楽天モバイル・WiMAX等から意見照会書|モバイル回線のトレント対応
楽天モバイル・WiMAX等から意見照会書|モバイル回線のトレント対応
「自宅に光回線は引いていない。スマホとホームルーターだけなのに、意見照会書が届いた」——モバイル回線をお使いの方から、そうしたご相談をいただくことがあります。楽天モバイル、UQコミュニケーションズやWiMAXの提供事業者、ドコモの home 5G、ソフトバンクのAirターミナル、Rakuten Turbo。差出人の社名も、書面の様式も、光回線の場合とは印象が異なります。心当たりがあってもなくても、封を開けた瞬間の落ち着かなさは同じだと思います。
この記事では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする発信者情報開示請求について、モバイル回線・ホームルーター特有の論点を整理します。差出人が回線名と一致しない理由と契約先の確認方法、「IPアドレスだけでは契約者を特定できない」という技術的前提とポート番号の重要性、ホームルーターやテザリングの場合に誰が発信者かをどう考えるか、そして回答期限までに何を決めるべきか。横浜で発信者情報開示請求を受けた側の対応を継続的に取り扱っている弁護士の立場から、実務上の勘所をお伝えします。
まず差出人を確認する|モバイル回線は「回線名」と「契約先」がずれやすい
意見照会書は、あなたと契約している電気通信事業者(開示関係役務提供者)から届きます。ところが、モバイル回線の分野では、電波を出している事業者と、あなたが契約している事業者が一致しないことがしばしばあります。書面の差出人に見覚えがなくても、直ちに詐欺や誤送付と決めつけない方がよいのは、このためです。
| お使いのサービス | 意見照会書の差出人になり得る事業者 |
|---|---|
| 楽天モバイル(スマートフォン)/Rakuten Turbo(ホームルーター) | 楽天モバイル株式会社 |
| WiMAX(モバイルルーター・ホームルーター) | UQコミュニケーションズのほか、家電量販店・ISP(プロバイダ)・ケーブルテレビ会社など、契約先の提供事業者 |
| ドコモ home 5G | 株式会社NTTドコモ(取次事業者を経由して申し込んだ場合も、回線契約はドコモとの間に成立します) |
| au/UQ mobile/povo | KDDI株式会社、UQコミュニケーションズ株式会社ほか |
| その他の格安SIM(MVNO) | SIMを提供しているMVNO事業者 |
とりわけWiMAXは、契約先の把握が難しいサービスです。UQコミュニケーションズは公式サイトで、WiMAXの取扱事業者として家電量販店・ISP・ケーブルテレビその他の通信事業者を挙げ、UQ以外の提供会社と契約している場合はUQに問い合わせても契約情報を確認できない旨を案内しています。契約時の書面や請求書で契約先を確認できないときのために、同社は「WiMAX契約事業者照会」のページも用意しています(UQ WiMAX公式サイト「WiMAXを取り扱っている通信事業者はありますか?」)。
モバイル回線の核心|IPアドレスだけでは契約者を特定できない
固定回線であれば、ある時刻に1つのグローバルIPアドレスが1契約に割り当てられているのが通常です。ところがモバイル回線では、限られたIPv4アドレスを多数の契約者で共有する仕組み(大規模NAT、いわゆるCGN)が広く用いられています。同じ時刻に、同じグローバルIPアドレスを、何十・何百という契約者が同時に使っている状態が起こり得るということです。
そのため、モバイル回線ではIPアドレスと秒単位のタイムスタンプだけでは契約者を絞り込めず、「そのIPアドレスと組み合わされたポート番号」が不可欠になります。法令もこの点を前提としています。情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)2条10号は、発信者情報を「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの」と定義し、これを受けた同法施行規則2条5号は、開示の対象となる発信者情報として次のものを掲げています。
侵害情報の送信に係るアイ・ピー・アドレス(略)及び当該アイ・ピー・アドレスと組み合わされたポート番号(インターネットに接続された電気通信設備(略)において通信に使用されるプログラムを識別するために割り当てられる番号をいう。(略))
この「ポート番号」の要求は、実務上の運用にもはっきり表れています。楽天モバイル株式会社は、発信者情報開示請求の必要書類として、サイト管理者の記名・押印のあるログの証跡を挙げ、そこにIPアドレス・タイムスタンプ(侵害情報が送信された年月日及び秒単位時刻)・接続元ポート番号の記載があるものを求めています。そのうえで、必要な情報がない場合には調査ができないことがあり、これらの情報が提出されても特定に至らない場合があることを明記しています(楽天モバイル株式会社「発信者情報開示請求のお手続きについて」)。
ここから、発信者側にとって次の2つの視点が出てきます。
- 特定の精度を確認する視点:照会書に添付された請求書に、ポート番号と秒単位のタイムスタンプが記載されているか。記載がない、または粗い場合、そのIPアドレスを同時に使用していた他の契約者と区別できているのかという問題が残ります。
- 時刻の整合性を確認する視点:権利者側の監視記録は協定世界時(UTC)で作成されていることが多く、日本標準時(JST)との9時間の差を取り違えると、まったく別の時間帯の通信を指していることになります。日付をまたぐ時間帯では、指摘された日そのものがずれることもあります。
もっとも、これらは「必ず特定が誤っている」という主張ではありません。事業者側の接続記録と照合した結果、特定が正確であることも当然にあります。回答書では、争う余地のある部分と認めざるを得ない部分とを切り分けて書くことが求められます。
SIM識別番号・端末識別符号も条文上は開示対象に挙げられている
同施行規則2条は、9号から13号にかけて、専ら侵害関連通信に係るIPアドレスとポート番号のほか、移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号、SIM識別番号、SMS電話番号といった、モバイル回線に固有の項目も掲げています。これらは同規則3条により「特定発信者情報」として整理され、情プラ法5条1項の枠組みの中で、より厳格な要件のもとに開示が請求されるものです。
ただし、ファイル共有ソフトによる送信は、ログイン時の記録をたどって発信者を特定する類型(いわゆるログイン型)ではなく、侵害情報の送信そのものの記録が問題となる類型です。したがって、通常は上記2条5号のIPアドレス・ポート番号を手がかりとする経路がとられます。ご自身の事案でどの範囲の情報が請求されているかは、照会書に添付された請求書の記載で確認してください。
ホームルーターとスマートフォンでは「誰が発信者か」の構図が違う
モバイル回線といっても、実際の使われ方は大きく異なります。この違いは、発信者性(実際に送信した者は誰か)を検討するうえで無視できません。
| 回線の形態 | 典型的な利用状況 | 発信者性をめぐる特徴 |
|---|---|---|
| スマートフォン(楽天モバイル・格安SIM等) | 契約者本人が単独で常時携帯 | 契約者=利用者である蓋然性が高く、第三者利用の説明には具体的な裏付けが求められやすい |
| ホームルーター(home 5G・Rakuten Turbo・WiMAXのホームルーター等) | 自宅に据え置き、世帯全員が接続 | 固定回線と同様、家族・同居人が接続していた可能性が現実的に存在する |
| モバイルルーター(WiMAX等の持ち運び型) | 本人が携帯するが、家族に貸すこともある | 貸与の時期・相手方が特定できるかが実際上の分かれ目になる |
| テザリング | 本人のスマホを親機として、他人の端末を接続 | 接続していた端末が誰のものかを事後に立証しにくい |
ここで押さえておきたいのは、回線の契約名義人であることと、著作権侵害の行為者であることは別の問題だという点です。損害賠償責任を負うのは原則として実際に送信を行った者であり、名義人であるという一事をもって当然に賠償義務が生じるわけではありません。
他方で、「自分ではない」という説明は、書き方によっては家族・同居人を名指しすることと同義になり、その方に矛先が向かう結果を招きます。また、回答書に書いた事実関係は、開示後の交渉や訴訟でも前提として扱われるのが通常です。家族が使っていた可能性がある場合の考え方については、トレント開示請求で家族・同居人が使っていた場合に発信者性を否認できるかで詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。
回答期限と、回答の選択肢
意見照会は、情プラ法6条1項に基づく手続です。同項は、開示関係役務提供者は開示請求を受けたときは、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示の請求に応じるかどうかについて発信者の意見(開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む)を聴かなければならない、と定めています。
発信者に用意されている選択肢は、実質的に次の3つです。
| 選択肢 | 意味 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 開示に同意する | 氏名・住所等が権利者に開示される | その後、権利者の代理人から損害賠償請求の通知が届く流れになるのが通常 |
| 開示に同意しない(理由を述べる) | 事業者に対し、開示すべきでない理由を書面で示す | 理由の内容が、後の交渉・訴訟における自らの立場をあらかじめ規定する |
| 回答しない | 期限までに何も提出しない | 回答自体に罰則はないが、手続に関与する機会を事実上失うおそれがある |
回答しないことに罰則はありません。しかし、情プラ法の枠組みでは、開示決定が出た後に発信者へ通知がされるのは、意見聴取において開示に応じるべきでない旨の意見を述べていた場合が基本です。回答しなければ、決定が出たことを知らないまま、いきなり権利者の代理人からの通知を受け取る、という展開もあり得ます。回答期限の考え方と、期限が迫っている・過ぎてしまった場合の対応については、トレント意見照会書の回答期限に間に合わないときの対応で解説しています。
回答書を作成するときにモバイル回線で注意すべきこと
1. 通信環境の説明が「自認」にならないようにする
「移動中で電波が不安定だった」「その時間は圏外だった」「VPNを使っていた」——いずれも一見すると反論のように見えますが、書き方によっては、ファイル共有ソフトを利用していた事実そのものを認めたに等しい記載になります。VPNやシードボックスを経由していた場合の考え方は、VPN・シードボックス経由でも開示請求は来るのかで整理しています。
2. 位置情報の主張・名義と利用者の書き分け
「その時刻には自宅にいなかった」という主張は、ホームルーターの事案では意味を持ち得ますが、スマートフォンやモバイルルーターでは、端末が本人とともに移動している以上、直ちに反論にはなりません。また、法人名義・親名義・同居人との共用など契約者と実際の利用者が一致しない場合は、どこまでを事実として述べるかの線引きが結論を大きく左右します。事実に反する記載は避けなければなりませんが、聞かれていないことまで自ら書く必要もありません。
3. 開示後を見据えて決める
開示された後に権利者から求められる金額について、一律の相場をお示しすることはできません。実務上は、作品の性質、送信の態様(規模や継続性)、対象期間、作品数といった要素の組合せによって検討されるのが通常で、事案ごとの幅が大きい領域です。当事務所ではBitTorrent著作権侵害の意見照会対応として、回答書の作成から開示後の示談交渉まで一括して取り扱っています。開示請求を受けた側の対応全般については意見照会対応のページもご覧ください。
よくある質問
スマホ回線でトレントを使った覚えがないのに意見照会書が届きました。誤りではないですか。
誤りである可能性も、そうでない可能性もあります。モバイル回線では複数の契約者が同じIPアドレスを同時に使う仕組み(大規模NAT)が用いられることがあり、IPアドレスだけでは契約者を一意に特定できず、ポート番号と秒単位のタイムスタンプの組合せが必要になります。ホームルーターやテザリングを家族・同居人が使っていた可能性もあります。まずは照会書に記載された発信日時・IPアドレス・ポート番号を確認してください。
WiMAXを使っていますが、意見照会書の差出人が聞いたことのない会社名でした。
WiMAXは、UQコミュニケーションズのほか、家電量販店・ISP(プロバイダ)・ケーブルテレビ会社など多数の事業者が提供しています。契約先の事業者が差出人になるため、回線の名称と差出人が一致しないことは珍しくありません。契約先がわからない場合、UQコミュニケーションズが「WiMAX契約事業者照会」のページを設けています。
ホームルーターは家族も使っています。契約名義人である自分が責任を負うのですか。
回線の契約名義人であることと、著作権侵害の行為者(発信者)であることは別の問題です。損害賠償責任を負うのは原則として実際に送信を行った者であり、名義人であるだけで当然に賠償義務を負うわけではありません。もっとも、誰が発信者かを説明する内容は後の交渉や訴訟でそのまま前提とされ得るため、家族関係への影響も含めて慎重な検討を要します。
回答期限までに間に合いそうにありません。放置するとどうなりますか。
意見照会は情プラ法6条1項に基づく手続で、回答しないこと自体に罰則はありません。ただし、開示に応じるべきでない旨の意見を述べていない場合、開示決定後に発信者へ通知が届かない可能性があり、事実上、手続に関与する唯一の機会を失うことになりかねません。期限を過ぎていても、まずは早急に事業者へ連絡し、対応可能な範囲を確認することをお勧めします。
SIMカードや端末の情報まで開示されるのですか。
施行規則は、開示の対象となる発信者情報として、氏名・住所のほか、侵害情報の送信に係るIPアドレスとポート番号、専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号や移動端末設備の識別符号なども掲げています。もっとも、ファイル共有ソフトによる送信は、ログイン情報を手がかりとする「特定発信者情報」の開示とは要件が異なります。どの範囲が請求されているかは、照会書に添付された請求書の記載で確認する必要があります。
まとめ
モバイル回線でBitTorrentの意見照会書を受け取った場合、確認すべき順序は次のとおりです。
- 差出人が自分の契約先として説明のつく会社かを確かめる(WiMAXは特に契約先がずれやすい)
- 請求書に、発信日時・IPアドレス・ポート番号・作品名がどう記載されているかを確認する
- タイムスタンプがUTC表記かJST表記かを確認し、9時間の差を取り違えていないかを検討する
- 回線の形態(スマホ・ホームルーター・モバイルルーター)に応じて、誰が発信者かの構図を整理する
- 回答期限までに、同意する・同意しない・回答しないのいずれを選ぶかを、開示後まで見据えて決める
技術的な特定の当否を検討し、認めるべき事実と争う余地のある事実を切り分けたうえで、後の交渉に不利益を残さない回答書を組み立てる作業には、独力では判断の難しい部分が残ります。開示された場合の示談交渉まで見据えた方針を最初の段階で決められるかどうか——ここが、弁護士に相談する実益のもっとも大きいところです。手続の全体像と費用はBitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページにまとめています。
楽天モバイル・WiMAX・ホームルーターの回線で意見照会書が届いた方へ
横浜のタングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする発信者情報開示請求・意見照会書への対応を継続的に取り扱っており、ITエンジニアの経験を持つ弁護士が技術的背景を踏まえて対応します。ご相談・お打合せはオンラインで完結し、全国からご依頼をお受けしています。回答には期限がありますので、お早めにご連絡ください。
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