タングラム法律事務所

不貞慰謝料の訴訟費用を相手に払わせる方法|訴訟費用額確定処分とは

不貞慰謝料の訴訟費用を相手に払わせる方法|訴訟費用額確定処分とは

不貞慰謝料の訴訟費用を相手に払わせる方法|訴訟費用額確定処分とは

不貞慰謝料の訴訟費用を相手に払わせる方法|訴訟費用額確定処分とは

不貞慰謝料の訴訟費用を相手に払わせる方法|訴訟費用額確定処分とは

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月26日 最終更新日:2026年10月26日

不貞慰謝料の裁判を自分で進め、判決に「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれていたのに、納めた手数料などが戻ってこない――。本人訴訟で勝訴した方から、このような疑問を伺うことがあります。

この記事では、不貞慰謝料の裁判にかかった訴訟費用を相手に支払わせるための「訴訟費用額確定処分」について、対象となる費用、自分で申し立てる手順、申立ての期限、そして申立てを受けた側の対応を、民事訴訟法の条文に沿って横浜の弁護士が解説します。

結論として、判決で「訴訟費用は被告の負担とする」とされても、費用は自動的には支払われません。勝訴した側が第一審裁判所の裁判所書記官に訴訟費用額確定処分を申し立て、金額を定めてもらう必要があります。対象は手数料や当事者の旅費・日当、書類の作成費用などの法定の費用に限られ、弁護士報酬は含まれません。申立ては、負担の裁判が確定した日から10年以内に行う必要があります。

不貞慰謝料の判決で決まる「訴訟費用の負担」とは

民事訴訟法61条は「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする」と定めています。裁判所は、事件を完結する裁判(判決)の中で、職権で訴訟費用の負担を定めます(同法67条1項)。不貞慰謝料の判決では、主文の最後に次のような一文が入るのが通常です。

判決の結果主文の例
原告の全部勝訴訴訟費用は被告の負担とする。
一部勝訴(請求額の一部のみ認容)訴訟費用はこれを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
原告の全部敗訴訴訟費用は原告の負担とする。

不貞慰謝料の裁判では請求額の一部だけが認められることが少なくなく、その場合の負担割合は裁判所が裁量で定めます(民事訴訟法64条)。原告も訴訟費用の一部を負担する主文になることがあります。

判決が定めるのは「誰がどの割合で負担するか」だけで、金額は書かれていません。金額を確定させる手続が訴訟費用額確定処分です。

訴訟費用額確定処分で相手に請求できる費用・できない費用

訴訟費用の範囲は、民事訴訟費用等に関する法律2条で定められています。不貞慰謝料の本人訴訟で主に問題になるのは次の費用です。

費目内容・金額の目安
申立ての手数料訴えを提起するときに納めた手数料。令和8年5月21日以降に提起した事件では、送達のための郵便費用が手数料に一本化されています
当事者の旅費・日当期日に出頭した際の旅費と日当。日当は1日3,950円と定められています(民事訴訟費用等に関する規則2条2項)
書類の作成及び提出の費用訴状・準備書面・書証の写しなどの作成費用。基本額は1,500円で、書面や書証の通数が多い場合は加算されます(同規則別表第二)
証人の旅費・日当など証人尋問を行った場合に予納した費用

弁護士報酬は訴訟費用に含まれません。弁護士に依頼した場合の着手金や報酬金は、訴訟費用額確定処分では回収できません。不貞慰謝料のような不法行為に基づく請求では、判決で認容額の1割程度が弁護士費用相当の損害として認められる傾向がありますが、これは慰謝料とあわせて訴訟の中で請求するものです。詳しくは「不貞慰謝料の弁護士費用は相手方に請求できるか」をご覧ください。

旅費や日当は実際の支出額ではなく法令の基準で計算されるため、本人訴訟では確定する金額が大きくならないことも多く、手間とのバランスも考えて判断するとよいでしょう。

訴訟費用額確定処分を自分で申し立てる手順

1. 判決の確定を待つ

民事訴訟法71条1項は、訴訟費用の負担の額は、その負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が定めると規定しています。判決に仮執行宣言が付いていない場合は、控訴期間が経過して判決が確定した後に申し立てるのが基本です。控訴があった場合の扱いは「不貞慰謝料の判決に不服なら控訴できる?自分で控訴する方法と期限」もあわせてご確認ください。

2. 申立書と費用計算書を作成する

申立ては、第一審の裁判所(地方裁判所または簡易裁判所)の担当部の書記官に対して行います。申立書には事件番号と当事者を記載し、費目ごとに金額を書いた費用計算書と、費用額を裏付ける資料(疎明資料)を添付します。費用計算書などは相手方にも直送する扱いとされています(民事訴訟規則24条)。書式を用意している裁判所もあるため、事前に担当部に確認すると確実です。

3. 相手方の意見を経て処分が出る

裁判所書記官は、相手方にも費用計算書の提出などを促したうえで金額を定めます。双方がそれぞれ費用を負担する一部敗訴の事案では、互いの負担額を対当額で相殺した差額が定められるのが原則です。

4. 支払われなければ強制執行も可能

訴訟費用額確定処分は債務名義となるため(民事執行法22条4号の2)、相手が任意に支払わない場合は、慰謝料本体と同様に差押えなどの強制執行を申し立てることができます。手続の流れは「不貞慰謝料の差押えを自分で申し立てる方法」で解説しています。

申立ての期限は10年|令和4年の民事訴訟法改正

以前は訴訟費用額確定処分の申立てに期間の制限がありませんでしたが、令和4年の民事訴訟法改正により、申立ては訴訟費用の負担の裁判が確定した日から10年以内にしなければならないとされました(民事訴訟法71条2項)。改正法の施行前に提起された訴えには適用されない経過措置がありますが、事件記録には保存期間もあるため、判決確定後は早めに申し立てるのが安全です。

和解で終わった場合の訴訟費用の扱い

不貞慰謝料の裁判は、判決ではなく訴訟上の和解で終わることも多くあります。民事訴訟法68条は、当事者が裁判所で和解をした場合に、和解の費用や訴訟費用の負担について特別の定めをしなかったときは、各自が負担すると定めています。

実務では和解条項に「訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする」と入れることが一般的です。相手に訴訟費用を負担させたい場合は、そのことを和解条項に明記する必要があり、負担は定めたが金額を定めなかったときは、和解の場合の費用額確定の申立てができます(同法72条)。和解の進め方は「不貞慰謝料の裁判で和解を勧められたら?」で解説しています。

請求された側(敗訴した側)が確定処分の申立てを受けたら

不貞慰謝料の裁判で敗訴し、相手から訴訟費用額確定処分を申し立てられた場合は、費用計算書を確認しましょう。旅費・日当が出頭回数と合っているか、対象外の費用(弁護士報酬など)が含まれていないか、一部敗訴の負担割合が正しく反映されているかがポイントです。

処分の内容に不服がある場合は、処分の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、その裁判所書記官の所属する裁判所に異議を申し立てることができます(民事訴訟法71条)。期間が短いため、届いたらすぐに内容を確認することが大切です。

自分で行う場合の限界と弁護士に依頼した場合の違い

訴訟費用額確定処分は比較的定型的な手続ですが、計算基準や相殺計算は細かく手間がかかります。また、本人訴訟で本当に重要なのは、慰謝料本体の請求額や弁護士費用相当額の主張、そして判決後に慰謝料を確実に回収することです。訴えの起こし方から確認したい方は「不貞慰謝料を自分で請求する訴訟の起こし方」もご覧ください。

弁護士に依頼した場合は、訴訟の段階から請求内容を組み立て、判決後の強制執行や費用の回収まで一貫して任せることができます。横浜の当事務所の取扱内容は「不貞慰謝料請求の取扱分野ページ」で、費用の目安は「弁護士費用のページ」でご紹介しています。

不貞慰謝料の訴訟費用に関するよくある質問

Q1. 判決で「訴訟費用は被告の負担とする」とされれば、印紙代などは自動的に支払われますか?

自動的には支払われません。判決は誰が負担するかを定めるだけで、具体的な金額は、勝訴した側が第一審裁判所の裁判所書記官に訴訟費用額確定処分を申し立てて定めてもらう必要があります(民事訴訟法71条1項)。

Q2. 弁護士に支払った費用も訴訟費用として相手に請求できますか?

弁護士報酬は、訴訟費用額確定処分で回収できる訴訟費用には含まれません。不貞慰謝料のような不法行為に基づく請求では、判決で認容額の1割程度が弁護士費用相当の損害として認められる傾向がありますが、これは慰謝料請求の中で主張するものです。

Q3. 訴訟費用額確定処分の申立てに期限はありますか?

令和4年の民事訴訟法改正により、訴訟費用の負担の裁判が確定した日から10年以内に申し立てなければならないとされました(民事訴訟法71条2項)。経過措置により改正前に提起された訴えには適用されない扱いがありますが、事件記録の保存期間もあるため、早めに申し立てるのが安全です。

Q4. 和解で終わった場合も訴訟費用を請求できますか?

和解で訴訟費用の負担について特別の定めをしなかった場合は、各自が負担するのが原則です(民事訴訟法68条)。実務では「訴訟費用は各自の負担とする」と定めることが多く、相手に負担させたい場合は和解条項で明記する必要があります。

まとめ

  • 判決で訴訟費用の負担が定められても、金額は訴訟費用額確定処分を申し立てて確定させる必要があります(民事訴訟法71条1項)
  • 対象は手数料、当事者の旅費・日当、書類の作成費用などの法定の費用で、弁護士報酬は含まれません
  • 申立ては負担の裁判が確定した日から10年以内に行う必要があり(同条2項)、確定処分は強制執行の債務名義になります
  • 和解で終わった場合は、特別の定めがない限り訴訟費用は各自の負担です(同法68条)

本人訴訟で勝訴しても、慰謝料や費用を実際に回収できなければ意味がありません。判決後の回収や、相手からの費用請求への対応に不安があるときは、弁護士への相談も検討してください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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