チケット転売の損害賠償が払えないとき|分割払いと交渉の選択肢
チケット転売の損害賠償が払えないとき|分割払いと交渉の選択肢
チケット転売を理由に発信者情報が開示され、興行主の代理人から届いた通知書に、とても一括では払えない金額が書かれている。学生の方や、収入が限られている方から、この段階でのご相談を多くいただきます。
この記事では、支払えないまま放置した場合に手続がどこまで進むのか、分割払いを提案するときに何を示せばよいのか、示談書のどこを確認すべきか、そしてそれでも支払えない場合に何が検討されるのかを、弁護士が順に整理します。
「払えないから放置する」が最も不利になる
金額に驚いて、連絡そのものを止めてしまう方がいます。しかし、支払わないことと、連絡を絶つことは別です。連絡を絶っても請求は消えず、次の段階へ進みます。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 交渉中 | 金額や支払方法について話し合う余地がある |
| 訴訟提起 | 裁判所から訴状が届く。応じなければ相手方の主張どおりの判決が出得る |
| 判決確定後 | 給与・預金等に対する強制執行の手続に進み得る |
交渉の場に残っているうちは、金額も支払方法も動かせます。判決が確定してしまえば、動かせる範囲は大きく狭まります。「払えない」という事情こそ、早い段階で伝えるべき情報です。届いた通知書への対応の手順は内容証明が届いたらにまとめています。
支払能力を前提にした交渉が成り立つ理由
相手方にとっても、回収できない金額で合意することに意味はありません。判決を得ても、支払う資力がなければ実際には回収できないからです。
そのため実務では、「請求額をいくら減らせるか」と「どういう方法なら確実に払えるか」を組み合わせて交渉します。総額の減額だけを求めるより、現実的な支払計画を示すほうが、結果として合意に至りやすい場面が多くあります。
分割払いを提案するときに示すもの
「分割にしてください」とだけ伝えても、条件は決まりません。相手方が判断できる材料を、こちらから示す必要があります。
- 毎月の収入:給与明細、アルバイトの振込記録など
- 毎月の支出:家賃、学費、通信費など、生活に必要な固定費
- 他の債務の有無:奨学金や分割払いの残債があれば、その返済額
- 支払開始の時期:就職予定など、支払能力が変わる見込みがあればその時期
そのうえで、毎月いくらなら確実に払えるかを示します。回数を先に決めるより、月額から逆算するほうが、履行できる計画になります。無理な条件で合意して途中で滞れば、次に述べる期限の利益喪失条項によって、かえって不利な状況になります。
示談書で必ず確認する4つの条項
条件がまとまると、示談書(合意書)を取り交わします。署名する前に、次の4点を確認してください。
| 条項 | 確認する内容 |
|---|---|
| 支払総額と方法 | 総額、月額、支払日、振込先、初回の支払期日が明確か |
| 期限の利益喪失条項 | 何回の遅滞で残額の一括請求となるか。1回でも遅れれば失権する内容になっていないか |
| 清算条項 | 本件に関し他に債権債務がない旨が入っているか。後日の追加請求を防ぐ意味を持つ |
| 遅延損害金 | 遅れた場合の利率と、その起算点がどう定められているか |
とくに期限の利益喪失条項は、生活状況が変われば現実に発動し得る条項です。1回の遅滞で即座に一括請求となる定めであれば、2回や3回に緩和できないかを交渉する価値があります。示談書の読み方はチケット転売の示談交渉を自分で行う方法でも解説しています。
それでも支払えない場合に検討されること
収入や資産の状況によっては、分割の条件を見直してもなお履行が難しいことがあります。その場合、債務整理の手続が検討の対象になることがあります。
ただし、請求の性質や事案の内容によって、手続の中での扱いが異なり得ます。とくに、故意または重大な過失によって他人の生命・身体を害した場合など、法律上、免責の対象から外れ得る類型が定められています。ご自身の事案がどう扱われるかは、請求の根拠や主張の内容を踏まえて個別に検討する必要がありますので、見通しについては弁護士にご確認ください。
いずれにしても、この判断は交渉の入口ではなく、減額交渉と支払計画の検討を尽くしたうえでの選択肢です。順序を飛ばさないことが大切です。
相談する時期について
ご相談のタイミングとして望ましいのは、通知書が届いた直後です。金額や条件を自分で回答してしまう前であれば、主張できる事情を整理したうえで交渉に入れます。
すでにご自身で回答された後でも、示談書に署名する前であれば、条項を確認して修正を求める余地は残っています。署名した後は、内容を動かすことが難しくなります。
開示後の損害賠償請求への対応の範囲は損害賠償請求対応のページ、チケット転売の事案に特化した費用と流れはチケット転売の発信者情報開示請求への対応ページでご案内しています。
よくある質問
払えないと正直に伝えて、不利になりませんか。
支払能力がないことを伝えること自体が不利に働くわけではありません。相手方にとっても、回収できない金額で合意しても意味がないためです。不利になるのは、収入や資産について事実と異なる説明をした場合です。
分割払いは何回まで認めてもらえますか。
法律で決まった上限はなく、請求額と支払能力、相手方の方針によって変わります。一般に、総額が大きいほど期間は長く、支払能力の裏づけが具体的であるほど条件は通りやすくなります。回数だけを先に決めて交渉するより、毎月いくらなら確実に払えるかを示すほうが現実的です。
示談書に署名する前に、どこを確認すべきですか。
総額と支払方法、期限の利益喪失条項の内容、清算条項の有無、遅延損害金の定めを確認してください。とくに期限の利益喪失条項は、一度でも遅れると残額を一括請求され得る内容になっていることがあります。
どうしても支払えない場合、どうなりますか。
分割の条件を見直す交渉のほか、収入や資産の状況によっては債務整理の手続が検討の対象になることがあります。ただし、請求の性質や事案の内容によって扱いが異なり得ますので、具体的な見通しは弁護士にご相談ください。
まとめ
- 連絡を絶っても請求は消えず、訴訟・強制執行へ進み得る。交渉の場に残ることに価値がある
- 相手方も回収可能性を見ているため、支払能力を前提とした交渉は成り立つ
- 分割の提案では、収入・支出・他の債務を示し、毎月いくらなら確実に払えるかを伝える
- 示談書は、総額と方法・期限の利益喪失条項・清算条項・遅延損害金の4点を確認する
- 債務整理は、減額交渉と支払計画を尽くしたうえでの選択肢であり、扱いは事案により異なり得る
金額の大きさに動けなくなっている段階でも、打てる手は残っています。横浜のタングラム法律事務所では、請求額の妥当性の検討から、支払条件の交渉、示談書の内容確認までを取り扱っています。弁護士が代理人として相手方とやり取りすることで、ご本人が直接交渉する負担も軽くなります。
請求された金額を払えずお困りの方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限や支払期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。