレビから意見照会書|トレント開示請求への対応

J:COM・ケーブルテレビから意見照会書|トレント開示請求への対応

J:COM・ケーブルテレビから意見照会書|トレント開示請求への対応

ある日、封書で「発信者情報開示に係る意見照会書」という書面が届く。差出人はJ:COMのロゴが入った書面なのに、社名は聞いたことのない地域の会社になっている。中を読むと、BitTorrent(トレント)を使って映像作品や成人向け作品を送信したとして、権利者が氏名と住所の開示を求めている——。ケーブルテレビ(CATV)回線をお使いの方から、こうしたご相談をいただくことが増えています。

ケーブルテレビ回線の意見照会には、光回線やモバイル回線とは異なる、この業態に固有の事情がいくつもあります。会社が二層に分かれていること、地域ごとに事業者が違うこと、IPアドレスの割り当て方が近年変わりつつあること、そして集合住宅への一括提供が多いことです。この記事では、横浜で発信者情報開示の防御対応を扱う弁護士の立場から、J:COMをはじめとするケーブルテレビ回線で意見照会書を受け取った方が、回答期限までに何を確認し、どう対応すべきかを整理します。

なぜケーブルテレビ会社から直接、意見照会書が届くのか

SNSや掲示板の書き込みが問題になる事案では、権利者はまずサイト運営者(コンテンツプロバイダ)にIPアドレスの開示を求め、その結果をもとに通信事業者へ二段階目の請求を行います。ところがBitTorrentの事案では、間に入るサイト運営者が存在しません。ファイルの断片は、利用者の回線から他の利用者の端末へ直接送信されるからです。

そのため、権利者側の調査会社がP2Pネットワークを監視して収集したIPアドレスと日時をもとに、いきなり回線提供事業者に対して開示請求が行われます。情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)5条1項は、権利を侵害されたとする者が「特定電気通信役務提供者」に対し、①「当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」、②「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」に開示を請求できると定めています。

請求を受けた事業者には、同法6条1項により、次の義務が生じます。

情報流通プラットフォーム対処法6条1項
開示関係役務提供者は、前条第一項又は第二項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。

手元に届いた意見照会書は、この「意見を聴かなければならない」という義務の履行として送られてきたものです。条文が「その理由を含む」と書いていることに注目してください。開示に反対するのであれば、反対の意思表示だけでは足りず、理由を述べることが法律上予定されています。

差出人が「JCOM株式会社」ではない理由|グループの二層構造

J:COMの事案でご相談者が最初に戸惑うのが、書面の差出人です。契約は「J:COM」と結んだつもりなのに、意見照会書の名義は株式会社ジェイコム東京のような地域法人や、横浜ケーブルビジョン株式会社のような個別のケーブルテレビ局になっていることがあります。

これは、J:COMグループが二層構造をとっているためです。JCOM株式会社が公表している発信者情報開示請求のお手続きについてによれば、グループ統括会社であるJCOM株式会社がインターネットサービスプロバイダとして通信ログの保全を行う一方、JCOM株式会社自身は発信者情報を保有しておらず、発信者情報を保有しているのは各地域の運営会社である、とされています。そのうえで、意見照会は運営会社から実施されると案内されています。

権利者側から見ると、手続は次の順序で進みます。

段階担当行われること
1グループ統括会社開示請求書を受領し、通信ログを保全する
2グループ統括会社ログ保全の結果と、発信者情報を保有する運営会社を請求者に案内する
3権利者運営会社を宛名とした開示請求書を改めて提出する
4運営会社発信者情報の有無を確認し、発信者へ意見照会を行う
5運営会社意見照会の結果を踏まえて開示・不開示を判断し、請求者に回答する

実務上、ここから二つのことが読み取れます。第一に、意見照会書が届いた時点で、すでにログの保全は済んでいます。「時間が経てばログが消えるのではないか」という期待は、この段階では成り立ちません。第二に、届いた書面の社名が見慣れないものであっても、直ちに詐欺と決めつけないほうがよいということです。近年は開示請求を装った偽の書面も報告されていますので、疑問があるときは、書面に書かれた連絡先ではなく、契約書や毎月の請求書に記載された正規の窓口に照会して確認するのが安全です。

なお、JCOM株式会社は、意見照会の進捗等により結果の連絡まで数か月程度かかる場合がある旨を案内しています。回答書を出した後に音沙汰がない期間が続いても、それは手続が終わったことを意味しません。回答後の流れについては、「開示に同意しない」と回答した後の流れを解説した記事もあわせてご覧ください。

J:COM以外のケーブルテレビ局から届いた場合

ケーブルテレビによるインターネット接続は、J:COMグループだけが提供しているわけではありません。全国各地に地域のケーブルテレビ局があり、それぞれが独自のブランド名でインターネット接続サービスを提供しています。事業者ごとに、開示請求の受付方法も、意見照会書の書式も、回答書の送付先も異なります。

たとえば山梨県の株式会社日本ネットワークサービス(CCNet)は、情報流通プラットフォーム対処法に基づく手続き方法を公表しており、そこでは開示請求にあたって「サイト管理者の記名・押印のあるログの証跡(IPアドレス、日本標準時(JST)のタイムスタンプ、発信元ポート番号、投稿時接続先IPアドレスの記載があるもの)」の提出を求めています。また、開示手数料として1IDにつき7,000円(税込)を定額小為替で納付することとされ、ここでいう1IDとは「IPアドレス、送信元ポート番号、タイムスタンプ(日本標準時)が1つのセットとなった、ログの証跡」を指すと定義されています。

この定義は、発信者側にとって重要な意味を持ちます。事業者自身が、利用者を特定するにはIPアドレスだけでは足りず、ポート番号と時刻を組み合わせる必要があると前提を置いているからです。この点は次の章で詳しく述べます。

横浜市内では、横浜ケーブルビジョン株式会社(YCV)などがサービスを提供しており、同社はJCOM株式会社のグループ会社一覧にも掲載されています。お住まいの地域でどの事業者が回線を提供しているかは、契約書や請求書の社名で確認できます。意見照会書に対する回答は、その事業者が指定した宛先・様式・期限に従って提出する必要がありますので、書面の記載を丁寧に読むところから始めてください。

ケーブルテレビ回線に固有の技術的な論点|共有IPアドレスとポート番号

かつてケーブルテレビのインターネット接続は、契約ごとにグローバルIPアドレスを1つ割り当てる方式が主流でした。しかし、IPv4アドレスの枯渇を受けて、複数の契約で1つのグローバルIPアドレスを共有する方式(大規模NAT、CGN、いわゆるシェアードIPアドレス)へ移行する事業者が現れています。

先ほどの株式会社日本ネットワークサービスは、2024年2月14日付の「IPアドレス割り当ての運用変更について」という告知で、対象コースの利用者に付与するIPアドレスを2024年2月26日より順次、グローバルIPアドレスからシェアードIPアドレスへ変更すると案内しています。同社の説明では、シェアードIPアドレスとは自社ネットワーク内に限定されたIPアドレスであり、ネットワーク内でグローバルアドレスに変換することでアドレスを効率的に使用するものだとされています。

共有方式が採られている場合、ある時刻にあるグローバルIPアドレスを使っていた契約者は一人ではありません。誰の通信であったかを絞り込むには、送信元ポート番号と、秒単位(あるいはそれ以上の精度)の時刻が不可欠になります。裏を返せば、意見照会書に添付された請求書類において、

  • 送信元ポート番号の記載がない
  • 時刻の記載が分単位にとどまり、秒までの特定がない
  • タイムスタンプが日本標準時なのか協定世界時なのか明示されていない

といった事情があるときは、その通信が本当に自分の回線から発せられたものかどうかを争う余地が生じ得ます。ポート番号の意味と大規模NATの仕組みについてはモバイル回線・ホームルーターの意見照会を扱った記事で、時刻の換算と争い方については発信日時のUTC/JST換算を扱った記事で、それぞれ詳しく解説しています。

もっとも、これらは「書いていないから当然に開示されない」という性質の主張ではありません。あくまで、届いた書面に何が記載されているかを確認したうえで、記載の不足が通信の同一性の疎明にどう影響するかを個別に検討すべき事柄です。技術的な指摘は、事実と食い違えば逆に信用性を失わせますので、憶測で書くべきではありません。

集合住宅の一括加入・共用設備という固有の問題

ケーブルテレビ事業者は、マンションやアパートに対する一括提供(いわゆるMDU向けサービス)に力を入れてきました。そのため、ケーブルテレビ回線の事案では、「誰が契約者か」という問題が光回線以上に複雑になることがあります。

典型的には、次のような形態があります。

形態契約名義意見照会書が届く先
戸建て・個別契約居住者本人本人
集合住宅で各戸が個別契約居住者本人本人
集合住宅への一括提供(各戸に個別ID)建物側の契約に加えて各戸の利用登録があることが多い登録された居住者
建物単位の共用設備のみ管理組合・オーナー契約名義人(居住者本人に届かないことがある)

ここで注意すべきなのは、意見照会書が自分に届いていないからといって、自分に関する手続が進んでいないとは限らない、という点です。契約名義人にだけ書面が届き、実際に回線を使っていた居住者が何も知らないまま手続が進むことがあり得ます。逆に、契約名義人が親や家主であるために、身に覚えのない人のもとに書面が届くこともあります。

家族や同居人が使っていた可能性がある場合の考え方——回線契約者と「発信者」は法律上別の概念であること、否認するとして何をどこまで述べるべきかについては、家族・同居人が使っていた場合に発信者性を否認できるかを解説した記事で詳しく整理しています。共用設備を通じて第三者が接続していた可能性がある場合も、基本的な考え方は共通します。

回答期限までに確認すべきこと

意見照会書には、通常2週間程度の回答期限が設けられています。期限までに、少なくとも次の点を確認してください。

確認項目見るべきところ
差出人と回答先グループ統括会社か運営会社か。返送先の住所・部署名
回答期限必着か消印有効か。回答書の様式が指定されていないか
発信日時年月日と時刻、秒単位の記載の有無、時差の表記(JST/UTC)
IPアドレス・ポート番号送信元ポート番号の記載の有無
対象となる作品作品名、権利者、侵害態様(送信可能化かアップロードか)
請求されている情報の範囲氏名・住所のほか、電話番号やメールアドレスが含まれていないか
回線の利用状況その日時に誰が在宅していたか、どの機器が接続されていたか

そのうえで、回答の選択肢は「開示に同意する」「開示に同意しない(理由を述べる)」「回答しない」の三つですが、回答しないという選択は、法が与えた唯一の反論の機会を自ら手放すことを意味します。情プラ法の建て付け上、開示命令の手続そのものに発信者本人が当事者として関与できる場面は限られており、意見照会が事実上の主要な関与機会だからです。手続のどの段階にいるのかについては、意見照会対応のご案内ページもあわせてご確認ください。

回答書の書き方に迷われる場合は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応に関する特設ページで、当事務所が回答書の作成から開示後の対応までをどのように進めているかをご説明しています。

「開示に同意しない」と回答するときに書くこと・書かないこと

理由を述べる回答書には、事案に応じて、次のような視点が含まれ得ます。

  • 権利侵害の明白性——情プラ法5条1項1号は「権利が侵害されたことが明らかであるとき」を要件としています。断片的な送信の評価や、対象作品に係る権利関係の疎明が十分かどうかを検討する余地があります。
  • 通信の同一性——共有IPアドレス、ポート番号、時刻の精度といった、前章で述べた技術的な観点です。
  • 発信者性——契約名義人と実際に通信を行った者が一致するかどうか。集合住宅の共用回線や同居人の利用が問題になる場面です。
  • 開示を受けるべき正当な理由——同項2号の要件について、請求の目的や範囲の相当性を検討する余地があります。

他方で、書かないほうがよいこともあります。回答書は、開示された場合には権利者側の手に渡り得る書面です。自分に不利な事実を詳細に説明したり、断定できないことを断定的に書いたりすれば、後の交渉の材料を自ら差し出すことになりかねません。「使っていたかもしれない」という曖昧な記述が、実質的な自白として扱われるおそれもあります。

ケーブルテレビ回線の事案では、事業者ごとに書式や運用が異なるため、他社向けに書かれたひな形をそのまま流用すると、記載事項が噛み合わないことがあります。書面の内容と自分の回線の状況を突き合わせたうえで作成することが必要です。

よくある質問

Q1. 意見照会書の差出人が聞いたことのない会社名です。偽物ではないでしょうか。

J:COMグループは、グループ統括会社であるJCOM株式会社と、各地域でサービスを提供する運営会社(地域法人・ケーブルテレビ局)で構成されています。JCOM株式会社の公表によれば、通信ログの保全はJCOM株式会社が行う一方、JCOM株式会社自身は発信者情報を保有しておらず、意見照会は発信者情報を保有する運営会社から行われます。そのため、契約時に意識していなかった地域法人の社名で書面が届くことがあります。書面の真偽が不安なときは、書面に記載された連絡先ではなく、契約書や請求書に記載された正規の窓口に照会して確認する方法が考えられます。

Q2. ケーブルテレビ会社に電話して「自分ではない」と伝えれば済みますか。

電話での申告は記録として残りにくく、情プラ法6条1項が定める「意見」として適切に扱われるとは限りません。同項は、開示に応じるべきでないという意見の場合にはその理由を含めて聴かなければならないと定めています。理由を書面で述べておくことが、その後の手続で自分の主張を残す基本的な方法になります。

Q3. マンションの一括加入で、契約者は管理組合やオーナーです。それでも自分に照会が来ますか。

意見照会は、プロバイダが把握している契約名義人に対して行われるのが通常です。一括提供でも各戸ごとに個別のID・機器が割り当てられていれば居住者本人に届きますが、建物単位の契約形態では、書面が管理組合やオーナーに届いたり、逆に居住者に届かないまま手続が進んだりする場合があります。自分に照会が来ていないからといって手続が進んでいないとは限らない点に注意が必要です。

Q4. ケーブルテレビ回線はIPアドレスが他の利用者と共有だと聞きました。それを理由に開示を争えますか。

共有型のIPアドレスを採用している事業者では、IPアドレスだけでは利用者を一意に特定できず、送信元ポート番号と時刻の組合せが必要になります。実際に、開示請求の際にIPアドレス・送信元ポート番号・日本標準時のタイムスタンプを一組として扱う運用を公表している事業者もあります。したがって、請求書にポート番号の記載がない、あるいは時刻の特定が粗いといった場合には、通信の同一性を争う余地が生じ得ます。もっとも、これは書面の記載を確認したうえで個別に判断すべき事柄です。

Q5. 回答してから開示されるかどうかが決まるまで、どのくらいかかりますか。

JCOM株式会社は、意見照会の進捗等により結果の連絡まで数か月程度かかる場合があると案内しています。回答書を提出した後しばらく音沙汰がないことは珍しくなく、連絡がないことをもって手続が終わったと考えるのは危険です。開示された場合には、権利者の代理人から損害賠償請求の通知書が届く段階に移ります。

まとめ

J:COMやケーブルテレビ回線でトレントに係る意見照会書を受け取ったときの要点を整理します。

  • BitTorrentの事案では、サイト運営者を経ずに回線提供事業者へ直接、情プラ法5条1項に基づく開示請求が行われる
  • 意見照会書は、同法6条1項の「意見を聴かなければならない」という義務の履行として届く。条文は反対意見について「その理由を含む」としており、理由を述べることが法律上予定されている
  • J:COMグループでは、ログの保全と発信者情報の保有が別法人に分かれているため、差出人が見慣れない地域の社名になることがある。書面が届いた時点でログの保全は済んでいる
  • ケーブルテレビ事業者は地域ごとに異なり、書式・宛先・期限も異なる。他社向けのひな形の流用は噛み合わないことがある
  • 共有IPアドレスを採用する事業者では、送信元ポート番号と時刻の精度が通信の同一性を左右する
  • 集合住宅の一括提供では、契約名義人と実際の利用者が一致しないことがある

回答期限は決して長くありません。書面の記載事項を正確に読み解き、事実に反しない範囲で必要な主張を過不足なく述べるという作業は、限られた時間の中では負担の大きいものです。事業者ごとの運用の違いや、技術的な記載の意味を確認しながら回答書を組み立てる必要がある場面では、弁護士に依頼することで、後の交渉まで見据えた対応をとることができます。当事務所は横浜・山下公園の法律事務所として、この分野の防御側の対応を継続的に取り扱っています。手続の全体像と当事務所の対応方針は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページにまとめていますので、あわせてご覧ください。

ケーブルテレビ回線で意見照会書が届いた方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrentに係る発信者情報開示の意見照会について、発信者側の対応を数多く取り扱ってまいりました。ケーブルテレビ事業者ごとに異なる書式・運用を踏まえ、回答期限までの対応をご一緒に検討します。回答期限が迫っている場合は、その旨をお書き添えのうえご連絡ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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