タングラム法律事務所

配置転換・転勤を拒否する社員への対応|会社側の注意点を弁護士が解説

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配置転換・転勤を拒否する社員への対応|会社側の注意点を弁護士が解説

配置転換・転勤を拒否する社員への対応|会社側の注意点を弁護士が解説

配置転換・転勤を拒否する社員への対応|会社側の注意点を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月12日 最終更新日:2026年10月12日

「人員配置を見直すため別の部署へ異動してもらおうとしたら、本人に断られてしまった」「支店への転勤を命じたところ、家庭の事情を理由に拒否された」――中小企業の経営者や人事担当者の方から、このようなご相談をよくいただきます。対応を誤ると、配転命令が無効とされたり、懲戒処分が争われたりするおそれがあります。

この記事では、配転命令の根拠、職種限定合意に関する最高裁判決、権利濫用の判断基準、拒否された場合の手順と懲戒処分の注意点を、横浜の弁護士が会社側の視点で解説します。

結論として、会社が配置転換を命じるには就業規則や労働契約上の根拠が必要であり、職種・勤務地を限定する合意がある場合は本人の同意なしに範囲外の配転を命じることはできません。命令権がある場合でも、業務上の必要性・動機・労働者の不利益の程度によっては権利濫用として無効になるため、拒否された際は、理由を聴き取り、配慮を検討し、書面で手順を踏んだうえで懲戒処分の要否を慎重に判断することが重要です。

会社は配置転換・転勤を命じられるのか|配転命令権の根拠

配置転換(配転)とは、同じ会社の中で職務内容や勤務場所を長期間変更することをいい、勤務地の変更を伴うものは「転勤」と呼ばれます。会社が一方的に配転を命じるには、その権限(配転命令権)が労働契約の内容になっている必要があります。

実務上は、就業規則に「業務上の必要がある場合、会社は従業員に配置転換・転勤を命じることがある」といった条項を設けて周知することで、配転命令権が労働契約の内容になっていると解されるのが一般的です。

また、2024年4月1日からは、労働契約の締結時などに明示すべき労働条件として「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)」が定められました(労働基準法施行規則5条1項1号の3)。労働条件通知書に記載した「変更の範囲」は、後に配転の可否が争われた際の重要な判断材料になります。

職種・勤務地を限定する合意がある場合は本人の同意が必要

配転命令権の有無について、実務に大きな影響を与えたのが最高裁判所第二小法廷令和6年4月26日判決(滋賀県社会福祉協議会事件)です。

この事案では、福祉用具の改造・製作を担う技術者として約18年勤務した労働者に、業務廃止に伴い総務課への配転が命じられました。最高裁は、労働者と使用者との間に職種・業務内容を限定する合意がある場合には、使用者は労働者の個別的同意なしに、その合意に反する配置転換を命じる権限を有しないと判断し、原判決を破棄して高等裁判所に差し戻しました。

この職種限定合意は書面で明示されたものではなく、採用の経緯や勤務実態から認定された点が重要です。差戻し後の大阪高等裁判所令和7年1月23日判決では、配転命令が職種限定合意に反するとして会社の過失が認められたと報じられています。専門職として中途採用した社員などに配転を命じる際は特に注意が必要です。

職種・勤務地の限定がある社員に限定範囲外の配転を求める場合は、命令ではなく、配転後の労働条件を示したうえで本人の同意を得る(労働契約の変更の合意を取り付ける)方法を検討することになります。

配転命令が権利濫用として無効になる3つの場合

配転命令権がある場合でも、無制限に命令できるわけではありません。労働契約法3条5項は、労働契約に基づく権利の行使に当たって、それを濫用してはならないと定めています。転勤命令の有効性については、東亜ペイント事件(最高裁判所第二小法廷昭和61年7月14日判決)が判断枠組みを示しており、現在もこの枠組みに沿って判断されています。

権利濫用となる場合具体的な場面の例
業務上の必要性が存しない場合欠員補充や適正配置などの理由がなく、配転の必要性を説明できない
不当な動機・目的をもってなされた場合退職に追い込む目的、内部通報や労働組合活動への報復として配転する
労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合要介護の家族を抱え転居すると介護が成り立たない社員に、遠方への転勤を命じる

業務上の必要性は、労働力の適正配置など企業の合理的運営に寄与する点が認められれば肯定されると解されていますが、必要性の説明は具体的に記録しておくことが重要です。

不利益の判断に関しては、育児・介護休業法26条が、就業場所の変更を伴う配置の変更によって子の養育や家族の介護が困難となる労働者がいるときは、その状況に配慮しなければならないと定めています。労働契約法3条3項も、仕事と生活の調和への配慮を求めています。

社員が配置転換を拒否したときの対応手順

社員から配転を拒否された場合は、次の手順で冷静に対応することをおすすめします。

  1. 拒否の理由を聴き取る:面談で拒否の理由を具体的に確認し、記録に残します。
  2. 命令の根拠と限定合意の有無を確認する:就業規則の配転条項、雇用契約書、労働条件通知書の「変更の範囲」、採用時の求人票などを確認します。
  3. 配慮・代替案を検討する:赴任時期の延期、住宅支援、別の配属先の提示など、不利益の緩和策を検討します。
  4. 書面で改めて配転を命じる:業務上の必要性、配転先・時期、配慮した内容を記載した書面を交付し、応じない場合には就業規則に基づき処分を検討することがある旨を伝えます。
  5. 猶予期間を置いて最終確認する:検討期間を設け、なお拒否が続く場合に処分の要否を判断します。

これらの記録は、労働審判や訴訟になった場合に会社が誠実に対応したことを示す証拠になります。

配転拒否を理由とする懲戒処分・解雇の注意点

有効な配転命令を正当な理由なく拒否し続けることは、業務命令違反として懲戒処分の対象になり得ます。前述の東亜ペイント事件も、転勤命令を拒否した社員が懲戒解雇された事案で、最高裁は転勤命令を権利濫用に当たらないと判断しています。

ただし、懲戒処分が有効とされるには、まず配転命令そのものが有効であることが前提です。命令が職種限定合意に反していたり、権利濫用に当たったりすれば、それを拒否したことを理由とする処分も無効になります。さらに、就業規則上の懲戒事由への該当、処分の社会通念上の相当性(労働契約法15条)、弁明の機会の付与などの適正な手続も必要です。懲戒処分の具体的な進め方は「懲戒処分の進め方|種類・手順と無効にならない注意点」で詳しく解説しています。

また、配転を通じて退職を促すような運用は「不当な動機・目的」と評価されやすく、注意が必要です。退職を話し合いで求める場合の注意点は「退職勧奨の適法な進め方」を、職務遂行能力を理由とする解雇の判断基準は「能力不足の社員を解雇できる?判断基準と手順」をご参照ください。

配転トラブルを防ぐための社内整備のポイント

  • 就業規則の配転条項を整備する:配置転換・転勤・出向を命じることがある旨と、正当な理由なく拒否した場合の取扱いを明記し、周知します。
  • 労働条件通知書の「変更の範囲」を実態に合わせる:将来配転の可能性がある社員について「変更なし」と記載しないよう、雇入れ時の書式を見直します。
  • 職種・勤務地限定社員を区別して管理する:限定正社員や専門職採用の社員を把握し、配転を検討する際には個別同意を前提に進めます。

就業規則や雇用契約書の見直しを含む労務管理全般については、当事務所の企業法務(顧問・契約書・労務)のご案内ページもご覧ください。

配置転換・転勤の拒否に関するよくある質問

Q. 就業規則に配転条項があれば、どんな配置転換でも命じられますか?

A. いいえ。職種や勤務地を限定する合意が個別にある場合には、その範囲を超える配転は本人の同意なしには命じられません。また、命令権がある場合でも、業務上の必要性がない、不当な動機・目的がある、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる、といった事情があれば権利の濫用として無効になる可能性があります。

Q. 配置転換を拒否した社員を、すぐに懲戒解雇できますか?

A. 直ちに懲戒解雇することはおすすめできません。配転命令が有効であることが前提であり、理由の聴取や書面での再命令などの手順を踏むことが重要です。処分の重さが社会通念上相当でなければ無効とされる可能性があります(労働契約法15条)。

Q. 育児や介護をしている社員に転勤を命じることはできますか?

A. 直ちに禁止されるわけではありませんが、育児・介護休業法26条により、会社は転勤によって子の養育や家族の介護が困難となる労働者の状況に配慮しなければなりません。事情を確認せずに命じると、権利濫用と判断されるリスクが高まります。

まとめ|配転拒否への対応は命令の有効性の確認から

配転拒否への対応では、まず配転命令権の根拠と職種・勤務地限定合意の有無を確認することが出発点です。命令権があっても、必要性・動機・不利益の程度によっては権利濫用となり得ます。拒否された場合は理由の聴取、配慮の検討、書面での命令という手順を踏み、懲戒処分は慎重に判断しましょう。

配転命令の有効性は個別の事情で判断が分かれるため、処分の前に弁護士に相談することで紛争化のリスクを抑えられます。横浜をはじめ神奈川県内の中小企業の皆さまからのご相談に対応しています。

配置転換・転勤の拒否や問題社員への対応でお悩みの経営者・人事担当者の方へ

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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