タングラム法律事務所

チケット転売の利益は返さなければならないのか|不当利得返還請求

チケット転売の利益は返さなければならないのか|不当利得返還請求

チケット転売の利益は返さなければならないのか|不当利得返還請求

チケット転売の利益は返さなければならないのか|不当利得返還請求

チケット転売の利益は返さなければならないのか|不当利得返還請求

チケット転売を理由とする請求書には、「損害賠償」ではなく「不当利得の返還」という言葉が使われていることがあります。両方が並べて書かれていることもあります。聞き慣れない言葉のうえ、金額の考え方も違うため、何を求められているのか分からないというご相談は少なくありません。

この記事では、不当利得返還請求がどのような仕組みで成り立つのか、「返す」とされる金額はどこまでなのか、損害賠償とは何が違うのかを、条文に沿って整理します。

なぜ「返還」という形で請求されるのか

損害賠償は、相手方に生じた損害を埋め合わせるものです。これに対して不当利得の返還は、受け取る理由のなかったお金を、受け取った人の側から戻させるという発想に立っています。

興行主の側から見ると、この違いは実務上の意味を持ちます。損害賠償では「自社にいくらの損害が生じたか」を説明しなければなりませんが、不当利得では「出品者がいくら得たか」が出発点になります。出品価格と入金額は記録として残っているため、金額の根拠を示しやすいのが不当利得の構成です。

実際、株式会社STARTO ENTERTAINMENTの公表によれば、2026年3月13日付で、転売サイトの運営会社に対する不当利得返還請求等の訴訟が提起されたとされています。出品者個人だけでなく、サイト運営会社の受け取った手数料も対象とされている点が、この類型の特徴です。

不当利得が成り立つための要件

民法第703条は、次のように定めています。「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

ここから、次の4つが要件になります。

要件チケット転売の事案での意味争える余地
①受益出品者が転売代金を受け取ったこと実際の入金額はいくらか
②損失興行主の側に損失が生じたこと興行主にどのような損失が生じたのか
③因果関係①と②がつながっていることその出品が損失の原因といえるか
④法律上の原因がない受け取ってよい理由がないこと定価以下の譲渡など、正当な取引だったか

争いになりやすいのは②と④です。とくに定価以下で譲った場合は、そもそも差益が発生していないため、①の受益の内容から異なってきます。

「利益の存する限度」はいくらか

703条は、返還の範囲を「その利益の存する限度」と定めています。受け取った額そのものではなく、手元に残っている利益が基準だということです。

チケット転売の場面では、次のような点が問題になります。

  • サイトの手数料:出品価格から手数料が引かれているなら、実際に得た利益はその分少ない
  • チケットの取得費用:定価分は自分が支払った金額であり、差益部分と区別して考える必要がある
  • すでに使ってしまった場合:利益が残っていないという主張はあり得るが、生活費に充てた場合は「出費を免れた」として利益が残っていると評価されることがある
いずれの主張も、取引画面・入金履歴という記録があって初めて成り立ちます。不安から退会や履歴の削除をしてしまうと、自分に有利な材料を失うことになります。

「悪意の受益者」とされると何が変わるか

民法第704条は、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と定めています。

ここでいう「悪意」は、日常語の悪意ではなく、受け取ってよい法律上の理由がないことを知っていたという意味です。悪意の受益者と判断されると、「利益の存する限度」という制限が働かず、受けた利益に利息を付して返さなければならないことになります。

したがって、この類型では出品時に何をどこまで認識していたかが争点になり得ます。意見照会書や請求書への回答で、動機や認識について安易に書いてしまうと、この評価に直結します。回答書の書き方は意見照会書の回答書を自分で書く方法をご覧ください。

損害賠償との違いを整理する

同じ事実関係でも、どちらの構成で請求されるかによって、争点も期間も変わります。

項目不当利得返還請求不法行為に基づく損害賠償請求
根拠民法第703条・第704条民法第709条
出発点出品者が得た利益興行主に生じた損害
故意・過失要件ではない要件になる
時効民法第166条第1項(知った時から5年/行使できる時から10年)民法第724条(知った時から3年/不法行為の時から20年)
弁護士費用損害として認められにくい相当と認められる範囲で損害となる運用

古い出品について請求を受けた場合、どちらの構成かによって時効の見通しが変わります。請求書の記載を確認し、根拠条文が示されているかを見てください。示されていない場合は、その説明を求めることが交渉の入口になります。請求額の内訳の見方はチケット転売の損害賠償はいくらかで解説しています。

請求を受けたときに確認すること

不当利得の返還を求められた場合、まず手元で確認できるのは次の点です。

  • 請求書に、根拠となる条文(703条・704条・709条など)が書かれているか
  • 請求額が、出品価格の合計なのか、実際の入金額なのか
  • 対象とされている出品の日時・公演名が、自分の記録と一致しているか
  • 利息や遅延損害金が上乗せされていないか、その起算点はいつか

そのうえで、入金額を示す資料を揃えることが第一歩になります。弁護士に依頼するかどうかの判断材料はチケット転売の開示請求は弁護士に依頼すべきかに、当事務所の対応の範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応ページにまとめています。

よくある質問

損害賠償と不当利得の両方を請求されることはありますか。

請求の根拠として両方が並べて主張されることはあります。ただし、同じ損失について二重に受け取れるわけではありません。実務上は、立証しやすいほうを主位的に主張し、もう一方を予備的に主張するという形が多く見られます。

受け取った代金をすでに使ってしまった場合はどうなりますか。

民法703条は「利益の存する限度」で返還すると定めているため、利益が残っていないことは本来主張し得る事情です。もっとも、生活費に充てた場合は出費を免れた分だけ利益が残っていると評価されることがあり、また悪意の受益者と判断されれば704条により全額に利息を付した返還が問題になります。使ってしまったから返さなくてよい、と単純にはいえません。

手数料を引かれた分も返還の対象になりますか。

実際に手元に入った金額と、出品価格は異なります。サイトの手数料や振込手数料が差し引かれているのであれば、入金額を示す資料を提出して、前提となる金額を争うことが考えられます。取引画面や入金履歴は早い段階で保存してください。

何年前の転売まで請求されるのですか。

不当利得の返還請求権は債権ですので、民法166条第1項により、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅し得ます。不法行為に基づく損害賠償請求とは期間の考え方が異なるため、古い出品についてはどちらの構成で請求されているかを確認する必要があります。

まとめ

  • 不当利得は「得た利益を戻させる」構成で、損害の立証を経ずに金額を組み立てられる
  • 民法703条の要件は、受益・損失・因果関係・法律上の原因がないことの4つ
  • 返還の範囲は「利益の存する限度」。手数料や取得費用は争える余地がある
  • 悪意の受益者と判断されると、704条により利息を付した返還が問題になる
  • 時効は不当利得が5年/10年、不法行為が3年/20年と異なる
  • 入金額を示す記録が、いずれの争点でも土台になる

請求書に書かれた金額は、相手方の主張であって確定した債務ではありません。どの構成で請求されているのかを見極めれば、争える点も見えてきます。書面を受け取った方は、記録を保存したうえで、横浜のタングラム法律事務所までご相談ください。オンラインで全国から対応しています。

利益の返還を求められた方へ

タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求・不当利得返還請求への対応、示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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