タングラム法律事務所

意見照会書と開示決定通知の違い|トレント開示請求の段階を見分ける

意見照会書と開示決定通知の違い|トレント開示請求の段階を見分ける

意見照会書と開示決定通知の違い|トレント開示請求の段階を見分ける

意見照会書と開示決定通知の違い|トレント開示請求の段階を見分ける

意見照会書と開示決定通知の違い|トレント開示請求の段階を見分ける

プロバイダから届いた封筒を開けて、これが何を意味する書面なのかが分からないまま数日が過ぎている——BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする発信者情報開示のご相談では、そうしたお話をよく伺います。インターネットで調べても、「意見照会書」「開示命令」「開示決定」「通知書」といった言葉が入り混じって説明されていることが多く、いま自分がどの段階にいるのかを掴みにくいのが実情です。

しかし、この見極めは後回しにできません。段階によって、残されている時間も、取り得る対応も、まったく違うからです。この記事では、発信者側に届く主な書面を整理したうえで、意見照会書と開示決定の通知が手続上どこに位置づけられるのか、それぞれの段階で何ができるのかを、横浜で発信者情報開示の事案を扱う弁護士の立場から、条文に沿って解説します。

まず、届いた書面がどれなのかを確認する

トレントの著作権侵害を理由とする発信者情報開示の手続で、発信者(回線契約者)の手元に届く書面は、大きく三種類に整理できます。差出人と表題を見れば、どの段階にいるかはおおむね判別できます。

書面 差出人 手続上の位置づけ
意見照会書(発信者情報開示に係る意見照会) プロバイダ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、ニフティ等) 開示するかどうかがまだ決まっていない段階
開示命令が発令された旨の通知 プロバイダ 裁判所が開示を命じ、開示が行われる(行われた)段階
損害賠償請求の通知書・請求書 著作権者またはその代理人弁護士 開示が済み、金銭請求を受けている段階

混乱の原因の多くは、一番目と二番目がいずれもプロバイダから届くことにあります。差出人が同じであるため、二通目を「意見照会書の再送」と受け取ってしまう方が少なくありません。実際には、この二つの間で手続の段階は大きく進んでいます。

意見照会書は「まだ開示されていない」ことを示す書面

意見照会書は、情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法。2024年の改正により題名が改められ、2025年4月1日に施行されました)6条1項に基づいてプロバイダが送付する書面です。同項は、開示関係役務提供者は開示の請求を受けたとき、「当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない」と定めています。

ここで押さえていただきたいのは、次の二点です。

  • 意見照会書が届いた時点では、氏名・住所はまだ権利者に開示されていません。開示するかどうかを判断する前の手続として、意見が聴かれています。
  • 意見を述べるかどうかは発信者の側に委ねられていますが、述べなければ、開示に応じるべきでない理由が記録に残らないまま手続が進みます。

回答期限は書面に記載されており、到達からおおむね2週間程度とされていることが多いといえます。期限の考え方や、期限を過ぎてしまった場合の対応については、トレント意見照会書の回答期限に間に合わないときの対応で詳しく解説しています。

意見照会書は、裁判外の開示請求を受けた段階で送られることもあれば、裁判所に発信者情報開示命令の申立てがされた後に送られることもあります。書面に事件番号(「令和◯年(発チ)第◯号」等)や裁判所名の記載があれば、すでに裁判手続が始まっていることを示しています。

開示決定の通知は「命令が出た」ことを知らせる書面

これに対し、開示命令が発令された旨の通知は、情報流通プラットフォーム対処法6条2項に基づく書面です。同項は、開示関係役務提供者は「発信者情報開示命令を受けたときは、前項の規定による意見の聴取……において……開示の請求に応じるべきでない旨の意見を述べた……発信者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない」と定めています(発信者への通知が困難であるときを除く、との但書があります)。

ここでいう発信者情報開示命令は、同法8条に基づき、裁判所が決定で開示を命ずるものです。つまりこの通知は、裁判所の判断がすでに示されたことを意味します。プロバイダが命令に従って発信者情報を開示すれば、氏名・住所は権利者の手に渡ります。

実務上、注意していただきたい点があります。6条2項の通知の対象は、意見聴取に対して「開示に応じるべきでない」旨の意見を述べた発信者に限られています。意見照会書を放置した方や、開示に同意する旨を回答した方は、この規定による通知を受け取れないことになります。回答しなかった結果、開示が済んでいることを知らないまま、著作権者の代理人からの請求書で初めて事態を知る、という経過をたどることがあるのはこのためです。

二つの書面で、できることはどう変わるか

段階が違えば、対応の中身も変わります。整理すると次のとおりです。

比較項目 意見照会書の段階 開示決定の通知の段階
根拠条文 情報流通プラットフォーム対処法6条1項 同法6条2項(開示命令は8条)
氏名・住所 まだ開示されていない 開示される(または開示済み)
主な対応 理由回答書の提出(開示に同意しない旨と、その理由を述べる) 権利者からの請求に備えた事実関係の整理・示談交渉の準備
期限 書面記載の回答期限(おおむね2週間程度とされることが多い) この通知自体に発信者側の期限はない
相手方 プロバイダ 著作権者(またはその代理人)

意見照会の段階でどのような回答をし、その後どう進むのかについては、「開示に同意しない」と回答した後の流れで手続の推移を追って説明しています。あわせてご覧ください。横浜のタングラム法律事務所では、書面の読み方から回答書の作成、開示された場合の交渉までを扱うBitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページもご用意しています。

発信者は、開示命令の決定に異議を述べられない

開示決定の通知を受け取った方から、「決定に不服を申し立てたい」というご相談をいただくことがあります。しかし、発信者ご本人がこの決定を争う手段は、法律上用意されていません。

情報流通プラットフォーム対処法14条1項は、「発信者情報開示命令の申立てについての決定……に不服がある当事者は、当該決定の告知を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる」と定めています。異議の訴えを提起できるのは「当事者」ですが、発信者情報開示命令事件の当事者は、申立てをした権利者と、その相手方であるプロバイダです。発信者は、自らの情報が対象とされていながら、事件の当事者ではありません。

この構造こそが、意見照会の段階を軽視できない理由です。発信者が手続に関与できる機会は、6条1項の意見聴取に対する回答が事実上唯一のものです。裁判所の判断が示された後に立場を主張し直すことはできず、争点は開示後の損害賠償の場面へ移ります。開示請求を受けた側の手続的な位置づけについては、意見照会対応の取扱分野ページでも整理しています。

段階ごとに、いま何をすべきか

意見照会書が届いている場合

まず、回答期限と、書面に記載された発信日時・IPアドレス・作品の情報を確認します。そのうえで、開示に同意しない旨と、その理由を述べる書面(理由回答書)を期限内に提出するかどうかを検討します。ここで述べた内容は、後の交渉や訴訟でも参照され得るため、事実と異なる説明を書くことは避けなければなりません。技術的な経緯を正確に整理することが、この段階の中心的な作業になります。

開示決定の通知が届いている場合

この段階では、著作権者から損害賠償の請求を受けることを前提に準備を進めます。請求額は、作品の性質、利用の態様、期間、対象となった件数といった要素を踏まえて主張されるのが通常で、権利者側の提示額がそのまま妥当な水準であるとは限りません。請求額がどのような考え方で組み立てられるのかは、トレントの示談金はどう決まるのか(算定要素の解説)で詳しく述べています。

いずれの段階でも共通すること

  • 届いた書面は、封筒も含めて保管します。消印や到達日が期限の起算点の確認に必要になることがあります。
  • プロバイダに電話で問い合わせる場合も、事実関係を口頭で認める発言は慎重に扱うべきです。
  • 複数の作品について照会が来ている場合、それぞれの発信日時が異なることがあり、請求の範囲に影響します。

よくある質問

意見照会書が届いていないのに、いきなり開示決定の通知が届くことはありますか。

あり得ます。情報流通プラットフォーム対処法6条1項は、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴かなければならないと定めています。契約者情報の住所に居住していない、転居先が不明であるなど連絡が取れない事情があると、意見照会が省略されることがあります。また、意見照会書が同居のご家族に渡ったまま本人に届いていない、という事例も見受けられます。

「開示命令が発令された」と書かれた通知が届きました。異議を申し立てられますか。

発信者ご本人が異議の訴えを提起することはできません。情報流通プラットフォーム対処法14条1項は、決定に不服がある「当事者」が、告知を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起できると定めていますが、発信者情報開示命令事件の当事者は、申立てをした権利者と、相手方であるプロバイダ(開示関係役務提供者)です。発信者は事件の当事者ではないため、この規定による不服申立てはできません。

意見照会書に回答しなかった場合、その後の通知は届きますか。

届かない可能性があります。情報流通プラットフォーム対処法6条2項が通知の対象としているのは、意見聴取において「開示に応じるべきでない」旨の意見を述べた発信者です。無回答であった場合や、開示に同意する旨を回答した場合は、この規定による通知の対象に含まれません。回答しないことは、意見を述べる機会を失うだけでなく、その後の手続の進行を知る機会も失うことにつながります。

開示決定の通知が届いた後、もう何もできないのでしょうか。

手続の段階が変わるだけで、できることはあります。開示後は、権利者から損害賠償の請求を受ける段階に移ります。この段階では、請求の根拠とされている事実関係や請求額の妥当性を検討し、示談交渉によって解決を図ることが中心になります。開示決定の通知は、交渉の準備に取りかかるべき時期が来たことを知らせる書面と受け止めるのが実際的です。

意見照会書と、権利者の代理人から届く請求書はどう違いますか。

差出人と段階が異なります。意見照会書の差出人はプロバイダであり、氏名・住所を開示してよいかを尋ねる書面です。これに対し、損害賠償請求の通知書は、開示が済んだ後に権利者またはその代理人弁護士から届く書面で、金銭の支払を求めるものです。開示前と開示後という違いがあり、検討すべき事項も、回答すべき相手も異なります。

まとめ

意見照会書と開示決定の通知は、同じプロバイダから届く書面でありながら、手続上の意味はまったく異なります。前者は開示するかどうかがまだ決まっていない段階の書面であり、情報流通プラットフォーム対処法6条1項に基づいて意見を述べる機会が与えられています。後者は裁判所の決定がすでに示されたことを知らせる書面で、同法14条1項の異議の訴えは当事者であるプロバイダにしか認められておらず、発信者が決定そのものを争うことはできません。

手続に関与できる窓口が意見照会の一度きりである以上、その一度をどう使うかが結論を左右します。回答書に何をどこまで書くかは、技術的な経緯の理解と、後の交渉を見据えた判断の両方を必要とする作業です。横浜のタングラム法律事務所では、トレントによる著作権侵害を理由とする発信者情報開示について、意見照会の段階から開示後の示談交渉まで一貫してお受けしています。届いた書面がどの段階のものか判断がつかない場合も、そのままお持ちください。意見照会書が届いた方向けの特設ページもご参照ください。

意見照会書・開示決定の通知が届いた方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする発信者情報開示について、意見照会への回答書の作成から、開示された場合の著作権者との示談交渉まで対応しています。ITエンジニアの経験を持つ弁護士が、技術的な経緯を踏まえて方針をご説明します。回答には期限がありますので、お早めにご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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