誹謗中傷の意見照会書に身に覚えがない|投稿していない時の対応
誹謗中傷の意見照会書に身に覚えがない|投稿していない時の対応
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月6日 最終更新日:2026年10月6日
契約しているプロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届き、読んでみると、見たこともない掲示板やSNSの投稿について「あなたの回線から書き込まれた」と書かれている。誹謗中傷をした覚えはまったくないのに、このまま氏名や住所が相手に知られ、損害賠償を請求されてしまうのではないか――。身に覚えのない書面ほど、不安は大きいものです。
この記事では、誹謗中傷の投稿について意見照会書が届いたものの、自分は投稿していない(または記憶にない)という方に向けて、書面が届く理由、最初に確認すべきこと、回答書で「投稿していない」と伝える際のポイント、家族や同居人が書き込んでいた場合の考え方を、横浜の弁護士が解説します。
結論として、意見照会書は「投稿した人」ではなく「投稿に使われた回線の契約者」に届くため、投稿していない人に届くことは珍しくありません。身に覚えがない場合も無視はせず、回答期限内に「投稿していないこと」と当時の回線の利用状況を具体的に回答することが重要です。家族などが書いた可能性がある場合は、推測で名前を挙げる前に事実を確認し、弁護士に相談することをおすすめします。
身に覚えのない意見照会書が届く理由
意見照会書は、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。2025年4月1日に旧プロバイダ責任制限法から改称)に基づき、開示請求を受けた回線事業者が「開示に応じるかどうか」について発信者の意見を聴くための書面です(同法6条1項)。
ただし、回線事業者が把握しているのは、投稿に使われたIPアドレスやタイムスタンプに対応する回線の契約者です。開示の対象となる発信者情報にも、「発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者」の氏名・住所が含まれています(総務省令〔同法施行規則〕2条1号・2号)。そのため、実際に書き込んだ人と契約者が違えば、投稿していない契約者のもとに書面が届くことになります。
| よくある場面 | 内容 |
|---|---|
| 家族・同居人の利用 | 自宅のWi-Fiを配偶者や子ども、同居人が使っていた |
| 来客・知人への貸与 | 友人や来客にWi-Fiのパスワードを教えていた |
| パスワードの管理不足 | ルーターのパスワードが初期設定のまま、または共有されていた |
| 事業用の回線 | 店舗や事務所の回線を従業員や利用客が使っていた |
| 記憶にない古い投稿 | 数か月前の投稿で、書いたかどうかを覚えていない |
身に覚えがないときに最初に確認すること
回答期限は書面到達から2週間程度とされていることが多く、時間に余裕はありません。慌てて回答する前に、次の点を確認してください。
- 対象の投稿:サイト名・URL・投稿本文・投稿日時。添付の資料に投稿の画面が付いていることもあります
- 通信の日時:掲示板などでは投稿日時、X(旧Twitter)などログイン型のSNSではログインの日時が基準になることがあります
- 当時の回線の利用状況:その日時に自宅にいた人、Wi-Fiを使える人、来客の有無、引っ越しや契約時期との関係
- アカウントの有無:問題のサービスのアカウントを自分が持っているか、利用したことがあるか
ルーターの接続機器の一覧や、当時の勤務・外出の記録など、投稿していないことの裏付けになりそうな資料があれば保存しておきましょう。
回答書の書き方|「投稿していない」と伝えるポイント
回答書は、通常「開示に同意する」「開示に同意しない」を選び、同意しない場合はその理由を記載する形式です。投稿していないのであれば、開示に同意しないと回答したうえで、理由として次の点を簡潔かつ具体的に書くのが基本です。
- 自分は問題の投稿をしていないこと
- 問題のサービスを利用していない(アカウントを持っていない)こと
- 投稿日時当時、回線を利用できた人がほかにもいたこと(人数や関係など、確認できた範囲で)
注意したいのは、回答書の内容が、その後の開示命令の手続などで請求者側や裁判所の目に触れることがある、という点です。推測で特定の家族の名前を挙げたり、確認していない事実を書いたりすると、後で説明が食い違い、かえって信用を損なうおそれがあります。事実と分かっていることだけを書き、分からないことは「分からない」とするのが原則です。
回答書の基本的な構成は意見照会書の回答書を自分で書く方法で解説しています。当事務所の対応内容は意見照会書が届いた方への対応(意見照会対応)のページでもご案内しています。
開示に同意しない場合・開示された場合の流れ
開示に同意しないと回答すると、回線事業者が任意に開示することは通常控えられます。請求者は、裁判所に発信者情報開示命令を申し立てるかどうかを検討し、裁判所が「権利侵害が明らかである」などの要件(同法5条1項)を満たすと判断すれば開示命令が出されます。その場合、回線事業者は、開示に反対する意見を述べた発信者に対し、原則として遅滞なくその旨を通知しなければなりません(同法6条2項)。
開示されるのは契約者の氏名・住所などであり、開示されたことで「契約者が投稿した」と法的に確定するわけではありません。不法行為(民法709条)の損害賠償責任を負うのは、原則として実際に投稿した人です。
もっとも、開示後に請求者から損害賠償を求める通知書が届いた場合、請求者は契約者を投稿者と考えて請求してくるのが通常です。訴訟になれば、回線の利用状況などから契約者が投稿者であると推認されることもあり得るため、意見照会の段階から一貫した説明をしておくことが重要になります。
家族や同居人が書き込んでいた場合
確認の結果、家族や同居人が書き込んでいたと分かることもあります。その場合の責任の考え方は、書き込んだ人の年齢によって異なります。
| 書き込んだ人 | 責任の考え方 |
|---|---|
| 成人の家族・同居人 | 原則として書き込んだ本人が責任を負う。契約者が代わりに責任を負うわけではない |
| 責任能力のない未成年の子 | 監督義務者である親が責任を負う場合がある(民法714条1項) |
| 責任能力のある未成年の子 | 子ども本人が責任を負うのが原則。親自身に監督上の過失があれば親の責任が問題になることもある |
子どもの投稿が問題になった場合の詳しい考え方は、子どもの投稿で意見照会書が届いたら(親の責任と対応)で解説しています。
家族が書いたと分かった場合、回答書の書き方や示談の検討について家族の間でも利害が分かれることがあるため、立場を整理してから回答することが大切です。
やってはいけない対応
- 無視・放置する:投稿していないという言い分が記録に残らないまま手続が進みます
- よく確認せずに「同意する」と回答する:同意すると任意に開示され、投稿者として請求を受ける可能性が高まります
- 推測や事実と異なる内容を書く:後の説明と食い違うと、かえって不利に評価されるおそれがあります
- 相手に直接連絡する:投稿を認めたと受け取られるおそれがあります
よくある質問
投稿していないなら、意見照会書は無視してもよいですか?
おすすめできません。回答しなければ「投稿していない」という言い分が記録に残らないまま手続が進みます。身に覚えがない場合こそ、その旨と当時の回線の利用状況を回答書で具体的に伝えることが大切です。
回線の契約者というだけで、損害賠償責任を負いますか?
不法行為(民法709条)の責任を負うのは、原則として実際に投稿した人です。契約者であることだけで当然に責任を負うわけではありません。ただし、訴訟では回線の利用状況などから契約者が投稿者であると推認されることもあり得るため、投稿していないことを裏付ける事情を整理しておくことが重要です。
家族が書いたかもしれない場合、回答書に家族の名前を書くべきですか?
推測の段階で家族の名前を書くことはおすすめできません。回答書の内容は、その後の手続で請求者側や裁判所の目に触れることがあります。まず家族に事実を確認し、誰が書いたかが分かった場合の対応も含めて、回答前に弁護士に相談するのが安全です。
開示に同意しないと回答すれば、氏名や住所は開示されませんか?
同意しない場合、回線事業者が任意に開示することは通常控えられますが、請求者が裁判所に発信者情報開示命令を申し立て、要件を満たすと判断されれば開示されます。その場合、回線事業者から開示命令を受けた旨の通知が届くのが原則です(情報流通プラットフォーム対処法6条2項)。
まとめ
誹謗中傷の意見照会書は、投稿に使われた回線の契約者に届くため、投稿していない人に届くことも珍しくありません。身に覚えがない場合でも無視はせず、対象の投稿と当時の回線の利用状況を確認したうえで、回答期限内に「投稿していない」ことを具体的に伝えることが大切です。
一方で、家族や同居人が書き込んでいた可能性がある場合や、記憶があいまいな場合には、回答の書き方ひとつでその後の見通しが変わります。回答書を提出する前に、横浜のタングラム法律事務所など、発信者情報開示の手続に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
身に覚えのない意見照会書が届いた方へ
タングラム法律事務所では、発信者情報開示請求に係る意見照会への対応について、豊富な取扱い実績を有しております。投稿していない場合の回答の書き方から、開示後の対応まで、事情をうかがったうえで方針をご提案します。
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