タングラム法律事務所

日本版DBSとは|学習塾など民間事業者の認定と対応を弁護士が解説

日本版DBSとは|学習塾など民間事業者の認定と対応を弁護士が解説

日本版DBSとは|学習塾など民間事業者の認定と対応を弁護士が解説

日本版DBSとは|学習塾など民間事業者の認定と対応を弁護士が解説

日本版DBSとは|学習塾など民間事業者の認定と対応を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月26日 最終更新日:2026年10月26日

「うちの塾も日本版DBSの対象になるのか」「講師の前科確認はどう進めればよいのか」――こどもに勉強やスポーツを教える事業者の方から、こうした声が聞かれるようになりました。施行が近づく一方で、認定を受けるべきか、受けたら何が必要なのか、全体像をつかめていない事業者は少なくありません。

この記事では、2026年12月25日に施行される日本版DBS(こども性暴力防止法)について、学習塾・スポーツクラブなどの民間事業者が認定を受けるための要件、認定後に課される義務、犯罪事実確認の流れと期限、前科が判明した場合の労務上の注意点を、横浜の弁護士が整理して解説します。

結論から言えば、学習塾などの民間事業者にとって日本版DBSの認定は任意ですが、認定を受けると、講師等の性犯罪歴の確認(犯罪事実確認)、相談体制の整備、対処規程の作成、研修、情報管理といった措置が法律上の義務になります。認定を目指す事業者は、就業規則や採用書類の見直しを含め、施行前から準備を始めることが重要です。

日本版DBS(こども性暴力防止法)とは|2026年12月25日施行

日本版DBSは、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号、通称:こども性暴力防止法)に基づく制度です。2024年6月26日に公布され、2026年(令和8年)12月25日から施行されます。英国の制度(DBS)を参考にしたことから「日本版DBS」と呼ばれます。

こどもと接する仕事に就く人の性犯罪の前科を、事業者が国を通じて確認する仕組みを設けるとともに、性暴力を防ぎ、起きた場合に対処する体制づくりを求める法律です。対象となる事業者は、次の2つに分かれます。

区分主な事業者義務の有無
学校設置者等学校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設など法律上当然に義務を負う
民間教育保育等事業者学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育施設など国の認定を受けた場合に義務を負う(認定は任意)

学習塾・スポーツクラブは対象?認定を受けられる民間教育事業の要件

「民間教育事業」として認定を受けるには、こども家庭庁のQ&Aによれば次の要件をすべて満たす必要があります(法2条)。教える内容は勉強に限らず、スポーツや音楽なども含まれ得ます。

要件内容
内容児童等に対して技芸または知識の教授を行うこと
期間標準的な修業期間が6か月以上であること
対面対面による指導を行うこと
場所事業者が用意する場所(事業所等)で指導すること(児童等の自宅は除く)
人数技芸または知識の教授を行う者が3人以上であること

講師が2人以下の教室や、児童の自宅だけで指導する家庭教師などは認定の対象外です。判断に迷う事業形態は、こども家庭庁のガイドラインやQ&Aで確認しましょう。

認定を受けると何が義務になるか|6つの認定基準

認定は、学校設置者等と同等の措置を実施する体制があることについて内閣総理大臣(こども家庭庁)が行います(法19条・20条)。認定基準はおおむね次の6つです。

認定基準実務上の内容の例
①犯罪事実確認の体制新規従事者・現職者・継続従事者の確認を行える体制
②早期把握の措置日常的な観察、定期的な面談やアンケートなど
③相談しやすい環境の整備こどもや保護者が相談できる窓口の設置と周知
④児童対象性暴力等対処規程の作成防止措置、事実調査、被害児童の保護・支援の手順
⑤研修の実施講師など教育保育等従事者への研修
⑥情報管理確認記録を管理する情報管理規程の整備など

疑いが生じたときの事実調査は、ヒアリングの順序や事実認定の考え方など、ハラスメントの社内調査の進め方と共通する部分が多くあります。

犯罪事実確認の流れと期限|新規採用者・現職者・5年ごとの再確認

犯罪事実確認とは、事業者が国に申請し、従事者が「特定性犯罪事実該当者」に当たるかを確認する手続です。対象となるのは、刑法の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪などのほか、児童福祉法、児童ポルノ禁止法、性的姿態撮影等処罰法、都道府県の迷惑防止条例・青少年健全育成条例などの性犯罪に関する罪です。確認できる期間は次のとおりで、不起訴や示談で終わった事案は含まれません。

  • 拘禁刑の実刑:刑の執行終了等から20年
  • 拘禁刑の執行猶予:裁判確定日から10年
  • 罰金刑:刑の執行終了等から10年

確認の時期は、従事者の区分によって異なります(法26条ほか)。

対象者確認の時期
新たに従事させる者原則として業務に就かせる前。急な欠員などやむを得ない場合は政令で定める期間内の事後確認が可能(確認までは該当者とみなして措置を講じる)
認定時の現職者認定の日から1年以内(政令で定める期間内)に全員の確認を終え、国に届け出る
継続して従事する者前回の確認から5年を経過する年度の末日を超えて従事させる場合は、改めて確認する

前科がある場合は、事業者への確認書の交付前に本人へ通知され、本人は2週間以内に訂正を請求できます(法35条・37条)。この間に本人が内定辞退などを申し出れば、事業者に確認書は交付されないとされています。

前科が判明した場合の対応|配置転換・解雇・内定取消の注意点

犯罪事実確認の結果や、こどもからの相談などを踏まえて性暴力のおそれがあると認めるときは、事業者はこどもと接する業務に就かせないなどの防止措置を講じなければなりません(法6条、20条1項4号)。

注意したいのは、法律が求めているのは「業務から外すこと」であり、解雇まで当然に認めているわけではない点です。解雇の有効性は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性の有無で判断されます(労働契約法16条)。まず配置転換を検討し、困難な場合に雇用関係の終了を検討するのが基本です。処分の手順については懲戒処分の進め方もご覧ください。

内定後に前科が判明した場合の内定取消しも、内定通知書や誓約書の定め方で有効性が左右され得ます。採用内定の取消しが違法になるケースで解説した考え方を踏まえ、次の書類を整えておきましょう。

  • 求人票・募集要項に、犯罪事実確認を行う旨を明記する
  • 内定通知書・誓約書に、確認の結果によっては内定を取り消すことがある旨を定める
  • 就業規則に、防止措置としての配置転換や、虚偽申告を懲戒事由とする規定を設ける

業務委託の講師が多い事業者は、委託契約書の見直しも必要になり得ます。規程や契約書の整備については、当事務所の企業法務・顧問弁護士のページでもご案内しています。

認定を受けるかの判断ポイントと施行前の準備

認定の申請は2026年12月25日から受け付けられます。こども家庭庁のQ&Aによれば、申請手数料は1事業当たり3万円で、犯罪事実確認に手数料はかからず、認定の更新もありません。認定事業者は、認定事業者マーク(こまもろうマーク)をパンフレット、ウェブサイト、求人広告などに表示できます。

一方、認定後は上記の義務を継続的に負い、確認記録の管理にも厳格なルールが課されます。確認書の情報を不正な目的で提供した場合や、認定を受けていない者がマークやまぎらわしい表示を用いた場合には罰則があり(法43条・45条ほか)、法人も罰金刑の対象となります(法48条)。保護者からの信頼という利点と管理体制の負担を比べて判断します。

認定を目指す場合の準備チェックリスト
・自社の事業が民間教育事業の要件を満たすか確認したか
・対処規程、情報管理規程の案を作成したか
・相談窓口と研修の計画を立てたか
・求人票、内定通知書、就業規則、業務委託契約書を見直したか
・現職者全員の確認を1年以内に終えるスケジュールを組んだか

日本版DBSに関するよくある質問

学習塾は日本版DBSの認定を必ず受けなければなりませんか?

学習塾などの民間教育保育等事業者にとって、認定の申請は任意です。ただし、認定を受けた場合には、犯罪事実確認や相談体制の整備などの措置が法律上の義務となります。認定を受けない場合は、認定事業者マーク(こまもろうマーク)を表示することはできません。

講師が2人しかいない教室も認定の対象になりますか?

民間教育事業として認定を受けるには、技芸や知識の教授を行う者が3人以上であることが要件とされています。講師が2人以下の事業は、この要件を満たさないため認定の対象になりません。講師の人数の数え方は、こども家庭庁のガイドラインやQ&Aで確認することをおすすめします。

犯罪事実確認で前科が判明した社員を解雇できますか?

法律が求めているのは、こどもと接する業務に就かせないなどの防止措置であり、解雇が当然に認められるわけではありません。解雇の有効性は労働契約法16条に基づき個別に判断されるため、まずは配置転換などの措置を検討し、就業規則や雇用契約書の定めを確認したうえで慎重に判断する必要があります。

まとめ|日本版DBSへの対応は採用書類と社内規程の見直しから

日本版DBSは2026年12月25日に施行されます。学習塾などの民間事業者にとって認定は任意ですが、認定を受けると犯罪事実確認や相談体制、対処規程などの措置が義務となり、現職者の確認は認定から1年以内に終える必要があります。前科が判明した場合の対応は労働法の制約を受けるため、採用書類や就業規則を施行前に見直しておくことが重要です。

規程の作り方や前科が判明した従事者への対応は、個別の事情で判断が分かれます。弁護士に相談すれば、自社の事業形態に即した規程整備や労務対応の助言を受けられます。横浜の事務所として、神奈川県内の教育・スポーツ関連事業者からのご相談にも対応しています。

日本版DBSへの対応・社内規程の整備はご相談ください

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。認定に向けた対処規程・情報管理規程の整備から、就業規則や採用書類の見直し、前科が判明した場合の対応まで、弁護士がサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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