不貞慰謝料の判決に不服なら控訴できる?自分で控訴する方法と期限
不貞慰謝料の判決に不服なら控訴できる?自分で控訴する方法と期限
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月6日 最終更新日:2026年10月6日
不貞慰謝料の裁判で判決が出たものの、「認められた金額が低すぎる」「不貞行為はなかったのに支払いを命じられた」と納得できない方もいらっしゃるでしょう。弁護士に頼まずに本人で第一審を闘ってきた方にとっては、控訴できるのか、いつまでに何をすればよいのかが気になるところです。
この記事では、請求した側・請求された側に共通する控訴の手続と、本人で控訴する際の注意点を、民事訴訟法・民事訴訟規則と裁判所の公表資料に沿って解説します。
結論として、不貞慰謝料の判決に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に、控訴状を第一審の裁判所に提出することで控訴できます(民事訴訟法285条・286条)。控訴状を出した後は、原則として50日以内に控訴理由書を控訴裁判所に提出する必要があり、控訴審は短期間で審理が終わる傾向があるため、最初の書面で主張を出し切る準備が重要です。
不貞慰謝料の判決に対する控訴とは
控訴は、第一審の終局判決に不服がある当事者が、上級の裁判所に判決の見直しを求める手続です(民事訴訟法281条1項)。不貞慰謝料の請求額は140万円を超えることが多いため、第一審は地方裁判所で審理されるのが一般的で、その場合の控訴先は高等裁判所です。たとえば横浜地方裁判所の判決に対する控訴は、東京高等裁判所が審理します。簡易裁判所の判決に対する控訴は、地方裁判所が審理します。
請求した側は請求の一部しか認められなかった場合、請求された側は支払いを命じられた場合に、控訴を検討することになります。控訴期間内にどちらからも控訴がなければ、判決は確定します。
第一審の訴訟の進め方は不貞慰謝料を自分で請求する訴訟の起こし方で、第一審で提出する書面については不貞慰謝料の準備書面を自分で書く方法で解説しています。
控訴の期限は判決書の送達から2週間
民事訴訟法285条は、控訴は判決書(電子判決書)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならないと定めています。裁判所の案内では、送達を受けた日の翌日から起算して14日以内とされ、最終日が土日・祝日・年末年始に当たる場合はその翌日が最終日になります。
起算点は「判決の言渡し日」ではなく「判決書の送達を受けた日」です。不変期間のため原則として延長はできず、判決書を受け取ったらすぐに期限を確認しておく必要があります。
控訴状の書き方と提出先・手数料
控訴状は第一審の裁判所に提出する
控訴状は、控訴裁判所(高等裁判所)ではなく、判決をした第一審の裁判所に提出します(民事訴訟法286条1項)。宛名は控訴裁判所とし、たとえば横浜地方裁判所の判決であれば「東京高等裁判所 御中」と記載した控訴状を横浜地方裁判所に提出します。控訴状には、当事者、第一審判決の表示と控訴をする旨を記載します(同条2項)。
控訴の趣旨は、裁判所の記載例では次のとおりです。
| 控訴する人 | 控訴の趣旨の例 |
|---|---|
| 全部敗訴した被告(支払いを命じられた側) | 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。 |
| 一部しか認められなかった原告(請求した側) | 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、○○円及びこれに対する令和○年○月○日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。 |
手数料・郵便切手・副本
- 手数料:控訴の提起の手数料は、訴えの提起の手数料として算出した額の1.5倍です(民事訴訟費用等に関する法律3条1項・別表第一の2項)。不服を申し立てる部分の金額を基準に計算します
- 郵便費用:送達費用の予納が必要です。金額は提出する裁判所に確認します
- 副本:裁判所の案内では、相手方の数に1を加えた部数(1部は裁判所用)を提出するとされています
2026年5月21日の民事訴訟のデジタル化の全面施行により、本人でもmintsを通じてオンラインで書面を提出できます。提出方法により手数料の納付方法が異なるため、事前に裁判所で確認してください。
控訴理由書は50日以内に提出する
控訴状に控訴の理由を具体的に書かなかった場合は、控訴の提起後50日以内に、控訴理由書を控訴裁判所に提出しなければなりません(民事訴訟規則182条)。控訴状の提出先(第一審裁判所)とは異なる点に注意が必要です。
控訴理由書には、第一審判決のどこが誤っているのかを具体的に記載します。不貞慰謝料の事件では、次のような点が争点になります。
- 不貞行為(肉体関係)の有無についての事実認定が、証拠に照らして誤っている
- 相手が既婚者であることを知っていたか(故意・過失)の判断が誤っている
- 不貞行為の時点で婚姻関係がすでに破綻していたことを考慮していない
- 婚姻期間・不貞期間・離婚の有無などに照らして、慰謝料額が高すぎる(低すぎる)
控訴審では新たな主張や証拠を出すこともできます(民事訴訟法296条・297条参照)。もっとも、第1回の口頭弁論で結審する事件も少なくないとされており、実質的には控訴理由書が勝負の書面になります。
控訴しても支払いを止められるとは限らない|仮執行と附帯控訴
仮執行宣言付きの判決は強制執行されることがある
不貞慰謝料の支払いを命じる判決には、確定前でも強制執行ができる「仮執行宣言」が付くことがあります。この場合、控訴しただけでは強制執行は止まりません。執行を止めるには、別途、強制執行停止の申立てをする必要があります(民事訴訟法403条1項3号)。停止が認められる場合でも、担保(保証金)を立てるよう命じられるのが一般的です。
また、慰謝料には不法行為の時からの遅延損害金(2020年4月1日以降の不法行為は法定利率年3%)が付き、控訴審の期間中も増えていきます。
相手方からの附帯控訴に注意
控訴審では、第一審判決の取消し・変更は、不服申立ての限度においてのみすることができます(民事訴訟法304条)。そのため、自分だけが控訴している限りは、第一審判決より不利になることは原則としてありません。
しかし、相手方は、控訴期間が過ぎた後でも、控訴審の口頭弁論が終結するまでは「附帯控訴」をすることができ(同法293条1項)、その結果、第一審より不利な結論になることもあり得ます。
控訴審での和解と、本人で控訴する場合の限界
控訴審でも、第一審判決を踏まえて裁判所から和解を勧められることは珍しくありません。和解の基本的な考え方は不貞慰謝料の裁判で和解を勧められたら?をご覧ください。
一方で、本人で控訴する場合には次のような難しさがあります。
- 2週間・50日という短い期限の中で、判決の誤りを法的に整理しなければならない
- 早期に結審することが多く、後から主張を補う機会が限られる
- 仮執行の停止や附帯控訴への対応など、第一審にはない判断が求められる
第一審を本人で進めた方でも、控訴審から弁護士に依頼することは可能です。当事務所の取扱内容は不貞慰謝料請求・減額交渉の取扱分野ページでご案内しています。
不貞慰謝料の控訴に関するよくある質問
控訴期間の2週間はいつから数えますか?
民事訴訟法285条により、判決書(電子判決書)の送達を受けた日から2週間です。判決の言渡し日からではありません。送達を受けた日の翌日から数え、最終日が土日・祝日・年末年始に当たるときはその翌日が最終日になります。
控訴したら、第一審で命じられた慰謝料を支払わなくてよいのですか?
判決は控訴により確定しませんが、仮執行宣言が付いている場合は、控訴しても相手方は強制執行をすることができます。執行を止めるには、民事訴訟法403条1項3号に基づく強制執行停止の申立てが別に必要で、担保の提供を求められるのが通常です。
控訴審で新しい証拠を出すことはできますか?
控訴審は第一審の審理を引き継いで続ける仕組みのため、新たな主張や証拠を提出すること自体は可能です。ただし、時機に後れたものとして却下されることがあるため、控訴理由書の段階で整理して提出することが重要です。
相手方が控訴してきた場合、何をすればよいですか?
控訴状と控訴理由書が送達されたら、裁判所の指示する期限までに、控訴理由に対する反論を記載した答弁書を控訴裁判所に提出します。第一審判決に自分も不服がある場合は、控訴期間が過ぎていても、控訴審の口頭弁論終結までであれば附帯控訴(民事訴訟法293条)をすることができます。
まとめ
- 不貞慰謝料の判決に不服があれば、判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴できる(民事訴訟法285条)
- 控訴状は第一審の裁判所に提出し、宛名は控訴裁判所とする(同法286条)。手数料は訴え提起の1.5倍
- 控訴理由書は控訴の提起後50日以内に控訴裁判所へ提出する(民事訴訟規則182条)。控訴審は早期に結審する傾向がある
- 仮執行宣言付きの判決は、控訴しても強制執行停止の申立てをしなければ執行される可能性がある(同法403条1項3号)
- 相手方の附帯控訴により、結果が第一審より不利になることもある(同法293条)
控訴するかどうかは、結論が変わる見込みと費用・時間の負担を比べて判断します。期限が迫っている場合は、早めに弁護士にご相談ください。横浜のタングラム法律事務所でも、第一審を本人で進めた方からの控訴審のご相談を承っています。
不貞慰謝料の判決・控訴についてのご相談
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