タングラム法律事務所

トレント開示請求の後に引っ越したら|旧住所への通知と裁判の送達

トレント開示請求の後に引っ越したら|旧住所への通知と裁判の送達

トレント開示請求の後に引っ越したら|旧住所への通知と裁判の送達

トレント開示請求の後に引っ越したら|旧住所への通知と裁判の送達

トレント開示請求の後に引っ越したら|旧住所への通知と裁判の送達

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月6日 最終更新日:2026年10月6日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書が届いた後に、転勤や進学、契約更新などで引っ越しを予定している方、あるいはすでに引っ越してしまった方から、「旧住所あてに書類が届いたらどうなるのか」「引っ越して回線を解約すれば、それ以上請求は来ないのではないか」というご相談をいただくことがあります。中には、連絡がつかなければ手続が止まるのではないかと期待される方もいらっしゃいます。

この記事では、意見照会・発信者情報の開示・損害賠償請求・訴訟の各段階で、転居が手続にどのような影響を与えるのかを、民事訴訟法の送達に関する規定に沿って横浜の弁護士が整理します。あわせて、引っ越しの前後に何をしておくべきかを解説します。

結論から述べると、引っ越しによって開示請求や損害賠償請求の手続が止まることはありません。権利者側は住民票の写し等によって転居先を調べることができ、それでも書類を届けられない場合には、訴訟では書留郵便に付する送達や公示送達という方法が用意されています。むしろ、転居によって書類を受け取れないまま手続が進み、反論の機会を失うことの方が大きなリスクです。転居の前後には、書類の受取先を確保し、期限を見落とさない体制を整えておくことが重要です。

引っ越しても開示請求・損害賠償請求は止まらない

まず前提として、BitTorrentの発信者情報開示は、権利者側が把握したIPアドレス・発信日時をもとに、プロバイダ(アクセスプロバイダ)に対して回線契約者の情報の開示を求める手続です。開示の対象となる発信者情報には、発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名・名称と住所が含まれています(情報流通プラットフォーム対処法施行規則2条1号・2号)。

開示されるのは、プロバイダが契約者情報として保有している氏名・住所です。そのため、次のようなことが起こり得ます。

状況開示される住所として考えられるもの
引っ越しに伴い、同じプロバイダの契約を新住所に移転したプロバイダに届け出た新住所
旧住所の回線を解約し、新居では別のプロバイダと契約した解約した回線の契約者情報として保有されている旧住所
プロバイダに住所変更を届け出ていない届出がされていない旧住所

いずれの場合も、引っ越しや回線の解約によって、すでに始まっている開示の手続が打ち切られるわけではありません。ご自身が今どの段階にいるのか(意見照会の段階か、開示が決定された段階か)は、意見照会書と開示決定通知の違いで見分け方を整理しています。

意見照会書が旧住所に届いた・届かなかった場合

プロバイダは、開示の請求を受けたときは、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて発信者の意見を聴かなければならないとされています(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。意見照会書は、通常、プロバイダが保有する契約者の住所あてに送付されます。

引っ越し後に旧住所あてに意見照会書が送られた場合、郵便局の転居届による転送が設定されていれば新住所に届くことがありますが、転送が設定されていなかったり、転送期間が終了していたりすると、照会書がプロバイダに返送されることがあります。この場合、プロバイダが「発信者と連絡することができない場合」に当たると判断すれば、発信者の意見を聴かないまま手続が進む可能性があります。

つまり、照会書を受け取れないことは「手続が止まる」ことを意味せず、自分の言い分を述べる機会を失うことを意味します。照会書には回答期限があり、期限を過ぎた場合の扱いについてはトレント意見照会書の回答期限に間に合わないときで解説しています。転送されて届いた照会書の期限が迫っている場合は、まずプロバイダに連絡し、回答の方法と期限を確認してください。

意見照会書が届いた段階の具体的な対応は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページで詳しくご案内しています。

開示後の通知書——権利者側は転居先を調べられる

発信者情報が開示されると、権利者側の代理人から、開示された住所あてに損害賠償請求の通知書が送られるのが一般的です。開示された住所が旧住所であれば、通知書は転送されるか、宛先不明で返送されることになります。

しかし、返送されたからといって請求が終わるわけではありません。住民基本台帳法12条の3は、自己の権利を行使するために住民票の記載事項を確認する必要がある者や、その依頼を受けた弁護士等(特定事務受任者)が、一定の場合に住民票の写し等の交付を申し出ることができる仕組みを定めています。権利者側の代理人は、訴訟の準備などのために、開示された住所を手がかりとして転居先を調査することが考えられます。

通知書が届かないまま時間が経過すると、権利者側は交渉による解決を見送り、訴訟の提起に進むことがあります。開示後に通知書が届いた場合の読み方と対応は、損害賠償請求の段階に特化したBitTorrentの損害賠償請求の通知書が届いた方向けの特設ページもご参照ください。

訴訟になった場合の送達——住所が分からなくても裁判は進む

損害賠償請求訴訟が提起されると、裁判所から訴状等が「送達」されます。転居との関係で知っておくべき送達のルールは、次のとおりです。

送達の方法内容根拠
原則(交付送達)送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所において行う。これらが知れないときなどは就業場所でも行える民事訴訟法103条
補充送達本人に出会わないときは、同居者等で書類の受領について相当のわきまえのある者に交付できる同法106条1項
差置送達正当な理由なく受領を拒んだときは、送達場所に書類を差し置くことができる同法106条3項
書留郵便等に付する送達上記の方法で送達できない場合に、書留郵便等に付して発送する。発送の時に送達があったものとみなされる同法107条
公示送達住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合などに、裁判所の掲示場への掲示等の措置により行う。措置の開始から2週間の経過で効力が生じる同法110条・111条・112条1項

このように、本人が実際に書類を受け取らなくても、法律上は送達の効力が生じる仕組みが設けられています。とくに書留郵便等に付する送達は発送の時点で効力が生じるため、不在や受取拒否を続けても、手続を止めることはできません。また、公示送達は、本人がその事実を知らないまま効力が生じるため、気付いたときには判決が言い渡されていたということも起こり得ます。

公示送達による呼出しを受けた当事者が期日に出頭しない場合には、相手方の主張を自白したものとみなす規定(擬制自白)は適用されません(民事訴訟法159条3項ただし書)。そのため、権利者側は証拠によって請求原因を立証する必要があります。もっとも、反論が一切ないまま審理が進むことに変わりはなく、権利者側の主張と証拠に沿った判決がされる可能性は十分にあります。

なお、支払督促は、日本において公示送達によらないで送達できる場合に限って発することができるとされています(民事訴訟法382条ただし書)。住所が分からない相手方に対しては、権利者側は支払督促ではなく通常の訴訟を選択することになります。訴状や支払督促が届いた場合の期限と対応は、トレントで訴訟・支払督促を受けたら(督促異議と答弁書の対応)で詳しく解説しています。

「引っ越せば逃げられる」は誤解——知らないうちに判決が確定するリスク

以上のとおり、転居によって手続を免れることはできません。それどころか、書類を受け取れない状態に置くことは、次のような不利益につながります。

  • 意見照会の段階:照会書を受け取れず、開示に同意しない理由を述べる機会を失う
  • 通知書の段階:交渉による解決の機会を失い、訴訟に移行しやすくなる
  • 訴訟の段階:答弁書を提出できず、発信者性や損害額を争う機会を失ったまま判決がされる
  • 判決確定後:判決に基づいて、給料や預貯金の差押えなどの強制執行を受ける可能性がある

判決は、言渡しの後に控訴期間が経過すれば確定します。後になって「書類が届いていなかった」と主張しても、送達が法律上有効にされている限り、確定した判決の効力を争うことは容易ではありません。開示後の損害賠償請求から訴訟対応までの当事務所の取扱いは、損害賠償請求を受けた方への対応(取扱分野ページ)でご案内しています。

引っ越しの前後にしておくべきこと

意見照会書が届いた後に引っ越しをする場合、または引っ越し後に旧住所あての書類の存在を知った場合は、次の点を確認してください。

  1. 郵便の転送を設定する:郵便局に転居届を出し、旧住所あての郵便物が新住所に転送されるようにします。転送サービスには期間の定めがあるため、内容は日本郵便の案内で確認してください。
  2. プロバイダへの住所変更:照会書を受け取った回線のプロバイダには、回答の際に連絡先を正確に伝えます。回線を解約する場合も、照会への回答を済ませてから手続を進めることが望ましいでしょう。
  3. 照会書・回答書の控えを保管する:引っ越しの荷物にまぎれて紛失しないよう、照会書・添付資料・回答書の控えは一か所にまとめておきます。
  4. 弁護士に依頼している場合は代理人を窓口にする:弁護士が代理人として受任通知を送れば、権利者側からの連絡は代理人あてになるのが通常です。転居の予定がある方にとっては、書類の受取先を安定させる意味もあります。
  5. 訴訟になった場合は送達場所を届け出る:当事者は、送達を受けるべき場所(日本国内に限ります)を受訴裁判所に届け出なければならないとされています(民事訴訟法104条1項)。転居後の送達先を明確にしておくことで、書類の行き違いを防げます。

家族が旧住所に住み続けている場合は、旧住所に届いた書類を家族が受け取ることがあります。書類の存在を家族から知らされた場合も、まずは内容と期限を確認してください。

よくある質問

引っ越して回線を解約すれば、意見照会や開示は止まりますか。

止まりません。開示の対象となるのはプロバイダが保有する契約者の氏名・住所であり、回線を解約しても、すでに始まっている手続が打ち切られるわけではありません。照会書を受け取れなかった場合は、意見を述べる機会を失ったまま手続が進む可能性があります(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。

開示された住所が旧住所の場合、権利者側は新しい住所を知ることができますか。

権利者側やその代理人の弁護士は、住民票の写し等の交付を申し出る仕組み(住民基本台帳法12条の3)などを通じて、転居先を調査することが考えられます。旧住所あての通知書が返送されたからといって、請求が終わるわけではありません。

住所が分からないままでも裁判を起こされることはありますか。

あります。住所等が知れない場合には公示送達が認められており、裁判所の掲示場への掲示等の措置の開始から2週間が経過すると送達の効力が生じます(民事訴訟法110条・111条・112条1項)。本人が訴訟の存在を知らないまま審理が進み、判決がされる可能性があります。

旧住所に住む家族が裁判所の書類を受け取った場合、私に送達されたことになりますか。

補充送達は、送達場所において、同居者等で書類の受領について相当のわきまえのある者に交付する方法です(民事訴訟法106条1項)。送達の時点ですでに別居している家族が受け取った場合に有効な送達といえるかは、個別の事情によって判断が分かれ得ます。書類の存在を知った時点で、すぐに内容と期限を確認してください。

まとめ

トレントの開示請求や損害賠償請求は、引っ越しや回線の解約によって止まるものではありません。開示されるのはプロバイダが保有する契約者の住所であり、それが旧住所であっても、権利者側は住民票の写し等によって転居先を調べることができます。訴訟になれば、書留郵便に付する送達や公示送達によって、本人が書類を受け取らなくても手続を進めることができます。

転居によって生じる本当のリスクは、書類を受け取れないまま意見照会への回答や答弁の機会を失い、知らないうちに判決が確定してしまうことです。引っ越しの予定がある方、旧住所あての書類が気になる方は、手続の段階と期限を確認したうえで、早めに対応方針を決めることをおすすめします。横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。

BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちら

意見照会書が届いた後に引っ越す予定の方・旧住所あての書類が気になる方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉、訴訟対応まで数多く取り扱っております。届いた書面の段階と期限を確認し、転居の予定も踏まえた対応方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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